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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★[6] 推理・思考に関する問題(2)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第36号>
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この時期になると、説明会が開催されます。直接学校に訪れ、学校情報を得たり、雰囲気を感じたりできる貴重な機会ですので、少しでも関心がある学校の説明会には参加されると良いでしょう。
 
☆説明会報告-日本女子大学附属豊明小学校
 
女子の一貫校の良さについて校長先生からは、「女性の特質を活かし、性別のフィルターを持たずお互いを尊重でき、自分の良さをそのまま発揮し、発揮できるところ」とお話されていたました。
教育活動の特色として、「表現活動」「交流」「学年団としての教員の見守り」「成績表がない」「ICTの活用」「英語」「自学自動と実物教育」「探究活動」のお話がありました。がけ下教材園を活用した実物教育やお客様には必ずお礼のお手紙を書くというのは本校ならではと感じました。そして、大学の教員から環境問題の授業を受けたりなど、要所要所で一貫教育のメリットを教育活動に取り入れている様子も伝わってきました。
 
本校の求める児童像、家庭像のお話の中で「子どもに過不足ない愛情を注いでいる家庭」という説明がありました。「過不足ない」ということがポイントですね。なかなか難しいと思いますが、お子さんのためです。
 
最後に校内見学。
渡り廊下に飾られた図画工作の時間に作った作品、絵画の全員分の展示・掲示は、数も多くて圧巻。教育の特色を体現しているなと実感。
螺旋階段のある図書室は天窓から光が差し込み、子ども達にとって居心地の良い空間に違いないと感じました。
 
 
 
★★入試問題を分析する★★
 
 [6] 推理・思考に関する問題(2)
 
[図 形]
 
重ね図形、回転図形、対称図形などですが、かなり難しいですね。問題集を買ってきて、「さぁ、やるぞ!」方式は失敗しがちです。まず、保護者がやってみましょう。やってみるとわかりますが、折り紙やセロハン紙、それとA4位のビニールでできている袋や書類入れ、画用紙などを用意しておくと役に立ちます。遊びの感覚を忘れないことが大切で、特に女の子は、推理の問題を苦手としがちですから注意しましょう。
 
 
★重ね図形
 
2枚の絵を重ねるだけですから問題なさそうですが、何事も実験することが大切です。
1枚の紙にひまわりの花を描いて、それを透明な書類入れに挟み、今度は茎と葉っぱを、その上に描かせます。
書類入れに挟んだ紙を引き出して比べると、2枚の絵に分かれていることがわかります。                
これを理解した後に、自分の好きな絵を、同じ要領で描かせます。 
面白がって描くはずで、上下左右、そのままに重なることがわかれば問題ないでしょう。
 
 
 
★回転図形
 
言葉で説明すると、難しいですね。
こういった矢印[↑]を描いて、時計回りで実験すると、わかりやすいでしょう。
      ↑  →  ↓  ←   
      A  B  C  D
 
A がお手本です。これを90度回すとBになり、Bを90度回すとC になり、Cを90度回すとDになり、Dを90度回すとAに戻るわけです。
もちろん、幼児の世界ですから、90度といっても理解できません。ですから、90度、1回転は「カタン」で、180度、2回転は「カタン、カタン」と繰り返します。回転図形にはかなり難しい問題がありますから、理解できるまで、こういった矢印や上下の形が違っているものを使って、子どもと一緒にゲームの感覚でやることです。チューリップの花などを描かせてやってみるのも、いいでしょう。
 
問題によっては、錯覚を起こしやすいですから、その場合は切り抜いて、条件に合わせて動かし、どのように変化していくか、その様子をしっかりと確かめさせましょう。大切なことは、上下、左右がどうなるかを見極めることです。
プリントをぐるぐる回す子がいますが、初めのうちはいいのですが、これが習慣になると、推理する力はつきません。ただ、変化する様子を見つけているだけです。
 
この種のテストの目的は、推理・思考する力が、年齢にふさわしく培われているかを判定する問題ですから、仕掛けが理解できれば、プリントを回すことはやめて、考える力を養いましょう。
 
 
 
★対称図形
 
正直にいって難しいです。
大人でも音をあげたくなる問題があります。問題集先行型は失敗しがちです。
折り紙の出番ですね。はさみも使いますから、手先も器用になります。1枚の折り紙を半分に折った背の側(山折りになっている側)に、図形などが描かれており、それを切って広げた場合にどうなるか、それを推理する問題です。
 
半分に折った折り紙に、何回もかいては切る、この実験を繰り返し、対称を理解することですね。
折った背の側にかかなければ、形はできてもバラバラ事件になります。まず、これに気づかせます。雪だるま、クリスマスツリー、チューリップなど左右が対称の絵から始めて、図形に移っていくのが無理のない方法です。
 
マスターできたら、四分の一に切った折り紙を使い、いろいろな対称図形を切り取り、その両方をスケッチブックに貼りましょう。この貼り方にも、工夫が必要です。
 
「手は第二の脳」でも詳しくお話しましたが、糊の使い方は難しいものです。
最初は、折り紙の上部左右の二ヶ所に、切り取ったものには上のところの一ヶ所に、ほんの少しだけ糊を付け、貼る練習をしましょう。
繰り返し練習をすることで、糊の適量も、全体に薄くのばすこともわかってきます。これは、とても大切な作業ですから、家でしっかりと身につけてください。こういったことまで教室で指導を受けるのは、時間の無駄遣いと考えましょう。
 
うまく貼れない場合は、箸の使い方、ボタン掛けなどの基本的な生活習慣にも、影響が出ているのではないでしょうか。繰り返しますが、幼児の手作業は、脳と運動機能の連携作業であることを思い出してください。制作の問題で、のりを使うケースもあります。使い終わって手を拭く指示もあります。出題の意図は、どこにあるか、明確ですね。
 
難しい問題もありますが、これも実験で克服できます。
半分に折った画用紙と、はっきりと色のつくクレヨン、赤色か黒色を用意します。
 
折った画用紙の左側中央に矢印←を描いて、しっかりと色を塗ります。
そして、上の左端に三角▲、下の折り線のそばに四角□■を書きます。
きちんと塗らないと実験は成功しません。
そして、点線から半分に折って重ね、上からゴシゴシと擦ります。
これも、しっかりと擦らないと写りません。
そして、ひろげます。
まったく逆向きになるはずです。
矢印は→、上の左端の三角は右端に、下の□■は■□と、これも逆になっています。
折り線に近い■は、逆になっても線に近く、線から遠い□は線から離れています。
 
この実験で、位置や向きが逆になることを確かめて、問題に挑戦しましょう。
難しい問題は、半分に折った紙に、黒色か赤色で問題と同じように線を引き、重ねて擦ります。
そして、どのようになったかを、子どもに説明させましょう。
口でいえないときは、まだ十分に理解していませんから、再び、実験です。
 
同じことですが、半分に折った紙に矢印を描き、カッターなどで切り、広げてみましょう。 
 
左右が逆になっていることを確かめられます。
 
手先も器用になりますし、後で出てくる巧緻性にもつながっていきます。
これを十分に理解してから、問題に取り組みましょう。
「右側に折って重ねるのだから、左と右が逆になるの!」
こんな乱暴な説明をする保護者はいないと思いますが、言葉だけで説明しても、わかりません。
まだ、左右の弁別もあやしいのですから、とにかく、実験を繰り返すことです。
 
スタンプの問題や湖に映った逆さ富士のように、水に映るとどうなるかといった問題と一緒です。特に、スタンプの問題は、大人でも錯覚しやすいですから、しっかりと実験をし、どのように変化するかを見極めることが大切です。
 
推理の問題は、いきなり問題集でやるのは、やめた方が賢明で、いたずらに混乱するだけではないでしょうか。
 
まず、保護者が学習し、理解をしておくことですね。そして、実験、実験の繰り返しです。実験は、疑問を解決する楽しい学習であり、遊びの感覚で取り組めますから、子どもたちも喜ぶはずです。
このことを忘れないでほしいですね。 
 
春休みの講習会が始まります。会員の方は、11月からの学習を確かなものとし、さらなる飛躍へ。4月から通会を予定されている皆さん方は、「最初の一歩を確実に」するために、講習会から始めることをお勧めいたします。頑張りましょう。
 
 
 (次回は、「推理・思考に関する問題(3)」 についてお話しましょう) 

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第5章(4) 雛祭りとお彼岸ですね

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第19号-
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第5章(4) 雛祭りとお彼岸ですね
 
【三月に読んであげたい本】 
 
◆たまごから生まれた女の子◆(長崎県の話)
 
 むかし、ある所に、金持ちの夫婦がいましたが、子どもに恵まれません。奥さんは、子どもを授かるように神さまに願をかけていました。
 ある日のこと、家の前に手まりほどのたまごが50個、置かれていました。
 神さまのお恵みと喜び、たまごをかえそうという奥さんに、主人は反対するので、いきさつを紙に書き、川へ流したのです。それを貧しい漁師の夫婦が拾い、書付を読み、たまごをかえすことになりました。やがて、たまごから赤ちゃんが生まれ、夫婦は50人もの子持ちとなったのです。そして10年たち、50人の子どもは元気に育ちますが、働きすぎたお父さんは病気でなくなります。そこで、子ども達はお母さんから川上から流れてきた話を聞き、もう一人の母さんを訪ね、会うことができたのです。50人の娘に囲まれ幸せでしたが、育ててくれた川下のお母さんの恩を忘れられず、娘達は、川下と川上の二人のお母さんが亡くなるまで、親孝行をしたのでした。
 この話は、村々へと伝えられ、女の子が生まれた家では、この娘達にあやかろうと、たくさんの人形を飾り、よもぎとお米を供え、祝うようになったのです。三月三日のひな祭りの始まりを伝える話となっています。    
          日づけのあるお話 365日
             3月のむかし話 谷 真介 編著 金の星社 刊    
 
たまごから50人の娘が生まれるのも不可思議な話ですが、「つぶの長者」のように、たにしに変身した若者が登場するおとぎ話の世界ですから、理屈は抜きです。
 
 
 
◆ももの花酒◆   常光 徹 著
 
 むかし、長者の家に、器量がよく、気だてのやさしい、一人娘がいました。
 ある晩のこと、訪ねてきた若者と仲良くなり、親も喜んでいたのですが、不思議なことに、若者は、日が暮れると姿を現し、明け方になると音も立てずに帰ってしまい、どこに住んでいるのかわかりません。変だと思い始めた頃、娘の顔が青白くなり、やせほそってきました。心配したお母さんは、糸を通した針を娘に渡し、若者が寝ている間に、この糸を着物につけておくようにいったのです。その夜のことでした。寝ていた若者の着物のすそに針をさすと、若者は大声をあげてとび起き、何やら叫びながら暗やみの中を走り去っていったのです。翌日、お母さんが、若者に付けた糸をたどって行くと、山奥の大蛇が棲むといわれている淵に、吸い込まれるように入っているではありませんか。すると、淵の底から、うなり声がするのです。お母さんが聞き耳を立てると、娘は蛇の子をみごもっているというのです。驚いたお母さんでしたが、この災難から逃れる方法を、大蛇の親子の話から聞き出し、見事に解決します。その方法とは、不気味な話ですが、三月の節句に、ももの花酒を飲むいわれが語られています。              
      おはなし12ケ月 三月のおはなし
          「かえるとぼたもち」 松谷みよ子/吉沢和夫 監修
                    日本民話の会・編 国土社 刊 
 
ももの花酒に代わり白酒を飲み始めたのは江戸時代頃だからだそうですから、この話はそれ以前から伝えられてきた話であることがわかります。
 
恐い話ですが、この種の話は、よく聞きます。日照りが続き、農作物が駄目になってしまうことを心配したお百姓さんが、「雨を降らせてくれたら、娘を嫁にやってもいい」とつぶやいたのを、やはり蛇が聞いてしまい、雨を降らせ、娘を嫁にもらう話も、主人公は、蛇。その蛇を退治する方法は、針とひょうたん。
 
妖怪蛇、蛇のたたり、蛇の執念など、蛇ほど悪者扱いされるのも珍しいですね。
聖書でも禁断の木の実を食べるようにそそのかし、その罰として神さまから地をはって生きるように定められたのも蛇でした。しかし、蛇は水の神さまのお使いだそうで、干支(えと)にも堂々と選ばれていますが、見た感じからもなかなか親しむのは難しいですね。
 
古事記にも似たような話があります。
 
男の着物に針をさすのは同じですが、男の正体が神さまであるところが古事記らしく、糸がわずか三輪しか残っていなかったことから、神さまが宿るといわれた奈良の三輪山の命名の由来となっているそうです。三輪山に登り、そこにいた蛇とにらめっこをした怖い話が、黒岩重吾の「古代史の旅」(講談社刊)に出ていましたが、蛇は、まばたきをしないから余計に恐ろしいですね(笑)。
 
 
 
ところで、民話といえば柳田国男、柳田国男といえば「遠野物語」を忘れることはできません。面白い話があります。原作は文語体ですから読みづらいですが、口語体で書かれた小学生上級用のものは、楽しく読めます。
 
◆ふえふき三太とオイヌ◆
 
 むかし、遠野盆地の東にオイヌ(狼)の群れの棲む笛吹峠があり、その近くに住んでいた笛の上手な三太わらし(子どものこと)の話が伝わっています。
 三太は、父(とう)ちゃも亡くなり、後から来たまま母(かぁ)ちゃと暮らしていましたが、母ちゃは、三太につらくあたり、笛吹牧場の二才駒の守り役をさせて、オイヌに食われればいいと考えました。牧場に住むことになったある日のこと、のどにとげを引っかけたオイヌの子を助けたことから、オイヌ達が三太の周りに寄って来るようになったのです。三太は淋しくなると、父ちゃ譲りの横笛を吹き、心をまぎらせていましたが、オイヌ達が、その音色を聞くようになり、二才駒の守り役をしてくれるのでした。様子を見に来た母ちゃは、三太も二才駒も、オイヌ達と遊んでいるのにびっくり。腹を立てた母ちゃは、三太を焼き殺そうと、牧場に火をつけたのですが、オイヌ達は、火をくぐり、三太と二才駒を、気仙沼の竜神洞に通じるといわれる風穴の方へ導くのでした。炎に包まれ、逃げ回っていた母ちゃを見た三太は母ちゃも助けようとしました。オイヌ達も一緒になって、風穴へ誘い込み、底へと進んでいったのです。 そして、三太達は、二度と風穴から出て来なかったのですが、時折、風にのって、笛の音が聞こえてくるという。そこで里の人達は、この峠を笛吹峠と呼ぶようになったのです。                
 この話には続きがあり、桃の節句に、気仙沼の竜神洞には、不思議な神楽人達が集まって、竜神神楽を奏でる伝えがあり、火事があった後には、笛の上手な若者が加わり、母ちゃと十頭の二才駒とオイヌ達の群れが、神楽人達を守るように控えていたそうです。
  「遠野物語」の国へ 平野直 著  つぼのひでお 絵 講談社 刊
 
柳田国男が民俗学の研究に生涯をかけたきっかけは、少年の日に、川べりの地蔵堂に奉納されていた、母親が赤ん坊を殺す様子を描いた絵馬を見た時の印象と、「その絵馬が何のために掲げられているか」に疑問を持ったときに始まると、本書の読書ガイドに黒沢浩教諭は指摘しています。原文を紹介しておきましょう。                            
 
 「国男には、ふと目にした絵馬から、かつて、恵まれない暮らしに苦しんでいた人々に思いがおよぶ誠実な心があったのです。国男が伝説や世間話に興味や関心を持ち、それを記録して発表したのは、名もない人々の間に、語り伝えられてきた話の中に、人々のさまざまな願いがこめられていることを、広く知らせたかったからではないでしょうか。」
 
「遠野物語」は広く知れ渡っていますが、案外、読まれていない方が多いのではないかと思います。原作を読むのはしんどいですが、小、中学生用に書かれたものがあり、これで十分に原作の雰囲気を味わえます。民話は、祖先が残してくれた貴重な文化遺産であることも忘れたくないものです。
 
笛の出てくる話で忘れられないのは、ロバート・ブラウニングの「ハメルンの笛吹き」でしょう。笛吹き男は、その音色でネズミを退治したにもかかわらず、正当な報酬をもらえなかったために、足をけがしていた一人を除き、町中の子ども達を笛の音色で誘い出し、姿を消してしまった恐ろしい話です。ドイツのハメルンで実際にあった事件で、その原因は何であったかわかっていないそうです。
 
 
 
ところで、狼は犬の祖先になるわけですが、アメリカの民話に、その経緯を描いた「草原の狼と高原の狼」があります。
                      
 食べ物のなくなった森に棲む二匹の狼が、インディアン部落を訪ね、親切なおじさんから食料を分けてもらいます。食料のありかを知った一匹の狼は、それを全部盗もうといい、もう一匹の狼はとめますが、聞く耳をもちません。
 狼は仲間を誘いに森に帰ります。インディアンに知らせれば友を失うことになり、悩んだ末に、おじさんに事の次第を話します。仲間と襲撃してきた狼を、インディアンは「この恩知らずめ!」と撃退します。「お前は、正しい心を持っているから、我々と一緒に暮らそう」ということで、食べ物の心配がなくなった草原の狼は犬となり、人間と暮らすようになったのでした。
 
動物の恩返し、心温まる触れ合いは、メルヘンの世界でしか経験できないだけに、子どもたちは新鮮な驚きを感じるようですね。
人間と動物のロマンを描いた作品は、間違いなく子どもの心を揺さぶります。
 
狼を主人公にした話で、椋鳩十の「丘の野犬」を紹介しましょう。
 
◆丘の野犬◆ 
 
 野生の狼が人間と親しくなり、家で飼われるようになったのですが、鶏が盗まれる事件が起き、村の人々はアカ(狼の名前)ではないかと疑い、毒の入った肉を食べさせ殺そうとします。利口なアカは、それを見抜き食べようとしません。
 アカを捕まえに来た役人は、主人が与えれば食べるだろうと考え、実行を迫ります。「食べないでおくれ!」と祈りながら毒の入った肉を与えます。一口食べたアカは、苦しそうに叫び、一目散に森の中へ駆け込んでしまったのでした。
 アカと知り合った森の丘で、意気消沈し、しょんぼりと過ごしていたある日のこと、そのアカが、突然、姿を現したのです。「アカ!」と叫ぶ主人公を、じっと見つめていたアカは、そのまま森の中へ姿を消し、二度と現れませんでした。しばらくたって、鶏を盗んだのは、町のならず者だったことがわかったのですが……。
            「野犬物語」 椋 鳩十 著 フォア文庫の会 刊
 
 
「母と子の20分間読書」を始め、読書の素晴らしさ、楽しさを普及する運動に力をつくした椋鳩十。
この「丘の野犬」のほかに、戦争で殺さなければならなかった飼い犬と子どもとの交流を描いた「マヤの一生」、子熊を助けようと滝つぼに飛び降りた母親の勇気を描いた「月の輪熊」、追っていた人間を助ける「片耳の大シカ」など、人間と動物のロマンを描いた作品があります。子どもにもわかるように読んであげましょう。
 
   (次回は、「花祭りでしょうね 卯月」についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★[6]推理・思考に関する問題(1)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第35号>
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★★入試問題を分析する★★
 
 
[6] 推理・思考に関する問題(1)
 
系列完成、欠所補完、図形、科学性に関するもの、鏡映像などの問題ですが、これもかなり難しいですね。知能指数(IQ intelligence quotient 知能検査で得られた精神年齢を、実際の年齢で割り、百倍した数で、100が普通程度を表す)を調べる知能テストに、このような形式の問題があるのは、お母さん方もご存じだと思います。
 
かつて、この種の問題が小学校入試の基本であった頃に、「IQが120以上でなければ合格しない!」とのうわさがまことしやかに流れたことがありました。ある小学校の説明会で校長先生が、「IQが120位ないと入学してから大変ですよ」とおっしゃったのですが、これに尾ひれがつき、「140以上なければ合格できない!」と姿を変え、指数を上げるために繰り返し練習することが行われたものでした。
 
事の真相を知っていましたから、無責任なうわさが恐くなり、「そんなことをしていると、お子さんの実際の知能指数がわからなくなるからやめなさい」と、その弊害を保護者の方にお話したことがあります。
 
本来、知能テストは、たとえば5歳の子どもなら、他の多くの5歳の子どもと比べて、知能の発達の度合いを調べるテストで、訓練をし、無理に上げるものではありません。今は、そういったうわさも誤解も、姿を消したようですね。
 
 
 
[系列完成]
 
動物や果物、記号やさいころの目などが、ある決まりで並び、ところどころに空欄がもうけてあり、そこに入るものを考える問題で、おもしろいことに美醜の感覚やリズム感まで刺激を与えていることがわかります。
 
    ○△□○△□○△□○△□○△□○△□
    ●○△●▲○▲□●○△●□○▲●
 
上段は、見た目もきれいで、リズミカルで心も落ち着きます。
下段は、見た目も煩わしく、不協和音が聞こえそうで、心もいらだちます。
きれいな並び方には、一定の決まりや規則性があり、それを見つける問題です。
 
 1  リンゴ・バナナ・ミカン・リンゴ・バナナ・ミカン・リンゴ・( )
 2  □○△( )□○△◎( )○△◎
    ↑     ↑
   (左人差し指)(右人差し指)
 
3つか4つ、多くても5つまでの系列ですから、上の問題のように、「リンゴ・バナナ・ミカン・リンゴ・バナナ・ミカン・リンゴだから、バナナだな!」と口調もなめらかで、抵抗なく出てきます。
 
下のような問題は、ちょっと困ります。
しかし、左右の人差し指で、同じものを(この場合は□)押さえて、右へ1つずつ移動させると、□○△◎の決まりであることがわかります。
これを「お引っ越しゲーム」といったりしますが、決まりを見つけるゲーム感覚でやると、子どもは面白がって挑戦します。
 
このゲーム感覚ほど、子どもの学習意欲に刺激を与えるものはないでしょう。
 
身の回りに注目してみましょう。
この決まりを守っているものが、たくさんあると思います。
ブラウスやセーターの図案、カーテンの模様、台所やふろ場のタイル、外に出れば、舗装された道路のタイルなど、きちんとした決まりで並んでいませんか。
お子さんと一緒に、決まりを見つけるのも楽しいものです。
大切なのは、こういったことから好奇心の芽を養うことです。
好奇心は、やる気を起こす起爆剤で、その意欲から自発性も芽生えてきます。
 
 
 
[欠所補完]
 
文字通り、欠けているところを補い完成させる問題で、ジグソーパズルの感覚で取り組めます。
 
全体の中で欠けている部分を推理し、4枚程の中から、そこに入るものを見つけます。正解は1枚でダミーが3枚入っていますから、それを除いていけばいいわけです。
 
直感力のすぐれている子は、サッと見つけますが、それで安心して、「うちの子、頭、いいわ!」などと早合点をすると、後々、困ったことになりがちです。   
選択肢は、わずか4枚で、確率四分の一ですから、偶然に答えが見つかる場合もあるからです。
 
時間が、かかってもかまいません。
1枚、1枚、比べて、
「これは、ここが違っている! これも違う!」
と、辛抱強く比較していくことが大切です。
 
繰り返しますが、この違いを見つけることは、観察力を培う大切な作業です。
しかも、根気が必要ですから持久力もつきます。
そこから、じっくりと物事に取り組む姿勢も身につきます。
 
以前にも紹介しましたが、イソップ物語の「うさぎとかめ」の話を思い出してください。油断をいさめた寓話ですが、ひらめき型とじっくり型の話として読むと、幼児期の教育のあり方について、重要なヒントになっているのではないでしょうか。
 
このイソップの話、明治時代の小学生の教科書の題名は、何と「油断大敵」です。
 
ウサギさんはひらめき型の直感派で、カメさんはじっくり型の思考派です。
小学校の低学年までは、断然、直感派がリードをします。
 
選択肢が2つか3つの場合は、直感力の優れているひらめき型のウサギさんは、あまり苦労することなく答えを選び出せます。じっくり型のカメさんは、選択肢が少なくても、一つ一つ検証して答えを出しますから、時間はかかりますが、試行錯誤を重ねることで、きちんと答えを出します。
 
ところが、分数や小数、光合成といった、目に見えない世界の学習が始まる中・高学年になると、思考派が徐々に頭角を現します。
 
じっくり型の思考派のカメ型タイプの子は、欠所補完の問題でも、一枚一枚、きちんと比べて納得していますから、慎重に考えながら物事に取り組む習慣が身につきます。
 
しかし、どちらがいいのだろうなどと、決めてかかるのはどうでしょうか。
いろいろなタイプの子がいて、当然です。
 
「じっくり型の、思考派の、カメ型のタイプは理系だな!」と思い込み、「何で、もっと、じっくりと考えないの!」となるようでは、子どもには迷惑な話になりかねません。
問題集をやる時などに、答えが間違っていると、こう言いがちではないでしょうか。
 
しかも、そういう時の大人は、恐い顔をしていますから、子どもも考えようとせずに、隣の絵をさっと指差したりします。
それも間違っていると、
「何回、言ったらわかるの。考えなきゃ駄目だと言っているでしょう!」
これでは何回やっても同じです。
子どもは、怒られたくない一心で答えているだけですから、考えていません。
保護者の方には、考える時間をあげていないことに気づいてほしいですね。
 
幼児の場合、正解を求めるだけが学習ではありません。
なぜ、「どうしてなの?」「どういう風に考えたの?」と聞いてあげられないのでしょうか。
不思議な気がしますね。
 
「正解は一つしかない」と信じて疑わないからではないでしょうか。
 
答えは間違っていても、意外に、面白いところへ目をつけているときもありますから、その理由を聞いてあげましょう。
 
それから間違っていることを説明してあげれば、子どもも納得します。
こういったことをしてあげずに、子どもの考えを無視して、繰り返し、ひたすら正解なるものを求めていると、大人の顔色を見て答えはじめます。
これでは学習ではなく勉強です。
「強いて勉めるのが勉強」であることを思い出してください。
大人の気持ちを満足させるためにやっているようなものですから、やめた方がいいですね。
 
大人は何とか工夫しますが、できるように配線が組みこまれないとできないのが子どもです。
 
子どもが「わからない」という時は、「本当にわからない」のです。
 
そこを考えてあげないと、お子さんはパニック状態に陥りがちです。
いやな思いをさせては、小学校へ入る前から勉強嫌いな子になりかねません。
「忍の一字」で過ごした、おむつを外した時のことを思い出してください。
 
ところで、「うさぎとかめ」の負けたウサギはどうなったかご存知でしょうか。
「カメに負けた駄目ウサギ」として、ウサギ村から追放されますが、「子ウサギをえさに差し出せ!」と脅迫してきた狼を負かし、無事、ウサギ村へ復帰します。
 
余談になりますが、ホワイトデーの習慣は日本生まれ、中国、台湾、朝鮮など東アジアの一部で定着しているが、欧米にはない。記録として残っている元祖は、昭和48年(1973)に不二家とエイワが協力し、チョコレートのお返しにキャンディやマシュマロを贈ろうと「メルシーバレンタイン」キャンペーンを開催したとの記事が読売新聞にある。その中でホワイトには「幸福を呼ぶ」「縁起が良い」という意味があるということで、1ヶ月後に設定したと伝えている。(「ウィキペディア フリー百科事典)より要約)
 
デコレーションケーキといい、お菓子屋さんのたくましい商魂ですね。
 
そのホワイトデーですが、バレンタインデーは様々なバリエーションが出てきましたが、ホワイトデーはどうなっていくのでしょうか。
 
 
(次回は 「推理・思考に関する問題(2)」についてお話しましょう。)

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第5章 雛祭りですね(3)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第18号-
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第5章 雛祭りですね(3)
 
★★早春賦、いいですね★★
 
この頃になると思い出すのが「早春賦」です。賦は「詩、歌」のことですが、なぜか私は、この歌を含めて「春のうららの隅田川」の「花」、「菜の花畑に入日薄れ」の「朧月夜」、「兎追いしかの山」の「ふるさと」などは、お姉さんたちの歌でなくては承知できないと、かたくなに思いこんでいました。小学校で習った歌、どのくらい歌えますか。
 
 
  早春賦
  作詞 吉丸 一昌  作曲 中田 章
 
 一 春は名のみの 風の寒さや
   谷の鴬 歌は思えど
   時にあらずと 声もたてず
   時にあらずと 声もたてず
 
 二 氷解け去り 葦は角ぐむ
   さては時ぞと 思うあやにく
   今日もきのうも 雪の空
   今日もきのうも 雪の空
 
 三 春と聞かねば 知らでありしを
   聞けば急かるる 胸の思を 
   いかにせよと この頃か
   いかにせよと この頃か
 
格調高い文語体の詩を、現代風に訳した歌詞をブログで見つけました。少し長くなりますが、紹介しましょう。早春にふさわしい、しゃれた、さわやかな口調がいいですね。
 
作詞された吉丸さんが立春を過ぎた安曇野の地を歩きながら、遅い春を待ちわびる思いを詩にしたといいますから、そういう意味では、ちょうど今ぐらいの時期を歌ったものだといえます。〔中略〕文語体で書かれた歌詞を現代風に訳すとこんな感じでしょうか。題して〔春の誘い〕「いざない」と読んでいただければ……。
 
 一 春というには名前ばかりの風の寒さだね
   谷のウグイスもさえずろうとしているけれど
   まださえずるときではないと声も立てないんだから
   まださえずるときではないと声も立てないんだから
 
 二 氷はとけて消えたし 葦は芽をふくらませる
   さあ春は今だと思ったけれど あいにく
   今日も昨日も雪模様の空なんだ
   今日も昨日も雪模様の空なんだ
 
 三 暦の上で春と聞かなければ知らなかったのに
   聞いてしまうと急がされる気になってしまう
   この胸の思いを
   どうしろというのかな この頃の季節の進みのじれったさは 
   どうしろというのかな この頃の季節の進みのじれったさは
     (http://xmas-count-down.com/c01/c4/index.htm)
 
 
 
★★彼岸と春分の日★★
 
「暑さ寒さも彼岸まで」、お彼岸は、秋分や春分の日を中心に前後3日間をいいます。春分の日を迎えると寒さもこれまで、秋分の日には暑さもこれまで、という気持ちになったものです。お墓参りや、お坊さんにお経をあげてもらうなどして、祖先の霊を供養しますが、これは今も続いています。いいことではありませんか、お彼岸は春秋の2回です。2回ぐらいお墓参りしないと罰が当たります。ご先祖さまがいたからこそ、「わが人生あり」なのですから。
 
彼岸とは文字通り「向こう岸」ということで、これに対して「こちら側」は此岸(しがん)という。向こう岸、それは阿弥陀様の住む極楽浄土で、祖先の霊が安んじているところであり、こちら岸は生老病死の四苦が在る娑婆の世界、すなわち生きている現世をいう。
人は極楽往生をしたいと願い-生死(しょうじ)の此岸を離れて涅槃(ねはん)の彼岸に至る-によって、彼岸という習俗が生まれてくる。
 (年中行事を「科学」する 永田久 著 日本経済新聞社 刊 P90)
 
日本には、正月に初日の出を拝むように、太陽信仰があります。その太陽信仰ですが、春分の日や秋分の日には、太陽が真東から出て真西に沈みます。極楽は西にあるという西方浄土を説くには、ぴったりなのです。
    
水の川と火の川を貪(むさぼ)りと怒りにたとえ、この二つの河にはさまれた太陽の沈む一筋の白い道-二河白道(にがびゃくどう)を、お釈迦さまと阿弥陀さまの招きを信じひたすら念仏を唱えながら、死者の魂はやがて西方浄土に達するのである。
 (年中行事を「科学」する 永田久 著 日本経済新聞社 刊 P91)
 
というわけで、彼岸にある西方浄土へ行き着きたい願いと思いから、仏事の彼岸会(ひがんえ)の行事が生まれました。彼岸会が、人々の心をつかんだのは、念仏さえ唱えていれば、先祖の霊を慰め、自分も彼岸に到達できるという教えですから、手続きが簡単で、わかりやすいためでした。お布施も必要ありません。
 
それにしても、信仰に関して私たちは、合理的というか、ご都合主義というか、不思議で、おかしな民族ですね。東から昇る太陽は日輪といって、あれは天照大神で神さまです。西には西方浄土の極楽があると信じて夕日を拝む阿弥陀さまは仏さまです。海原のはるか彼方に「常世の国」が、川上の彼方には「神の国」があると信じられていました。これでは、仏さまと神さまが共生していることになります。「困ったときの神頼み」、本気で信じていないのでしょうね。
こういう国って、日本以外にあるのかなと思っていたら、何と、あるのです。
 
平岩弓枝さんの「風よ ヴェトナム」の解説を書かれた井川一久氏によるとこうなのです。
 
「ヴェトナムは、東南アジア唯一の大乗仏教と神道(タンダオ)の国で、北部と中部の村々には必ずお寺とお宮がある。人々は箸だけで米飯を食い、豆腐と漬物と緑茶を好み、陶磁器と漆器を愛し、一弦琴や三弦琴(三味線)を楽しみ、旧正月(テツト)にはお年玉をばら撒く」
 
 
 
★★おはぎ★★
 
お彼岸といえば、「おはぎ」です。またの名を「ぼた餅」とも言います。もち米にうるち米を混ぜて炊いて、軽くついてまるめたものを、あんこや黄な粉で包んだものです。どうしてお彼岸に「ぼた餅」を食べるのでしょうか。
 
「ぼた餅」は、日本古来の太陽信仰によって「かいもち」といって、春には豊穣を祈り、秋には収穫を感謝して、太陽が真東から出て真西に沈む春分・秋分の日に神に捧げたものであった。それが、彼岸の中日が春分、秋分であるという仏教の影響を受けて、彼岸に食べるものとなり、サンスクリット語のbhuktaやパーリ語のbhutta(飯の意)が、「ぼた」となり、mridu,mude(やわらかい)が「もち」となって「ぼたもち」の名が定着したのである。
 (年中行事を「科学」する 永田久 著 日本経済新聞社 刊 P97)
 
何とぼた餅は、日本語ではないのですね。
「牡丹餅と書くのではありませんか」といわれるかもしれませんが、これは後の話だそうで、語源は、サンスクリット語やパーリ語だったのです。
 
「ぼた餅とおはぎ」の呼び名の由来ですが、春の彼岸は牡丹の咲く季節なので「ぼた餅」、秋の彼岸は萩の咲く季節なので「おはぎ」と称されるようになったという説がありますが、まだ他にも諸説あるようです。
 
 
★★春分の日の昼夜の長さは、同じではありません!★★
 
「……?」、こうなるのは、私だけでしょうか。これも知りませんでした。春分の日も、秋分の日も、昼と夜の長さが同じだと、習ったことはありませんか。
ところが、違うのです。
 
秋分、春分の日には昼夜が同じではなく、実は昼は夜より約16分48秒長いのである。ちなみに昼夜の長さが同じになる日は、北緯35度の地域では3月17日と9月27日である。
 (年中行事を「科学」する 永田久 著 日本経済新聞社 刊 P97)
 
その理由は、日の出、日の入りは、共に太陽の上縁が地平線に達したときをいうので、太陽は地平線より下にいることになるのですが、ここに問題があるのです。何やら難しい解説がなされているのですが、結論だけにしておきます。
 
大気は、光を屈折するので、太陽は沈んでいても、本当は、真の位置よりも浮き上がって見えるのです。早い話が、太陽が地平線に接しているように見えても、実際は、下に沈んでいるので、その差を計算すると、昼と夜は、同じではなくなるのだそうです。16分48秒、48秒まで計算できるんですね。
 
(次回は、「三月に読んであげたい本」についてお話しましょう)
 
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★[5]常識に関する問題(2)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第34号>
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≪ 学校行事情報 ≫
 
 ●国府台女子学院小学部 ひなまつり・6年生を送る会
      日 程 3月8日(金)9時30分から
          予約不要       
  
 ※お知らせ
  キリスト教学校合同フェア(3月20日[祝・水])は事前予約制になっています。2月20日からの申込になっていますので、ご興味がある方は満席になることも考えられますので、お早めにお申し込みください。
  
  志望校のHPはこまめにチェックするようにしましょう。
 
 
 
★★入試問題を分析する★★
 
[5]常識に関する問題 (2)
 
[公衆道徳・躾に関する問題]
 
公園の中で、いろいろなことをしている子どもの絵を見て、やってはいけないことをしている子どもに×をつけたり、服を一人で着たり、後片付けができていない絵などから、自分一人でできた方がいいと思うものに〇をつけたりする問題です。いうまでもありませんが、入学試験のために身につける知識ではなく、しつけであり、マナーであり、基本的な生活習慣ですから、ご両親の育児の姿勢、教育方針をみています。 
                                 
次にお話するのは、実際にあったことです。
電車に乗ると、子どもは、なぜか、外を見たがります。それは、いいのです。
しかし、靴を脱がない子がいます。お母さんの言葉、ショックでした。
「○○ちゃん、お靴脱ぎますか、脱ぎませんか?」
「脱ぎたくないの」
「そうですか」
これで、おしまいです……!
良いのでしょうか。
 
着ている制服から、大学まである総合学園の幼稚園であることがわかりました。
親は、一貫教育制度のある附属幼稚園に入れて、子どもの人生航路の設計図なるものを、小さい頃からキッチリと引いてあげているにもかかわらず、他人様と共存して生きるために最低限必要なルールは、子どもの判断に任せていいのでしょうか。
 
いいわけはありません、これは逆です。
 
人生航路は自分で開いていくものですが、しつけは親が責任をもって子どもに身につけさせるものです。このような考え方を「子どもの自主性を認める」とはいいません。
 
「放任」です。
 
親の責任を放棄していることに気づいてほしいのですが、こういう保護者が増えているように感じます。誰がかわいそうかと言うと、子どもです。後で困るのは、子ども自身ですから。
 
試験で電車の中で悪いことをしている子に×をつけても、実際に電車に乗って、靴を脱がずに外を見ているのでは、おかしいですよね。これは常識であり、守るべきルールです。知識として知っていても「実際にはできない」、どういうことでしょう。
 
これは知識と知恵の差です。
 
知識は知っているだけで、知恵は知っていることを実行する心の働きです。幼児期の知識の詰込みは、こういう結果になりがちではないでしょうか。こんな本末転倒なことを許していると、幼児の世界もおかしくなります。
 
「三つ子の魂百まで」は、幼児期に身につけたことは、大人になっても、そのまま受け継いでいくことを戒めた先人の知恵です。良い習慣をきちんと身につけてあげるのは、お子さんにとっても幸せであり、大切な財産になると思います。「習慣は第二の天性である」と古代ローマの政治家、哲学者であるキケロもいっています。何も哲学者を出すこともありませんが、「大切だ」といいたいのです。
 
 
 
[その他の問題]
  
果物や野菜を、縦や横から輪切りにしたものから、何であるかを推理する問題もあります。
これも体験でしょう。
 
子どもは、見えないところを見たがるものです。りんごやみかんを食べるとき、ただ、皮を剥くだけではなく、縦や横に輪切りにして、見せてあげましょう。
喜びます。
野菜なら、ピーマンなどを切ってみせると、不思議そうに見ています。ついでに、匂いもかがせてみましょう。玉ねぎなどは、涙を流しても見たがります。
 
「どうしてレンコンはあんなにたくさん穴があいているのかな?」と聞かれることもあるでしょうね。子どもの質問はするどいですね。今はインターネットで簡単に調べられますから、お子さんが「なぜ?」と聞いてきたときには後回しにせず、きちんと答えてあげましょう。
その場しのぎでは子どもの信頼を裏切ることになります。
 
そして、野菜や果物を水の中に入れ、浮かぶか沈むか、実験してみましょう。
「すいかは、絶対に浮かばない!」と思い込んでいるお子さんが、かなりいます。見たことがないのです。丸ごと一個のすいかを買う機会は少ないでしょうが、お子さんが疑問を持ったときには、説明するより見せることです。
 
また、動物の足の絵から、その動物が何かを考えたりする問題もあります。
かなり昔の話で、時効も成立しているはずですから紹介しましょう。ある国立の名門大学の学生さんが、「鶏には足が4本ある」と真面目な顔でいい、話題になったことがありました。見たことがないのです。
幼児には、見せるしかありません。動物園や牧場の出番です。
 
「今度の日曜日、ゴルフの予定もないから動物園に行くぞ!」
「……。」
お父さんの都合でお子さんに興味がない時に、動物園に行っても効果はありません。
「お父さん、にわとりの足、どうなっているのかな?」
この「かな?」がついた時、子どもが興味を示した時が、絶好のチャンスです。
ジィーっと見ています、飽きもせずに。観察力だけではなく、集中力や持久力もつきます。
 
最後に、絵を見て話をする問題です。
 
これは、たくさん本を読んでもらっている子は、得意です。たとえば、かぐや姫の絵だとします。読んでもらったことのない子は、話せませんね。本を読んであげることは、以前にも説明しましたが、言語の学習から情操教育まで、大変な学習になっています。
 
話を聞く姿勢ができている子は、本を読んでもらうことが好きです。しかも、本人も保護者も勉強をしているとは思っていません。教えない教育の成果です。
しっかり読んであげましょう。読んであげられるのも卒園までです。一人で読めるようになるのも、後わずかだからです。読めるようになると、もう頼みにきません。そうなると、保護者の読書時間も増えます。親の本を読む姿は、最高の教材です。読書の好きではないお子さんは、やはり、ご両親もあまり好きではないことが多いのではないでしょうか。
 
テレビの内容にもよりますが、視聴時間の長さと教養の深さは、反比例するそうです。スマートフォンやタブレットで動画を見せることも同じですね。
保護者である私たちも気を引き締めて、ですね。
 
絵を見て話をする問題については、言語のところでお話しましたから、もう一度ご覧ください。「お母さん(お父さん)、あのね方式」です。
 
その他に、新幹線やブルドーザーなどの絵を見て名称と用途、花の名前と咲く季節などをたずねる問題があります。昔話に出てくる「きね」「うす」「いろり」、雪国ではおなじみの「つらら」、「ほうき」「はたき」「ちりとり」といった昔の掃除道具三点セットなど、普段、目にしなくなったものには、出会ったときにきちんと説明しておきたいものです。
 
最後になりましたが、2017年2月、千葉県私立小学校フェアで伺った話を紹介しましょう。
暁星国際学園の学園長、田川茂氏(当時90歳を越えていました。)の「親は教育に哲学を持ちなさい」という話があり、説得力がありました。今でも通ずるお話ですね。
お子さんにどのような教育を受けさせたいか、これは学校選びの基礎、基本であり、「はじめに学校ありきではなく、ご家庭の教育方針ありき」であるべきだということですね。
「教育の道は家庭の教えで芽を出し、学校の教えで花が咲き、世の教えで実がなる」ともいわれています。「どんな花を咲かせるか」、素直に肯けました。
また、「哲学を学ばない者は、先生をしてはいけない」も痛烈でした。様々な先生がいる時代、私学が歓迎される理由は、こういったことにもあるのではないでしょうか。
 
      
 (次回は、[6]推理・思考に関する問題についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第5章 雛祭りですね(2)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第17号-
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第5章 雛祭りですね(2)
 
      
★★童謡「うれしいひなまつり」には二つの誤りが★★
 
雛祭りを楽しんでいる雰囲気の伝わってくる童謡、それが「うれしいひなまつり」です。
ところが、作詞者のサトウハチローは、2つの誤りに気づき、破棄したいと考えていたそうです。
 
その誤りとは、1つは2番の「お内裏様とおひなさま」で、「内裏雛」は天皇、皇后の姿をかたどった「殿と姫の両方」を表し、「おひな様」は男雛と女雛で一対を表すので、同じことを繰り返すことになるからです。
 
2つ目は3番の「赤いお顔の右大臣」は左大臣の誤りで、さらに大臣ではなく、正しくは随身、近衛兵(宮中警備の兵士)の長官のこと。
大臣であれば「笏(しゃく)」を持っているはずが、弓矢、太刀で武装しているからだそうです。(hinaningyou.biz/matigattaohinasama.htm より要約)
 
本メルマガでは、皆さんが慣れ親しんでいるこの童謡の歌詞に従い左大臣、右大臣としました。
 
   うれしいひなまつり     
     作詞 サトウハチロー  作曲 河村 光陽
 
      一 あかりをつけましょ ぼんぼりに
        お花をあげましょ  桃の花
        五人ばやしの    笛太鼓(たいこ) 
        今日はたのしい   ひなまつり
 
      二 お内裏様と    おひな様
        二人ならんで   すまし顔
        お嫁にいらした  姉さまに
        よく似た官女の  白い顔
 
      三 金のびょうぶに  うつる灯(ひ)を
        かすかにゆする  春の風
        すこし白酒    めされたか
        あかいお顔の   右大臣
 
      四 着物をきかえて  帯しめて
        今日はわたしも  はれ姿
        春のやよいの   このよき日
        なによりうれしい ひなまつり
  
 
 
 
★★なぜ、桃の花を飾るのですか★★
 
なぜ、桃の花なのでしょうか。
 
「桃は五行の精なり」といい、桃には古来より邪気を払い百鬼を制すという魔除けの信仰があった。(中略)中国で殷(いん)の時代に狩猟民族が天意を占うときに、亀の甲や獣骨に占い字(ト辞・ぼくじ)を刻んでそれを火にあぶると、甲羅や骨にひび割れができる。
 そのひびの入り方によって古代人は神意を判断して吉凶を占った。そのひび割れをかたどったのが「兆」という象形文字である。「兆候(きざし)」「前兆(しるし)」「兆占(うらない)」「兆見(まえぶれ)」などのことばからもわかるように、兆は未来を予知するかたちを表している。「桃」は兆しを持つ木とされ(中略)、未来を予知し、魔を防ぐという信仰が生まれたのである。したがって鬼退治物語の主人公は、柿太郎でもなく梨太郎でもなく、桃太郎でなければならないのである。
 (年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P79) 
 
桃の木には、たくさんの実がなり、魔を防ぐと信じられていましたから、桃の花を供え、子宝に恵まれる女の子の幸せを祈ったのです。
 
さらに訳ありなのは、桃太郎の家来が、猿と雉と犬であることです。「犬猿の仲」といわれるほど仲の悪い犬と猿が家来となって、うまくいくはずはないのですが、間に鳥がいるから大丈夫なのです。
 
十二支にも「申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)」と間に酉が入って、けんかをしないように配慮されていますね。
 
 
 
★★左近の桜、右近の橘って?★★
 
なぜ、雛壇に桃だけではなく、桜と橘を飾るのでしょうか。雛壇に向かって右に桜、左に橘を飾りますが、これは京都御所にある「左近の桜」(御所に向かって右側)「右近の橘」(向かって左側)を表しているそうです。京都の冬は、昔から雪こそあまり積もりませんが、底冷えをする寒さは厳しく、禁中に仕える者は、古くから左近の桜のつぼみのふくらむ様子を眺めながら、春を待っていました。
 
 京都御所の紫宸殿の東側に桜、西側に橘が植えてあり、左近衛府の官人は桜の木から、右近衛府の官人は橘の木からそれぞれ南側に整列して宮廷の警護にあたった。桜と橘はいわば、宮廷の門と同じ役割を果たしているのである。
   (年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P85)
 
官人とは天皇を守る近衛兵のことですが、お雛さまを飾るモデルは京都御所。
五段目には、おかしな顔をした傘と笠と沓を持った雑用係の三仕丁を飾り、その左右には、宮廷の門と同じように桜と橘を飾ります。その上の四段目には、向かって右に左大臣(老人)、左に右大臣(若者)を飾りますが、唐の文化の影響が、そのまま身分の上下となって表れているわけです。三仕丁は、それぞれ泣き顔、笑い顔、怒り顔をしており、表情豊かな子に育つ願いが込められているそうです。
 
 橘は、みかんの古称で、日本では万葉の時代から和歌に多くうたわれている馴染み深い木の一つで、黄色い実が魔除けになるともいわれています。大昔より日本に自生している常緑樹で、冬でも緑を失わないその姿と、見栄えのある美しい果実、そしてかぐわしい香が、古くから尊ばれてきたのでした。
 また、神の化身とされる蝶の幼虫が育つことで、神代と世俗を結ぶ神の依代(よりしろ・心霊が招き寄せられて乗り移るもの)と考えられていました。    
 (https://www.e87.com/selection/hina/colum_04.htmlより)
 
  橘は 実さへ花さへ その葉さへ 枝に霜降れど いや常葉の樹
                    万葉集 6(1009)
                (注 枝“え” 常葉“とこは”)
 
「橘の木は、実も花も、その葉も、そして、その枝までも、霜が降ってもびくともしない。いつまでも葉の落ちない木だこと」と、万葉集にも歌われていますが、常葉の樹(常緑樹)の中でも、生命力の豊かな木であることがわかります。何事も訳ありですね。
 
 
 
★★なぜ、菱餅は、赤、白、緑なのですか★★
 
菱餅を見ていると、積もっていた雪も少しずつとけはじめ、雪の下で寒さに耐えながら、春を待っていた木の葉や草の緑色が、ほんのわずかながら姿を見せ、早春の息吹がうかがえる、そんな情景が浮かんできます。咲き始めた桃の花に、春の淡雪がうっすらと積もる初春の雪景色、その白と緑と赤の鮮やかなコントラストに、「日本って、いいなぁ!」と日本人であることにしみじみと感謝したくなります。菱餅は、初春を待つ人々の心を見事に表していると思いませんか。本当のところはどうなのでしょうか。
 
菱餅の赤、白、緑の三色は、赤は桃や紅花で色づけしたもので魔除けを、白は清浄を、緑は独特の香りのある蓬(よもぎ)で、体に悪いものを外に出す働きがあり、薬として使われていたので健康を表しているのだそうです。
 
また、どうして形が「菱形」かは、諸説あるので、調べてみてください。
 
菱餅を飾る理由は、インドの仏典の説話に、竜に菱の実を捧げたところ娘の命を救った話があり、そこから「菱の実は子どもを守る」という言い伝えが生まれたからだそうです。
 
 
 
★★ひな祭りのごちそう★★
 
多様性の時代と呼ばれる現代ではどのようにされているのかはわかりませんが、かつては、女のお子さんがいる家庭では、必ず蛤(はまぐり)のお吸い物とお寿司を頂きました。
 
蛤の貝殻は、他の貝とは合わないことから女性の貞節を教え、夫婦の相性が良いことを願ったものです。女の子のお祝いらしく、彩(いろどり)が華やかなちらしや五目寿司などに、菜の花やぜんまいのおひたし、たらの芽のてんぷらなど、春の旬の食材が花を添えます。先に紹介した菱餅の他に、干した米を煎った雛あられ、元は桃の花を酒に浸した桃花酒でしたが江戸時代頃から飲まれるようになった甘い白酒などが、雛祭りのごちそうの定番でしょう。
 
そして、塩漬けの桜の葉で巻いた上品な香りが何ともいえない桜餅なども加わりました。
 
ところで、雛あられですが、関東は米、関西は餅と材料に違いがあり、関東は米を爆(は)ぜて作ったポン菓子を砂糖などで味付けしたもの、関西は直径1センチ程の餅からできたあられを、醤油や塩味などで味付けしたものです。
 
また、あられが3色なのは、白は雪で大地のエネルギー、緑は木々のエネルギー、赤は生命のエネルギーを表し、菱餅と同様、自然のパワーを授かり、災いや病気を追い払い成長できるという意味が込められているそうです。(「トレンド情報ステーション」より要約)
 
 
 
★★桃源郷は、どこにあるのでしょうか★★
 
桃といえば、この話を忘れることはできないでしょう、桃源郷です。陶淵明の書いた「桃花源記」にある理想郷は、桃の花が咲き乱れる桃源郷として描かれています。魔除けの力を秘めた霊木であり、不老長寿の仙薬(飲むと仙人になるという薬から転じて効き目が著しい霊薬のこと)と信じられていた桃の花ゆえに、納得できますね。「桃花源記」の原文は手に負えませんが、こういった古典文学には、小学生の高学年用に書かれたものがあり、重宝します。
 
 
【桃花源記(作:陶淵明)の話の概略】(抄訳)
 
 中国太元の時代、武陵に一人の漁師がいました。
 ある日、小舟をあやつり漁に出たのですが、見覚えのない所に来てしまい、あたり一面に桃の花しか咲いていない林を見つけたのです。甘美な香りを漂わせ、美しい花びらが舞っているではありませんか。見とれていた漁師は、林の先を突き止めたくなり奥まで船を進めました。林は水源のあたりで山につきあたったのです。そこに小さな穴があり、中へ入っていくと、突然、景色が開け、土地は四方に広がり、立派な建物や滋味豊かな田畑が見渡せました。鶏や犬の鳴き声が聞こえ、そこにいる人々は、異国人のような装いをし、みんな楽しそうでした。
 ぼんやりと立っている漁師に気づいた人々は驚き、どこから来たのか尋ね、ありのままに答えると、一軒の家に案内され、お酒やご馳走でもてなされたのです。人々が言うには、
「私どもの祖先が、妻子ともども一村の者たちと秦の世の戦乱を逃れ、この絶境に来てから、一度も外に出たことがないので、よその人とまったく関わりを持たなくなってしまったのです。ところで、今は一体、どういう時世なのですか」と、漢はもちろん、魏、晋のこともわからないのです。漁師が詳しく説明すると、みな感に堪えないように聞き、家から家へ連れていかれ、どこでも歓待されるので、4、5日滞在したのでした。
 やっと村を去る日が来たとき、「私どものことは言うほどのこともありませんから、よそ様にはお話にならないでください」と懇願するのです。しかし、途中に目印を残しながら帰ってきた漁師は、家に着くと、さっそく郡の太子のもとへ行き、この話をしました。興味を覚えた太子は、案内をさせましたが、目印はおろか、前に行った道さえ見つかりません。この伝えを聞いたある君子が、その仙境へ行こうとしましたが、その志を果たさぬ内に病で世を去り、この後、再び訪ねようとする者はいなかったということです。
この話から「武陵桃源」「桃源郷」は仙境の意に使われ、転じて理想郷の意となったのでした。
   生きる心の糧 中国故事物語 4  駒田 信二・寺尾 善雄 編
                           河出書房新社 刊
 
人はだれしも秘密を持つと黙っていられなくなるようです。浦島太郎も乙姫さまとの約束を守れず、おじいさんになってしまいました。これも人間の性(さが)でしょう。
 
理想郷は、誰しもが心の隅に描きたくなる「かくありたい、ささやかな願い」ではないでしょうか。残念ながら実生活でも、ささやかな願いは、かない難くなっているようです。
 
それにしても、山の奥深くに、海の底に、理想郷を夢見るのは子どもではなく、いい年をした大人、しかも男性というところが何とも言えません。
 
 
  (次回は、「雛祭りですね(3)」についてお話しましょう)
 
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話 情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 

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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★[5]常識に関する問題(1)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第33号>
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★★入試問題を分析する★★
 
[5] 常識に関する問題(1) 
 
文字通り、常識の分野です。
しかし、単なる知識ではなく、情操教育の領域から思慮分別まで入っています。
仲間分け、郵便屋さんとポストを結びつける職業に関するもの、道具や日用品の名称と用途、季節と行事、公衆道徳やしつけ、むかし話や名作物語の一部が描かれた絵を見て説明するものなどがあります。
 
 
[仲間分け]
 
動物や昆虫、木や花、野菜や果物、乗り物、季節、文房具などの仲間を探す、逆に仲間ではないものを見つける問題です。常識の問題だけではありませんが、単に仲間に〇や仲間ではないものに×をつけ、「満点! 次に行きましょう!」
では、あまり有効な学習とはいえません。○や×をつけた理由を、自分の言葉できちんと説明できるか確かめましょう。幼児の学習で大切なのは、自分の考えを話せることです。つたない説明でもきちんと聞いてあげ、おかしなところは直してあげましょう。                                      
こういった問題がありました。
 ◆(かき・くり・ぶどう・なし・すいかの絵が描いてある)
   かき・くり・ぶどう・なし・すいかの中で、仲間ではないものに×をつけなさい。   
 
皆さん方は、何に×をつけるでしょうか。 聞き手に徹してみると、子どもたちは、実に、ユニークな発想の持ち主であることがわかります。
 
「すいかに×です。すいかは野菜で、他は果物です」
常識的な模範回答です。
 
「すいかです。他のくだものは木になるけど、すいかは、地面になります」
すいか畑を見た経験があるのでしょう。
 
「すいかは、夏に食べますが、他は秋ですから、すいかに×です」
季節に違いを見つけましたが、季節感が希薄になっている中で偉いですね!
 
「すいかです。他は皮をむいて食べます」
またしても、すいかですが、食べ方の違いを見つけました。
 
「くりです。イガイガに入っていますから、手で触れません」
この子は、くり拾いに行ったことありますね、体験談です。
 
「くりです。そのままでは食べられません」              
いいですね、くりご飯が好きなのでしょう。もしかしたら、生のくりをかじったことがあるもかもしれません。
 
「ぶどうです。他は1個、2個と数えるけど、ぶどうは、そういうふうに数えません」
これも、いいですね、一房などといえなくても正解です。ぶどうの実は、1個、2個・1粒、2粒と数えますが、全体を捉えて数えるときは、バナナと同様1房、2房です。       
 
「くりです。種がありません」
ぶどうやすいかにも種のないものがありますが、これも正解ですね。
 
「かきとくりです」
「……?」
「『さるかに合戦』には、かきとくりが出てくるけど、むかし話に、他のもの出てくるかな?」
さて、こうなるとわかりませんが、ぶどうとなしの出てくる話は、思い浮かびません。  
すいかはあります。老人が、意地悪をした商人から魔法を使い、すいかを取り上げてしまう話で、今昔物語にも出ています。しかし、いいですね、発想がユニークで。むかし話をたくさん読んでもらっているのではないでしょうか。
 
いかがでしょうか。子どもたちは、こんなにたくさんの違いを見つけました。
これはたいへんな学習になっています。子どもの観察力や発想は、大人と違うことがよくおわかりいただけたと思います。繰り返しますが、×をつけて終わりでは効果的な学習とはいえません。子どもの考えに耳を傾け、そして最後に、「果物と野菜」「季節の違い」など設問の意図に従い、正解に導いてあげましょう。
 
自転車とオートバイの違いを話す問題で、とことん答えが途絶えるまで、発表させたときのことです。
 
「仮面ライダーは、オートバイに乗るけど、自転車には乗らない」といったお子さんがいました。その子は、「仮面ライダーは、オートバイに乗り、かっこよく出てくるけれど、自転車に乗って出てこない」といいたかったのです。その日は、授業参観でしたから、お母さんは、赤面してうつむいてしまいました。
とかく私たち大人は、構造や原理の違いや用途などから考えますが、こういった考えのできるのが子どもなのです。
 
もちろん、エンジンと人力で走らせる違いに導きますが、なぜ、そういった考えが出てくるのか、子どもに聞いてみると、実に傑作な答えが出るものです。
その答えに妥当性があれば、そういう考え方もあると認め、しかし、「この問題の本当の目的は」と順を追って話をすれば、子どもたちは納得し、授業にのめり込んできます。
 
なぜでしょうか……。
 
それは、自分の考えを認めてもらえたからです。うつむいてしまったお母さんと違い、お子さんは積極的に授業に参加し、楽しんでいました。
「お子さんの話に耳を傾けてください」とお願いしておきましょう。
 
このように、幼児の知識は、似ているところや違うところを見つけることから始まります。物事の「類似差異」に気づかせることです。しかし、これを大人が机の上だけで教えこむのは、お勧めできません。五感を働かせ、自分で学習することが大切なのです。教え込まれることは、記憶に頼りますから忘れがちです。五感で体験したことは、何かの思い出と一緒に身体が覚えますから、忘
れにくいのです。
 
記憶は脳神経系の仕事で、忘れることも仕事ですが、体験は中枢神経系の仕事で、一度覚えると体が忘れないそうです。英単語は使わないと忘れがちですが、一度自転車に乗れるようになると、しばらく乗らなくてもすぐに乗れるようになる、この違いだそうです。
 
「幼児期には、五感に刺激を与える自然と接する機会をたくさん作り、話をはずませ、楽しい思い出を残してあげましょう」という理由は、ここにあるわけです。
 
 
 
[季節と行事に関する問題]
 
四季を代表する花や行事、春であれば、桜、たんぽぽ、チューリップ、おひなさま、入学式、鯉のぼり、柏餅などを結びつけたり、年間の主な行事を1月から12月まで絵カードで並べたりする問題です。暦の上では立春から春ですが、幼児の世界では、春は3月、4月、5月、夏は6月、7月、8月、秋は9月、10月、11月、冬は12月、1月、2月で教えてあげましょう。
 
変な話を聞きました。
「1月は正月・門松・たこ上げ・羽子板、二月は節分・豆まき・柊・いわしの頭・鬼……」 
試験に出るから憶えるそうです。しかし、季節折々の行事は、知識として覚えるものではなく、家族そろって楽しむものです。楽しんでいれば、覚えようとしなくても、思い出と一緒に記憶されるものです。 記憶だけに頼ろうとすると、「勉強、イコール記憶」となり、次第に苦痛になるのではないでしょうか。
 
学生時代に覚えた英単語、あんなに苦労したのに、どこへ消えてしまったのかと、しゃくにさわりませんか。それでも、皆さんは目的を持って覚えたのですから、苦痛にも耐えられたわけでしょう。
 
子どもたちには、「受験のため」といった自覚はないはずですから、やっかいなのです。       
 
そうはいっても、現代の子どもは、正月に、羽根つき、たこ上げ、カルタ取り、すごろくなどをやっているでしょうか。  
節分に豆まきをして、いわしを食べているでしょうか。 
女の子のいない家で、ぼんぼり、ひし餅、わかるでしょうか。
端午の節句に菖蒲湯に入る子も、少ないかもしれません。
七夕は、幼稚園での年中行事で済ませていないでしょうか。
迎え火、送り火、精霊流し、なかなかやらないでしょうね。
中秋の名月を、すすきとだんごをお供えして、眺めているでしょうか。
大晦日に年越しそばを食べているでしょうか。
そばより、ラーメンやスパゲッティかもしれません。
「……でしょうか」ばかりで、何やら、落ち込みそうです。季節折々の行事を祝わってあげたいですね。
 
このような年中行事は、自然への感謝と家族の幸せを願い、とりわけ、子どもの健やかな成長を祝う、一つの節目になっています。
 
たとえば、端午の節句、この言葉も「子どもの日」といわなければ、通じないでしょうが、なぜ、鯉のぼりを飾るのでしょう。なぜ、くじらやさめのぼりでは、駄目なのでしょうか。くじらは大きく、さめは見るからに強そうですが、代役を務めることはできません。
 
鯉は、非常に生命力が強い魚ですから、鯉のように強くて、たくましい子に育ってほしいという親の願いがこめられているのです。五月晴れの空に、雄大に泳ぐ鯉のぼりの姿、あまり見かけなくなりました。
 
こういった行事は、いってみれば「家庭の文化」ではないでしょうか。家庭の文化は、保護者が作るものです。子どもは、保護者の作った文化の中で育っていきます。保護者が、季節折々の行事の意味を子どもに教え、一緒に祝い、楽しい思い出として心に残してあげる。そのお祝いが、思い出が、子どもの情操を培っていくのではないでしょうか。団地やマンションのベランダに、小さな
鯉のぼりが泳いでいると、「頑張っているな!」と声をかけたくなります。
 
小学校の入学試験に出るからといって、問題集で教え込み、ましてや記憶させるなどは、本末転倒な話です。なぜ、こういった問題が出るのでしょうか。学校側も、知識として知っているかではなく、家庭の文化を見ていると思います。
 
季節折々の行事を楽しんでいれば、問題集は、チェックシートの役割をはたし、知識の整理になります。幼児の学習は、知識を詰め込むのではなく、たくさんの経験を積ませ、そこから得た知識、知恵であることが大切です。
 
当教育研究所で配信していますメールマガジン「さわやかお受験のススメ 保護者編」では、季節折々の行事の由来を説明し、それに関係のある昔話を紹介していますので、お読みになっていただければ幸いです。
 
   (次回は、常識の問題(2)についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第5章(1)雛祭りとお彼岸ですね 弥生

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第16号-
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第5章(1) 雛祭りとお彼岸ですね  弥 生
 
 
小学校受験で春は三月からです。
物の本によると、「春」の読み方は、万物が「発(は)る」(発する)からという説が有力ですが、草木の芽が「張る」、天候の「晴る」、田畑を「墾(は)る」などの説もあるそうです。
弥生(やよい)のいわれは、この頃になると、草木がいよいよ生い茂ることから、「草木がいやおい茂る月」が詰まり、「弥生」になったといわれています。
 
 
★★五節句のおもしろい特徴★★
 
三月といえば、何といっても雛祭りです。雛祭りは、いうまでもなく女の子の節句です。        
節句は一年間に五つあるので五節句と呼ばれ、正しくは「神と一緒にあることを表す節供」だそうですが、ここでは使い慣れている節句としました。
 
五節句を決めたのは江戸幕府で、古来、宮中で行われてきた年中行事から五つ選んだものです。
 
一月七日は人日(じんじつ)、陰暦の正月七日のことで、七草粥を食べる日から「七草の節句」。
三月三日は上巳(じょうし)、お雛さまを飾る日から「桃の節句」。
五月五日は端午(たんご)、鯉のぼりや兜を飾り立身出世を願う尚武が転化して「菖蒲の節句」。「端午の節句」の方が身近でしょう。
七月七日は七夕(しちせき)、夏の風物詩、七夕飾りをする「七夕の節句」、「笹の節句」。
九月九日は重陽(ちょうよう)、陰暦九月九日の節句で、九は陰陽道では陽の数とされ、これを二つ重ねた日にあたるので「重陽」といい、「菊の節句」ともいわれています。
 
五節句は奇数日で、一月七日の人日を除くと同じ数字が重なっていますが、これも何か意味がありそうです。
 
 暦の中で奇数の重ねる日を取り出し、奇数(陽)が重なると陰になるとして、それを避けるための避邪(ひじゃ)の行事が行われ、季節の旬の食物から生命力をもらい、邪気を払うという目的から始まりました。 
(http://iroha-japan.net/「日本文化いろは事典」より)
        
七草粥には、ご馳走を食べ過ぎた胃を調整する薬草が入っています。      
桃の葉も薬草です。                      
菖蒲の根を細かく刻んで造った酒は、邪気を払い万病に効くといわれています。
淡竹(はちく)、真竹(まだけ)は竹葉(ちくよう)という生薬で解熱、利尿作用があります。
菊は、長生きの薬といわれています。
五節句に登場する植物は、すべて薬用で、当然のことですが、やはり意味ありでした。      
 
「私達の先祖は、薬品を食品化することで、まず日常の食事療法をやり、さらに労働スケジュールに合わせて、その時期にいちばん必要な薬物を年中行事化することで、魔除けや信仰として摂取し、健康体を維持できるように、実に巧
妙といっていい、健康管理を行っていたのである。」
(「梅干と日本刀」 日本人の知恵と独創の歴史 樋口清之 著 祥伝社 刊 P131)
 
五節句は農業スケジュールに合わせて作られ、その時の飲食物は全て薬品なのです。昔は病気になってから治療するのは大変でしたから、病気を予防するための知恵でもあったのです。当時の農作業、米作りは人海戦術で、病気をすると労働力が減り、お百姓さんにとっては一大事でしたから納得できました。
 
ところで、「怠け者の節句働き」といい、怠け者をあざける言葉があります。
節句の日には仕事を休み、神さまにお願いをする慣わしがありましたが、普段、怠けていると、この時も田畑で仕事をしなくてはならないことから生まれた言葉です。農作業は、一日も手抜きができない厳しい作業環境でもあったわけです。
 
 
★★雛祭り★★
 
昔のお雛さまは、今のように立派な飾りものではありませんでした。子どもが病気にかかると、新しい雛人形を川へ流して、病気が体の外へ逃げていくように、悪いことが起きないようにと、お祈りをしました。流し雛です。
 
室町時代、紙で作った人形(ひとがた)で体をなでて穢れを移し、川や海に流すことで無病息災を祈った「流し雛」という風習と、ひいな遊び(人形遊び)とが結びつき、貴族の間で人形を飾り、祀(まつ)るようになったと考えられています。(http://iroha-japan.net/ 「日本文化いろは事典」より)
 
米俵の両端にあるわらで編んだ丸いふた「さんだわら」(東京では「さんだらぼっち」)の上に、紙と土で作った雛人形を、あられや菱餅、桃の花と一緒にのせて川へ流したもので、今のように部屋に飾って祝うようになったのは、徳川家康の孫の東福門院が、子どものために作った座り雛が、その始まりといわれています。
                                    
雛人形が飾られるようになったのは、文化文政時代を経て天保(1830)の頃からで、宮中から武家社会、裕福な商家や名主の家庭、そして町人社会へ広まり、現在のような豪華な雛壇が作られるようになったのです。
 
雛壇には、お内裏さま、三人官女、五人囃子、左大臣、右大臣、おかしな顔をしている三人仕丁(じちょう―雑役係)、菱餅、あられ、白酒、桃と橘の花に、いろいろな生活用品が飾られています。女の子が、やさしいよい子に育って、幸せになるようにとお願いする日ですから、飾りものも女性ムードいっぱいで、夢があります。人形が主役ですが、下の方に飾ってある、あのゴタゴタとした
所帯道具も、いいですね。タンス、鏡台、長持ちから牛車、駕籠(かご)までそろえているのもあります。新婚さんの望ましい嫁入り道具一式で、昔の女の子が描く幸せな青写真を、雛壇で表しているような気がして、ほほえましくなります。
多様性の時代、といえども、こういった文化は残っていってほしいものです。
 
 
 
★★男雛と女雛、右ですか、左ですか?★★   
 
女の子がいない家庭では見られませんが、デパート等に行くと、豪勢なものが飾ってありますから見てほしいのです。地方によって、男雛と女雛の位置が違います。東京など関東地方では、男雛が右側(向かって左)に、女雛は左(向かって右側)に飾りますが、京都や奈良の関西地方では、男雛が左で女雛は右と、逆に飾ってあります。
 
関東方式は、昔中国では、「右がすぐれている」という考えがあったからです。
右には「貴い」、「尊敬すべき」、「大切な」など、左には「卑しい」、「低い」、「正しくない」などの意味があり、「右腕」や「右に出る」、「左遷」や「左前」は今でも使っています。ところが、唐の時代に左右が逆転し、左上位になったのです。
 
日本の文化は唐の影響を受け、平安時代に確立した日本の制度は左優先となった。左大臣は右大臣より上席であり、左近衛大将は右近衛大将より上級である。
(中略)左上位は唐から宋へ受け継がれたが、元の時代に逆転し、明清の時代に再々逆転し、左上位の順位が引き継がれている。
  (年中行事を「科学」する  日本経済新聞社 刊 P75)
 
もっとわかりやすいものがあります、結婚式の披露宴を思い出してください。
新郎は向かって左側に、新婦は向かって右側に座っていますが、これにも確かな意味があります。日本の結婚式は、現在はともかくとして、昔から男子が家を守っていく、男子優先で行われてきたからです。関西方式は、天皇家と関係があります。
 
天皇は、『天子南面』という言葉が示すように、紫宸殿の玉座に北を背にし、常に南の方をむいて座られた。すると、天皇の左手が東、右手が西にあたる。
昔は日の出る東が月の沈む西より上と考えられていたから、内裏様を左に飾った。したがって、大臣も左大臣が上席となっている。
 (日本の年中行事百科 2 春 民具で見る日本人の暮らしQ/A P25  監修 石井 宏實 河出書房新社 刊)
 
面白い話があります。太平洋戦争終了後、日本を占領した国際連合軍の中で、いちばん偉かったダグラス・マッカーサー元帥が、「男雛は向かって右、女雛は向かって左にしなさい!」と命令したそうです。アメリカやヨーロッパでは、レディー・ファーストの考えがあるからだと思っていたのですが、ことの起こりはヨーロッパで、騎士が戦うときには右手に剣を持ち、左手で婦人を抱える
ことから、左優先になったそうです。
 
 
 
最後に、「春一番」は立春後に初めて吹く強い南風ですが、春分まで、という期間限定のため、発生しない年もあるそうです。
 
1959年に民俗学者の宮本常一が「春一番」という言葉で、気象現象を解説したことから、新聞などで使われるようになったそうです。その後、広く一般でも使用されるようになり、今では気象用語になりました。
    (「昭和のこころ」 日本の年中行事 So-net ブログより)
 
ちなみに、関東地方で最も早かったのは昭和63年2月5日でしたが、令和3年は2月4日に吹き、記録更新となりました。最も晩かったのは昭和47年3月20日だそうです。
 
 
   (次回は「雛祭りですね(2)」についてお話しましょう)
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★[4]数量に関する問題(3)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第32号>
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★★入試問題を分析する★★ 
 
  [4] 数量に関する問題(3)
 
     
[量の問題]
 
辞書を引くと「計って決められる、かさ、容積、軽重、大小、多少等」(「岩波国語辞典」より)とありますが、これに、ひもや鉛筆、国旗を掲揚するポールなどの長短を加えれば、入試に対応できるでしょう。
 
また、実験です。
 
同じ形をした容量も同じコップを2個用意し、ジュースを片方に少し多めに入れておき、「多い方、飲んでも、いいですよ」といったとき、サッと多い方に手が出れば、量に関する理解力も順調に発育しています。数と同じように、直感で見分けられることが大切です。「直感力は、経験を積み重ねて培われる力」であることを忘れないでください。
 
こういった問題があります。
 
(形も、大きさも、高さも、底面積も違うコップが3つ並んでいて、それぞれに水が入っている絵がある)
  ◆水が、一番たくさん入っているコップに〇を、一番少ないコップに×をつけなさい。
 
これは難しいですね。
ほとんどの子ども達が、たくさん入っているように見える底面積の狭い、細長い背の高い形のコップに〇をつけ、少ししか入っていないように見える底面積の広い、横幅の広いコップに×をつけがちです。かさのある方が、たくさん入っているように見えるからですが、これも実験するしかありません。
 
上の条件に合った3つのコップと同じ形のコップ3個、お茶など色のついている水を用意し、同じ形のコップ3つに同じ量だけ水を入れ、入っている水の量は同じことを確かめさせてから、条件の違うコップに、それぞれ入れ替えてみます。
 
底面積の広いコップと狭いコップとでは、明らかな差がでますが、入っている水の量は全部、同じです。
 「不思議だな、お母さん。どうして、こうなるの?」
底面積が広いほどたくさん水が入る、容量も大きくなることを説明してあげましょう。
これは「量の保存」といって、見た目は変わっていても、元々の量は保存されているからですが、「数の保存」と同様、言葉を教えることはありません。
 
このような問題もあります。
 
(3つのコップの中に、大きさの違う丸いガラス玉が、1つずつ入っていて、コップの水の量は、みんな一緒になっている絵が描いてある)
  ◆この中で一番たくさん水が入っているコップに〇、一番少ないコップに×をつけなさい。
 
これなどは、子どもは見ているはずです、おふろに入ったときです。
 「お父さんが入ると、どうして、お湯があふれるのかな?」
 「……かな?」というアンテナを張っている子は、すぐわかります。
 
量も直感で多少を判断し、難しい問題は、必ず、実験で確かめることです。
これが、小学校へ入ると、リットル、デシリットルと正確に量を計る勉強に進んでいくわけです。
 
ボールなどの大小、ひもなどの長短、旗を立てたポールの高低も同じです。やはり、見た感じ、直感力で判断できることが大切です。
その違いを見極める力が、センチメートル、メートル、キロメートルと、正確に長さを計る勉強に、軽重は、グラム、キログラムと量を正確に計る勉強につながっていくわけです。
 
 
 
[重さ比べ]
 
しかし、軽重、重さ比べは、直感で判断するのは難しいでしょう。
しかも、問題集だけで教えると、幼い推理力では、混乱しがちですから無理は禁物です。
 
こういった問題です。
 
(パンダとくまとうさぎが、シーソーにのっている絵があり、パンダとくまではパンダの方が下がり、くまとうさぎではくまの方が下がっている) 
  ◆一番重い動物に〇、一番軽い動物に△をつけなさい。
 
重さ比べの定番的な問題です。
「パンダとくまではパンダが重く、くまとうさぎでは、くまの方が重い。故に、パンダが一番重くて、うさぎが一番軽い」と説明しても無理でしょうね。
 
まず、3つの重さの違うものを手に持って、重さの順番に並べてみます。
できれば、天びんばかりを作り、手で持って判断したものと、合っているかどうかを確かめるとわかりやすいはずです。
 
  AとBを比べるとAが重い。 A>B
  BとCを比べるとBの方が重い。 B>C
  ここでAが一番重くて、Cが一番軽いことがわかります。 A>B>C
 
しかし、BとCを比べてCの方が重かったら、AとCを比べて決着をつけますから、これが面倒です。
さらに、比べる物が4つ、5つと増えてくると、難しくなります。
1つ1つ、順番に比べて、納得できるまで、根気よくやることです。
 
その納得させる方法ですが、軽重を勝ち負けに置き換えると、子どもは興味を示します。
パンダとくまではパンダが重いからパンダの勝ちで○、くまは●。
くまとうさぎでは、くまの方が重いからくまの勝ちで○、うさぎは●。 
最後に、パンダとうさぎは、パンダの勝ちで○、うさぎは●。
結果は、パンダは○○で2勝、くまは○●で1勝1敗、うさぎは●●で2敗。
好奇心を刺激してあげる、遊びの中での学習ですね。
 
おもしろい子がいました。
パンダ、コアラ、リスの3匹が重さ比べをする問題です。
「パンダが2回下がって、リスが2回上がっているから、パンダが一番重くて、リスが一番軽いのです」
 
お母さんに教わったそうです。理屈はそうですが、こういう教え方は、どうでしょうか。シーソーの上がり下がりだけ見て判断するのは、直感力ではなく、受験用のテクニックですね。
 
 「そうか、こうだな! こういうこともいえるぞ!」
 
1つ1つ比べ、試行錯誤を積み重ねて、自分で見つけたのであれば問題ありません。考える力もつき、考える楽しさも学習しているからです。出発点で楽をすると、応用力は身につきませんし、小さいときから、簡単に答えだけを見つける訓練は、やるべきではありません。
 
簡単な問題から難しい問題へ、ステップをきちんと踏んでいくことが大切です。
そして、正解であれば○を付け、それで終わらせずに、比較する段階を言葉でいえるようにしておきましょう。言葉で表現できる、これは、とても大切なことです。きちんと理解できていれば、説明も適切なはずですから、発表力も身についてきますし、それが個別テストや行動観察のテストに対応できる力を身につけることにもなっているからです。
 
 
 
[空間の問題]
 
図形は、[6]の構成力で触れることにして、最後に、空間について説明しましょう。
これも難しいです。
 
上下、左右、前後の関係です。 
前後は、幼稚園でも整列することで学んでいますから、わからない子は、あまりいないようです。  
こんな問題があります。
 
(各階に5つずつ部屋がある5階建てのマンションが描かれている)
  ◆キリンさんは、三階の左から三番目のお部屋です。キリンさんのお部屋に○をかきましょう。
 
子ども達には、上下は何とかなるのですが、左右が難しいですね。
年長になっても、左右の区別のおぼつかない子が、かなりいます。
左の薬指にピンクのリボンつけていた女の子がいました。
 「先生、こっちが左ですよね!」
かわいいではありませんか。お母さんの工夫した、やさしい気遣いが伝わってきます。
 
左右の確認がきちんとできてから、問題集に取り組みましょう。
基本的な準備をせずに、プリントだけで「左から……、上から……」とやると混乱しがちなのです。
 
  □□□□□   こういった図を描いて、一番下、下から2番目(上から
  □□■□□   2番目)、一番上、左から(右から)何番目、左端、
  □□□□□   右端を確かめましょう。
 
少し難しいかもしれませんが、下の図のように、■を中心に左右、上下、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下を確認しておきましょう。  
 
   □□□
   □■□
   □□□
 
幼児の学習は、生活と結びついていると、スムーズに対応できるものです。
生活に必要なものであれば、喜んで挑戦するはずです。お手伝いをさせながら、学習できることがあります。
たとえば、お子さん用の整理ダンスを利用して、たたんだ洗濯物を入れさせましょう。
「ハンカチは、一番上の左から二番目に、シャツは、上から三番目の右端にしまってください」
女の子であれば、お母さんの手伝いをしながら整理の仕方を学ぶこともできます。
 
まだあります。毎日、幼稚園や保育園へ行くときに握手をしましょう。
 「右手で握手!」といって、さっと右手を出してみましょう。
お子さんも右手でなくては握手できません。
間違えたときに、こっちが右手であると学習できます。
今日は右手なら、明日は左手と続ければ、いつのまにか習慣になります。
 「サユウベンベツ(左右弁別)?」
大人でも首を傾げるような言葉を使っていると、混乱するだけでしょう。
 
幼児の学習は、生活の中で、楽しみながら身につけていくことが大切です。
 
   
(次回は「常識の問題」についてお話しましょう)
 
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第4章 二月に読んであげたい本(2)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第15号-
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第4章 二月に読んであげたい本(2)
 
 
また目玉ですが、これも面白い話です。
 
◆鬼の目玉◆   松谷 みよ子 著
 
 娘が旅の途中で泊めてもらった家には、若者が一人で住んでいました。毎朝、若者は奥の部屋に出かけ、夜になると疲れはてて戻ってきます。若者のお父さんが豪傑で、悪さをする鬼の目玉をくりぬき取り上げたのです。お父さんが亡くなると鬼が目玉を取り返しにきて、毎日、責め立てていたのでした。
 ある日、娘は若者の後をつけ、拷問の場面を見たのです。鬼の大将らしき者が、わめく顔を見ると目がありません。娘が酷い仕打ちを受ける理由を聞いても若者は答えず、退屈だろうから、13ある部屋で遊びなさいという。ただし「最後の部屋へは入ってはいけない」といわれたのでした。  
 娘が最初の部屋を開けると、門松や鏡もちが飾ってある正月の部屋で、小人さんたちが、羽根つきやカルタをして遊んでいるのです。娘も中に入ってみると、小人さんと同じように小さくなり一緒に遊べるのでした。次の部屋は梅が咲きうぐいすが鳴き、次の部屋はおひなさまが飾ってあるというように、1月から12月までの部屋があったのです。楽しかったので、最後の部屋にも入ると、真っ暗な部屋に桶があり、何かが浮かんでいました。
 鬼の目玉だとわかった娘は懐に入れ、帰る途中、小川の側で蛇と出会い、びっくりして、1個、落としてしまうのです。残った1個を持って、お仕置き部屋に飛び込むと、大将の片目に、眼が入っているではありませんか。恐る恐る目を差し出すと、「眼がそろったから、褒美として娘に金の鶏をやれ」と、いったかと思うと、鬼も若者も、部屋も家も、あっという間に消えてしまい、娘は、がい骨がゴロゴロと転がっている山の中に、一人残されていたのでした。        
  日本むかしばなし 7 
   おにとやまんば 民話の研究会 編 松本 修一 絵  ポプラ社刊
 
 
 
次は笑わせられる話です。
 
◆節分の鬼◆   小沢 重雄 著 
 
 変わったじいさまがいて、節分の日に、女房も子どももいないから、鬼が来ても平気だと、「鬼は内!福は外!」とやってみたのです。すると、豆をぶつけられて往生しているのに、奇特な方がいるものだと、2匹の鬼がやってきたではありませんか。酒の好きなじいさまは、鬼達にもすすめ、宴会が始まります。ご馳走になった鬼達は、礼をしたいといいます。じいさまは、丁半博打
(ばくち)が大好きなので、さいころに化けてくれと頼みます。さっそく鬼は化けます。それで、博打をするのですから、じいさまのいうとおりの目が出て大もうけをしました。再び宴会に、今度は泡銭をたくさん持っていますから、豪勢なものです。これに味をしめたじいさまは、来年も来てくれと約束をします。しかし、次の年も、その次の年も、鬼は現れません。その内、じいさまは、酒を飲みすぎて死んでしまいました。
 博打好きでしたから地獄行きです。そこで、あの鬼達と再会します。鬼達は娑婆(しゃば)のお礼にと、いろいろと手抜きをします。釜ゆで地獄のときは、湯かげんに手心を加え、熱かんまでつけるサービスをするのです。怒った閻魔大王が、「じじいを喰っちまえ!」と鬼達に命じますが、これも手抜きをしてもらい、娑婆に舞い戻り、長生きをしたのでした。
  日本むかしばなし 7
    おにとやまんば 民話の研究会 編 松本修一 絵  ポプラ社刊
 
どうしたら、こういう発想が生まれるのでしょうか。
この2匹の鬼には人情があって、それだけにおかしいのです。針の山に登るときは鉄の下駄を用意するなど、地獄の責め苦を、鬼が手抜きする場面は、本当に笑わされます。しかし、鬼に人情って変ですね。「鬼の目にも涙」といいますから、涙腺を緩めるセンサーが付いているのでしょう。鬼の情けで「鬼情」では、何やら不気味な感じがしますね。
 
 
 
この話もおかしいのです。今度は鬼が、博打をする話です。
 
◆地蔵浄土◆   おざわ としお 再話
 
 ある日、おじいさんが、食べようとしただんごを落とし、ネズミの穴に入ってしまいました。おじいさんが、穴に入っていくと、お地蔵さまがいたので尋ねたところ、「あっちの方に転がって行ったぞ」というその口元には、黄粉がついています。おかしいなと思いながらも、探しに行こうとすると、お地蔵さまが、大儲けをさせてあげるから、天井裏に隠れなさいというのでした。鬼達が来てかけ事をするから、その金をいただくのだという。しかし、天井に上るはしごがありません。すると、お地蔵さまは、私の手に乗り、肩に足をかけ、届かなければ、頭にのって天井裏に隠れなさいというのです。罰が当たると尻込みしますが、鬼達が来ると驚かされ、渋々、隠れます。そして、「私が合図をしたら、鶏の鳴声をまねしなさい」といったのです。
 やがて、鬼達が来て、かけ事を始め、お金がたくさん出たところで、お地蔵さまから合図があり、「コケコッコー」と鳴きまねをすると、鬼どもは一番鶏が鳴いたと勘違いして、「夜明けが近いぞ!」とあせってばくちをし、2回目には二番鶏が、3回目には、「三番鶏が鳴いた。夜明けじゃ、帰るぞ!」といい、お金を残したまま消えてしまいました。おじいさんは、鬼達が残していったお金をいただいて大金持ちになったのです。    
 それを聞いた隣の欲の深いじいさん、一儲けしようと出かけ、遠慮しないで、お地蔵さまの体に足をかけて天井に上がってしまいます。ところがです。三番鳥まで鳴くようにといわれましたが、何を勘違いしたのか、お地蔵さまの合図に、「コケコッコー」と鳴きまねをせずに、「はぁ、一番鳥!」、「はぁ、二番鳥!」といってしまうのです。「この間、おれたちをだました奴だな!」と、鬼たちから散々、痛めつけられ、血だらけになって帰っていったのでした。        
  日本の昔話 2
   したきりすずめ おざわ としお 再話 音羽 末吉 画 講談社刊 
 
天井裏に上がるときの、お地蔵さまと正直なじいさまとのやり取りが、おかしいのです。欲深じいさんが天井に上がるときも、仏さまを仏さまと思わないふてぶてしさが、これまた愉快で、日本人の信仰心をあからさまにしているような気さえします。
お地蔵さまは、本当はお釈迦さまがいなくなった後、弥勒仏が出現するまでの間をつなぐ役をする偉い菩薩さまですが、いつも庶民の身近にいる仏さまです。
粋なのです、このお地蔵さまは。
こういう話を作った人って、尊敬できますね。生きることを楽しんでいるではありませんか。お地蔵さままで、舞台に上げるのですから大胆なものです。しかもです、お地蔵さまに、うそをつかせるのですから、傑作ではありませんか。
まねをした欲の深いじいさんが、こらしめられるのも、むかし話の定石です。
 
 
 
最後は鬼をたぶらかす話で、恐い鬼が相手ですから勇気がいります。
秋の話ですが、鬼の話ですのでここで紹介しましょう。
 
◆じいさまとおに◆   水谷 章三 著
 
 ある秋のことです。
 おじいさんのところへ鬼が来て、畑にできているものを半分よこせという。
そこでおじいさんは、「畑の上のものだけもらうから、鬼さんには土の中のものをあげましょう」といって、麦畑の麦を全部、刈り取って株だけ残します。
計られたと知った鬼は、次の年の秋には「土の上にできているものを、わしがもらうぞ」というので、おじいさんは「下の半分で結構です」と承知し、鬼が葉っぱを刈り取った後で、大根や芋をごっそりと掘り出したという話です。
 五月のはなし
 ももたろう 松谷 みよ子/吉沢 和夫 監修 日本民話の会編 国土社刊 
 
大らかな話ではありませんか。鬼を手玉に取り、恐い鬼もかたなしです。鬼は悪魔と考えられ、病気や災いを起こす疫病神のような存在でしたから、人々の「恨み、つらみ」は相当なものであったと思われます。おじいさんの気持ちが、手に取るようにわかりますね。
 
 
ここでは取り上げませんでしたが、浜田廣介の「泣いた赤鬼」は、童話とはいえ日本以外に、鬼を人間らしく扱った作品はあるのでしょうか。最後の青鬼くんの置手紙には、涙がこぼれてきます。お子さんはどのような反応を示すでしょうか。
 
  赤鬼くん、人間たちと仲良くして、楽しく暮らしてください。もし、僕が、このまま君と付き合っていると、君も悪い鬼だと思われるかもしれません。
  それで、ぼくは、旅に出るけれども、いつまでも君を忘れません。さようなら、体を大事にしてください。僕はどこまでも君の友だちです。
       (「泣いた赤鬼」浜田康介 著 小学館文庫 小学館刊)
 
 
(次回は、「第五章 雛祭りとお彼岸ですね 弥生」についてお話しましょう)
 
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話 情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】

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