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めぇでるコラム : 2014年7月

2015さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★建学の精神、教育方針の理解の仕方 (1)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2015さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第54号)
 年長児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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建学の精神、教育方針の理解の仕方 (1)
 
何やら、いかめしいタイトルで恐縮ですが、今回と次回に分け、建学の精神や
教育方針を、どのように理解しておかなければならないかについて、拙著の
「おとうさん、おかあさんの受験対策」 シリーズ(全25冊)から選んで、
お話ししましょう。 
模擬面接では、お父さんに志望理由をうかがうのですが、これでは本番で困っ
たことになるのではといった回答があります。
それは、願書に書かれている志望理由を、そのままおっしゃる場合です。
 
たとえば、白百合学園小学校でいえば、
「御校の校訓である『従順、勤勉、愛徳の三徳』が、我が家の育児の方針とあ
い通じるところがあり、心から賛同できますので志望いたしました」
と答えたとします。
「では、三徳について、具体的にどのようにお嬢さんに教えていますか」
と尋ねてみると、はっきりとした答えが返ってこないことが起きがちです。
これでは、志望理由になりません。
説明会でも、三徳について簡単な説明があり、配布されたパンフレットにも書
かれています。
 
 従順 すすんでみがこう正しい心
 勤勉 すすんでなんでも一生けんめい
 愛徳 すすんで親切よろこんで
 
これを、このまま願書に書き、口頭で答えるのもどうでしょうか。
「従順は素直な心、勤勉は最後まで頑張る子、愛徳は思いやる心」と置き換え
れば、皆さんが育児で、大切にしていることではないでしょうか。
「私どもでは、素直な心、頑張る心、思いやる心を大切に育ててきました」と
答えることができれば、すなわち、「従順、勤勉、愛徳」の三徳を、育児の中
心にしてきたことになり、「心から賛同できる」となると思います。
こういったように、ご家庭の育児の方針と学校の教育方針が、限りなく近けれ
ばいいのですから、やはり、育児の姿勢に一本の筋がなければ、あやふやな回
答になりがちです。
そして、学園全体のことも考慮されて、「宗教教育に何を期待しているのか」
「女子だけの教育環境になぜ、賛成なのか」「大学までの一貫教育制度に期待
することは何か」をまとめることです。
 
ところで、昨年の説明会で、校章の解説がありましたが、デザイン化されたユ
リの花の中央は「従順」、左側が「愛徳」、そして右側が「勤勉」を表してい
るそうです。
校歌にジャンヌ・ダルクが出てきますし、白百合の目指す女性像は、半端では
ありません。
 
もう一例として、日本女子大学附属豊明小学校の「三綱領」についてお話しし
ましょう。
学校案内には、こう説明してあります。
 
 信念徹底(正しいと考えたことはやり遂げる)
 自発創生(自ら考え、工夫し、実行する)
 共同奉仕(心を合わせて皆のために仕事をする)
 
信念徹底とは、はじめたことは途中でギブアップしないで最後まで頑張る子。
自発創生とは、夢中になって遊び、楽しく遊ぶ工夫のできる子。
共同奉仕とは、友達と仲良く遊べる情緒の安定している子。
こう考えると、わかりやすいのではないでしょうか。
こういったことを大切に考え、子育てをしているご家庭は、日本女子大学附属
豊明小学校の教育方針と一致していると思いませんか。
それならば、願書に「三綱領に賛同いたしまして志望させていただきました」
とお書きになられても、では具体的にと尋ねられた場合、躊躇せずに話せるの
ではないでしょうか。
そして、「女子だけの教育環境」「大学までの一貫教育に期待すること」をま
とめるべきでしょう。
 
次は、面接をやっていない学校ですが、願書は提出しますから、やはり、志望
理由は明確にしておかなければなりません。
出願者が、もっとも多いといわれている慶應義塾幼稚舎です。
最初の頃に触れましたが、もう一度、紹介しておきましょう。
教育方針の中に掲げてある独立心と自尊心が「独立自尊」の精神です。
この言葉は、福沢諭吉翁の精神として、明治33年に発表された「慶應義塾修
身要領」の中で初めて使われた言葉です。
 
「自分の自由独立を守るためには他人の自由を認め、またその人の独立をも尊
重しなければならない。人はすべて自主的、自発的に判断して行動する習慣を
つけなければならない」
 
つまり、あることに関して、他人の考えに左右されずに、自分の考えや判断を
最も尊ぶ心が自尊心であり、他人はどうあっても、自分はこうだという信念の
ある態度で生活することが大切であるということでしょう。
 
独立自尊については、この話がわかりやすいと思います。
新入生が入学したときに、三つの約束をします。
 
 一つ、嘘をつかない。
 二つ、お父さん、お母さん、先生のいいつけを守る。
 三つ、自分でできることは自分でする。
 
普段から、お子さんにいって聞かせていることを考えると、
「嘘をついてはいけません」
「約束は守りなさい」
「自分でできることは自分でしなさい。お母さんを頼っても知りませんよ!」
だとします。
そして、これらを破ると叱り、諭しているとします。
お母さんの育児の姿勢と幼稚舎の教育方針と一致していることになりませんか。
この三つの教えは、先の諭吉翁の10ヵ条から成る「慶應義塾修身要領」の中
から、特に大切な項目を取り上げたもので、通信簿の第1ページにも記されて
います。
成績をみるよりも前に目を通してほしい大切な事項、という意味からだそうで
す。
 
第二は、幼少時の者には、身体の健康と品格に重きをおく、「先ず獣身を成し
て後に人心を養え」の教えですが、これは「福澤諭吉全集」第六巻257ペー
ジにあるもので、これをどう解釈するかでしょう。
「獣身を成す云々」は、この話がいいでしょう。
 
「塾生皆泳というモットーを、日常の教育に文字通り実践しているのは幼稚舎
である。幼稚舎を卒業するまで、プールで千メートルを全員で泳ぎ切る見事な
成果は、先ず獣身を成せとの教えの端的な一歩であった」
 
卒業までに、千メートル皆泳です。
まだ、あります、冬の寒い時期の縄跳びです。
この二つのことに関しては、説明会でも舎長が力説されていました。
ところで、運動会場には入場門と退場門がありますが、幼稚舎の場合は、入り
口は「獣身門」で、出口は「人心門」となっていますが、今年の説明会(7月
12日)でも、見ることができました。
「陸の王者慶應」は、幼稚舎時代から鍛えられているわけで納得できました。
 
4月に就任した大島誠一舎長も、「担任の6年間持ち上がり制度」について詳
しい説明がありましたが、これも大切な教育方針であることはいうまでもあり
ません。
それに加え、「大学までの一貫教育に期待すること」「共学の良さ」を考慮さ
れてまとめられてはいかがでしょうか。
 
話を戻しまして、このように、建学の精神や教育方針とご家庭の育児の方針に、
どういった接点がうかがえるか、これを見つけだすのがポイントだと思います。
それがきちんと整理できれば、面接は、恐くありません。
小学校の受験は、「はじめにご家庭の育児の姿勢ありき」でなければいけない
といってきた理由は、ここにあるのです。
「絵に描いた餅」は、所詮、飾りもので役に立ちません。
面接に臨み、ご自身の考えを、ご自分のことばで話すには、やはり、「我が家
の育児の姿勢」が、しっかりとしていることが大切なのです。
 
夏休みの講習会は、心身ともに鍛える絶好の機会です。
夏休みのスケジュールを立て、頑張ってください。
また、お父さん、お母さん方へ、模擬面接をお受けになることをお勧めします。
お父さんはともかく、お母さんやお子さんは、どのくらい緊張するかを知って
ほしいのです。
後で悔やんでも始まりませんから、夏休み中には受けておきましょう。
 
梅雨明けも間近、天候不順な日が続いています。
健康管理には、手を抜かないように気を付けてください。
 
(次回は、暁星小学校、青山学院初等部、国府台女子学院小学部に関してお話
しましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★お子さんは、朝起きてから寝るまで、どのくらいのことを自力でできますか

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第3号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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お子さんは、朝起きてから寝るまで、どのくらいのことを自力でできますか。
 
まず、基本的な生活習慣のことです。
一言でいえば、「誰の世話にもならず、自力で生きていくために培われた、年
齢にふさわしい適応能力」のことで、食事・睡眠・排泄・清潔感・衣服の着脱
の5つが基本といわれています。
これは皆さん方が、今まで手がけてきたことばかりではないでしょうか。
おそらく、3歳頃からお子さん自身が自分でやる機会も増え、できることも増
えていったと思います。
その時から賢明なお母さん方は、手を抜き始めたのではないでしょうか。
お子さんの自立の始まりです。
ですから、3歳を過ぎても子どものやっていることをみて、手を貸そうとすれ
ば過保護であり、口を挟もうとすれば過干渉の育児になり、実際に手を貸し、
口を出していると、いやな言葉ですが、超過保護であり、超過干渉の育児にな
りがちで、お子さんの自立は阻まれてしまいます。
お子さんを取り巻く環境はいかがでしょうか。
 
20項目あげてみましたが、早生まれのお子さんでは、まだ無理なことも入っ
ていますし、今の時点でこれらのすべてが、きちんとできていなければいけな
いということではありません。
受験を考えていないお子さんの場合は、年長になる来年の4月をめどにして間
に合いますが、受験されるお子さん方には、少し厳しくなりますが、幼児教室
の新学期が始まる、今年の11月を目安にして頑張ってみましょう。
目的は、自立心を養うことです。
幼児教室では、手のかかるお子さんは歓迎されませんし、入室テストで断られ
ることもあるからです。
 
 1.毎朝一人で起きられますか。
 2.歯磨き、洗顔を一人でできますか。
 3.風呂で体を洗い、洗髪できますか。※
 4.衣服の着脱はできますか。
 5.ボタンの掛け外しはできますか。
 6.食事は一人でできますか。
 7.箸やスプーンの持ち方に気になることはありますか。
 8.食事に時間はかかりますか。
 9.幼稚園へ行くときの準備は一人でできますか。
10.幼稚園から帰ってきたとき一人で着替えができますか。
11.外から帰ってきたとき、手洗い、うがいはできますか。
12.おもちゃ等遊んだものを片付けられますか。※
13.自分の身の回りの整理整頓はできますか。※
14.ハンカチやちり紙を使えますか。※
15.はさみで形の切り抜きができますか。
16.ひもを結べますか。(かたむすび)※
17.靴をはくことができますか。
18.玄関で靴をそろえて脱げますか。
19.毎朝決まった時間にトイレに行っていますか。
20.早寝、早起きをし、睡眠は10時間以上とっていますか。
        ※は無理をしないことです。
 
3.洗髪は、幼児にとっては大事業ですから急がせる必要はありません。
毎年、年長の夏に2泊3日の合宿に出かけていた頃の経験ですが、いやがる男
の子には、耳をしっかりと押さえさせ、シャンプーも少しだけつけて洗ってあ
げると、意外に「何だ、ぼくにもできる!」となり、合宿から帰ってきたわが
子の変わった様子に驚かれるお母さん方がいましたが、怖がるからやらせなか
った場合が多いものです。
 
7.箸を正しく持ち、他人の世話を受けずに食事ができることは、排泄と共に
集団生活でも最も大切なことです。
立教女学院小学校の昨年の説明会で、教頭の吉田太郎先生は「今年も箸を使う
ような問題が出たとしても、できるだけ速く物をはさみ移動させることを競っ
ているのではなく、生活習慣としてみせていただきます」とおっしゃっていま
したが、箸をきちんと持って食事のできるお子さんは、筆記用具を正しく持て
ていますから、お母さん方の育児の姿勢、しつけがわかるわけで、決してタイ
ムを争わせているわけではありません。
今年は写真を2カット使用し、箸の正しい持ち方を説明しましたが、筆記用具
の持ち方は書写の基本であり、小学校の勉強の初めの一歩につながる大切な生
活習慣であり、適正能力ですから、学校側も重視しているわけです。
 
11.幼児にとっては難しい習慣で、これこそご両親がしっかりとお手本を見
せることが大切です。
インフルエンザの防止のために、うがいを励行されたと思いますが、これが習
慣になっているようですね。
「外から帰ってきた時は、手を洗いましょう」は、清潔感を身につける大切な
習慣です。
 
13.整理整頓ですが、男の子は苦手ですね。
「まだ、小さいから、今にできるようになる」と思っているようではできるよ
うになりませんし、その度にうるさく注意するだけでは身につきません。
整理の仕方がわからない場合もあります。
「君は、まだ小さくてできないから、先生が手伝うよ」と一緒に片付けている
と、それが習慣になって1ヶ月もしないうちに自分から片付け始める子もいま
す。
おもちゃを箱に乱雑にしまう子は、片付ける手順がわからない場合が多いもの
です。
文句をいう前に、なぜできないか、その原因を考えてあげましょう。
そして、お父さん方にも一言、「置きっ放しにしないで! だらしがないんだ
から」などとお母さん方から苦情が出ていませんか。
お母さん方へ、お子さんの前で、こういった乱暴な言葉は、絶対に使わないで
ください。
小さい時から、父親の存在をないがしろにする言動は、厳に慎むべきです。
子ども達は、強いお母さんを歓迎しているわけではありません。
 
14.男の子は、手でこすって始末したり、ズボンで拭いたりしがちですが、
どうしてティッシュペーパーやハンカチを使うか、時間をかけて教えましょう。
衛生感覚を身につける大切な生活習慣です。
 
15の手作業、関係のないように思えますが、切る、折る、貼るといった作業
は、自立心と深いかかわりを持っています。
誰の手も借りずに、はさみを使えることは、脳と筋肉が、ある目的のために、
自主的に共同作業をしていることになるからです。
自らやろうとする意欲の育まれていることがわかりますから、出題されるわけ
です。
 
こういった基本的な生活習慣の身についている子は、試行錯誤を繰り返し、工
夫し、努力をしていますから、自立心や自発性が培われ、それが集団生活への
適応力を育むもとにもなっているのです。
 
さらに、加えておきたいのは、「あいさつができますか」ということです。
「おはようございます」「いただきます」「ごちそうさま」「いってきます」
「ただいま」「ありがとう」「ごめんなさい」「おやすみなさい」は、ご両親
が率先して行うことで、きちんと身につくものです。
特に、「ありがとう」「ごめんなさい」と素直にいえる子は、情緒も安定していま
す。
あいさつは、人とのかかわりをスムーズに行うための潤滑油であり、次回にお
話します、集団生活への適応力にも大きな影響を与えるものです。
 
基本的な生活習慣は、自力で生活できる適応能力のことです。
小学校の入学試験は、「初めての所へ行って、初めて会った友達の中に入り、
初めて会った先生のいうことを聞き、適切に対応できるか」を判定されること
であり、頼りになるのは自分自身だけで、誰も助けてくれません。
「子離れできないお母さん」「お母さん離れのできないお子さん」では、入学
試験に対応できないことをご理解いただけたのではないでしょうか。
どこの学校でも、「基本的な生活習慣が身についているかを見たい」といって
いるのは、適応能力が身についているかを知りたいからです。
最近の説明会でよく聞く、「当たり前のことが当たり前にできない」の意味は、
知的な能力ではなく生活習慣やしつけのことです。
まず、こういったことからしっかりと育てていくことが、合格への道を歩むこ
とになるのです。
ただし、繰り返しお願いしておきますが、お子さんの生まれ月を無視すること
は、成長を阻害するおそれもありますから、慎重に取り組んでいただきたいと
思います。
 
梅雨明け前の不順な天候が続いていますが、お子さんの健康管理には十分に気
をつけてください。
(次回は、集団生活への適応力についてお話しましょう)
 

2015さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★志望校選びの10のチェックポイント(3)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2015さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第53号)
 年長児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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志望校選びの10のチェックポイント(3) 
 
★説明会情報★
18日(金)と19日(土)に開催される雙葉小学校の返信はがきは、4日
(金)に発送されているはずですが、届きましたでしょうか。私のところは7
日現在、まだ届いていません。
明日は、慶應義塾幼稚舎の3回目と4回目の説明会です。
 
[七]志望理由
七番目は「志望理由」です。
建学の精神や校訓、設立理念などを、どのように解釈するかでしょう。
それが、ご家庭の育児の方針と、どういった接点があるかを、きちんと把握し
ておくべきです。
学校側のいう「共通認識」です。
母校を受験される場合は、ご自身の経験されていることですから問題はありま
せんが、出身者でない場合は、非常に、重要なポイントになります。
学校側も、なぜ、受験されるのか、聞きたくなるのも当然ではないでしょうか。
 
雙葉小学校の校訓、「徳においては純真に、義務においては堅実に」について
考えてみましょう。
これについては、ある年の横浜雙葉小学校の説明会(昨年まで学校見学会だけ
でしたが今年からオープンスクールを兼ねた説明会を再開しました)で聞いた
もので、文言は正確ではありませんが紹介しておきましょう。
 
「『徳においては純真に』というのは、『ママ、これを手伝ったら、何かを買
ってくれる?』と、見返りを考えるような子どもに育てるようでは、『徳にお
いては純真に』ではないということで、見返りを考えるような育児をしてはい
けません。
『義務においては堅実に』は、三歳、四歳、五歳の子ができることを、お母さ
んの手を借りなくてはできないようでは、『義務においては堅実に』とはいえ
ません。
そういう子育てをしているご家庭のお子さんを、雙葉は歓迎しません」
 
つまり、「思いやりのある、自分のことは自分でしっかりやろうとする子」が
ほしいということでしょう。
そういう育児をしていれば、志望理由を聞かれても、私どもの育児の姿勢と一
致しているから受験したと、自信を持っていえるのではないでしょうか。
それが志望理由で、いちばん大切なことです。
 
ある学校の面接で、お子さんに、
「お母さんが作ってくれるお料理で、いちばん、おいしいのは何ですか?」
と尋ねたところ、
「電子レンジで、チーンをするカレーライスです!」
と、元気に答えたのです。
そして、お母さんに、
「なぜ、本校を受験されたのですか」
との質問があったのですが、お母さんは、躊躇せずに、
「御校の手作りの教育方針に賛同して、受験させていただきました」
と答えたのでした。
面接された先生も驚かれたでしょう。
電子レンジで温める料理と手作りの教育では、違和感がありますから。
 
「育児の方針」と「学校の教育方針」に矛盾があるような志望理由では、今紹
介したようなことになりかねません。
絵に描いた餅のようなことをいっても、説得力はないでしょう。
学校と家庭の考え方に食い違いがあっては、教育は成り立ちません。
 
コマーシャルになりますが、筆者が書いた、幼稚舎をはじめ25校の「志望理
由のまとめ方」を中心に解説した「おとうさん おかあさんの受験対策」と、
暁星小学校をはじめ28校分の建学の精神や教育方針を、説明会でどのように
解説されてきたかを中心にまとめたCD版「心を鍛える賢い子どもの育て方」
をお勧めします。
詳しくは、めぇでる教育研究所のホームページをご覧ください。
 
[八]ご家庭の教育方針
八番目は「ご家庭の教育方針」についてです。
学校側がいう「ご家庭の教育方針」とは、「ご両親の育児の姿勢」のことで、
難しく考える必要はありません。
どんな時に褒め、どんな時に叱るか、箇条書きにしてみましょう。
できあがったものが、ご家庭の教育方針です。
「嘘をついたら怒るよ」といえば、「嘘をついてはいけません」となるわけで
す。
いろいろと出てくると思いますが、その日の気分次第で叱った、また、あとで
怒らなければよかったと後悔するのは、教育方針ではありません。
ご両親で、別々に書いてみましょう。
一致していれば、ご両親の子育ては、うまく連携が取れているといえます。
したがって、叱ることも少なくなっているはずです。
反対に、異なる点が多ければ、育児の姿勢に問題ありといえるでしょう。
被害者は、お子さん自身であることを忘れてはいけないと思います。
 
[九]お子さんの長所と短所
九番目は「お子さんの長所と短所」についてです。
お子さんの長所と短所を箇条書きにしてみましょう。
これも、ご両親で別々に書いてください。
お父さん方は、ほぼ客観的に見ることができますが、お母さん方は、やや主観
が入りすぎる傾向にありますから、注意が必要です。
育児でうまくいっているところが長所で、そうでないところが短所として、表
われているのではないでしょうか。
短所は、ご両親の育児の反省点として、修正していきましょう。
子どもの短所を叱る前に、そういう環境で育ててきたことに目を向けるべきで
す。
また、ご両親の性格を受け継いだ、いわゆる遺伝もあるかも知れませんから。
 
[十]テストの形式
最後に、テストの形式です。
小学校の入学試験はかつて、ペーパーテストが中心になっていました。ところ
が、以前にお話ししましたように、平成4年度から導入された幼稚園教育要領
で、保育の方針が従来の一斉保育から自由保育に変わりました。
その結果、入学試験にも変化が見られ、ペーパーテストを廃止して、行動観察
型のテストをする学校がふえてきたのです。
テストの形式を簡単に説明しますと、ペーパーテストは、持ち点百点から始ま
り、できなかった問題の合計点を引く減点方式であり、行動観察型のテストは、
持ち点ゼロから始まり、できた問題の合計を加算していく加点方式といえると
思います。
 
大胆な表現ですが、一斉保育は、みんな同じ方向を向き、「こういったことが
できないから、できるようにしましょう」という保育であり、自由保育は、み
んな違った方向を向き、「子ども一人ひとりの個性をのばしましょう」という
保育と考えると、一斉保育は減点方式的であり、自由保育は加点方式の保育と
いえないでしょうか。
このように考えると、学校側のテスト形式の変更も納得できると思います。
 
さらに、平成12年度から、東京女学館小学校が、親子面接だけというAO型
入試(アドミッション オフィス)を導入、一般入試と2つの方法で入試を行
っています。
誤った情報から、親子が過激な受験準備に落ち込まないためにも、画期的な方
式として評価され、その成果が注目されています。
27年度の募集人員は、一般入試40名、AO型入試40名となっています。
 
このように、学校によってテスト形式が違っていることにも目を向け、適切に
対応すべきだと思います。
 
 テスト形式
・ペーパーテスト中心
雙葉小学校、白百合学園小学校、東洋英和女学院小学部、立教女学院小学校、   
光塩女子学院初等科、国府台女子学院小学部など。
・行動観察    
慶應義塾幼稚舎、学習院初等科、青山学院初等部、成城学園初等学校、
立教小学校、桐朋小学校、桐朋学園小学校など。
・個別テスト
成城学園初等学校、桐朋小学校、桐朋学園小学校、青山学院初等部など。
・体験入学方式
横浜雙葉小学校
・AO方式
東京女学館小学校(一部)
 
[10項目のチェックの方法]
 
[一]一貫教育制度      [六]健康状態
[二]共学制度        [七]志望理由
[三]別学制度        [八]ご家庭の教育方針
[四]宗教教育        [九]お子さんの長所と短所
[五]通学距離と所要時間   [十]テスト形式
 
以上の十項目を、以下のようにチェックしてみましょう。
 
  [九]お子さんの長所と短所
  [八]ご家庭の教育方針
  [七]志望理由
  [五]通学距離と所要時間
  [六]健康状態
  [一]一貫教育制度
  [二]共学制度
  [三]別学制度
  [四]宗教教育
 
私たちの子どもには、こういう長所があり、こういった短所がある。
それは私たちが、こういう家庭の教育方針で育ててきたからだ。
そこで[一][二][三][四]のチェックポイントを基に、学校を調べると、
○○小学校が、わが子にはふさわしい教育環境であることがわかる。
一時間以上かかり、電車を二回乗り換えるけれど、自力で通学できるか。
このような答えが出てくると思います。
 
参考までに、[一]~[四]のチェックポイントに該当する学校の一部を紹介
しておきましょう。
 
共学で大学までを希望すれば慶應義塾幼稚舎、学習院初等科、早稲田実業学校
初等部、成蹊小学校、成城学園初等学校、千葉日本大学第一小学校、桐蔭学園
小学校、慶應義塾横浜初等部など。
昭和女子大学附属小学校と聖徳大学附属小学校は、中高大は別学。
 
共学で高校までの学校は、森村学園初等部、日出学園小学校など。
 
共学で短大まである学校は、昭和学院小学校(姉妹校の昭和秀英は中高一貫教
育)
 
別学で大学までならば、日本女子大附属豊明小学校、川村小学校など。
 
東京女学館大学は25年度の学生募集はしないと発表しましたから、2年後には
別学で高校までの学校になります。
 
宗教教育がいいとなれば、共学で大学までならば青山学院初等部、玉川学園小
学部、聖学院小学校、淑徳小学校など。
 
別学の男子で高校までを望むなら暁星小学校、大学までなら立教小学校。
 
女子では高校までならば、雙葉小学校、田園調布雙葉小学校、横浜雙葉小学校、
光塩女子学院初等科、国府台女子学院小学部など。
 
短大までなら立教女学院小学校など。(条件付きですが立教大学への推薦枠は
大幅増加)
 
大学までとなると白百合学園小学校、東洋英和女学院小学部、聖心女子学院初
等科など。
 
小学校だけなら国立学園小学校。
桐朋小学校(仙川)、桐朋学園小学校(国立)は、小学校は共学ですが、中高
は別学。
 
ただし、先日行われた白百合学園小学校の説明会で根本副校長も「併設中学に
は、ほとんど進学していることを一言申し添えておきます」とおっしゃってい
ましたが、一貫教育制度だからといって、無条件に進学できるわけではなく、
お子さんの努力しだいとなります。
また、聖心女子学院初等科の説明会で、「私どもの学校は文系ですから、理系
に進む場合は受験になりますが、最近増える傾向にあります」とおっしゃって
いましたが、大学に学びたい学部がなければ、高校までの学校と同様、受験す
ることになります。
なお、聖心女子学院は4-4-4制の導入により、中学での募集はなくなりま
したが、ファーストステージは1クラス32名3学級で96名、セカンドクラ
スは1クラス40名3学級で120名編成のため、不足となる24名は、5年
生の転入・編入試験で募集することになります。
詳しくはホームページをご覧ください。
 
最後に結論として、[六]から[九]までが、きちんとできあがらなければ、
学校選びは、お子さん中心になっていないと思います。
特に、[六]の健康状態、心身共に健康でなければ、小学校の受験は、無理で
あると断言しておきましょう。
 
次回から2回に分けて、志望理由の決め手となる学校の建学の精神や校訓、教
育方針について簡単な解説をしてみたいと思います。
 
(※編集者注:文中、高校や大学までの一貫校でご紹介している学校の中には、
実際には外部に進学される方の多い学校もあります。)
 


2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★先手必勝といっても、あおっているのではありません

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第2号)
  現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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先手必勝といっても、あおっているのではありません
             
今回を含めて今年の10月まで、16回配信できますが、この間に家庭でやら
なければならないことをしっかりと行い、身につけることができれば、11月
から始まる幼児教室の新年長クラスでの学習は、お子さんにとって楽しい教場
となるはずです。
これから6つのことについてお話しますが、どれから始めるかといった優先順
位はありません。
子ども達は幼稚園や保育園で、国語、算数、社会といったように、教科別に時
間を区切って学習しているわけではありませんが、あらゆる事柄に、先生や友
達と様々な関わりを持ちながら学んでいますから、ご家庭でも臨機応変に取り
組んでいただきたいと思います。
 
★お子さんは、自力でどのくらいのことができますか。
 基本的な生活習慣のことです。
 朝起きてから夜寝るまで、お母さんはどのくらい手を貸しているでしょうか。
 「自力でできることがたくさんあるお子さんの知的な能力は高い」といわれ
 ています。
 また、3歳過ぎてお子さんのやっていることを見て手を貸し、口を出すのは、
 過保護、過干渉の育児といわれ、お子さんの自立を妨げます。
 皆さん方はいかがでしょうか。
 
★お子さんは幼稚園や保育園へ通うことを楽しみにしていますか。
 社会性や協調性といった集団生活への適応力です。
 光塩女子学院初等科の説明会では、社会性のお手本はご両親とおっしゃって
 いました。
 「少し元気がありすぎるようですね」などといわれていませんか。
 「元気な子と無作法な子は違う」「明るい子とけじめのない子も違う」とも
 いわれていますが、お子さんはいかがですか。
 
★お子さんはお母さんの目を見て話を聞き、話をしていますか。
 話の聞ける子は相手の目を見ていますが、その瞳は輝いています。
 話をする子の表情は、いつも楽しそうです。
 幼稚園や保育園、外から帰ってきたときに、「ママ、あのね!」と話しかけ
 てきますか。
 そして、きちんと聞いてあげていますか。
 後で詳しくお話ししますが、「小学校の入試でもっとも大切なこと」と覚え
 ておいてください。
 
★折り紙やあやとり、点図形やお絵描きに興味を持っていますか。
 色を塗る、紙を切る、折り紙を折る、紐を結ぶ、糊で貼る、箸で摘むなどの
 手作業は、その年齢にふさわしい発達を遂げるもので、その時期を逃すと苦
 手意識を持ち、手をださなくなるともいわれています。
 また、点図形は、書写の基本練習にもなっており、多くの学校で出題されて
 いる訳は、ここにあるのです。
 絵は心の窓ともいわれ、描かれた1枚の絵からお子さんの情緒の発達状態も
 わかります。
 入試問題に絵を描かせる学校が増えていますが、絵はスケッチブックとクレ
 ヨンを与えて、すぐ描けるものではありません。 
 また、「手は第二の脳」ともいわれ、知的な能力の発達と深い関わりを持っ
 ています。
 お子さんは、「塗る・切る・折る・結ぶ・貼る・摘む・書く・描く」といっ
 た手作業に興味を示していますか。
 
★数量に関して直感力は働きますか。
 入学試験というと数量の問題が重視されているようですが、子ども達は数字
 を使い加減乗除で答えを出すわけではありません。
 直感で多少を見極めることから始め、○を使って答えを求めます。
 お子さんに、クッキーが3つと5つの入った皿を見せ、「多い方を食べてい
 いですよ」といったとき、数えることなく5枚のクッキーの入った皿を取る
 ことができるでしょうか。
 また、容量が同じ2つのコップの一方に、少しだけ多く入れておき、「多い
 方を飲んでいいですよ」といったとき、さっと多い方のコップを取れるでし
 ょうか。
 これは、決して卑しいことではなく、「about(アバウト) おおよそ
 の感じ=直感力」で判断した結果で、数量に関しては、まず、こういった直
 感力が働くことから始まります。
 お子さんは、いかがでしょうか。
 
★5分も歩かないうちに「おんぶ!」などといいませんか。
 現代っ子は、スタミナ不足といわれています。
 なぜ、赤ちゃんは「はいはい」を繰り返し、繰り返しするのでしょうか。
 ご存知のように、やがて歩き始めるための筋肉の鍛錬になっているわけです。
 幼児期には、敏感期といわれる「もっとも著しく発達する時期」があります。
 言葉の敏感期を逃すと、狼に育てられた少年のように話のできない人間にな
 ってしまいます。
 筋肉も同じで、身体全体を使い、遊ぶことで発達するものです。
 小学校に入ると余分なエネルギーをかけない省エネ運動を覚えますが、幼稚
 園時代は全力で身体を動かします。
 お子さんは、部屋で一人だけで遊ぶ省エネ運動に入っていませんか。
 
以上6つの項目を挙げてみました。
問題がなければ、ご両親の育児の姿勢にぶれはなく、お子さんは順調に育って
いるといえます。
「入学試験を控えている子どもにとって、知的な能力を鍛える項目がないよう
に思えますが」と心配なさる方もあるかもしれません。
ご安心ください。
こういったことがきちんとできるお子さんの知力は、十分に発達しているもの
です。
なぜなら、こういったことはすべて、自力でやらなければ身につかないことば
かりで、そのためには、試行錯誤を繰り返し、考え、工夫し、自発的に挑戦し、
自分のものにしているからです。
「自分のものにする」、これは幼児が自力で身につけた知恵です。
その知恵を土台にして、知的な能力は発達していくものです。
 
お母さん方も得意な料理は、レシピを見ないで、調味料も計量カップを使わず
に、作っているのではないでしょうか。
試行錯誤の結果、ご主人やお子さんが好む料理に出来上がっているはずです。
それと同じです。
知的な訓練だけを先行させるのは、ともすると、その時期に必要な成長を支え
る、大切な手順を抜くことになり、なかなか理解できないことが起きがちで、
そこから苦手意識が幅を利かせることになるのです。
「プロセスの重視」、幼児の学習は育児と同様、プロセスをなおざりにするこ
とはできません。
かつて桐朋小学校の説明会で、「私どもは試験といえどもプロセスを重視して
います」とおっしゃったことがありますが、皆さんはどうお考えでしょうか。
来週から、6つの領域の基本的な学習のプロセスについてお話していきたいと
思います。
 
はっきりとしない天気が続いていますが、お子さんの健康管理には十分に気を
付けてください。
(次回は、「基本的な生活習慣」についてお話しましょう)
 

2015さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★志望校選びの10のチェックポイント(2)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2015さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第52号)
  年長児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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志望校選びの10のチェックポイント(2)
 
★説明会情報★
7月5日は、舎長が交代した慶應義塾幼稚舎の説明会です。
 
[四]宗教教育について
 第四は「宗教教育に、何を期待しているか」です。
 
「宗教教育について、よく分からないのですけれども」とか「信者でなければ
いけないのでしょうか」とおっしゃる方がいます。
宗教教育、例えば、キリスト教の場合は、キリストの教えに基づいた教育が行
われますから、入学試験に際しても、信者でなければ不利といった噂のもとに
なっているようです。
本来、ミッション系の学校は、宗教を布教することを目的としていますが、だ
からといって、信仰を強制することはありません。
「在学中に洗礼を受けなければならない」といった怪情報もあるようですが、
それも単なる噂に過ぎません。
説明会でも、
「信者でなくても結構ですし、お坊さんや神主さんのお子さんもいます。国籍、
宗教、学歴、職歴、一切、関係ありませんが、条件といえば、日本語がわかる
ことです」
とおっしゃっています。
入学後、お子さんは、キリストの教えにしたがった生活を始めます。
例えば、食事の際にお祈りをしますが、その時に、「私は知らん」と、勝手に
食事をしてもらっては困るということであり、学校の行事は、イースター、み
こころ祭のように、宗教が中心となっていることを了解してほしいといったこ
となのです。
また、信者でない方のために「宗教講座」などを設けて、親子で学んでほしい
といっていますから、何ら心配はありません。
 
それよりも大切なのは、宗教教育を通して、お子さんに何を学ばせたいかなの
です。
皆さんは、お子さんを育てるときに、
「嘘をついてはいけません」
「自分のことは自分でしなさい」
「人に迷惑かけてはいけないよ」
「ありがとうという気持ちを大切にしようね」
と、常々、いっているのではないでしょうか。
これは、みんな宗教教育の基礎、基本です。
キリスト教にしても、イスラム教にしても、仏教にしても、全ての宗教に共通
している教えです。
キリスト教は愛を、イスラム教は施与(施し与えること)を、仏教は慈悲の心
を教えると考えるとわかりやすいでしょう。
 
こういったことを大切にしていれば、学校側のいう「ご家庭の育児の方針と学
校の教育方針が一致していること」になるのです。
 
最近では、価値観の多様化する世の中で、小さい時から絶対的な価値観、例え
ば、幼稚園で、「これは白色です」と教わったことは、大学へ行っても変わら
ない指導を受けられる教育、「心の教育」といいますか、そういったブレのな
い建学の精神に基づいた教育を受けさせたいと考えるご両親が増えていること
も確かです。
知識だけを詰め込む知育偏重型から、感情と意志を育む情意育成型の教育、こ
れが私学の大きな特徴でもあるわけです。
 
宗教教育について、非常にわかりやすい話があります。
15、6年前に、あるミッション系の学校の説明会で聞いた話で、文言は正確
ではありませんが紹介しましょう。
この学校は日記指導に力を入れているのですが、ある年のこと、一年生が絵日
記に、 
「昨日、お父さんとお母さんがけんかして、私は、さみしかったです」
と書いてきたそうです。
読んだ先生は、一年生の子が「さみしかった」と表現したことに感激して、五
重丸の花丸をつけて返しました。
喜んだ子どもは、家に帰って来て、
「ママ、見て!」
と嬉しそうに見せたものです。
ほめられると思っていた子どもは、お母さんから、
「あなたは、なぜ、こんなことを書いたの!」
と怒られてしまいました。
日記を書くもう一つの目的は、「嘘をついてはいけない」ことを教えることな
のです。
日記を通して、宗教教育を実践しているわけです。
「昨日、帰ったら、ママに叱られました」
と、子どもは、正直に書くわけです。
すると、もっと大きな花丸がついて返ってきたので嬉しいのですが、お母さん
には、もう見せません。
怒られるとわかっていますから。
後日の父母会の折り、お母さんは先生から、
「この間、こういうことがあったのではないでしょうか。実は、私たちは、作
文を通して、子どもに嘘をいってはいけないと教えています。正直に書いたお
子さんを叱るのは、お母さんが、『都合の悪いことは嘘をついてもいいのよ』
というのと同じではありませんか。『嘘をついてはいけない』というのが私達
の教育の基本ですから、ご家庭でも、これをきちんと守ってください」
 
いかがでしょうか、これはわかりやすい話だと思います。
宗教教育は、学校の礼拝堂や日曜学校の教会でお祈りをして讃美歌を歌うとい
った表面的なことではなく、日常生活に、限りなく密着しているわけです。
 
また、説明会で、讃美歌を歌い、牧師さんの講話(聖書の話)を聞き、お祈りを
し、「アーメン」と唱和する学校があります。
教会へ一度も行ったことがなくて、ミッション系の学校を希望されるお父さん
方に、是非とも参加してほしいのです。
それは、青山学院初等部の説明会です。
第2回目の学校説明会は、9月6日(土)に米山記念礼拝堂で午前9時30分
から行われますが、 セキュリティーの都合上、運転免許証、健康保険証など
氏名と住所を確認できるものを持参することになっています。
違和感を覚えたら、志望校選びを真剣に考え直すべきでしょう。
最近では、立教小学校も「開会(閉会)礼拝」を行っていますが、「アーメン」
と唱和される方は少ないですね。
今年も2階の隅っこで聞いていましたが、手を合わせ瞑目するお母さん方は、
いませんでした。
昨年は新任の若いチャプレンが「キリスト教信仰にもとづく愛の教育」について、
およそ15分、熱心にお話しされました。信者にするために入学させる方は少
ないでしょうから、「信者になることを強制される」といった誤解が生じるの
ではと思いましたが、今年はわずか5分ほどでした。
前任のチャプレンは、「宗教の香りのする学び舎」といっていましたが、何と
なく思いは伝わってきませんか。
かつて、あるミッション系の説明会で校長先生は、「信者でない方々に宗教上
の儀式、お祈りなどを強制するのはいかがなものか考え、私どもはやりません」
と言っていたことを思い出しました。
宗教の香りは、入学後から、ほのかに漂ってくるものではないでしょうか。
 
[五]通学距離と所要時間
次は、「通学距離と所要時間」についてです。
 
国立大学附属小学校の場合は、地域指定や通学時間に制限がありますから、条
件を満たさない場合は、受験できません。 
私立でも、桐朋小学校は通学地域を指定し、所要時間は60分以内、乗車時間
は40分程度、乗り換えは2つまで、桐朋学園小学校も50分程度、雙葉小学
校は1時間以内、入学後引越しされてもこの条件を守ることになっていますが、
多くの私学の場合、通学時間、距離は、ご父兄の判断に任せています。
 
通学に1時間かかるとして考えてみましょう。
8時までに登校するには、遅くとも7時前には家を出ます。
その前に食事、着替えなどの準備が必要ですから、お子さんは6時に起床、お
母さんは、朝食の支度のため5時半には起きることになるでしょう。
週五日制が徹底されても、毎週五日間、この時程が繰り返されます。
さらに、学校が都心にあれば、ラッシュアワーに通学ということも考えられま
す。
心身共に健康でなければ、通い切れません。
 
ここで、三つだけ質問しておきましょう。
その一、お子さんは、十分ぐらい歩くと、「おんぶして!」といいませんか。
その二、遊園地などで迷子になった時に、係の人に名前と住所を聞かれたらい
    えますか。
その三、電話をかけられますか。
住所も、電話番号もいえる子に、
「ディズニー・ランドへ行ったとき、迷子になったらどうしますか」
と聞くと、答えられないお子さんがいます。
こういったちぐはぐなことが、入試準備として行われているようです。
迷子になったら、制服を着ている係の人に、住所と名前をいえば、場内に放送
して、親に知らせてくれます。
何のために住所や電話番号を覚えておくかを教えずに、面接のために記憶させ
ているから、いえるけれども、それを使って何をするかがわからないのです。
これが、記憶だけに頼る受験準備のマイナス点ではないでしょうか。
目的が分からないで知識だけを詰め込んでしまうと弊害が起きるもとだと思い
ます。
「覚えさせておけば事足りる」といって教え込んだことは、幼児期には余り役
に立たないものです。
 
かつて、ある学校の説明会で、
「登下校中に、関東大震災級の地震が起きた場合、学校としては、とるべき手
段がありません」
といったことから、
「学校の近くに住む子が有利、遠方からの通学者は不利」
といった噂が流れました。
東日本大震災以降、安全に通学できることも、学校選びの重要な条件になった
ようですが、近くに住む子が有利といった噂が、再び流れ始めているそうです。
私学の小学校へは、多方面から時間をかけて通学するのですから、各校も万全
の体制で臨んでいます。
そんな噂に心を惑わされる前に、そういった災害が起きた場合を想定し、もし、
電車やバスに乗っている時はどうしたらよいかなど、幼い子どもなりに対処で
きる、そういった育児をしっかりと心がけるべきではないでしょうか。
第50号でも紹介しましたが、早稲田実業学校初等部は、入学後三日目から一
人で通学します。
そういったことからも、子ども達の自立を妨げる過保護、過干渉の育児は、絶
対に止めるべきです。
 
通学距離、所要時間は、単に物理的な距離、時間ではなく、こういった精神的
な面も考慮すべきではないでしょうか。
 
[六]健康状態
「健康状態」についてですが、これは小学校受験で、もっとも大切なことです。
健康といっても体だけではなく、心身共に健康であることです。
小学校受験は、いってみれば、「初めての場所で、初めて会った同世代の子ど
もの集団に入り、初めて会った先生の指示を聞き、理解し、即座に対応する」
ことです。
自分だけが頼りの戦いです。
 
まず、話を聞く姿勢が身についているかです。
前にもお話しましたが、小学校の試験は、中高大学の試験と比べて、著しく異
なることがあります。
ペーパーテストを考えてみましょう。
通常、テストには、設問があり、それを読んで答えるわけです。
ところが、小学校のテストには設問がなく、逆に、答えが全部、出ています。
後は、スピーカーから流れてくる先生の指示を聞いて解答していきます。
中高大の試験では、やっているうちに、
「あぁ、これは苦手だから飛ばそう。時間が余ったら後でやろう!」
と自分のペースで挑戦できますが、小学校の試験は、これができません。
「用意、ドン!」ではありませんが、始まればそのまま流れていきます。
途中であっても、
「ハイ、そこまで!」
といわれれば、そこでやめないと、次の設問の説明が始まりますから、ついて
いけなくなります。
マイペースは、認められません。
話を聞く力を身につける、これは試験だけではなく、何かを学習するためにも
っとも必要な基本的な態度です。
話を聞けなければ、何事も始まりません。
話を聞く姿勢は、親子の対話から、話の読み聞かせから、指示をきちんと出す
ことから身についてくることを、くどいほどお話してきた理由は、ここにある
のです。
 
次に、お母さんの手を借りないで、どのくらいのことが出来るかです。
お子さんの一日の行動をチェックしてみましょう。
お母さんが、どのくらい手を貸しているかを知ってほしいのです。
衣服の着脱、歯磨き、洗顔、食事、排便、身辺の整理など、就学前には身につ
けておかなければならない「基本的な生活習慣」ですが、いかがでしょうか。
こういった生活習慣が身についていることは、子ども自身が、試行錯誤をしな
がら学習をした結果です。
幼児期は、この試行錯誤こそ大切な学習なのです。
試行錯誤は、工夫をすることから起こります。
手作業の得意な子の知的な能力が高いのは、試行錯誤を繰り返し、その手順を、
きちんと学習し、覚えているからです。
単なる記憶ではありません。
自分の頭と体を使って、
「こうしたらこうなるぞ、こうしたらまずいかな、こうやったらうまくいった
ぞ!」
と学習しているのです。
オーバーにいえば、 
「だれにも頼らず、一人で生きていくための生活の知恵」
を学んでいるのです。
小学校の受験とは、問題集を買って、勉強して、「合格!」とはなりません。
そのことを、ものの見事に表現した言葉があります。
この話も何回も紹介しましたから、もう耳にたこができているかも知れません
ね。
ある年のミッション系の学校の校長先生のおっしゃったことです。
「受験に必要な知識や礼儀作法なるものを泥縄式に詰め込んで、『受験準備、
こと足れり』とお考えでしたら、それは誤りであることに気付いてほしい」
日常生活での積み重ねが、五歳か六歳の秋に現われるのです。
つまり、ご両親の育児の姿勢が、そのまま現れます。
これが小学校の受験なのです。
 
最後に、社会性や協調性といった集団生活への適応力が培われているかです。
これは幼稚園や保育園の先生方に聞けば、すぐにわかります。
先生方は、お母さん方に遠慮して、なかなか本当のことをいってくれません
が、例えば、
「うちの子、集団生活ではどうでしょうね」
と尋ねたとき、
「多少、問題があるようですよ」
といった返事が返ってきたときは、ものすごく問題があると考えて、日常生
活を、きちんとチェックすべきです。
多くの場合、集団生活に問題が起きるのは、ご家庭の育児の姿勢に原因があ
ります。
繰り返しますが、過保護、過干渉の育児です。
 
三歳を過ぎてもお子さんのやっていることを見て、手を貸したくなれば過保
護であり、口を出したくなれば過干渉の育児といわれています。
過保護な育児からは、わがままで、我慢のできない子が、過干渉の育児から
は、消極的で引っ込み思案な性格の子になりがちです。
こういった環境で育てられていると、集団生活への適応力は、育まれません。
困るのは、お子さん自身です。   
ちなみに、最近の脳科学者の研究によれば、集団生活への適応力の基本は、
6歳頃までに身につくもので、その時期を逃すと臨界期といって、どうにも
修正が効かなくなり、社会性や協調性を身につけるために、本人が非常に苦
労するといわれています。
 
「お泊り保育」があると思いますが、どういった状態であったか、必ず聞く
ようにしてください。
親の元を離れたお子さんの本当の姿を見ることができるからです。
最近、行動観察型のテストで、集団生活への適応力を判定する問題が増えて
いますが、学校側は、何を見たいのか、おわかりいただけたのではないでし
ょうか。
 
お子さんの心身の健康状態は、いかがですか。
三鷹でひょうが降るなど、はっきりしない天気が続いていますが、日差しは
 
暑い夏の近いことを告げているようです。
受験準備に無理は禁物、心身共に健康であることに留意されて頑張りましょ
う。
(次回は「志望校選びの10のチェックポイント(3)」についてお話しま
しょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★創刊号

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (創刊号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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2016 さわやかお受験のススメ  小学校受験編 創刊号
 
ここ数年、私立小学校への受験者は減少しています。
もっとも受験者が多い慶應義塾幼稚舎でも、2014年度は、男子は987名
で一昨年に続けて1,000名を割り、女子は620名で、合計1,607名
でした。
新設された慶應義塾横浜初等部へは男子728名、女子529名、計1,257名
の志願者がありましたから、一概に減っているとは言えませんが、多くの小学
校では減少しているのは事実です。
 
また、学校説明会への参加者も減っています。
例えば、成蹊小学校は、昨年まで武蔵野市民文化会館(座席数1,354)で
開催していましたが、今年から学園内の体育館と大学のホールで開催すること
になりました。
毎年私は2階席に座りますが、ここ2、3年空席が目立ち、昨年はほんの数え
るほどしか参加者はいませんでしたから、学園内での開催になったのではない
でしょうか。  
 
ところが、このような状況にもかかわらず私立小学校は増えているのです。
全国の私立小学校は213校、東京都53校、神奈川県30校、埼玉県5校、
千葉県9校、茨城県6校、計103校で、関東の1都4県で全体の48%、
約5割を占めています。
 (2010年5月現在 「お受験インデックス 」より)
さらに、神奈川県藤沢市には日本大学藤沢小学校が、茨城県つくばみらい市に
は開智望小学校が、2015年4月1日に開校の予定です。
 
受験者が減り小学校が増えると、入学しやすくなったのかと思われるかもしれませ
んが、受験者には相変わらず狭き門になっていることも事実です。
例えば、日出学園小学校では、募集人員 102名、内部進学者32名います
から、計70名のところへ受験者は104名、およそ3分の1が不合格になっ
ています。
学校側も入学試験には、レベルダウンをしない方針であることも明らかです。
2学年から編入試験のある小学校は、学年ごとに補充していく方針であること
もわかります。
 
ここ数年の傾向として、受験者が減ることにより、年長の夏休み頃から塾に通
い、志望校への合格を目指す保護者も増えていますが、あと一歩及ばす、「も
う少し早く準備をしておけば」と後悔する話を聞くのも事実です。
 
入試に必要な知識や礼儀作法なるものを泥縄式に詰め込み、「受験準備、事足
れり」と考えるのは、誤りであることに気づいてほしい。
 
バブル経済全盛期の頃、あるミッション系の学校説明会で伺った話ですが、
「小学校の入学試験は、どういったものであるか」を的確に表現した言葉なの
です。
 
お受験というと、知的な能力の問題に目を向けがちです。
たとえば、「話の記憶」では小学校高学年の「長文読解」と同じことを、文字
を使わず、話を聞くだけで答えますし、「数の問題」では、数字も記号も使わ
ずに、1年生で学ぶ足し算・引き算、2年生で学ぶ掛け算、3年生で学ぶ割り
算、4年生で学ぶ分数の問題まで出題されていますが、いずれも自宅でプリン
ト学習で対応できると考える保護者が多く、「傾向と対策的な受験準備」に心
を奪われるのは、ご両親も受験戦争を体験してきた世代だけに無理のないこと
かもしれません。
 
しかし、テストは机の上で解答をするだけではありません。
例えば横浜雙葉小学校では、入学試験でグループで輪になり、床に座って弁当
を食べます。その目的は集団生活の中で、お子さんはどうあるべきかを、親が
しっかりと考え、優しく、あるいは厳しくしつけなければならないということ
で、ご両親の責任においてしっかり育児しているかを見ることにあるのです。
基本的な生活習慣やしつけ、社会性や協調性といった集団生活への適応力は、
小学校生活をスムーズに過ごすために身につけなくてはならない基礎、基本で
す。
学校側も、ここを見極めたいのです。
小学校の受験は、試験を受けるのはお子さんですが、判定されるのは、ご両親
の育児の姿勢なのです。
生活習慣やしつけ、適応力は、付け焼刃では身につきません。
「ゆっくり、じっくり、的確に」進めていくのが、小学校受験のキーポイント
で、育児と同様、速成や即製はできません。
年中の7月から10月にかけて、ご家庭でしっかりとやるべきことがたくさん
あり、この4か月間の地道な努力こそ、合否のカギを握っているといっても決
して過言ではありません。
 
来年の秋に希望する小学校から招待状を頂けるように、お役に立つ情報をお届
けいたします。
ぜひ一緒に頑張りましょう!応援します。
 
平成26年7月
                    めぇでる教育研究所 
                          所長 藤本 紀元

2015さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★志望校選びの10のチェックポイント(1)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2015さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第51号)
 年長児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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志望校選びの10のチェックポイント(1) 
 
★入試情報★
明日は、白百合学園小学校の説明会ですが、入り口で住所と保護者名を記
入する「参加票」を提出します。ホームページからダウンロードできます
ので準備してお出かけください。
 
21日の横浜雙葉小学校の説明会、はっきりとしたデータがありませんの
で間違っているかもしれませんが、十数年ぶりの開催ではないでしょうか。
HPに時間が長くなったことと配布した資料(宗教講演会の日時、正しく
は7月5日(土))のミスと合わせてお詫びのメッセージが出ていました。
 
今回から3回に分けてお話します「志望校選びの10のチェックポイント」
は、めぇでる教育研究所から発売されている、拙著の「さわやかお受験 
面接 ここがポイント 小学校編」の第一章に、PDF版「面接克服 ここ
がポイント」電子図書版)の第1章に紹介してあるもので、読んでいただ
ければ、必ず、お役に立つと自負しています。詳しくは、めぇでる教育研究
所のホームページをご覧ください。
 
模擬面接で「この学校を選んだ理由、志望理由をお聞かせください」といっ
た質問に、ただ、その学校の建学の精神や校訓、教育目標などを、そのまま、
淡々とおっしゃる方がいます。
「それでは、校訓をどのように育児に取り入れていますか」
と尋ねてみますと、具体的な回答がない場合があります。
校訓や教育方針とご家庭の育児の姿勢に共通点がなければ、なぜ、その学校
を選んだのかがわかりません。
これでは、学校側を説得するのは難しいのではないでしょうか。
「なぜ、わが子に、この学校を選んだのか」、ご両親できちんと考えていた
だく基礎資料として、ここでは、10のポイントについてお話しましょう。
 
小学校の受験でもっとも重視されるのは、その学校を選んだ「志望理由」で
す。
出身者の場合は、ご自分の体験から選ぶわけですから問題はありませんが、
そうではない場合は、学校に関する情報、例えば、建学の精神や教育方針、
その学校ならではの特色、年間行事や課外活動、併設校への進学状況などに
ついて、わからないことが多いわけです。
そういったハンディキャップを解消するために開かれているのが学校説明会
です。
過去には説明会をやっていなかった学校もありましたが、私学のディスクロ
ージャーではありませんが、今はほとんどの学校で説明会が行われています。
平成10年には慶応義塾幼稚舎が、同11年には日本女子大附属豊明小学校
が、同12年には白百合学園小学校が、創立以来、初めての説明会を開催し
ました。
雙葉小学校も平成17年に再開しましたが、昭和60年代には説明会をやっ
ていましたから、16年ぶりということになります。
余談になりますが、昨年までの加藤三明幼稚舎長の「受験について」の話は、
説明会をやっていなかった頃(正確にはいえませんが20年ほど前)に、願
書に同封されていた話と寸分も違わず、当たり前のことながら感動しました。
もしかすると、舎長さんが若い頃に書かれたのかもしれません。
再度、現場の教師に戻るそうですが、「六年間担任持ち上がり制」ですから、
最後のご奉公というところでしょうか。
 
既に、早稲田実業学校初等部、立教小学校(第1回目、2回目は9月に開催)
などは終了しましたが、これから白百合学園小学校、聖心女子学院初等科、
立教女学院小学校、7月には慶應義塾幼稚舎、同横浜初等部、雙葉小学校な
どの説明会が行われます。
説明会は、こういった貴重な情報公開の場ですから、必ず参加されて、これ
からお話しする10項目のチェックを行い、お子さまにもっともふさわしい
学校を選んであげていただきたいと思います。
 
[一]一貫教育制度について
最初に考えてほしいのは、「一貫教育制度に、何を期待しているか」です。
 
併設校のない幼稚園があります。
幼稚園だけなのですが、不思議なことに人気があり、入園することが、大変、
難しいといわれています。
若葉会幼稚園、枝光会附属幼稚園に入園される方の目的は、慶應義塾幼稚舎、
青山学院初等部、聖心女子学院初等科、東京女学館小学校などへの入学でし
ょう。
例えば、こういった幼稚園の入園テストの倍率が、仮に1.5倍前後だとし
ても、その数字よりも限りなく重い1.5倍なのです。
名門校への合格実績も折り紙付きですから、受験される保護者の期待を十分
にかなえられていることがわかります。
 
幼稚園と小学校だけの学校があります。
国立市にある国立学園です。
西武が設立した学校で、小学校しかありませんから、ほとんどの生徒が中学
受験に挑戦します。
6年の間に実力をつけ、中学の名門校に入り、中高一貫教育で大学受験を考
えている保護者が多いのでしょう。
学校案内の最後のところに、過去5年間の進学状況の一覧表があり、麻布、
開成、武蔵という、いわゆる中学校御三家をはじめ、いろんな学校に何名入
っているといった情報が紹介されています。
教育方針の一つに、クラスを能力別に分けて指導していく「習熟度別クラス
編成」があります。
説明会で、その指導の内容を知ることができます。
 
高校までしかない学校もあります。
暁星小学校、桐朋学園小学校、雙葉小学校、田園調布雙葉小学校、横浜雙葉
小学校、光塩女子学院初等科、日出学園小学校、国府台女子学院小学部など
です。
大学へは、12年間で培われた実力でチャレンジしなさいというのが、こう
いった学校の教育方針の一つです。
また、保護者の立場からいえば、小学校は、お父さんお母さんが選びレール
を敷いてあげるが、後の進路は、自分で決めるという制度に賛成していると
いうことです。
社会へ出る前に、大学受験というハードルをクリアする関門が待ち受けてい
ます。
つまり、厳しい競争の社会に出る前に、大学受験という戦いを経験しておく
べきだと考える保護者に支持されているわけでしょう。
 
横浜雙葉小学校は説明会を再開しましたが、説明会をやっていた頃に、雙葉
系の学校は、幼子にキリスト教を教えるために創立された学校で、12年間、
学んできたことを、よその大学へ行って布教することを目的としているので、
大学を設立する方針はないといった話を聞いたことがありましたが、今回は
ありませんでした。
そういえば、こういった学校から大学への進学率は、ほぼ百パーセントであ
り、東大をはじめ有名校で占められていることは、よく知られています。
しかし、だからといって、「名門大学への進学率が高いから高校までの学校
でいい」という志望理由には、賛成できません。
雙葉小学校では、進学校ではなく、そういった体制になっていないと説明会
でも強調しています。
なぜ、進学率が高いのか、教育方針やその内容をしっかりと把握する必要が
あります。
 
それから、学習院、青山学院、白百合学園、東洋英和、豊明、立教女学院
(立教大学への推薦枠が条件付ですが増えました)といったように幼稚園
から短大、大学、大学院まで、慶應義塾幼稚舎、成蹊小学校、聖心女子学
院初等科のように幼稚園はありませんが、高校、大学までといったように
一貫教育制度をとる学校があります。なお、東京女学館小学校は、大学は
25年度より募集はせず、同27年度末に廃校を発表、高校までの学校に
なります。
 
「幼稚園から大学まである学校に入れてしまえば、受験戦争は一回限りで
済む」というお母さんがいました。
幼、小、中、高、大学と、そのたびに受験することはないでしょうが、も
しそうなると受験する本人も、付き合う親も大変なのは事実です。
幼稚園受験が過熱気味なのも、こういった考えが根底にあるとすれば、そ
れは過保護ではないかと思いますが、しかし受験に費やすエネルギーはた
いへんなものですし、精神的な戦いもすさまじいものがあります。
そこを回避して、受験勉強をしない分、精神的にも、時間的にも余裕があ
るわけですから、それを学問や趣味にと考えるのは親心でしょう。
しかし、一貫教育制度は、入ってしまえば、エスカレーター式に、大学ま
で行けるという制度ではないことも忘れてはなりません。
それなりに厳しいものです。
 
幼稚園のない学校があります。
慶應義塾幼稚舎、聖心女子学院初等科(開設していた時代もあり、作家の
曽野綾子さんは卒園生の一人)、東京女学館小学校、成蹊小学校、立教小
学校には幼稚園はありません。(立教女学院短期大学附属天使園は、推薦
入学制度を導入しましたから、立教女学院小学校は幼稚園のある学校にな
りました)
四谷と田園調布の雙葉には幼稚園はありますが、横浜雙葉にはありません。
同じ系列校でありながら、調布にある桐朋小学校の方には桐朋幼稚園があ
りますが、国立にある桐朋学園小学校にはありません。
では、どうして幼稚園はないのでしょうか。
これも一つの教育方針だと考えられないでしょうか。
たとえばの話ですが、幼稚園時代から、同じ環境で保育を受けた集団より
も、違った環境で、さまざまな保育を受けてきた、いろいろな子どもを集
めて教育を始めましょう。
つまり、義務教育と同じ狙いがあるのではないでしょうか。
学校を選ぶときに、こういった制度の目的を考えてみると、建学の精神の
一端がわかるかも知れません。
 
[二]共学制度について
二番目に、「共学制度」について考えてみましょう。
共学の学校といえば、慶應義塾幼稚舎、学習院初等科、青山学院初等科、
成蹊小学校、成城学園初等学校、玉川学園小学部、桐朋小学校、桐朋学園
小学校、日出学園小学校、昭和学院小学校などで、桐朋、桐朋学園などは、
中高は別学になりますが、こういった学校を選ぶ理由としては、義務教育
は共学であり、共学が自然であることでしょう。
多くの方は、共学の経験があるはずですが、私立校へ進まれた方には、共
学の経験がないかも知れません。
男女、別学の環境で教育を受けられた方が、お子さんには共学を選ぶ理由、
これについて、しっかりと話し合ってみることです。
 
参考までに、共学のよいところ、悪いところをあげておきましょう。
良いところは、小さいときから、自然に男子は女子を、女子は男子を理解
するようになり、男子は男らしさ、女子は女らしさを身につけることがで
きます。
つまり、お互いに助け合い、特性を生かして、それぞれの領域を分担する
ことで、競争心が芽生え、負けないように頑張ることができることでしょ
う。
悪いところは、男子にやさしさが育まれる反面、男子を厳しく指導したく
ても、女子がいることで、徹底しにくい点や、女子は、言葉がきつくなり、
敬語や丁寧語があまり使われなくなるといったことでしょう。
受験に際し女子がいると学力が低下して邪魔になるといったお父さんがい
ましたが、柳眉を逆立てるお母さんがいらっしゃるかも知れませんね。
 
[三]男女別学制度について
三番目は、「別学制度」についてです。
男子では、暁星小学校、立教小学校の二校、女子では、ミッション系の学
校は、ほとんどが女子だけで、雙葉小学校、白百合学園小学校、東洋英和
女学院小学部、聖心女子学院初等科、国府台女子学院小学部などへは、毎
年、多くの応募者が集まり、高い倍率を示しています。
いずれも伝統のある学校であり、その教育方針や校風が、圧倒的に支持さ
れている証でしょう。
 
では、別学の学校の長所を考えてみましょう。
まず、なんといっても男女の特性を生かした教育ができることで、共学と
は違った意味での男らしさ、女らしさが身につき、異性がいないことから、
男子は女子に憧れる気持ちが、女子には男子を尊敬する気持ちが育まれや
すい環境にあることでしょう。
また、共学では体験できないこと、例えば、男子がする仕事を女子がしな
ければならないことから、体験の幅が豊かになるとも考えられます。
その反面、女子が、あるいは男子がいない不自然さは否めないでしょう。
また、同性同士ということから、男女がお互いに何かをすることがありま
せんから、助け合う気持ちが育ちにくく、羞恥心に欠けがちで、男の悪さ、
女の悪さが出やすい環境にあるともいえるでしょう。
 
白百合学園へ三年保育で幼稚園に入って大学まで行くと19年間、女の園
です。
田園調布雙葉も幼稚園から入ると、高校までですが、14年間、女の子だ
けです。
これについて、お父さんはどうお考えでしょうか。
模擬面接などで、ご両親に別学の経験がない場合、
「お父さん、別学についてどう思いますか」
と聞いてみると、
「私は、共学の方が自然でいいと考えていますが、家内が賛成ですから」
などとおっしゃるのですが、「それでは、共学の学校へどうぞ」となるだ
けで、適切な学校選びとはいえません。
なぜ、別学を選ぶのか、よく話し合っておくことが大切です
昨年の立教小学校の説明会では、男子に比べ女子の成長が早く、何かにつ
けて差が出るので、男子だけの方がいいといった話がありました。
そして今年は、第49号でも紹介しましたが、最近の脳科学者の話として、
脳の成長は18歳ほどで止まり、成長の遅かった男子も追いつき、小中高
は別学、大学で共学になるのは理想的な教育環境と言っていましたが、私
も幼小の子ども達を教えていた経験から理解でき、素直に納得してしまい
ました(笑)。
 
幼稚園だけが共学、幼稚園が共学というのもおかしいですが、四谷の雙葉
幼稚園には男の子がいます。
暁星幼稚園には女の子が、東洋英和幼稚園には男の子がいます。
面白いのは日本女子大学附属豊明幼稚園で、今は3年保育だけですが、女
の子が60名に対して男の子が24名います。
そこに入った男の子は、小学校は受験になります。
雙葉や暁星、英和に入った男の子、女の子は、近所にミッション系の幼稚
園がないために、無理しても通わせているケースがありますが、幼稚園の
送迎は、保護者がついていきますから、多少の無理はききます。
目的は、ミッション系の小学校へ入学させたいと考える方が多いようです。
幼稚園を選ぶ場合は、こういったことも考えておく必要があると思います。
 
梅雨に入りました。
うっとうしい毎日ですが、お母さん方の笑顔は、雰囲気を変えるものです。
家庭学習には、この気持ちが大切です、頑張ってください。
(次回は「志望校選び10のチェックポイント (2)」についてお話し
ましょう)

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