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めぇでるコラム : 2018年1月

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★[3] 話に関する問題

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        「めぇでる教育研究所」発行
    2019さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            第29号
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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前回お知らせしました第33回東京私立小学校児童作品展「ほら、できたよ」
は、1月31日(水)から2月5日(月)まで、銀座松屋で開催されます。雙
葉小学校をはじめ26校が参加しますが、今回のテーマは「喜びを色と形に」、
今年も意欲的な作品が展示されるのではと期待しています。詳しくは、ホーム
ページをご覧ください。
 
 
★★入試問題を分析する★★
[3] 話に関する問題
 
話を聞き、設問に答える問題で、「話の記憶」といわれ、ほとんどの小学校で
出題されています。
 
◆「桃太郎」の話をテープで聞いたり、ビデオで見た後、
  ・おじいさんは、どこへ、何をしに行きましたか。正しい絵に〇をつけな
   さい。
  ・桃太郎の家来に□をつけなさい。
 
こういった設問があって、10秒から20秒の間に、絵の描かれている解答用
紙に、指示された○や□などをつけて答えます。狙いは、「話を聞く姿勢と理
解する力が身についているか」、このことです。これから始まる小学校での勉
強の基本であり、最も大切な学習態度です。いくら、九九を諳んじ、難しい漢
字の読み書きができても、人の話を聞けないようでは、あまり意味がありませ
ん。学校の勉強は、幼稚園の自由保育と違って一斉授業ですから、話を聞いて
いなければ、訳がわからないことになります。話を聞く姿勢を身につけるには、
話の読み聞かせや対話が、いかに大切であるかについて、すでに触れましたの
で、ご理解いただけ、実行されていると思いますが、少し、復習しておきまし
ょう。
 
「話の記憶の問題」は、単に記憶力を見ているわけではありませんから、問題
集を買い、それだけで訓練して鍛え、身につけるものではありません。それは
本末転倒な話です。話をキチンと聞く姿勢は、普段の会話や話の読み聞かせを
通して培われるものです。一朝一夕に身につくものではなく、やはり毎日の積
み重ね、育児の結果として表れてきますから、どこの学校でも実施しているわ
けです。
 
しかし、本当に話の聞けない子がいます。その子の育てられている環境は、わ
がままな言動が許されている場合が多いものです。 かわいい、かわいいで、
子どもを悪くしています。やはり、子どもの責任ではありませんね。 
 
話の記憶の問題には、長編と短編があります。
といっても、400字詰め1枚程度から3枚ほどの長さですが、皆さんはどち
らが難しいと思いますか。短い方が記憶しやすいと思われるのではないでしょ
うか。やってみるとわかりますが、長編は物語風になっているので、案外、想
像力が働き、イメージ化しやすいようです。短編は、あっという間に終わって
しまい、想像力が働かない場合があります。あらかじめ短編であるとわかって
いれば、それなりに対処できますが、聞いてみなければわからないだけに、難
しいですね。
 
そして、やっかいなのは文字を使えませんから、文章を読み直すことも、答え
の絵に、○や△、□といった記号の指示をする設問も、聞き直すこともできま
せん。ですから、聞き逃すと答えようがないということです。さらに、クレヨ
ンで指定された色で記号をかくこともあります。子ども達は、よくぞパニック
にならないものだと、褒めてあげたくなりますね。「長文読解だな!」などと
簡単に済ませるほど、やさしい問題ではありません。 
 
普段から、お子さんとの対話を大切にし、お子さんの話に耳を傾けましょう。
対話の反対は沈黙と思いがちですが、立教小学校の元校長であった田中司先生
は、「命令と要求」とおっしゃっていました。「命令と要求」が多くなれば、
対話など成り立ちませんね。僭越ながら、非常に的を射た指摘だと思います。
 
そして、お父さん、お母さん、お子さんに読書をしている姿を見せてください。
これが何よりの手本になるからです。さらに、お子さんがいるときに、ワイド
ショーなどを見るのは止めましょう。お断りしておきますが、すべてのワイド
ショーが駄目だといっているわけではありません。お子さんと一緒のときに見
なくていいものは止めてほしいと言いたいだけです。どなたがおっしゃったの
か定かではありませんが、「テレビを見る時間と教養は反比例する」そうです
よ、内容にもよりますが。海外に住み、帰国されたお母さん方が驚かれるのは、
テレビが、あまりにも生活の中に入り込んでいることだそうです。
 
また、お子さんが読書に集中しているときは、「お使いに行きますよ!」など
と、中断することは避けてあげましょう。夢中になって取り組んでいるときこ
そ、素晴らしい学習時間になっているからです。あらかじめ伝えておく、やさ
しいお母さんになってほしいですね。
 
寝る前に本を読んであげる、これも大切です。毎日続けることで、間違いなく
言語能力を育むことができるからです。26年6月に横浜雙葉小学校は説明会
を再開しましたが、挨拶に立たれたシスター田中順子学園長は、「添い寝をし
ながら本を読んであげることが少なくなっているのではないでしょうか」と懸
念されていました。DVDなど素晴らしい作品もありますが、幼児期にはお父
さん、お母さんの生の声が、何と言っても大切なのです。
 
会話を弾ませ、話を読んであげることから「話を聞く姿勢」は身につきます。
小学校の入学試験は、文字を使用しないだけに、話を聞く姿勢が身についてい
なければどうにもなりません。
 
最後に、「話の記憶」が苦手なお子さんへ、こういったことをやってみましょう。
私が現役のときに、この方法で苦手意識を取り除くことができたからです。お
子さんがよく知っている話を使います。
 
Q「『浦島太郎』の話を知っていますか。では、先生がいくつか尋ねますから
 教えてくださいね。
 浦島太郎は、子ども達がいじめていた動物を助けてあげました。何を助けた
のですか」
A「亀さんです」
Q「そうですね。そのお礼にどこへ連れて行ってもらいましたか」
A「竜宮城です」
Q「そこにいたお姫様の名前は何といいましたか」
A「乙姫様です」
Q「鯛やひらめもいて楽しく過ごしました。そして、帰ることになりお土産を
 もらいました。何をもらったのですか」
A「玉手箱です」
Q「そのとき、浦島太郎と乙姫様は、何か約束をしましたね」
A「開けてはいけないと約束しました」
Q「そうですね。また、亀さんに送られて家に帰りましたが、両親はいました
 か」
A「いいえ、いませんでした」
Q「近所の人々やお友達はいましたか」
A「誰も知っている人はいませんでした」
Q「知っている人は誰もいない。浦島太郎は、どんな気持ちになったでしょう
 か」
A「寂しくなりました」
Q「そう、寂しくなったんだね。では、ここからが問題です。では、なぜ、
 浦島太郎は、約束を破って玉手箱を開けたのでしょうか。あなたは、どう考
 えますか」
 
いろいろな答えが出てきますが、自分の考えを言えたことを褒め、評価はしま
せん。
たとえば、「何が入っているか知りたかったから開けました」と子どもが言えば、
それを認めてあげ、「そうじゃないでしょう。寂しくなったからでしょう」など
と大人の考え方を押し付けないことです。「寂しい経験」をしなければ、この言
葉は出てきません。
 
ところで、この方式に子ども達が興味を持ち始めると大変でした。話の筋を覚
え、質問を作らなければならないからです。お母さん方にお子さんの愛読書を
聞き、質問を作ったものでした。最も苦労したのは「アルプスの少女 ハイジ」
や「フランダースの犬」で、わが子が小さい頃、テレビで見ていた記憶はありま
すが、実際に本を読んだことがなかったからです。
 
しかし、子ども達は興味を持つことで、確実に力をつけました。おかしかった
のは、子ども達は、次週に使う教材となる本を、繰り返し、繰り返し読んでも
らい、準備をしていたそうです(笑)。私も大変でしたが、お母さん方も苦労し
たようです。子ども達が夢中になって取り組んだのも、勉強ではなく「Q&A」
を、ゲーム感覚で楽しんでいたからではなかったでしょうか。こういった苦労
は、楽しい思い出となって残るだけではなく、お母さん方から、「読書の好き
な子になっています」と聞くたびに嬉しくなったものでした。受験準備は、楽
しくやりたいものです。
 
入試によく出題されていることもありますが、私のお薦めは、日本昔話です。
以前にも紹介しましたが、「桃太郎」「かちかち山」「さるかに合戦」「舌切
りすずめ」「花咲じじい」は、日本の五大昔話ですが、皆さんは粗筋を言える
でしょうか。YouTubeでわかったのですが、♪カチカチなるのは何の音♪で始
まる童謡「かちかち山」の作曲者は、瀧廉太郎でした。知りませんでしたね。
(反省)
 
ところで、鬼退治の主人公は、なぜ、栗太郎や柿太郎ではなく桃太郎なのでし
ょうか。また、家来は、「犬猿の仲」といわれる犬と猿がいるのは、なぜでし
ょうか。
命名の由来は、桃は木偏に兆と書き、桃には未来を予知し、魔を防ぐという信
仰があったため。
陰陽五行説では、鬼は丑寅の方向、鬼門に棲み、その反対側、裏鬼門に配置さ
れているのが申酉戌と考えられ、そこから知恵のある猿、勇気のある雉、仁、
思いやりのある犬の家来が生まれ、「犬猿の仲」を取り持っているのが間にい
る雉で、けんか騒ぎにならず収まっているのだそうです。聖徳太子の「和をも
って貴しとなし」の考えが、「ここにも生きているぞ!」と一人で悦に入って
います、私の勝手な想像ですが(笑)。 
面白いことに福澤諭吉は、家訓「ひゞのをしへ」の中で、「鬼の宝物を取ると
は、けしからん!」と非難しています。(ウィキぺディア フリー百科事典よ
り)
(拙著メルマガ「年中行事と昔話 第5章 ひな祭りとお彼岸ですね」より)
 
(次回は、「数量に関する問題(1)」についてお話しましょう)

さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>独り立ちの準備(4)家事、やらせなさい(2)

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         「めぇでる教育研究所」発行
   「2019さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>」
            第12
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(4)家事、やらせなさい(2)
 
名門の小学校の入学試験には、親子で受ける面接試験がありますが、まだ、お
子さんは小さいですから、質問の内容も簡単なものです。
 
ある小学校の面接試験で、
「お母さんの得意なお料理はなんですか」
と聞かれたお嬢さんが、こう答えたそうです。
「電子レンジでチーンするカレーです」
レトルト食品、おいしくなりましたから一概には言えませんが、それでも手を
抜いていると、こんなことになりかねません。
そして、志望理由を聞かれたお母さんが、
「御校の手作りの教育に賛同いたしまして受験させていただきました」
と答えたそうで、先生方も驚かれたのではないでしょうか。
しかし、笑えません。
お母さんは、真剣に、真面目な顔をして答えたそうですから。
 
料理は、材料を揃えることから手際よい手順、味付けまで、大変な作業です。
楽しく台所の仕事に取り組む姿を見せてあげましょう。
女の子には、とても大切なお手本です。
ままごと遊びが始まると、お子さんの鋭い観察眼に驚くことがあります。
お手本は、お母さん自身になっているからです。
年齢にふさわしい家事に参加させ、お手伝いさせるのは、とても大事なことで
す。
出来ることから、無理なくさせてみましょう。
 
何かと物議をかもし出す給食廃止問題。
こういったことはないと思いますが、もし、お母さんが、弁当を全く作ったこ
とがなかったとしたら、子どもも親になったときには、弁当を作らないでしょ
う。
しかし、お母さんの弁当が楽しみだった経験があれば、作ります。
この差ではないでしょうか。
この弁当作りは、毎日のことですから、本当に大変です。
書店に行くと弁当の献立に関する本が、たくさんあることからもわかります。
お母さんが、
「お弁当、おいしかった?」
などと聞かなくても、子どもは、いろいろなことを学んでいます。
献立の苦心、食べる本人が、一番よく知っているからです。
お母さんの真心、絶対に通じています。
男の勝手な思い込みかもしれませんが、おふくろの味は、無償の愛ではないで
しょうか。
1940年生まれの私でさえ、戦後の食料のない時代であったにもかかわらず、
母親の作ってくれた、貧しい弁当の味をしっかりと覚えています。
 
話は変わりますが、横浜雙葉小学校の入学試験に、お弁当を食べる時間があり
ます。
入学試験に、です。
何を見ているのでしょう。
はしの持ち方から食事のマナーまで、みんなわかります。
もちろん、お母さんの料理の腕前も。
しかし、いくら腕前がよくても骨や野菜の食べられないものが残るのと、食べ
やすい大きさに作った、食べかすが残らない弁当では、どちらがいいでしょう
か。
コンビニエンス・ストアで買って間に合わせるお母さんは、いないと信じます
が、当世気質では、疑問の余地ありかもしれませんね。
 
やはり、弁当は、愛情です。
多くの方が目指される幼稚園、暁星幼稚園、雙葉小学校附属幼稚園、白百合学
園幼稚園、東洋英和幼稚園、田園調布雙葉小学校附属幼稚園、日本女子大学附
属豊明幼稚園、青山学院幼稚園、学習院幼稚園、成城学園幼稚園などは、すべ
て給食なしで、弁当です。
なぜでしょう。
 
制服のない幼稚園もあります。
味覚と同じように、服装のセンスも、小さいときから身につくのではないでし
ょうか。
昔のように、服を作ってあげなさいとは言いません。
しかし、ブランド製品で着せ飾るのは、お母さんの趣味でしょう。
でも、センスが悪いと、そのまま受け継ぎます。
 
こういう子もいます。
着ているもの全部、高級ブランド品です。
しかし、古い言葉ですが、中身は大和撫子です。
でも、今の若い子たち、読めるでしょうか。
「ダイワブシ」などと読まれたら、日本の国籍を返上してもらいたくなります。
しかし、心は育つのでしょうか。
高いのでしょ、ああいうのは。
プライドだけ高くなりませんか。
心は、形に現れるといいますけれど……。
金銭感覚は、どうなるのでしょう。
「ぜいたくは敵」にも「消費は美徳」にも戻りたくありません。
でも、
「これ、イブ・サン・ローランよ、おじちゃん!」
「……?」
返事のしようがないです、私の世代では。
 
女子大といえば、国立ではお茶の水女子大、私立では日本女子大が思い浮かぶ
方が多いと思われますが、その日本女子大学附属豊明幼稚園には、制服はあり
ません。
制服にあこがれて受験をする女の子がいるといわれるほど魅力のあるものだと
いわれているのですが、なぜでしょうか。
「女子を婦人として教育する」学校の附属幼稚園が、です……。
保育の方針も、他の幼稚園が一斉保育をやっていたときから自由保育です。
個性の尊重ということでしょうか。
 
 
話は変わりますが、制服は、全員一緒、「何事もみなさんで、全員集合!」と
いった雰囲気がありませんか。
日本人は、団体行動が好きです。
集団では、すごい力を発揮します。
企業戦士という集団になると、ものすごいことをやります。
だから、日本の企業は栄えたのでした。
ところが不景気になると、情け容赦なく、リストラでお役ご免となり、会社は
赤の他人になります。
終身雇用制度は、幻の制度となりつつあるようです。
「あんなに会社のために働いたのに……!」
お父さんの愚痴、お母さんと似ていませんか。
「手塩にかけて育ててあげたのに……!」
ご主人の仕事も、ご両親の育児も、これだけはさけたいものです。
 
服装のセンスは、味覚のセンスとともに、小さい時に、きちんとお子さんに伝
えなさいということではないでしょうか。
繰り返しますが、お手本はお母さんです。
これも大事だと思います。
「お母さんの作ってくれるお料理で好きなものは何ですか」
「お味噌汁です」
模擬面接で、こう答えた女の子のうれしそうな顔と、笑顔で応えていたお母さ
んの姿を忘れることができません。
面接で大切なのは、かっこいい受け答えではなく、こういった家庭の雰囲気、
育児の姿勢が、自然と現れるところにあることを記憶しておいていただきたい
と思います。
 
余談になりますが、豊明小学校は学童保育、アフタースクールを実施し、お仕
事を持つお母さん方から好評を得ているようですし、2月7日には、初めて
「幼児教室対象学校説明会」を開催します。聖心女子学院初等科もアフタース
クールを始めましたが、私学の経営方針にも変化が現れてきたようです。
 
来週は節分です。孫が3歳のときでしたが、「パパが、お鬼の面をかぶって出
てきたら、怖がって泣き出してしまいました」と長女は笑いながら電話をよこ
したことを思い出します。若い皆さん方は、豆まきをしなかったのではないで
しょうか。子どもの頃は、「物より思い出」が大切です。お父さん、頑張って
ください!
 
(次回は、独り立ちの準備(5)知識を詰め込むより情操教育です、につい
 てお話しましょう)

さわやかお受験のススメ<保護者編>第3章(3)何といってもお正月ですね【一月に読んであげたい本】

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2019さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第12号-
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第3章(3)何と言っても正月ですね     
【一月に読んであげたい本】        
 
前回お知らせしました、第33回東京私立小学校児童作品展「ほら、できたよ」
は、1月31日(水)から2月5日(月)まで銀座松屋で開催されます。参加
校は雙葉小学校をはじめ26校、今回のテーマは「喜びを色と形に」、今年も
意欲的な作品が期待できそうです。詳しくはホームページご覧ください。
 
雪は降りませんでしたが、寒い日が続いています。今朝、起きた時、寒暖計を
見ると、何と2度しかありません。風邪が流行っているようです。お子さんに
手洗いとうがいを励行するように心がけましょう。難しいですが、習慣になれ
ば黙ってもやるようになります。
 
正月に関するむかし話は、たくさんありますが、この話は欠かせないでしょう。
「子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥」の十二支のことで、こ
れを決めた事の次第を話にしたものですが、いたちが出てくるとは知りません
でした。      
 
 
◆十二支のはじまり   小沢 重雄 著
 
「元旦の朝、新年のあいさつにきた順番に、その動物の年にして、人間世界を
守らせてやる。ただし、一番から十二番まで」と神様からのお触れが出て、動
物たちは大喜び。ところが、ねこは、その日を忘れてしまい、運良く、本当は
運悪くですが、会ったねずみに、二日目の朝だと嘘をつかれます。計られたと
も知らずに、ねこは神様のお住まいになる御殿の門を叩いたのですが、「十二
支は決まった。寝ぼけていないで、顔でも洗ってこい!」
と神様に怒られ、だまされたと気づいたのです。それからというもの、ねこは
寝ぼけないように、いつでも顔を洗うようになり、嘘を教えたねずみを追いか
けるようになったのでした。            
 ところが、ねこの他にも十二支に入れなかった動物がいました。いたちです。
お触れがこなかったから、やり直してほしいと申し立てをします。手を焼いた
神様でしたが、名案を考え出します。
「一年に十二日だけ、おまえの日にしてあげよう。月の始めは縁起のいい日だ
から。ただし、『いたちの日』とすると、他の動物が騒ぎだすから、頭に「つ」
をつけることにしよう。数をいうときには、一つ、二つと、必ず『つ』をつけ
る大切な字だから」と提案をします。
「つ、いたちですか?」
「いや、いや、『つ、いたち』では、わかってしまうから、『ついたち』と続
けていうことにしよう」と説得され、月の初めを「ついたち」と呼ぶようにな
ったのです。
 
 一月のおはなし
  ねこの正月 松谷 みよ子/吉沢 和夫 監修  日本民話の会 編
  国土社 刊    
                                                                            
12月にもお話しましたが、朔日(ついたち)は、月立(つきたち)の音便で、
こもっていた月が出はじめる意味からできた言葉ですが、これを読んだとき、
しばらく笑いが止まりませんでした。神様といたちのやりとりが、本当におか
しいのです。しかも、場所は図書館でしたから、困りはてた様子をご想像くだ
さい。
                        
5、6歳の子どもにとって、一日から十日までと、十四日、二十日、二十四日
は、漢字の音読みと訓読みが、入り混じっていますから覚えるのも難しく、き
ちんといえる子はあまりいません。一日は、これで覚えられますね。二十日は、
「二十日ネズミは二十日間しか生きられないから二十日ネズミというんだよ」
と、得意そうに教えてくれた子がいましたが、真相は定かではありませんけれ
ど、これで覚えられるでしょう。(※実際には妊娠期間が20日だそうです
 <編集者注>)       
 
ところで、かつて小学校1年生の子どもが、この読み方を歌にしたものがある
といって歌ってくれましたが、実にうまくできていて、これで簡単に覚えられ
ます。題名を思い出せなかったのですが、何でもありのYouTubeで見つけまし
た。「日付の歌」でクリックすると、2曲続けて出てきました。歌詞の紹介で
「とおか」が「とうか」となっていましたが、よく間違える仮名遣いで、1年
生の時に習います。「遠くの、大きな、氷の上を、多くの、狼が、十ずつ、
通った」は全部「お」と子どもの頃に習ったと、“YAHOO! JAPAN 知恵袋”に
出ていました。やはり、間違えやすいんですね(笑)。
 
日付の歌
♪いちは「ついたち」には「ふつか」 さんは「みっか」でよんは「よっか」 
ごは「いつか」ろくは「むいか」 ななは「なのか」はちは「ようか」     
きゅうは「ここのか」じゅうは「とおか」 にじゅうは「はつか」♪
 
“Days of the month in Japanese”
♪ついたち ふつか みっか よっか いつか
 むいか なのか ようか ここのか とおか
 じゅうよっか じゅうくにち はつかは私の誕生日♪
(少し省略しています)
 
「日付の歌」は、スローテンポで二十日までの入門編。リズミカルに歌うのが、
“Days of the month in Japanese”で、子どもが歌ってくれたのはこれだと
思います。少し難しいかなと思いましたが、子ども達は、興味があれば、すぐ
に覚えてしまうものです。苦手なようでしたら、「日付の歌」で検索してみま
しょう。
 
正月といえば、欠かせないのは七福神でしょう。この話には、神様一人ひとり
の紹介はありませんが、七福神の話です。これと似た話で、大晦日に長者に宿
を断られた乞食が、貧乏人の家に泊めてもらい、そのお礼に若水をもらい若返
った話を聞いた長者が、乞食を無理やり泊まらせ若水を強要し、あまり欲張っ
たために猿になった話や、赤ん坊になってしまうのもあります。暮れから正月
の話ですが、七福神の登場ということで、一月の話にしました。
(注 若水…縁起を祝って、元日の朝早く汲む水。古くは立春の日に汲んだも
の)
 
 
◆正月の神さん   渋谷 勲 著
 
 ある年の大晦日に、貧乏なじいさまの家へ、七人の旅人が来て、笠を貸して
ほしいというので、家中、探したのですが六人分しかなく、大事にしまってい
たご祝儀用の合羽を貸したのでした。
 それから一年たった大晦日の晩のことです。今年も年越しのご馳走の用意が
できずに、白湯を呑んでいると、急に騒がしくなり、あの七人の旅人が入って
きたではありませんか。実は、旅人は神様で、笠のお礼にきたのでした。打出
の小槌から、米や魚やら二人の欲しいものが何でも出て、寝る場所もなくなる
ほどです。もっと欲しいものはないかという神様に、「もう少し若ければ、子
どもを授かりたいものだ」とおばあさんはいいました。すると神様は、「明日
は、元旦だ。目が覚めたら、二人そろってあいさつをしなさい」といって帰っ
たのです。        
 元旦の朝、目を覚ました二人は、「おめでとう」とあいさつをすると、十七、
八のいい若者になり、それからというもの、何人もの子宝に恵まれて一生、安
穏に暮らしたのでした。
  
  一月のおはなし                        
   ねこの正月 松谷みよ子/吉沢和夫 監修 日本民話の会・編
   国土社 刊
 
七福とは、「仁王経」(仁王護国般若波羅蜜経)の「七難即滅して七福即生す」
に由来するものといわれ、江戸時代を築いた徳川家康が、七福によって天下を
統一したとして、家康の相談役・天海僧正が、神仏の七徳を崇めるようにと七
福神信仰を勧めたため、江戸時代に流行したものです。     
ちなみに、七徳とは、恵比寿の清廉、大黒の有徳、弁財天の愛敬、毘沙門天の
威光、福禄寿の人望、寿老人の長寿、布袋の大量(心が広いこと)をいいます。
 
ところで、七福神の国籍(?)を調べてみると、恵比寿は日本の神道、大黒天
と毘沙門天はインドの仏教、弁財天はインドのヒンドゥー教、そして布袋、寿
老人、福禄寿は中国の道教から生まれた神様なのです。
異教の神様や仏様を、いくら「呉越同舟」(呉・越、共に中国は春秋十二国の
一つで、互いによく争ったことから、仲の悪いもの同士が一所にいること)の
四字熟語があるからといって、同じ船にお乗せして問題が起こらないのでしょ
うか。キリスト教など他の宗教では考えられないことです。「融通無碍(ゆう
ずうむげ)考え方や行動が、何事にもとらわれず自由であること」というので
しょうか、本当に、日本人らしいですね。
 
昔は、帆掛け船に乗った七福神の絵を枕の下にしいて、いい夢を見たそうです
が、私もそのようにした記憶はありませんから、かなり前の話のようです。そ
の夢ですが、正月というと、これも忘れられませんね、初夢です。初夢は室町
時代には、除夜から元旦にかけて見る夢でした。それが江戸時代の中頃から、
除夜は起き明かす習慣となり、元旦の夜に見る夢となっていましたが、「すべ
ての事始めは二日」ということから、今では二日の夜に見る夢となったのです。
これも、一つ紹介しておかないといけないでしょう。
 
 
◆ゆめみこぞう   渋谷 薫 著
 
 ある長者のところに、風呂たきをしている、灰坊と呼ばれる若者がいました。
ある正月の二日の晩、灰坊は、よい夢を見たのです。その夢を長者が買おうと
いいますが、灰坊は売りません。怒った長者は下男に命じ、灰坊を縛り上げて
木箱の中へ詰め、海に投げ込んでしまいました。
 二十一日間、波に揺られて着いたところは、鬼が島。鬼の親方に食べられる
前に、海に流されたわけを聞かれ、その話をすると、親方が、その夢をくれれ
ば食わないで、家に返してやるという。断ると、三つの宝物、刺すと死ぬ死に
針、死人を生き返せる生き針、千里を一飛びする千里車と交換しないかと灰坊
の前に置いたのですが、灰坊が「本物か?」
と疑わしそうにいうと、試してみるがよいと腕を出したので、灰坊は、その腕
に死に針を刺して殺し、生き針を持って千里車に乗り、鬼が島を脱出したので
す。
 着いたところが、ある村の観音さまのお堂。休んでいると、お参りに来た人
達が、朝日長者の十七になる娘が死んだと話しているのです。それを聞いた灰
坊は、長者の家にかけつけ、「死んだ者を生き返す、日本一のお医者さま! 
死んだ者は、おらんかなー!」と大声で叫びます。直ぐに死んだ娘の座敷に案
内され、人払いをしてもらい、生き針を娘に刺してみると、生き返ったのです。
喜んだ長者は、婿になってほしいと頼み込み、灰坊は朝日長者の娘婿になった
のです。これこそ灰坊が、見た夢、そのものだったのです。
 
 一月のおはなし
  ねこの正月 松谷みよ子/吉沢和夫監修 日本民話の会・編
  国土社 刊
 
正月ですから、ご祝儀を一つ。
これも、むかし話の定番ですが、継母の子どもいじめです。「親になるにもラ
イセンスが必要」とおっしゃった方がいるそうですが、幼子への虐待は、親と
いえども許されることではありません。ましてや親の手にかかり殺される子は、
どんな気持ちでこの世を去ったのでしょう。殺人犯は、実の親なのですから…
…。また、ごく普通の家庭でも、父親は女の子に、母親は男の子に甘くなりが
ちです。子どもは、小さい目で、しっかり見ていることを忘れないでほしいも
のです。
 
話に出てくる季節の変わる様子は、古い話で恐縮ですが、高校時代に観た映画、
マルシャークの「森は生きている」を思い出します。気まぐれな女王が、真冬
に4月の花であるマツユキソウをほしいといい、継母の言いつけで吹雪の森へ
行き、12の月の妖精たちに出会う話となっています。これと同じような話が、
スロバキアの民謡に「マルーシカと12の月」があります。こういった話を聞
くたびに、人間の考えることは「同じなんだな」と、しみじみと嬉しくなりま
す。
 
 
◆六月のむすこ   松谷 みよ子 著 
 
 むかし、あるところに母親と二人の娘がいて、妹は実の子、姉はまま子でし
た。ある年の正月、妹はいちごを食べたいといいます。母親も取り合わなかっ
たのですが、わがままに育てられていますから押し切られ、姉は取ってこいと
かごを背負わされて、山へ向かいますが、いちごなどあるわけがありません。
 途方にくれていると、白いひげのじいさまと会い、訳を聞いてくれ、あたた
かい感じのする家に案内されたのでした。いろりの前に姉を座らせ、この家に
一月から十二月まで、十二の月の兄弟と住んでいて、どの息子も自分の月を呼
び出せるといい、声をかけると、奥から一人の若者が出てきたのです。訳を話
すと、今は一月、私の出る番の六月まで、一月から五月までの五人の兄弟の助
けが必要だという。再び声をかけると、五人の若者が現れ、みんな外へ出たの
です。すると雪がとけ、あたたかな日がさし、土が姿を見せ、草や木の芽がも
え、花が咲き、小鳥は歌い、いちごが実ったのです。かごいっぱいに摘んだの
を見たじいさまに、「雪が降らない内に帰りなさい」といわれ、走るように山
を下った後から雪が降りはじめ、ふもとに着くと山は、もとの銀世界でした。
 家に帰ると、二人でいちごを瞬く間に食べたばかりか、妹はもっと食べたい
と泣きわめき、母親は殿さまにあげればご褒美にありつけたと悔しがり、再び
山へ行けというのです。
姉は不思議なじいさまとの出会いを話し、二度は無理だというのですが、「い
うことを聞けんのか!」と怒り狂っていましたが、急に気が変わり、二人でじ
いさまに会ってくると出かける準備をはじめます。姉は必死に止めましたが、
大きなかごを背負い山へ出かけたきり、二度と戻って来ませんでした。
 
 日本むかしばなし 18
  まほうをとくむすめ 民話の研究会編 櫓良良春 絵  ポプラ社 刊
 
最近、継母という言葉は余り聞かないようになりましたが、幼児虐待の話はよ
く聞きます。
それも、育児に一所懸命なお母さんが虐待しがちだと聞くと、救いがありませ
ん。四六時中、お子さんと顔を合わせていますから、あまりのわからず屋にカ
ッとなる時もあるでしょう、わかります。しかし、そこが我慢のしどころです。
育児には、「耐えて、忍ばなければならない時期」があります。心の傷は間違
いなく子どもの心に残り、それを背負って生きていくものです。子育ては、
「育児」しながら「育自」することです。お母さん方は、自力で自身を成長さ
せなくて、誰がさせてくれますか。誰も、力を、機会を与えてくれません。
その教材が、お子さんと考えてはいかがでしょうか。お子さんは、ご両親で作
る環境でしか育ちません。ご両親が心を一つにして育児に専念するのは、幼児
期だけではないでしょうか。子どもは授かりものです。授からない人も、多く
いることを考えてみましょう。
そして、ご自身を育ててくれたご両親、特にお母さん方は、同じ苦労をしてき
たことを思い起こすべきで、この気持ちを忘れないことが大切ではないでしょ
うか。
 
「七草」に関する話が「御伽草紙」にあります。若いときは、とかく親のこと
など考えないものです。だから「今の若い者は」などと口幅ったいことは言い
ません。しかし、「親孝行、したいときには親はなし」……実感しています。
 
この「御伽草紙」には、「鉢かつぎ」「酒呑童子」「浦島太郎」「ものぐさ太
郎」など子どもの頃に聞いた懐かしい話が入っています。中でも傑作なのは
「猫の草紙」で、昔は猫も首輪をされていたそうです。ところが、「首輪をし
てはならぬ」とのお触れが出て、それまで自由に走り回っていたねずみは、猫
に捕まり食い殺される恐怖の世界に一変するのです。
「十二支の始まり」と同様、猫とねずみの因果関係を納得させられる話です。
原文を読むのは少し面倒ですが、図書館の子どもの部屋には、小学生から中学
生向きに書き直されたものがあり気軽に読めます。現代人が忘れかけているも
のがたくさんありますが、ロマンも、その一つではないでしょうか。
 
 
◆七草草紙 北畠 八穂 著
 
 正月七日に七草がゆを食べる習慣になったのは、唐国(中国)の楚の国のそ
ばに住んでいた、大しゅうという人が始めたものだそうです。大しゅうの両親
は百歳をこえ、腰は曲がり、目も耳も悪くなるばかり。そこで、両親を若くし
たいと、天地の神仏に二十一日間、祈ったのでした。すると、二十一日目の夕
方、帝釈天王が現れ、若返りの秘訣を授けてくれたのです。それは須弥山(し
ゅみせん 仏教でいう世界の中心にそびえ立つ高山のこと)に棲む白鵞鳥が八
千年も生きるのは、春に七色の草を集めて食べるからで、その白鵞鳥の命を両
親の命にしてあげようと、摘んでくる七草の種類、たたく順序、時間など秘薬
にする方法を授けたのです。大しゅうは、七草を集め、六日の夕方からたたき
だし、七日の朝に飲ませると、両親は若さを取り戻したのでした。この話が帝
にも届き、褒美として広い土地をあたえ、殿さまにしたのです。それから正月
七日に七草を帝へ差しあげることになったそうです。このように親に心を尽く
す人には、天の幸いが授かるのです。 
 
 御伽草子  古典文学全集 13 ポプラ社 刊
 
元旦に井戸から水を汲み年神様に供えた「若水」、これを飲むと1年中の邪気
を払うといわれたしきたりも姿を消したようですね。飲料水を井戸から汲むこ
ともなくなったのではないでしょうか。
 
来週は節分ですね。お父さん、大きな声を出して、元気いっぱいに豆まきをし
ましょう。最近、やらない家庭が増えているようですが、お子さんには、楽し
い思い出になります。幼稚園や保育園で、節分の話を聞いているはずです。小
さな夢を育ててあげましょう。
 
(次回は、「第4章 豆まき、節分でしょう」についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★[2] 言語に関する問題 (1)

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        「めぇでる教育研究所」発行
    2019さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            第28号
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★入試問題を分析する★★
[2] 言語に関する問題 (1)  
 
毎年、松屋銀座で開催されている「東京私立小学校児童作品展」、今年は1月
31日(水)から2月5日(月)に行われると松屋のホームページに出ていま
した。毎年、意欲的な作品が多く展示され、各校の教育方針の一端を伺うこと
もできます。間もなく主催者側から「今年のテーマ」などが公表されますから、
参加されてはいかがでしょうか。
 
言語に関する問題は、面接、お話作り、類似差異、しりとり、同頭語や同尾語、
反対語、復唱、逆唱、同音異義語、拗音、促音、長音など発音の問題と、言葉
に関するだけに、広範囲にわたっています。
 
[面 接]
親も参加する面接ではなく、制作や絵を描いているテストの中で、 
「お名前を教えてください」
「住んでいるところと、電話番号を教えてください」
といった質問があります。
 
面白い話を聞きました。
名前を聞かれた子が、
「私の名前は、○○イチロウと申します」     
普段、子どもがこのように言うわけはありませんから、先生は、びっくりした
そうです。
教え込むと、こういった不自然な言葉遣いになりがちですね。
 
しかし、本当に話せない子ども達がいます。 
親子の会話が、弾んでいないのでしょうね。言葉は使わなくては、肝心なとき
に役に立ちません。お母さんが一方的に話さずに聞き手に回りましょう。お子
さんに話をさせることです。
「うちの子は、口が重いのですよ」とおっしゃるお母さん方は、「こうなんで
しょう」「ああいうことなのね」と、お子さんが口を開く前に先回りをして、
話をしきっている場合が多いのではないでしょうか。
聞くことの上手なお母さんは、話上手な子を育てます。
 
緊張して話せない場合は、先生方も無理に話しかけません。雰囲気になれるま
で待ってくれるようですが、限度がありますから、尋ねられた場合は、自分の
思っていることを恥ずかしがらずに話すことを教えてください。
「こんなことを言うと笑われるかな」と思っている子ども達が、案外、多いも
のです。
「そんなことはありませんよ」と自信を持たせることです。
 
 
[お話作り] 
 ★この絵を見て、どんなことを考えますか。お話してください。
 ★この3枚の絵を順番に並べて、お話を作り、先生に話してください。
 ★「電車」「お父さん」「新聞」の三つの言葉を使って、お話を作っ
  てください。
 
これも難しいですね、絵を見て話を作るからです。
話の内容から、お子さんの情緒の発達状況もわかります。
以前にもお話しましたが、未分化であった「喜び」「愛情」「恐れ」「心配」
「怒り」といった情緒が分化する時期だからです。
ダンボールに入れて捨てられている子猫の絵を見て、子どもはどう思うでしょ
うか。
これは情緒の分野ですから、大人の思惑を押し付けずに、子どもの感性に心を
傾けることが大切です。
 
私の現役時代、かなり前の話ですが、この問題の指導には手を焼きました。
月齢の差が激しく出る時期でもありますから、子ども自身の発想を引き出すの
は、本当に難しいですね。
ある国立大学附属小学校で作文の時間に、「『お母さん、あのね!』と、お母
さんに話しかけるように書きましょう」と指導している話を聞き、早速、取り
入れたのですが、これは効果がありました。
お母さんに話しかける気持ちで作ると、話を聞いてくれる対象が決まりますか
らリラックスでき、何を伝えたいかを考え、発想も豊かになるようです。
もちろん、「お父さん、あのね!」でも、同じ効果を発揮します。
 
大人もそうですが、経験していないことはわかりません。それでも大人は、今
まで積んできたよく似たような経験や、本などで読んだことなどから想像して、
何とか答えられます。
しかし、子どもは、まだ経験の範囲も狭く、読書量も少ないですから、おかし
な話になりがちです。そこでお母さんが教え込むと、大人の考えが顔を出して
いる話になりがちです。
「いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのようにというように、筋道立て
て作らなければいけないのでしょうか」などとおっしゃるお母さん方がいます
が、まだ、幼児には無理な注文です。小学校でも、高学年にならないとできま
せんし、そんなことを強制していると、国語の嫌いな子になります。
国語は、すべての勉強の基礎ですから、大変なことになりかねません。
こういった鋳型にはめ込むようなことを無理強いしても、子どもらしい発想は、
湧き上がってきません。お子さんの感性を大切にしてあげましょう。  
しかし、どう考えても妥当でないと思える場合は、全部、否定するのではなく、
お子さんの話をよく考えてあげ、修正することが大切です。
認めてあげることでやる気を起こさせ、そこから子どもの力は伸びていくから
です。                                 
 
問題集を買って、「話づくりのテクニック」なるものを教え込む前に、やるべ
きことがあります。 
本をたくさん読んであげ、子どもの話に耳を傾けることです。
そして、身の周りのことに、こだわりましょう。
花瓶にいけてある季節折々の花、道端に咲くたんぽぽの花、投げ捨てられた空
き缶1個からでも、話を作るきっかけになります。
「これ、どう思う?」
一緒に考えて、思ったこと、感じたことを話し合うことも大切です。
とにかく、言葉は使わなければどうにもなりません。
しかし、遊びの感覚で取り組まなくては、子どもは嫌がります。
お母さんの顔をチラッチラッと見ながら話すようでは、止めましょう。
お母さんの期待する話に展開しないため、不満気な顔になっているはずだから
です。
 
最近は、「話を聞き、どう感じたか」、「その後の展開はどうなるか」といっ
たことを話したり、絵で表現し、描いた絵について質問をされたり、みんなの
前で発表するなどの試験も行われています。
ある年の慶應義塾幼稚舎で、ドラえもんの縫いぐるみを着た先生が、水色のド
アの前に来て、ドアを開け、「行きたいところの絵を描きなさい!」といった
試験がありました。「どこでもドア」ですが、学校側は、何を評価したかった
のでしょうか。
 
絵は、心で感じたことを表したものですから、言葉で表現できるはずです。一
枚の絵から、どんな世界が表現されてくるか、耳を傾けましょう。また、絵を
描かせるのは、絵の巧拙だけを見ているのではありません。どう感じたか、感
性の世界です。感性は、体験を積み重ねて育まれたものであることを忘れては
ならないでしょう。         
オーバーかもしれませんが、特定のテーマに関し肯定側と否定側に分かれ行う
議論、ディベートの苦手な私達日本人は、小さい頃から、こういった経験が少
ないことにも原因があるのではないでしょうか。
 
 
[類似差異の問題]
 ★「チューリップと桜を比べて、似ているところと違うところを先生
  に教えてください」
       
何回もお話しましたが、幼児の頭の働きは、ものを見て、比べ、同じところ、
違うところを見つけることから始まります。
大人の観察力と違っているところがあります。チューリップと桜では、大人は
木に咲く花、球根から育つ、花の大きさなど目で見えるものなど、理科の領域
内で考えます。
 
こういう子がいました。
「チューリップは、『親指姫』のお話に出てきて、桜は、『花さかじいさん』
に出てくるから、話に出てくるところが同じです」
童話の世界です、いいではありませんか。
 
「チューリップは食べられませんが、桜は食べられます」
桜餅のことで、食文化の世界です。食べたときの食感が残っていたのでしょう。
桜の葉は、何ともいえない香りが、ほのかにします。
また、落ち葉にも、同じような香りが残っていますが、この子は、それを知っ
ていたのでしょう。おそらく、落葉の頃に、公園で拾った桜の葉の匂いをかい
だのかも知れません。    
好奇心と観察力をほめてあげるべきです。こういう発想は、頭が堅くなった大
人には無理でしょう。これで、いいわけです。     
「子どもが考えて、自分の言葉で発表できる」、これは素晴らしいことです。
そして話を聞き、なるほどとうなずける内容であれば、正解と認めてあげまし
ょう。     
しかし、塩化ビニールの葉っぱでくるまれた桜餅では、こういった発想は生ま
れませんね。          
また、落ち込みそうです。
 
この問題は、自分の考えを言葉で表現しますから、やるべきです。お母さんと
二人でできます。ただし、教え込まないことです。子どもの発想を無視せずに、
きちんと聞いてあげることです。そして、子どもの考え方に妥当性があれば、
それで正解です。しかし、「これはおかしい」と思う場合は、やさしく訂正し
てあげましょう。
 
かつて、アメリカでベストセラーになった「人生で必要な知恵はすべて幼稚園
の砂場で学んだ」(河出書房新社 刊)の第1章 私の生活信条[クレド](19
ページ)に、こう書いてあります。
 
 「『不思議だな』と思う気持ちを大切にすること。(中略)デイックとジェ
  ーンを主人公にした子供の本で最初に覚えた言葉を思い出そう。何よりも
  大切な意味を持つ言葉。“見てごらん”」(“  ”は引用者)
 
「見て(自然に目に入るseeではなく意識して見るwatch)、考え、そして類似
と差異に気づくこと」、こういった感性を大切に育んであげたいものです。
 
 
 (次回は、「言語に関する問題(2)についてお話ししましょう)

さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>独り立ちの準備(4)家事、やらせなさい(1)

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         「めぇでる教育研究所」発行
   「2019さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>」
            第11
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(4)家事、やらせなさい(1)
 
3歳過ぎから旺盛になってくる好奇心、これを上手に利用したいものです。
女の子は、お母さんのお手伝いを始めます。
手伝わせましょう。
 
洗濯物などを一緒にたたみ、自分の物をしまわせる、女の子はやります。
しかも、楽しそうです。
台所にも、顔を出します。
包丁を使っていると、やりたそうに見ているでしょう。
一人で包丁を持たせるのは危険です。
しかし、興味を持ったときがチャンスです。
3歳になれば、はしを使って食事をし、はさみも使えるようになります。
かなり、手先も器用になるものです。
子ども用の包丁があります。
それで練習すれば、いいのではないでしょうか。
禁止や命令だけ出していると、お母さんのいないときに、そっとやります。
 
果物などを洗わせるのも、いいでしょう。
これなら男の子もやりたがります。
いちごやみかんは、水に浮くのはわかるのですが、かぼちゃは、沈むはずだと
思っている子、います。
すいかなどは、絶対に浮かないと言い張ります。
見た経験がないからです。
私の子どもの頃は、冷蔵庫といっても、今のように電気で冷やすのではなく、
氷の冷気で冷やしていました。
氷が溶けてしまうと、温蔵庫に代わる不思議な代物です。
そういった冷蔵庫でも高根の花、贅沢品でしたから、縄でしばって井戸に放り
込んで冷やしていたので、すいかは沈まないものだと知っていました。
今は、すいかを丸ごと一個買うでしょうか。
半分か四分の一でしょう。
水に浮かばせる機会もありません。
 
名門小学校の入学試験に、こんな問題があります。
水槽の中に、いろいろなものが浮かんだり沈んだりしている絵があって、その
中でおかしいものに×をつける問題です。
年長さんでさえ、沈んでいるすいかを見ても、不思議に思わない子がいます。
こういったことを、入学試験用の問題集を買って、机の上で教えるのですから、
子どもも大変です。
こんなことばかりやっていると、暗記することが勉強だと思わないでしょうか。
この種の問題は、一回見せてあげれば理解できます。
学校側も、知識として知っているかを見ているわけではないでしょう。
生活体験です。
家事の手伝いをしていると、こういう経験をするはずです。
そこを見ていると思います。
 
「受験用の知識や礼儀作法なるものを泥縄式に詰め込んで、『受験準備、事足
れり』とお考えでしたら、それは誤りであることに気づいてほしい」
とある名門小学校の校長先生が、学校説明会でおっしゃっていました。
やがて皆さんも、入園説明会へ足を運ぶことになりますが、多いところでは、
何と五百名以上のご父母が集まります。
「泥縄式、その言やよし」ですね。
泥棒を捕まえてから、縛る縄をなうのですから、後手、後手です。
こんなことして、合格するわけはありません。
いろいろなことを泥縄式にさせられて、困るのはお子さん自身です。
受験のためではなく、ご両親は信念を持ってお子さんを育てることが大切です。
 
ところで、お手伝いでも、上手にできない場合があります。
たとえば、ガラスのコップをテーブルの上に運んでいる時に、落として割った
とします。
お母さんは、どうしますか。
「危ないから、じっとしていなさい!」
第一声は、これでしょう。
子どもは、びっくりしています。
やさしく言わないと、こんな時、何をするかわからないのが子どもです。
頭の中は真っ白になっていますから、何はさておき、じっとさせることですね。
手早く割れたコップの破片を取り除き、後始末です。
それから、落とした原因を聞きます。
子どもなりに考えます。
「ぬれていたので、すべってしまったの!」
それもあるでしょう、いろいろあります。
それで、いいのです。
考えることで、次に同じ失敗をしなければ、いいのですから。
 
駄目なお母さんは、ここで怒ります。
「ちゃんと持たないと駄目だと言っているでしょう、何を聞いているの、この
子は!」
「この子は」は、余計です。
駄目押ししているのです。
顔も、キッチリ駄目を出しているのですから、子どもは恐がっています。
こうやってしまっては、もう手を出さなくなります。
意欲をなくします。
いいではありませんか、コップの1つや2つ。
次からきちんとできれば、安いものでしょう。
 
お母さんも、こんな経験をしたことはありませんか。
お母さんは、家事のプロフェッショナルですが、お母さんも人間ですからたま
には失敗する時もあるでしょう。
例えば、本当に例えばの話ですが、お父さんが大切にしていたコーヒーカップ
を割ったとします。
訳を話して謝った、その時に、
「あなたは慌て者だから、気をつけないと駄目だと、いつも言っているだろ
う!」
などと言われたら、お母さんはどんな気持ちになりますか。
「フン、何、言っているの! わざと割ったのではありません。滑ってしまっ
たの!」
ふてくされ、いや、気分が悪くなりませんか。
子どもも同じです。
 
失敗した時、むやみに怒らないことです。
正しく状況を判断して、怒る理由があるときは、キッチリと怒りなさい。
それからでも遅くないのですから。
そうしたら、冷静に怒れます。
「冷静に怒れる?」、何やらおかしな言葉ですね。
冷静とは、その場の感情に動かされないことです。
冷静であれば、怒るでしょうか。
怒りませんね。
「叱る」と「怒る」の違いです。
そうすると、状況を客観的に把握でき、感情的にならずに対応できます。
これは、とても大切なことです。
なぜなら、単に失敗しただけでは叱らないという「叱る基準」が、きちんと決
まっているからです。
けじめのある子になります。
これが名門幼稚園側の言う育児の姿勢、ご家庭の教育方針です。
ご家庭と幼稚園の教育方針が限りなく近いことが、幼稚園を選ぶポイントにな
ります。
 
もっとおかしなお母さんがいます。
「また割られると困るから、ガラスのコップは止めて、アルミのコップに代え
ましょう。これなら落としても割れませんから」  
こんなことをすると何回も割りますし、無神経な、がさつな子になります。
教育の意味がわかっていません。
教育とは、読んで字のごとく、教え育てることです、しかも、意図的に。
絶好のチャンスを逃しています。
小学生になると、給食の時間に食器を乱暴に扱うようになるでしょう。
多くの場合、給食に使う食器類、ガラスや瀬戸物ではありませんから。
 
最後に一言。
以前、ある青少年犯罪係の偉い方が講演会で、「家事の好きな女の子に、非行
少女は、いません」とおっしゃったことがありましたが、一理あると思います。
お母さんが、いいお手本を見せているはずだからです。
きょう日のお母さん、こういいます。
「お手伝いなんかしなくていいの。そんな暇があるのなら勉強をしなさい!」
中学や高校受験になると、こうなるようです。
はっきりいって、これは間違いです。
味覚や服装のセンスは、母親が子に伝えるものです。
特に、料理です。
「おふくろの味」というではありませんか。
お母さんと一緒に台所に立って、お母さんの手さばきや料理の段取りを見て、
実地研修しながら、味付けを覚えたのではなかったでしょうか。
これも、一朝一夕に身につくものではありません。
お母さんは意図的に教え、子どもは習い、学ぶものです。
お子さんが大きくなった時には、きちんと教えてあげましょう。
1時間も2時間も台所に入りびたりになるのではありませんから。
これは勉強ではなくて、習い学ぶこと、学習です。
その心は、お母さんのようになりたい、そうではないでしょうか。
 
学習について、わかりやすい話があります。
キリスト、マホメット、お釈迦さまと共に世界の4大聖人の一人である孔子さ
まは、「論語物語」にある「うぐいすの声」でこういっています。
「『ホーホッケキョ!』ときれいに鳴く親鳥と、『ケキョ?』と不器用にしか
鳴けないひな鳥の声を聞きながら、ひな鳥は、親の鳴き声を一所懸命に聞き、
繰り返し、繰り返し練習をして、今に一人前に鳴けるようになる。その心は親
鳥のように鳴きたい。これを学習といって、『習い学ぶ』のは素晴らしいこと
だ」と、息子に教える話です。
よいお手本を見て、一所懸命に学ぶ、これが幼児期の大切な学習です。
 
しかし、「お母さんのようになりたくない!」などと言われたら、これは、お
母さんの重大な責任です。
早期教育やお受験などで、知的な能力を高めることだけにこだわっていると、
こうなりがちではないでしょうか。
 
かつて、城山三郎氏の小説に「素直な戦士たち」(新潮社 刊)がありました。
中学受験を目指すお母さんは、典型的なマニュアルタイプで、ものすごい子育
てをしますが、そういったお母さんにならないでほしいと思います。
気になることがありましたら、ぜひ、この本をお読みになって下さい。
20数年前に発売された本ですが、いま読み返しても考えさせられてしまいま
す。
 
(次回は、独り立ちの準備(4)家事、やらせなさい(2)についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<保護者編>第3章(2)何といってもお正月ですね  睦月

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2019さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第11号-
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第3章(2)何といってもお正月ですね  睦月
 
今年で33回を迎える「東京私立小学校児童作品展」は、1月31日(水)
から2月5日(月)まで、銀座の松屋で開催されます。毎年、意欲的な作品が
展示されますのでぜひ足を運んでみてください。
               
◇お節料理◇     
お雑煮を食べながらいただくのがお節料理です。木製できれいな絵や模様で飾
られ、二重から五重に積み重ね最上段にふたのある重箱にいろいろな料理を詰
めます。お節料理は、元旦の朝に神様と一緒にお祝いをして、家族が健康で良
いことがたくさんあるように、お祈りをするための食事ですから、縁起ものし
か選ばれません。
         
 「三つ肴」または「祝い肴」といって、この三種でお節料理を代表するもの
  がある。三は完全を意味し、全体を一つにまとめる働きをしている。三つ
  肴とは、関東では黒豆、数の子、五万米(ごまめ)をいい、関西では、黒豆、
  数の子、敲き牛蒡(たたきごぼう)をいう。
  (年中行事を『科学』する 永田 久 著 日本経済社 刊 P9)
 
黒は魔除けの色といわれ悪魔が嫌う色、豆は「まめに生きる」、真面目に健康
に生きる願いが、数の子は、鰊(にしん)の卵巣で、数万の卵があることから
「数多い子」、子孫繁栄の意味で縁起がよいといわれ、「春告魚」とも書き
「春よ、早く来い!」と願い、ごまめは「五万米」とも書くことで豊作を、牛
蒡(ごぼう)は、お米がたくさん取れた時に飛んでくるといわれる黒い瑞鳥を
表したものです。
この三つは、必ず食べたそうで、私は、きんとん、だて巻き、かまぼこ、海老
や鯛、八つ頭(里芋の一種)こんにゃくなどを食べていました。きんとんは
「金団」と書いて「金の塊」のこと、だて巻の「伊達」は「粋で美しい様」、
かまぼこの赤は黒と同様に「魔よけ」、白は「清浄」を表し、八つ頭は「人の
頭に立つ人になってほしいことを願っている」といったように、お節料理は縁
起を担いだ食べ物からできています。
 
正式なお節料理は、四段重ねです。上から一の重、二の重といい、一の重には
三つの肴、黒豆、数の子、ごまめ、二の重は「口取り」といい金団、ゆず玉、
だて巻などオードブルが、三の重は海老や鮑、鯛などの「海の幸」を、四の重
は「与の重」といい、八つ頭、はす、くわい、里芋などの「山の幸」を入れ、
詰める品数は奇数がよいとされ、ここまでこだわります。  
料理の中心は煮物ですが、素材をそのまま煮炊きできませんから、下ごしらえ
に手間がかかり、味付けで素材の持ち味が決まる料理ですから、暮の台所はま
さに戦場で、今のようにお節を買って済ませる時代ではなく、全部自前でこし
らえていましたから大変な騒ぎであったことを覚えています。お節料理は、三
が日の間、お母さん方から料理する手間を開放してあげる配慮があったと聞き
ましたが、その通りではなかったでしょうか。
 
ところで、祝いの膳に欠かせない尾頭付きの鯛ですが、徒然草では鯉が「やん
ごとなき魚なり」と紹介されています。世界の四大聖人の一人、孔子の子息の
名前は「鯉」といいますが、王様からお祝いに鯉を頂いたことから命名された
そうで、当時、中国での魚の王様は鯉でした。ところが、江戸時代になると鯛
が祝い膳のトップに躍進し、今に至ってもその座を他の魚に許していません。
「めでたい」の語呂だけではなく、姿、形がよく、色鮮やかで、生でも焼いて
も汁にしてもうまい、これでしょうね。しかし、親父は「鯛はいつでも食べら
れるから旬がなく、その分、損しとるのや」と言っていましたが、今では鰹や
秋刀魚も、いつでも食卓に上がります。食生活は豊かになりましたが、そのた
めに失ったものもたくさんあります。季節感が希薄になったのも、その一つで
しょう。魚に限らず旬のものは、その時にしっかりと食べ、季節感を味わいま
しょう。
 
 
◇屠 蘇◇
読み方からしてやっかいですが、「とそ」といって、山椒、肉桂(にっけい)、
桔梗(ききょう)、ぼうふうなどの薬草を、砕いて調合した屠蘇散をひたした
味醂のことで、これが正月のセレモニーの主役でした。これを杯に注いで、
「おめでとうございます」と父が言わないことには、新年の朝祝いは始まりま
せん。これは不老長寿の効き目があると言われ、正月の祝い酒でした。山椒は
うなぎを食べるときに使うものですし、肉桂はにっきのことで刺激が強く、桔
梗は根を干したものはせき止めの薬で、ぼうふうはセリの仲間です。聞いただ
けで飲むのを遠慮したくなりませんか。親父からちょっとなめさせてもらいま
したが、大人は、なぜ、こんなまずいものを飲みたがるのか不思議な気がしま
した。 
 
しかし、何事も訳ありです。
屠蘇は、「鬼気を屠絶し、人魂を蘇生させる」という意味があり、「その年の
邪気を払い、寿命をのばす働きがある」と信じられ、正月には欠かせない祝い
酒でもあったのです。屠蘇で乾杯して大人はお酒です。子どもはお節料理を食
べながら、お雑煮を頂きますが、両親とも着物です。母は着物の上に、袖付き
の前掛けというのでしょうか、割烹着をつけていました。親父は立派に見え、
母はきれいだと思ったものです。そして、なぜか子どもたちも新しい服を着せ
られていました。新しい年神様を、誠心誠意でお迎えした雰囲気がありました
ね。
 
当時は、4本足の座卓、ちゃぶ台で、正座をして食事をしていました。姿勢が
崩れると父が、恐い顔してにらみますから、おかしないい方ですが、真剣に、
真面目に食べていました。ですから姿勢もよくなり、マナーも身についたもの
です。現代っ子は、姿勢の悪い子もいますし、妙なはしの持ち方の子もいます。
ご飯をぼろぼろとこぼしても平気な子もいます。食事中はテレビを消しましょ
う。4、5歳の子には、「食べながら見る」といった二つの作業をこなすのは
難しいものです。私の子ども時代と最も違ったのは食事ではないでしょうか。
テレビはありませんから、食事は人が中心で、一家団欒の一時であり、家族の
会話があったような気がします。しかし、椅子とテーブルになって、子どもた
ちの足が長くなりスタイルもよくなりましたが、子どもに教えるべき生活習慣
やしつけの面で失ったものも、数々あります……。昔から守られてきたよき習
慣、礼儀作法などが姿を消してしまったのも、私達親が選択したのであり、子
ども達の責任ではありません。「現代っ子は……」という前に、反省すべきは、
そういう環境を作ってきた私達、大人達であることを、肝に銘じておきたいも
のです。
 
そして、年の順にお年玉を貰いますが、これが楽しみでした。でも、わずかで
したね。
現代っ子は、銀行に預けるほど貰えるようですが、これは不労所得です。汗水
を流さずに、お金をたくさんもらうのは、決してよいことではありません。子
ども時代にこそ、「分相応の精神」をしっかりと理解させるべきではないでし
ょうか。
 
 
★★初詣★★
 
朝祝いが済むと、近所の氏神さまへお参りをします。全国的に有名な神社、仏
閣に参拝しているようですが、生まれた土地の神さま、産土(うぶすな)神社
へ、神さまに失礼にならない服装に着替え、出かけるべきではないでしょうか。
そして、お子さんにも神前で、静かに頭を下げ、新年の希望や誓いなどをさせ
ましょう。目に見えない大いなる存在に畏怖を抱くのは、決して悪いことでは
ありません。親が、きちんと礼拝をする姿を見せれば、それで十分なのです。
 
我々日本人は畏怖することを忘れ、目に見えないものを敬うことを忘れ始めた
ような気がしてなりません。(「平成お徒歩日記」 宮部みゆき 著 新潮社 
刊 P193)
   
神戸で起きた小学生殺人事件の容疑者が逮捕されたときの作者の言葉ですが、
忘れられない一言となっています。今でも「透明な存在である自分」なのか聞
いてみたい。2015年6月に発売された「絶歌」、元少年A(33歳)は、
100万部売れると豪語したとか。それにしても、いつまで元少年Aで過ごす
のか。(憤怒)
 
帰りには、不幸をもたらす悪魔を払う「破魔矢」や、七転び八起きを願う「だ
るま」などの縁起物を買い、そのいわれを話してあげ部屋に飾っておきましょ
う。子どもなりに夢を育てるものです。
 
また、「初日の出」を拝む習慣がありますが、普段でも海上から昇る朝日や夕
焼けの山間に沈む夕日には、何ともいえぬ感動を覚えるものです。ましてや、
その年の初日の出となると感慨もひとしおでしょう。では、「日本でいちばん
最初に初日の出を拝めるのはどこか」ですが、国土全体では日本の最東端にあ
たる南鳥島、島を除けば富士山頂で、平地では犬吠崎です。しかし、南鳥島は
一般の人は立ち入り禁止で、そこにいる防衛庁と気象庁の職員しか拝めません
し、富士山頂は氷点下何十度という所ですから、誰でもは無理ということで、
正解は小笠原諸島の乳房山で、何と1月1日が海開きに当たり海水浴も楽しめ
るそうです。
 
ところで、ジャズのスタンダード・ナンバーに「The world is waiting for the 
sunrise」(世界は日の出を待っている)があります。アメリカ人に「太陽遥拝」
の信仰があるのではなく、第一次世界大戦後の不況から脱出したい願いをこめ
て作られた曲です。ジャズの演奏スタイルは時代と共に変わりましたが、大雑
把に分けるとデキシーランド、スイング、モダンの3つがあり、デキシーラン
ドには、ニューオーリンズ派とシカゴ派があります。ニューオーリンズ派の名
クラリネット奏者、ジョージ・ルイスの率いるバンドが、オハイオ州立大学で
行ったコンサートの中に、この曲の名演奏が入っています。バンジョーの名手、
ローレンス・マレロが、正確無比なビートで最高にスイングするソロを聴かせ
てくれます。沈んだ夕日が昇ってくるのではと思うほどアグレッシブな演奏で、
モノラルで音はよくありませんが、いつ聴いても感動を新たにさせてくれる、
ご機嫌な演奏です。私の正月は、これを聴くことから始まったものでした。
ジョージ・ルイスの素晴らしい音色を絶賛したのは、前衛ジャズの大御所、サ
ックス奏者のジョン・コルトレーン。ルイスの作曲した“Burgundy Street 
Blues”(バーガンディ・ストリート・ブルース)ではなかったでしょうか。
音楽に新しい古いはないと思います、自前の感性に訴えるものがあれば、いい
のですから。私はドラムを少しやっていますが、学生時代、ある黒人のドラム
奏者に、「なぜ、そんなにスイングできるのですか」とあほみたいな質問をし
たところ、「なぜ、あなた方は、フォークソング(民謡)をあんなにうまく歌
え、踊れるのか」と言われ、ジャズのリズム(4ビート 若い皆さんが乗れる
リズムは8ビート)に抱いていた劣等感を拭い去ることができたような気がし
ました。それぞれの民族は、長い時空を経て培われたリズム感があるというこ
とです。それから、下手の横好きですが、私流のリズムを刻むことを覚えまし
た。
ジョージ・ルイス(George Lewis)の演奏はYouTubeで視聴できます。
“Burgundy Street Blues”は、黒人独特の哀愁を奏でた名演で、いつ聴いて
も涙ぐんでしまいますね(笑)。
 
平成19年の暮れ、体力の限界を感じバンドを解散しました。何と47年間も
やっていた、とてつもない道楽でしたが、演奏の醍醐味を忘れることができず、
また23年から始めてしまい、24年11月の「新宿ジャズ祭り」で、普段は
プロしか演奏しないライブハウス、ピットインでトリを取ってしまいました 
(笑) 。再びトリを目指して頑張る予定でしたが、25年9月にバンドリーダー
の丸山が亡くなり実現しませんでした。彼とは53年来の付き合いで、彼がい
たからジャズの醍醐味を味わえたと感謝しています。26年5月に、演奏会の
度に香港から駆けつけてくれたバンジョーの名手、菅原さんが、ご自分のバン
ドを率いて「春の新宿ジャズ祭り」に来日した折、ドラムの方が参加できず、
ピンチヒッターでお手伝いさせてもらいました。かなりのテクニシャンである
外人の方が3名いて、緊張している私に、「ジャズは自分で楽しむものだよ!」
とまたしても教えられ、楽しいひと時を過ごせました。しかも、これは偶然だ
ったのですが、会場も、時間も、丸山と最後の演奏となった時と全く同じで、
追悼演奏ができたと感無量でした。冥界入りして4年、あちこち痛みの出てき
た私ですが、夢に出てくる彼は、全く年をとっていないので、うらやましくな
りますね(笑)。
 
 
★★正月の遊び★★
 
たこ上げ、羽根つき、カルタにすご六、福笑いが、正月の遊びの定番でした。
今の子どもは、やらないでしょう。テレビゲームやDSのようなポータブルゲ
ーム等、一人で遊べるゲームに人気があります。これが問題ではないでしょう
か。小学校時代に友達と遊ぶことの楽しさを覚えないと、社会性は育ちません。
社会性が育たないと、共に生きる共生の心も育まれません。人は一人では生き
られないことを、もっと教える必要があります。個性を育てるのとわがままを
助長するのは、紙一重の差です。我慢をすることのできない子が増えています。
「訓練されていない個性は野性である」と国府台女子学院の平田学院長はおっ
しゃっていますが、勘違いすると後で困るのは、お子さん自身であることを真
剣に考えましょう。             
 
ところで、昔の遊びの中にもいいものもあります。例えば、すご六です。サイ
コロを振り、出た目だけ動かなければなりません。しかも前後左右に進んだり
戻ったりしますから、混乱しがちです。5、6歳の子にとって、出た数だけ上
下、左右に移動するのは難しいものです。いわゆる「位置の確認」で、こうい
う遊びで覚えるのが効果的なのですが……。
 
このサイコロですが、2つ使うと最高12までの足し算ができます。二人で1
個ずつ振り、数の大きさで勝ち負けを競えば、引き算になります。数字を使い
ませんが、出た目を数えるだけで、簡単に答えが出ます。その上をいく優れ物
が、トランプです。ゲームは勝敗が伴いますから、真剣に遊びます。カードに
はマークと数字がありますから、算数の学習、数感の学習になっています。
 
トランプの絵札は、11はJ、12はQ、13はKとアルファベットで表され
ています。
Kはキングで王様、Qはクイーンで女王様ですが、Jは何を表しているかご存
じですか。
Jは「ジャック」という人名の頭文字からとったもので、イギリスでは、ごく
ありふれた名前の代名詞として使われ、日本でいえば「太郎」にあたり、よく
耳にする名前を付けることで、名もない一兵士を象徴させているのです。4つ
のマークは、ハートは僧侶、スペードは軍人、ダイヤは商人、クラブは農民と
身分階級を表していますが、何事も訳ありなのですね。ところで、中学生にな
り英語を習ったときの教材は「JACK AND BETTY」でしたが、べ
ティは「花子」にあたるのでしょうか(笑)。
 
 
★★春の七草★★   
 
言葉だけが、一人歩きしているようです。
七草は、せり、なずな、御形(ごぎょう 母子草)、はこべら(はこべ)、仏
の座(たびら子の別称)、すずな(かぶ あおな)、すずしろ(大根 鏡草)
のこ
とです。昔は、春を告げる七草を親子で摘み、お節料理やお餅を食べすぎて、
お腹の調子が少し悪くなった時に、消化のよいお粥に七草を入れて食べ、春を
実感していたのでしょう。ちなみに、セリは解毒・食欲増進・神経痛・リュウ
マチに、なずなは高血圧・貧血・食欲増進に、御形は咳止め・痰切り・利尿作
用に、はこべらは歯槽膿漏・催乳・健胃整腸に、仏の座は体質改善に、すずな、
すずしろは骨粗鬆症・腸内環境改善に良いという説があるそうです。(三島函
南農業協同組合「七草がゆセット」のしおり より)
 
この七草に関して、覚えやすい歌があります。
  せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、
  すずな、すずしろ、これぞ七草
     左大臣 四辻 善成(平安時代)
 
最後に、おもしろい話を紹介しましょう。間違って使われる言葉に「千六本」が
ありますが、永田先生でなくても笑えますね。
 
大根は、野菜の王様で消化によく、食べあたりしない。大根役者とは、当たら
ない役者のことである。「千六本」というのは、大根を細長く刻んだものである
が、大根を中国では「繊蘿蔔」といい、これを唐宋音でローポと発音した。細長
く刻んだ大根=繊蘿蔔(センローポ)が日本でセンロッポンと訛って千六本と書
いた。千という字によって「たくさんの」という意味を感じて細かく切り刻んで
しまう人もいれば、「人参を千六本に切って」などと料理教室で教える先生もい
る。六本というのをどう解釈しているのかと考えると、ふきだしたくなる。  
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P35)
 
(次回は、「1月に読んであげたい本」についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★(1)巧緻性に関する問題

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        「めぇでる教育研究所」発行
    2019さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            第27号
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★入試問題を分析する★★
 
(1)巧緻性に関する問題
 
聞き慣れない言葉です。
「きめこまかく上手にできていること」という意味ですが、11月に詳しくお
話しました「手は第二の脳」(11号から14号)を思い出してください。重複
するところもありますが、大切な問題ですから繰り返します。巧緻性に関して
は、「塗る・折る・切る・貼る・結ぶ・摘む・包む」といった手作業、何かを
作ったり、絵を描いたり、手本と同じものを描いたりする問題があります。
なぜ、出題されるのでしょうか。手作業は、誰の手も借りずに、指示されたこ
とができるかどうかで、自立の状態がわかるからです。
 
[制 作]
 課題制作と自由制作があります。
 
 ◆課題制作
  ★「今から、動物の起き上がりこぼしを作ります。
    このように、画用紙を半分に折り、折り目のところが背中になるよ
    うに動物を描きます。描けたら動物を、このように切り抜きます。
    そして、別の紙を筒のようにまるめ、それに動物をホチキスで止め
    ます。最後に、セロテープで粘土を筒の中に貼り、出来上がりです。」
 
 先生が、やっているのを見てから制作に取り組みます。
         
 ◆自由制作
  ★(空き箱、画用紙、色紙、折り紙、セロハン、リボン、ひも、モール、
    輪ゴムなどの材料や、はさみ、のり、ホチキス、クレヨンなどが
    置かれています。)
   「ここにあるものを自由に使って、自分の好きなものを作りなさい。」
         
まず、注意しておきましょう。                
子ども達の大好きな制作ですから張り切りますが、先生の説明中に手を出す子
がいます。待てないのです。きちんと聞いておかなければ、手順がわかりませ
んから、途中でギブアップすることになりかねません。
普段の生活態度が、そのまま正直に出がちです。お子さんに何かを頼んだとき
など、最後まできちんと聞いているでしょうか。聞いていれば心配ありません
が、何といっても「話を聞き、指示どおりに行動できるか」がポイントだから
です。       
幼稚園は自由保育ですが、小学校は一斉授業ですから自分勝手にやるわけには
いきません。        
しかも試験ですから、規則違反にチェックが入ります。
 
なお、制作を苦手とするお子さんの場合は、もう一度、「鍛えてほしい第二の
脳」をお読みになり、早いうちに対処しておきましょう。基本作業は、幼児教
室の先生にお任せではなく、家庭できちんと身につけるものです。これをおざ
なりにしていると、制作に興味をもてなくなりがちで、行動観察型のテストが
苦手になることを、しっかりと胸に刻んでおきましょう。
 
 
[模 写]
 
  ★お手本と同じように描きましょう。
      
模写は、文字通り、お手本と同じものをまねて写すことです。
点図形と線や図形の模写があります。点図形は、対称図形が多く、見た目もき
れいですから面白そうですね。簡単なものも手抜きをせず、きちんと線を引く
ことが大切です。                         
しかも、大人が考えるより難しい作業です。どこから始めたらよいのか迷って
しまうものや、必ずしも点と点を結ぶとは限らず、野球で言えばサードとショ
ートの間を抜くヒットのように、点と点の間を抜けていくのもあります。これ
は、納得するのに時間がかかります。
「点と点を結ぶのに、何で抜かすのですか? そんなのずるいですよ!」
と不満に思っている子がいますが、こだわるから仕掛けに気づいて間違わない
わけです。           
そして、この問題も根気がいります。どこがどうなっているのか、試行錯誤を
重ねた方が、後で効果が現れます。観察力と集中力、そして持久力や忍耐力も
身につきますね。            さらに、全体のバランス感覚を養
うのにも役立ちます。なぜなら、隅から隅まで、全体をきちんと見なければな
らないからです。それが絵を描くときにも生きてきます。
                    
模写の問題で見逃せないのは、性格まで姿を表すことでしょう。
点と点をつなぐ直線がよじれたり、脱線をしたり、通過すべき点を無視する子
は、何をやっても雑なところがありますね。スピードを競っているようですが、
描けていればいいのではありません。完成度から美醜の感覚、基本的な生活習
慣、しつけ、育児の姿勢まで判定することも可能です。最初が、肝心です。ゆ
っくりと丁寧に、時間をかけて、美しく描くことが基本です。そして、忘れが
ちなことですが、姿勢が悪ければ描く線も乱れます。背筋をきちんと伸ばし、
左手でペーパーをしっかりと押さえ、筆記用具をきちんと持って描く習慣を身
につけましょう。
 
線の模写
はじめに、点線などで手本が示されていますから、それを指でなぞり、どのよ
うにすればスムーズに描けるか、必ず確かめましょう。
指で何回もなぞり、脳に一筆で描ける感覚をしっかりと学習させることが大切
です。
三角形が連続する鮫の歯のような直線や、半円が上下に反転しながら連続する
もの、曲線では、筆記体のアルファベットの小文字「エル」の連続したものも
あり、上下が逆になると、ぶどうの房のように見えますが、「エル」は下から
上に左回りで描きますから、それに従い連続して描き、上からの場合は、上か
ら下へ右回り、時計回りで描きます。房の長さや間隔が乱れないように注意を
促しましょう。
しかし、いずれも難しい作業でなかなかうまく描けませんから、根気よく取り
組むことが大切です。
 
図形の模写
これは、正直言って難しいですね。
線の模写と違い、四角、三角、円、菱形、ハートなどさまざまな図形が、いろ
いろな組み合わせで出題されますから、それを描く子ども達には、至難の業だ
と思います。やってみるとわかりますが、全体の配置状態、バランスをつかむ
ことは容易ではありません。
                                  
以前にもお話しましたが、図形の○△□は、書写、運筆の基礎トレーニングで
すから、正確に描けるようにすることが大切です。          
○は、下から時計まわりで描きます。上から左回りに描くのは数字のゼロです。
△は、頂点から左斜め下へ、そこから頂点に戻って右斜め下へ、最後に左から
右へ底辺を描きます。
左斜め下から、いきなり右方向へ底辺を描き、今度は左斜め上の頂点を目指し
て描くのは、大人の使う簡略法で、子どもにとっては書写違反です。
□は、漢字の国がまえと同じです。                  
左から下におりて、そのまま戻らずに、左回りで一周する子がいますが、これ
も書写違反になります。  
文字には筆順がありますから、こういった図形をきちんと描ける子は、きれい
な字を書けるようになります。      
 
基本的なトレーニングとしてお勧めしたいのは、例えば、大きな○を描き、そ
の中に、それより小さな形をどんどん描くことです。□△◇も同じようにやっ
てみましょう。前のものより小さく描き、その微妙な差を脳に教えることがで
きるからです。線の模写と同様、難しいですから、お子さん達はうまく描けず
に嫌がると思います。あせらず、じっくりと時間をかけ、丁寧に描けるように
導いてあげましょう。          
                          
ところで、頼りない線を引く子がいますが、多くの場合、鉛筆を正しく持てて
いないからで、おそらく、はしの持ち方もおかしいのではないでしょうか。こ
れを解決してから挑戦しましょう。ただし、はしの持ち方は、食事の時にうる
さく言わないことです。       朝、昼、晩と三度、同じことを言われ
ていては、気が滅入りますから、以下のようなトレーニングがいいのではない
でしょうか。           
Bか2Bの鉛筆で、直線や円などを殴り描きさせると効果が表れるものです。
これは、スピードを上げてもかまいません。なぜなら、速く描くには、鉛筆を
しっかりと持たねばなりませんし、どの辺を持てばよいかもわかるからです。
力み過ぎは、手首を疲れさせるだけですが、力配分やバランスも、やっている
うちにわかってきます。 
そして、ボール遊び、縄跳び、鉄棒など両手を使う運動をやることで握力をつ
けましょう。
机の上だけではないトレーニングにも、目を向けてください。はしの持ち方に
も変化が出てくるはずです。
 
 
[はしを使った問題]
 
  ★(角砂糖ぐらいの大きさのプラスチックの立方体が、たくさんお椀の
    中にあり、はしと空のお椀が用意されている)
   「お椀の中のものを、別のお椀にはしを使って、一つずつ移してくだ
    さい。」
 
「摘む」手作業の試験です。豆の他に、はしでスーパーボールや玩具のミニチ
ュアの果物、落花生、金平糖をつかむ問題が出ています。
 
豆を買ってきて、割りばしを使い、懸命に練習をする話を聞きますが、何かお
かしな気がします。これは、試験のために練習をして身につけるものでしょう
か。体や筋肉の運動的な発達に関わることですし、基本的な生活習慣の大切な
課題ですから、しつけと関係があります。一応の目安として、3歳ぐらいから
はしを使えるようになり、5歳頃には、巧みに使えるようになるといわれてい
ます。生活習慣とは、「誰の手も借りずに自力で生活していくために身につけ
るもの」であることを忘れては、受験準備どころではないのではと思います。
 
第14号で紹介しました、立教女学院小学校の説明会での話を思い出してくだ
さい。教頭先生は、こうおっしゃっていました。
 
 鉛筆の持ち方やはしの持ち方は、一度悪い癖がつくと直しにくいので、家庭
 で正しい持ち方、使い方を身につけさせてほしい。あえてこの場で申し上げ
 ますが、今年度もテストの中ではしを使う場面がございましたら、はしで物
 を運ぶ速さを競っているのではなく、正しいはしの持ち方ができているかを
 見ていることをご理解いただきたい。テストの主旨はそこにあります。日本
 の文化でもあるはしの使い方を、きちんと身につけてほしいと考えています。
 
幼稚園児が、ペーパーテストに強くても、正しくはしを持って、ご飯を食べら
れない方が、よほど恐い話です。「九九、八十一!」とそらんじている子が、
お母さんに靴をはくのを手伝ってもらっているようでは、やはり、おかしいで
すね。練習しなければ、うまくはけないのは当たり前です。それを手伝うので
すから、脳から司令は出ませんし、筋肉も反応しません。手をかけた分、脳も
筋肉も楽をしているのですから、不器用になるわけです。手を貸し過ぎている
ことはありませんか。モンテッソーリの「敏感期」ではありませんが、幼児期
には、これから使う筋肉を鍛えなければならない大切な時期があります。赤ち
ゃんは、なぜ、はいはいをするのか思い出してください。
 
ある私立の名門校では、鉛筆を削るのに「肥後守」(ひごのかみ)を使ってい
る話を聞きました。「肥後守」とは、刃を収めるさやに「肥後守」と銘のある
折り畳み式の小刀のことです。私たちの子どもの頃は、鉛筆削り器などありま
せんでしたから、小刀で鉛筆を削るのは、誰もが練習をし、身につける、当た
り前のことでした。しかし、全神経を手先に集中しなければ、けがをしかねな
い大変な作業でした。危険を伴う作業は、大げさにいえば、幼いなりに危機管
理が必要であることを学習していたのではないかと思います。使い方を誤れば
凶器になることを教えずに、ただむやみに禁止するのは、教育的な配慮に欠け
ますが、こういったことはお父さん方が使って見せることもいいのではないで
しょうか。
 
脱線しましたが、その他に、折り紙を折ったり、はさみで線や線と線の間を切
らせたり、ひもを結ばせたり、積み木をハンカチで包ませる問題もあります。
ひも結びやハンカチでものを包むのも苦手ですね、特に、男の子は。やったこ
とがないからできないのだと思います。普段、お母さん方も風呂敷で物を包む
ことなど、ほとんどないでしょう。お弁当をハンカチで包むようにすれば、解
決できます。第二の脳を活用すれば知力も向上しますから、一石二鳥にもなり
ます。
 
巧緻性の問題には、お子さんの生活環境までわかる要素も含まれています。乱
暴な線や心細い線を引くような場合、その原因は、日常生活の中で、いろいろ
な形でサインが出ていると思います。口うるさく注意する前に、どのようなサ
インが出ているかチェックしてみましょう。
 
(次回は、「言語の問題」についてお話しましょう)

さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>独り立ちの準備(3)あいさつも大事です

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         「めぇでる教育研究所」発行
   「2019さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>」
            第10
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(3)あいさつも大事です
 
あいさつも大事です。
しつけと同じで、習慣です。
日常の積み重ねですから、小さい時から、絶対に手を抜かないことです。
 
聞いてみましょう。
お母さん、朝、お父さんと目を合わせたとき、「おはようございます!」と、
元気よくあいさつをしていますか。
お父さんも、きちんと答えていますか。
やっていれば、お子さんもあいさつは、できているはずです。
 
お父さんに聞きましょう。
食事の時は、「いただきます」「お代わり」「ご馳走様」と元気よくやって
いますか。
新聞片手に、ボソボソ食べて、ニューッとお茶わんだけ出して、お代わりを
していませんか。
それだけは、止めましょう。
テレビも消したいものです。
お子さんの生活習慣に、よくありません。
テレビを見ながらご飯を食べていると、集中力に欠けますから、ポロポロと
こぼしますし、ダラダラと時間もかかりがちです。
幼稚園へ行っても、同じことをします。
手のかかる子は、幼稚園でも歓迎されません。
 
会社へ行く時や外出する時に、「行ってくるよ」、帰ってきたら、「ただい
ま」と、やっていますか。
「お休み」をいってから寝ていますか。
「ありがとう」と感謝の気持ち、大切にしていますか。
やっているのなら心配ありません。
あいさつ、礼儀作法は、何といってもご両親がお手本、親の率先垂範です。
できない子どもに、責任はありません。
これこそ、絶対に付け焼刃は、効きません。
小さい時からの積み重ねです。
「まだ、小さいし、その内できるようになるから無理をしない」とは、一見理
にかなっているようですが、手抜きをしていると、後で後悔することになりま
す。
基本的な生活習慣やしつけに関しては、何もせずに、その内できることなどは
ありません。
 
外で、ご近所の方と会った時は、少しばかりオーバーになって、「こんにちは」
とあいさつをしましょう。
だからといって、子どもがあいさつの出来ない時に、「ゴアイサツハ!」と強
制するのは、止めた方がいいですね。
条件反射になって、いわれなければできなくなることもあるからです。
もっと、すごいお母さんになると、「ごあいさつしなさい!」といって、頭を
グイッとばかりに押さえ込みにかかります。
頭を押さえられている子どもの気持ちになってみましょう。
これは、恥ずかしいものです。
 
2、3歳頃までは、無邪気に頭を下げて、あいさつをしていたと思います。
「おう、坊や、偉いな!」
「さすが、お嬢ちゃんだね。女の子は、これだからかわいい!」
 褒められて嬉しいですから、あいさつをしていたのでしょう。
 
しかし、何やら妙な意識が働いて、そう単純にいかない場合もあります。
今までなかった戸惑いとでもいうのでしょうか。
本人は、「あいさつをしなくては」と思っていることは思っているらしいので
すが、タイミングの合わないこともあります。
そこで頭を押さえつけられて、さらに、「ゴアイサツハ!」と命令されるので
すから、子どもにとって面白いはずがありません。
子どもの自尊心、プライドは、どうなりますか。 
「子どもに自尊心があるのですか?」
冗談は抜きにしてください。
あります、いろいろな情緒が芽生えてくる時期です。
これを認めないと、お子さんの心は曲がっていきます。
 
3歳に入ると自立が始まるといいましたが、自立が始まると共に、様々な感情
も、いろいろなことを経験することにより、一緒に培われてきます。
それが、情緒です。
この情緒が、五歳頃になると、分化されていくといわれています。
今までは、言ってみれば、おもちゃ箱の中に、おもちゃが雑然と入っていたの
が、「自動車は、ここ」、「ぬいぐるみは、こっち」、「ままごと道具は、
あっち」というように、きちんと整理されて入っていく状態になるらしいので
す。まだ、整然とは、いきませんが。
未分化だった情緒が分化して、大人に見られるような情緒が表れてくるそうで
す。
はにかみ、恐れ、心配、怒り、嫉妬、失望、不快、愛情、望み、喜び、快いと
いった「情緒」です。
 
あいさつができなくなるのも、羞恥心といった、はにかむ心の表れとは考えら
れないでしょうか。
そこで、頭をグイッとばかりに押さえられてごらんなさい。
お子さんは恥をかかされ、頭に来て、不快感の塊になっています。
自尊心は、グチャグチャです。
はえ叩きで、ハエを叩き殺すのと同じです。
言うに事欠いて、はえ叩きとは古すぎますが、でも、一発で仕留めるのですか
ら、必殺技です、強烈です。
 
あいさつだけではありません。
結構、親は、はえ叩きのようなことをしています。
胸に手を当てて考えてみましょう。
思い当たることがありませんか、それもかなりです。
特に、気分が悪くて、イライラする時があるでしょう。
普段は、腹の立たないことで怒り散らさないですか。
後で後悔することがあると思います……、それです。
原因がわからないで怒られるほど、不愉快なことはありません。
子どもも、ムッとなります。
でも、力関係で逆らえませんから、我慢せざるをえないのです。
 
お母さん方も、こういった経験はありませんでしたか。
会社から帰ってきたお父さん、何やらご機嫌がよろしくないのです。
お母さんは、心配ですから気をきかせて聞くと、
「うるさいな、何でもないんだから!」
こういわれたら、腹も立つでしょう。
子どもも同じです。
因果関係がウヤムヤで、感情的になられるのは、いやなものです。
 
4、5歳になると、こういった情緒も分化してきます。
3歳は、こういう時期を迎える準備期間でもあるのですから、ストレスがたま
るように仕向けないことです。
あいさつができなかったら、ただ「ごあいさつは」と強制するだけではなく、
「どうしてできなかったのかな」と考えてあげましょう。
「考えてあげる」、これは思いやりです。
思いやりを欠かしては、心のやさしい子には育ちません。
 
しかし、思いやりと、ベタベタした親に都合のよい身勝手な過剰な愛情とは違
います。
ベタベタは、お子さん自身にとっても、うとましくてやりきれないようになり
ます。
子どもは、お母さんの所有物ではありません。
幼いといえども、意志と感情を持つ、独立した生き物です。
さめた目で、わが子を見つめることも大切ではないでしょうか。
お子さんは、そういう時期にさしかかっているのです。
未分化であった情緒の分化が始まっていること、忘れないでほしいと思います。
 
(次回は、独り立ちの準備(4)家事、やらせなさい についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<保護者編>第3章(1)何といっても正月ですね 睦月

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2019さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第10号-
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第3章(1)何といっても正月ですね 睦月
 
物の本によれば、睦月(むつき)のいわれには、正月は身分の上下、老若男女、
分け隔てなく行き来し、親族一同、仲よく「睦み合う」という説が有力だそう
で、その他にも「元つ月」、草木が萌えいずる「萌(もゆ)月」、春陽が発生
する「生む月」、稲の実を初めて水に浸す「実(み)月」なのだとする説もあ
るようです。
 
  お正月の歌
    ♪もういくつ寝るとお正月   お正月には凧あげて
     こまを回して遊びましょう  早く来い来いお正月♪
 
正月になるとこの歌を思い出します。子どもの頃の思い出といえば、正月に
まさるものはなかったですね。恥ずかしい話ですが、お餅を食べられるのと
お年玉を貰えるからでした。今と違い餅は正月しか食べませんでしたし、小
遣いとなると現代っ子のように毎月貰えるものではなく、正月や祭りの時だ
けでしたから、本当に待ち遠しかったものです。今の子ども達がクリスマス
を待つ心境と同じではなかったでしょうか。
ところで、この歌の作曲者はどなただと思いますか。瀧廉太郎です。童謡や
唱歌には素晴らしいものがたくさんあります。お子さんと一緒に歌うべきだ
と思いますね。幼児期の思い出は、こういった歌からも残っていくものでは
ないでしょうか。
 
さて、元日の朝ですが、いつもの朝と違い「特別な朝」という感じがしたも
のです。いつもと変わらない朝ですが、元日の朝だけは別です。なぜか、天
気はよく、大雪とか氷雨といった経験はほとんどありません。瀬戸内海に面
した赤穂と東京、川越にしか住んだことがないからかもしれませんが、毎年、
いかにも新しい神さまがいらっしゃった朝という気持ちになったものです。
元日は、その年の神さま、年神さまがやってきて、前の年の神さまと交代す
る日でした。ですから、神さまを中心に生活が営まれていた時代には、「お
めでとうございます」と言っていたのは、人と人が挨拶をするのではなく、
新しい神さまを迎える言葉として使っていたそうです。ですから、「あけお
め」などという言葉を聞くと「何と不謹慎なことよ!」と腹が立ちますね(笑)。
門松、しめ飾り、鏡餅、そしておせち料理も、みんな神さまをお迎えするセ
レモニーに必要なものだったのです。中には何やら語呂合わせのようなもの
もありますが、「これはすごい!」と思わず膝を叩きたくなるのもあります。
 
★★正月の三点セット★★
 
◇しめ飾り◇                     
本来、しめ縄は、神前など神聖なものと不浄なものとの境界線を示すために
張る縄のことで、わらを左捻(よ)りにして、三筋、五筋、七筋と順々にひ
ねり垂らし、その間に四手を下げたものです。四手とは、横綱の化粧まわし
の上にしめられた綱にさがっている、あれです。   
稲や麦の茎を干したわらで作ったしめ飾りで神さまを迎えるのも、農耕民族
の生活の基盤は米ですから、わかるような気がしませんか。
地方によっては、えびや橙(だいだい)を一緒に飾った豪華版もあります。
えびは「海老」とも書きますが、文字、そのものが「海のご隠居さん」で、
体が曲がっている姿からお年寄りにたとえ、長寿を祈願したものです。これ
が漢字の楽しいところで、何となくイメージが浮かんできます。
“LOBSTER”と書かれていても、何のイメージもわきませんが、字の
並びに何か意味があるのでしょうか。橙は、一家の幸せが、「代々」続いて
欲しいという語呂合わせです。
神さまを迎えるしめ縄に、いろいろとお願いするのですから、頼まれる神さ
まも大変です。
                           
◇門 松◇                     
門松の方が、まだ受け継がれているかもしれません。しかし、庶民派の門松
は松だけです。銀行やデパート、大きな会社の入り口には、立派な門松が飾
られています。松竹梅、何やらのどが鳴りそうですが、これも当然、意味あ
りでしょう。          
                           
松は常緑樹ですから、葉は一年中、緑色で冬の寒さをものともしません。
竹は真っすぐ伸びていきますから、横道にそれない芯の強さがあり、雪の日
など他の木は雪の重みで折れがちですが、竹はしなって頑張り、雪の方が我
慢できずに滑り落ちます。
かぐや姫の生れ故郷は竹の中、空っぽで「腹に一物もなく」、唐竹を割ると
一直線に割れることから曲がったことが嫌い、生一本のシンボルです。ちな
みに「生一本」とは、単一の酒造で造られた混ざり物のない純米酒のことで
す(笑)。      
梅は北風が吹き荒れ、他の木々は葉を落とし寒そうですが、梅は頑張って小
さな花をリンと咲かせ、「春近し」を告げています。春告鳥と書いて「うぐ
いす」ですから、春告花で「うめ」はどうでしょうか。木偏に春と書いて
「うめ」と読みたいですが、「椿」がありますからだめですね。
    
この椿が映えるのは、茶室ではないでしょうか。一輪挿しの椿は、和敬静寂
の雰囲気を見事にかもし出していました。        
 
「和敬静寂」は千利休の言葉で、和して敬すると誰の心も清々しくなります。
そしてそこには、心の寂けさが生まれます。寂とは淋しいものではなく、あ
たたかな静けさなのです。そうした心境になれば、煩悩が静められ、知恵が
生まれてくるのです。そこで「和敬静寂」が禅のこころといわれ、茶のここ
ろといわれるようになりました。
(「命のことば」 瀬戸内寂聴さんの著から 利休の茶室日記 gooブログよ
り)
 
利休の命名は、「名利共に休す、名誉も利益も求めない」という禅語からとっ
たものといわれていますが、墓所は織田信長の菩提寺である大徳寺の隣にある
聚光院です。大徳寺の山門を寄付したのは利休で、そのお礼に寺側が利休の木
像を掲げたことが秀吉の逆鱗に触れ切腹を命じられました。年は利休が上です
が、茶道では信長の弟子で、隣同士で眠っていることは、あまり知られていな
いのではないでしょうか。
 
それはともかくとして、松竹梅、語呂もいいですね。この縁起物の三つを玄関
に飾り、年神さまが、確実に我が家に来ていただくための道標、表札の役をし
ていたのではないでしょうか。昔は盆にはきゅうりの馬となすで作った牛を飾
りましたが、正月は神さまを、盆には仏さまを迎えるための飾り物で、季節折
々の花や農作物を供えるところからも、農耕民族であることがわかります。
何かにつけて、事の起こりは中国ではと考えますが、松竹梅も、厳しい冬を堪
えて生きるみやびやかな木、「厳冬の三友」といわれ、それが日本に伝わり、
「長寿・節操・清廉」などの解釈を加え、めでたいもののシンボルとなったの
です。いや、それだけではありません。後程、紹介しますが、あっと驚く秘密
が隠されているではありませんか。
     
◇鏡 餅◇                     
鏡餅は、年神さまから頂いた新しい魂を表したものです。丸い形は、角を立て
ないように、みんなで仲良く暮らそうという意味が込められています。お飾り
は、地方によって勝栗、干柿、扇など多種多彩ですが、橙、ゆずり葉、昆布、
裏白などが一般的でしょう。橙は長寿、ゆずり葉は新しい葉が出てから古い葉
が落ちることから「譲り葉」、家督を子孫に譲ること、昆布は「喜ぶ」の語呂
合わせと子生(こぶ)、子どもが生まれることを願い、裏白は葉の裏側が白い
しだ類(わらび、ぜんまいの仲間)で、うしろ暗いところがなく、清らかで汚
れのない心を表しています。
             
 
★★松竹梅に隠された秘密★★
 
何やら週刊誌の見出し風ですが、文句なしにすごい秘密が隠されているのです。
初めて読んだときの驚きといったらありませんでした。少し長くなりますが、
紹介しましょう。
 
  陰陽の立場から松竹梅をみると、松は陽、竹も陽、そして梅は陰で
  ある。松竹梅は陰と陽が相まって完全な世界を構成するという哲理
  にもかなっているわけである。さらに、植物学の上から考えると、
  松竹梅が植物界を代表していることが知られている。植物を分類す
  ると、顕花植物と隠花植物に分けられ、顕花植物は裸子植物と被子
  植物から成り立っている。さらに被子植物は、単子葉類と双子葉類
  に分類される。ところで、松は種子を裸にしているので裸子植物で
  あり、竹は種子が実の中にあって、しかも子葉が一枚しかないので、
  被子植物の単子葉類、梅も被子植物であるが子葉を二枚持っている
  ので双子葉類というわけで、松竹梅が顕花植物の典型的な代表例と
  なっている。このすばらしい事実を古代人が知っていたのであろう
  か。松竹梅の意義の深さに、めでたいということよりも、頭の下が
  る思いがする。
  ついでに隠花植物について述べると、その代表として、正月飾りと
  してすでに述べた裏白をその代表にあげることができる。こうして
  松竹梅と裏白とで植物界をおおうことによって、正月をより意義の
  あるものにすることができるというわけである。
  
 ■植 物 界■ 
  ◆花が咲き実を結び種を作る(顕花植物)
    種が裸のもの  (裸子植物)………………………………… 松 
    種が実の中のもの(被子植物) 葉が一枚(単子葉類)…… 竹 
                   葉が二枚(双子葉類)…… 梅   
  ◆花は咲かせず胞子で増える(隠花植物)………………………… 裏白 
 
 (年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P28-29)
 
いかがでしょうか。先生の書かれた図を参考に、わたし流に書き加えると以下
のようになります。植物には、梅、桜のように種を作るものと、コケやシダの
ように花を咲かせないで胞子でふえるものがあります。種には、竹や梅のよう
に種が実の中に包まれているものと、松、銀杏(いちょう)、蘇鉄(そてつ)のよ
うに種が裸のままのものがあります。種が実の中にあるものをまくと、芽を出
した時に最初に出る葉が、一枚のものと二枚のものとあります。  
松竹梅というと、寿司屋などでは、上中並と同じように値段を表すのに使って
いますが、実は、こういう素晴らしい意味があるのです。本当に不思議ですね。
「なるほど!」と納得するばかりではなく、感動しませんか。昔から受け継が
れているものには、それなりの意味があるわけです。また、こういったことを
科学的に実証する先生がいらっしゃったのも、頼もしい限りではありませんか。
 
 
★★正月の食べ物★★
 
正月の食べ物といえば、雑煮とお節料理でした。しかし、現代っ子は、雑煮や
お節料理を食べているでしょうか。私の子どもの頃は、餅は正月しか食べられ
ませんでしたから、楽しみであり、しかもご馳走でした。今は、一年中、売っ
ていますし、いつでも食べられますから、魅力の点で引きつける力がないので
しょう。餅も季節感を奪われてしまった被害者です。非常食としても優れもの
ですけれど。
 
◇雑 煮◇
雑煮は、大晦日の夜に、神さまをお迎えするためにお供えをした食べ物を、神
さまと一緒に食べ、神さまの力を授かる食べ物です。雑煮は、必ず、青い葉っ
ぱを入れるのが決まりで、「葉っぱを入れる」「菜を入れる」から「名をあげ
る」「成功して名前が知られるようになる」に通じるので、青い葉っぱを入れ
るのだそうです。
 
餅は本来、丸いものですが、東日本では四角に切った切り餅を、関西では丸い
餅を使っています。雑煮の作り方ですが、東京では、餅を焼いてから椀に入れ、
具や汁を入れますが、大阪では、ゆでてから椀に入れます。私は父が関西の出
身でしたから、ゆでるのに慣れていますが、焼いてから食べるのも香ばしくて
おいしいものです。
 
織田信長に面白い逸話が残されています。ある年の元日の朝、信長の雑煮の膳
に、箸が片方しか添えられていなかったのです。あの短気な信長のことですか
ら、平穏に収まるわけがありません。しかし、怒り心頭に発した信長を、木下
藤吉郎(後の太閤秀吉)が、「今年から諸国をかたはし取りにされる吉兆でござ
います」と言い換え、ご機嫌が直ったそうです。「曽呂利新左衛門のとんち話」
の中に、病気見舞いに送られてきた松竹梅の盆栽が枯れたのを見て落胆した
秀吉を、新左衛門の機知で吉報に変えてしまう話があります。世の中、めぐり
合わせですね。
とんち話には傑作な話がたくさんありますが、おすすめは、寺村輝夫のとんち
話シリーズ「一休さん」・「吉四六(きっちょうむ)さん」・「彦一さん」
(あかね書房 刊)で、大人でもしっかりと笑えます(笑)。
 
(次回は、「正月の食べ物」他についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★

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        「めぇでる教育研究所」発行
    2019さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            第26号
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★入試問題を分析する★★
 
明けましておめでとうございます。
今年もご愛読のほどよろしくお願い致します。
志望校から招待状が頂けるよう、頑張りましょう。応援します。
 
門松と鏡餅には、文句なしに、すごい秘密が隠されているのです。植物界は、
顕花植物と隠花植物から成り立っていますが、その代表が勢揃いして、正月を
迎えているのです。門松は、花を咲かせ種を作る顕花植物から松、竹、梅が、
鏡餅の下には、花を咲かせず胞子で増える顕花植物から裏白が選ばれています。
昔から受け継がれているものには、やはり意味ありでした。
(拙著 メールマガジン「さわやかお受験のススメ 保護者編」より要約)
 
[一]入学試験の出題範囲
テストの形式は、わかりましたから、今回は問題の内容を紹介しましょう。そ
の前に、4歳や5歳児の心や身体は、どの程度、発達するのでしょうか。これ
は平成4年に改訂された「幼稚園指導要領」の解説に添付されていた資料で、
昭和23年3月に文部省から出された保育要領(幼児教育の手引き)の中で紹
介されたものです。
身体の成長は、現代っ子の方がまさっていますが、運動や知的能力、情緒の発
達や社会性などの発達の内容は、現代でも通用する幼児教育のバイブルともい
われているそうです。
こういった資料を見ると、学校側のねらいは、どの辺にあるか理解できると思
います。
 
★身体の運動的発達★
  [4 歳 児]                  
   1.スキップができる。                     
   2.片足立ちをしようとする。(少しの間ならできる)                
   3.走り幅跳び、立ち幅跳びができる。           
   4.ボールをじょうずに投げられる。
   5.はさみで形の切り抜きができる。
   6.ひもを結ぶことができる。(固結び)
                               
  [5 歳 児]      
   1.片足立ちができる。    
   2.小さい物を巧みに扱える。 
   3.三角形を模写する。    
   4.はしを巧みに使う。    
 
★知的能力の発達★
  [4 歳 児] 
   1.13まで正しく数える。                 
   2.重さの比較ができる。
   3.3つの数字の復唱ができる。                
   4.3つの命令を正しく実行する。
   5.語彙数の増加が著しい。                   
   6.発音が正しくなり、赤ちゃんことばがなくなる。       
   7.非常によく質問する。
   8.簡単な課題を解決する。           
 
 [5 歳 児]
   1.求知心が強くなる。                  
   2.想像と現実との区別が十分につかないところが間々ある。  
   3.1つのことを始める前に一定の計画を持っている。     
   4.用途によって物の定義をする。   
   5.手の指の数が正しく言える。    
   6.右と左の区別ができる。      
   7.成人との話が自由にできる。    
   8.いろいろな貨幣の名前をいえる。  
   9.昨日、今日、明日の区別ができる。 
   10.具体的推理ができる。  
 
運動テストやペーパーテストの内容を見ると、身体や知的な能力の発達を考慮
して、入学試験は行われていることがよくわかります。こういう標準的な発達
から逸脱しないばかりか、さらに生まれた月の差を考慮して試験を実施すると
発表している小学校もありますが、このデータを見ているとうなずけます。何
といっても、受験生は幼児だからです。
 
★情緒的発達★
  [4 歳 児]                     
   1.3歳児と同じようなことで泣きやすいが、だいぶ自制できるように
     なる。
   2.理由のない恐怖心(たとえば、暗やみに対する)が多い。
   3.かんしゃくは、ほとんど起こさなくなる。
   4.怒ったときの表情が次第に抑制されるようになってくる。
   5.小さい子供を可愛がることを喜ぶようになる。       
   6.反抗期が終わり、大人の権威や命令に従うようになる。
                          
  [5 歳 児]          
   1.泣くことが非常に少なくなる。  
   2.恐怖心が、やや 少なくなるのが普通である。            
   3.怒り、かんしゃくは、ほとんど抑制される。        
   4.感情や情緒は分化して、大人に見られる大部分の情緒が現われる。
    (例:はにかみ、恐れ、心配、怒り、しっと、うらやみ、失望、不快、
     いみきらい、親への愛情、小さい者への愛情、のぞみ、喜び、快い等)
 
★社会的発達★
  [4 歳 児]                     
   1.自分で着物を着たり脱いだりする。 
   2.排便のことは全部自分でできる。                    
   3.歯をみがく。                             
   4.顔を洗う。                         
   5.多人数の中にある自分というものを意識しはじめる。    
   6.他の子供たちと協同的に遊びはじめるが、2人か3人グループが多い。
   7.簡単な遊戯の規則を守ることができる。   
   8.ごっこ遊びが、最も盛んである。           
 
  [5 歳 児]            
   1.独立的で自信を持ち、従順になるので物事をまかせられる。 
   2.小さい者をいたわる。       
   3.自分の周囲の社会生活を遊びに取り入れる。        
   4.2人ないし5人ぐらいのグループで協同的に遊べる。    
   5.友達と遊ぶことを好む。     
   6.自己主張をし、他人への依頼感を持ち社会的協同性を持つようになる。 
 
いかがでしょうか。
親の手を借りずにできることが増え、一人の人間として、集団生活を送るため
に必要な能力の培われていく時期であることが、よくわかると思います。3歳
頃から始まっていた、親のもとを離れる準備が、完了する時期といえます。就
学前とは、小学校生活を送るにふさわしい能力を身につけ、自分の力で大地に
しっかりと足を踏張り、自力で立つ時です。
 
こんな大切な時に、過保護や過干渉な育児になり、さらに、知的な能力だけを
訓練して鍛えるのは、決して幼児にふさわしい受験準備ではありません。基本
的な生活習慣やあいさつなどをきちんと身につけさせ、子どもの感性に刺激を
与え、好奇心を引き出し、学習に意欲的に取り組める環境を作ってあげるのが、
幼児期にふさわしい受験準備であり、こういった意識を持つことが、小学校の
受験に取り組むご両親の、大切な心構えではないでしょうか。
 
よく練り上げられたカリキュラムをもとにした適切な指導は、決して過激で猛
烈な受験勉強ではなく、子どもたちが楽しく学習しながら、合格への道を歩む
パスポートであるはずなのです。お子さんは、教室へ行くことを楽しみにして
いますか。楽しみに通っているのであれば、心配ないでしょう。
 
「受験戦争の低年齢化!」「猛烈な準備に耐え、突破した子だけが合格する!」
などと言われているようですが、これも怪情報、うわさの一つです。こういっ
たことは、バブル経済の全盛期の頃の話であり、NHKの「お入学」やTBS
の「スウィート・ホーム」が放映され、「お受験」という言葉が生まれ、注目
を集めた時のことで、幼稚舎でさえ志願者が減ったことからも、小学校の受験
は、一つの転換期を迎えていると考えられます。
 
さらに、2011年3月11日に起きた東日本大震災は、「安全な通学」も学
校選びに欠かせない条件になり、躊躇されるご両親も増えたのではないでしょ
うか。皆様が参加されている公開模擬テストの参加者数の推移を見ても、私学
志向に変化が起きていることを見ることができます。
 
とはいえ、倍率の高い学校は、依然として入学の条件は厳しく、それなりの準
備は必要です。しかし、先程紹介したようなうわさを信じて準備を始めると、
親子で受験地獄に陥ることになりかねません。そのようなことを避けるために、
入学試験では、どのような問題をやっているのかを紹介しましょう。すると、
いろいろな形で出題されている様々な領域の問題は、幼児の日常生活と深いか
かわりのあることがわかるからです。         
 
 (次回は、「合否を判定する必須十項目」についてお話しましょう)

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