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めぇでるコラム : 2022年7月 2ページ目

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>建学の精神、教育方針の理解の仕方(3)

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         「めぇでる教育研究所」発行
「2023さわやかお受験のススメ<小学校受験編>」
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2023年度入試(2022年秋に実施)を成功に導く手引きです。
          ★第53号★
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建学の精神と教育方針の理解の仕方(3)
 
 
今回は、地元千葉県の私立小学校を取り上げます。国府台女子学院小学部は、
前回第52号でお話ししましたので、4校について紹介いたしましょう。
 
 
≪ 日出学園小学校 ≫
 
教育理念と目標 
   ここから大きく育つ、生きる力。
   自主性  向上心  想像力  好奇心
  小学校6年間を通じて「なおく・あかるく・むつまじく」の校訓をもとに、
  人間教育の実践をしています。
 
  「なおく」とは、正しいこと正しくないこと、良いこと悪いことが判断で
   きること。
  「あかるく」とは、笑顔を絶やさず感動を体験しながら、一生懸命取り組
   むこと。          
  「むつまじく」とは、文字通り仲良くする、共に生きる、共生のこと。 
           
健康で潤いのある人間性や想像力を養い、基礎学力の定着を図る、これが本校
の目標です。具体的な内容に関しては、荻原巌校長のあいさつを参考にしてく
ださい。 
         
「日出学園は昭和9年(上皇陛下が誕生した翌年、市川が市となった年)に市
川在住の有志によって創設されました。
その中心となった青木要吉は若き日にアメリカに留学し民主主義と自由主義を
肌で感じ、その体験から生徒の特性を伸長することに重点を置いた私塾的な雰
囲気を持つ寺子屋のような少人数、男女共学の教育を目指していたと聞いてい
ます。
当初は幼稚園、小学校のみでしたが、昭和22年中学校を、25年には高等学
校を開設して現在に至っています。
 
人間形成の土台づくりは、児童期の体験数で決まると思います。小学校では、
学校行事での関わりの中から楽しさ、悔しさなどいろいろな想いを体験しても
らい、その都度いろいろなことを考えて前に進んで欲しいと願っています。そ
のために、異学年交流・異年齢交流・宿泊合宿など集団の中で、友だち・下級
生・上級生という立場で物事を考え行動し、そのような体験の中から社会性や
共感性などを身につけていってほしいと常々思っております」           
 
教科では、国語力の向上に力を注いでいます。図書室には現在約54、000
冊の蔵書があり、恵まれた環境の中で、考え、思い、学び、表現するための手
立てである「言葉の力」をつけさせ、「生きる力」へとつなげていけるように
指導していること。
また、「書は人なり、心を写す力」ともいわれているように、正しい「書写力」
を身につけることが一番の目標で、低学年のうちから、一点一画、ていねいに
書く習慣を身につけるように心がけている学校です。
 
創立者の信念でもあった「昼食はお母さんの手作りのお弁当」は、少し形を変
え、弁当をネットで注文し、購入できるシステムをはじめました。
また、令和4年度、アフタースクール「ひのキッズ」が開校しました。
注文弁当とアフタースクール、働くお母さん方への支援、これも歓迎されてい
るようです。
 
共学で、高校までのゆとりのある一貫教育で、大学受験は、本人の実力次第。
なお、中学受験に関しては、従来から、受験対策のノウハウは充実しており、
HPの中学校合格状況に、その実績を見ることができます。小学校は地元で安
全に通学、中学から東京の学校へと考えているご両親も多いようです。
 
 
 
≪ 聖徳大学附属小学校 ≫
 
2021年度から、高校(光英VERITAS中学校・高等学校)までの共学
となりました。それまでは、男子は中学受験する必要があり、かなりの進学実
績をあげていましたから、充実した進学体制をあげても良いのではないでしょ
うか。幼児教室対象の説明会でも、外部の優秀な指導者を招いていると聞いた
ことがあります。
 
最近、日本女子大学附属豊明小学校、聖心女子学院初等科をはじめ、千葉県の
私立小学校でも学童保育やアフタースクールが盛んですが、本校の「聖徳アフ
タースクール」の大きな特徴として、車でのお迎えを容認していることでしょ
う。お仕事を持っているお母さん方には強い味方になるのではないでしょうか。
 
校名の聖徳の由来は、聖徳太子の道徳や礼節などに対する思慮の深さを教育の
基礎とし、豊かな人間づくりを実現したい思いから。読み方を変えたのは、聖
徳太子に深い尊敬の念からで、「しょうとく」と読むのを控え「せいとく」と
したそうです。
 
「思いやりと、礼を尽くす、こまやかな心を学ぶ」を目指す小笠原礼法宗家の
指導による礼法教育、明和班、全校生が一緒に食事をする「食堂(じきどう)」
など、学園の「礼節」「知育」「勤労」の3つの教育方針について、どのよう
に期待するかをまとめてみましょう。
 
礼法教育は、1年生から6年生まで、年間指導計画があり、電車の中で化粧を
している女性や、歩きながら物を食べている無作法者に見せたいほど、日本古
来の文化が伝承されている学校です。これも欠かせない志望理由になるのでは
ないでしょうか。
 
 
 
≪ 千葉日本大学第一小学校 ≫
 
創立時は男子だけの別学でしたが、平成8年4月から共学校になり、大学まで
の一貫教育校です。共学が自然で、受験を考えなければ16年間のゆとりのあ
る教育環境で、自分の進む道を、ゆとりを持って学べることでしょう。
 
本校の児童は、一定の内部進学規定を満たすことで、学園の2つの中学校へ約
70%、2つの高校へは90%以上、そして大学へは60%の生徒が進んでい
ます。(令和4年7月のHPより)
 
本校の校訓「真(まっすぐに) 健(すこやかに) 和(なごやかに)を、わ
たしども流に、心を表す言葉として考えると、
 真は「飾り気のない、偽りのない心」
 健は「すこやかな精神」
 和は「おだやかな心」
となりますが、いかがでしょか。
 
本校の特色として、「学習習慣の定着と基礎学力定着」とありますが、年間の
授業時間数は、本校は13教科で6676時間、公立校は5645時間と、か
なり多いこと。
また、創立以来、英語教育に力を入れています。5年生からは英語で書いた日
記を提出したり、ステップアップタイムの活用などで、卒業時に6年生全員が
実用英語技能検定5級合格を目指しています。
6年間「自学ノート」に取り組むことも特長です。
そして、縦割りグループによる学年を超えたユニークな「さくら活動」でしょ
う。
こういったことからまとめてみましょう。
 
 
 
≪ 昭和学院小学校 ≫
 
教育目標に「知・徳・体の全人教育(知識だけにかたよった教育ではなく、性
格教育、情操教育なども重視する教育)を掲げていますが、開校以来、少数の
児童(現在は1学年3クラス)に行き届いた教育を行うことを目標に、道徳教
育を重視し、児童の基本的生活習慣の形成に力を注いでいます。それが、校是
「明敏謙譲」の狙いであり、教育目標に表れています。「学校案内」には「明
敏とは活力を持って未来を開くこと、謙譲とは英知を持って社会に生きること」
で、「明朗にして健康で、自主性に富み、謙虚で豊かな人間を育てること」と
説明されています。
 
山本良和校長は、就任の挨拶でこうおっしゃっていました。
 
「『人が未来』という言葉が本校の教育観を表した言葉です。人が、つまり、
子どもが未来。今日の学びが子どもの未来を作っていくんだという思いで取り
組んでいます。」
 
また、教育目標である「高い学力とやさしい心」については、
「高い学力というのは所謂受験のための学力ではなく、未知のものに立ち向か
っていく力、『学ぶ力』です。 <中略> 悩みながら試行錯誤した結果、こ
れまでできなかったことができた瞬間、全ての子どもは必ず笑顔になります。
この笑顔こそ、学校教育で目指すべき、実現すべき子どもの姿だと我々は考え
ています。」
「『やさしい心』とは、相手の事を自分事として捉え、一緒に感動したり、助
け合ったり、分かち合ったりできることです。道徳教育として、全ての教育活
動の中で、人の気持ちがわかる、共感するということを大事にしています。」
とおっしゃっていました。
 
「明敏謙譲」、例によって、育児の姿勢としてわたしども流に考えるとこうな
ります。
 
「謙譲」とは、「へりくだること」という意味で、「謙譲の美徳」ともいいま
すが、最近は、お目にかかれない言葉となりました。むしろ、「謙虚」の方が
おなじみかも知れません。「自分が偉いものと思わず、素直に他に学ぶ気持ち
があること」という意味です。すると校是の「明敏」は、「明朗にして健康で、
自主性に富む」ですから、「元気で、明るく、自力で挑戦する子」に、「謙譲」
は「謙虚で心の豊かな人間を育てる」ですから、「素直な子」と置き換えるこ
とができるでしょう。
 
独自の国語教育、伝統の読書教育に加え、「視写」があります。
文章をそのまま写すことです。おそらく子ども達は、名文を写し、記憶し、漢
字を覚え、語彙も増えるといったように、楽しい学習をしているのではないで
しょうか。
 
幼稚園では、年少から英語を正課にしていることについて、受験されるお母さ
ん方から、「英語の勉強について、何らかの準備をしておかなくても、ついて
いけるでしょうか」と質問を受けることがあります。附属の幼稚園では、年少
から正課として英語を保育に取り入れ、年少組は週1回30分程度、年中、年
長組は週5日40分程度行っています。3年間でかなり力がついていると考え、
入学後、英語を学んでいない子どもにとって、それがハンデになるのではと考
えるのも当然ではないでしょうか。
 
それについて鈴木祐子前校長が以前、
「本校では、ESL用に開発された『グレープシード』という英語のカリキュ
ラムを使用しています。入学時には個々のバックグランドにより英語力がまち
まちな児童たちですが、少人数制の英語授業を通し、ほぼ1年で経験に由来す
る差はなくなります」
とおっしゃっていましたので、心配ないようです。
 注 ESL(English as a Second Language)
     英語を母語としない人のための英語教育を目的としたプログラム
 
また、本校のアフタースクールには12講座の内、英語の授業が3講座設けら
れており、これを利用することで、ハンデをなくす対策になっているのではな
いでしょうか。本校のアフタースクールは半端ではなく徹底していますから、
学校側も自信を持って対応できると考えているようです、私見ですが。
 
共学で、高校までの一貫教育校と期待する教育内容からまとめてみましょう。
日出学園と同様、中学受験のノウハウは充実しており、HPを見ると進学状況
を見ることができます。これは、現在共学ですが、それ以前は、中高は女子だ
けの別学であったため、男子は受験を控えていたためです。念の為、お断りし
ておきますが、面接で「中学受験を目指しています」は、そういう考えを持っ
ていても、あえて言う必要はありません。
 
なお、令和3年度入試から105人募集に増え、それに伴い、校舎(ウェスト
館)が増設されました。木造の校舎で、入ると木の良い香りがします。
 
 
3回に分けて、「私学の建学の精神、教育方針の理解の仕方」について、「お
とうさん、おかあさんの受験対策」(めぇでる教育研究所 刊)からピックアッ
プして紹介しましたが、これは、あくまでも「わたしども流の考え」にすぎま
せん。
こういった解釈を情報として公表するのには、少し、心配があります。それは、
幼稚舎が作文を止め、面接を廃止した理由が、あまりにも「傾向と対策化され
ている現状から意味がないと判断したから」とおっしゃったことと同じ理由か
らです。一つの考え方、ヒントとしてお読みいただき、ご自身の言葉でお話し
できるようにしていただきたいと、老婆心ながらお願いしておきたいと思いま
す。詳しくは、めぇでる教育研究所のHPをご覧下さい。
 
間もなく夏休みに入りますが、夏休みの講習会に参加し、キチンと計画を立て
て、乗り切りましょう。「夏を制する者は秋を制す」、この気持ちで頑張って
ください。
 
 
 (次回は「夏休みの過ごし方」を予定しています。)
 
 

 


さわやかお受験のススメ<保護者編>第9章(4)七夕祭りでしょう 文月【七月に読んであげたい本】 

 
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       「めぇでる教育研究所」発行
   2023さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第35号-
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第9章 (4) 七夕祭りでしょう   文 月
 
 
【七月に読んであげたい本】  
 
七夕とお盆です。どちらも、その縁起話があるので、紹介しましょう。
 
 
 ◆天女のよめさま◆   常光 徹 著
 
 むかし、ある村の若い猟師が、沼のほとりで昼寝から目を覚すと天女が三人、
泳いでいました。若者は、木にかけてあったとび衣(羽衣)を一枚隠したので
す。水浴びが終わると、天女はとび衣を着て、天へ舞い上がって行きましたが、
隠された天女は天上に帰れません。若者は、泣いていても仕方がないと慰め、
家に連れて帰ったのです。
 やがて、天女は若者の嫁になり、三人の子どもが生まれました。ある時、上
の子が、むずかる下の子をあやす歌を聞き、その歌詞をヒントにとび衣を見つ
け、子どもを連れて、天上へ帰ったのです。家に帰った若者は、「会いたけれ
ば、一番鶏が鳴く前に、わらじ百足分を肥やしにし、夕顔の種を植えてくださ
い」との置き手紙を読み、わらじを作ったのですが、あと一足で夜が明けたの
で、わらじを埋め、夕顔の種を植え、眠ってしまいました。目覚めた若者が見
たのは、空に伸びた、夕顔のつるでした。これで、嫁や子どもに会えると、犬
を抱えて登ったのですが、もう少しの所で、つるは止まっていました。若者は、
犬を天上に放り上げ、しっぽにつかまり、天の庭に跳ね上り、家族と再会でき
たのです。
 ところが、天上のじいさまは、若者を快く思わず、「四町歩の畑を一日で耕
せ!」などと難癖をつけるのです。その度に、嫁さまの助けで解決しますが、
最後は、うまくいきませんでした。うりの収穫が終わると、じいさまは、縦に
切れ(本当は横に切る)というので切ると、積んであるうりが、音をたてて裂
け、水があふれ出して大水となり、若者をのみこみ、流れていくのです。嫁さ
まは、毎月、七日に会いましょうと呼びましたが、若者は、七月七日と聞いて
しまい、それ以来、年に一度、七月七日に、二人は会うことになったのです。
 うりからあふれ出た大水が、夏の夜空に見える天の川になったのでした。 
   七月のおはなし 「かっぱのおくりもの」
     松谷 みよ子/吉沢 和夫監修 日本民話の会・編 国土社 刊
  
同じような話に、鈴木三重吉の「星の女」があります。馬車や蜘蛛(くも)の
王様が出てくるので、「羽衣伝説」は日本の他にあるのかなと、不思議に思っ
たことを思い出します。
鈴木三重吉には、立ち往生したソリで過ごす少年の素晴らしい知恵を描いた
「少年駅伝夫」、肉屋と野良犬の心温まる生活を描いた「やどなし犬」など、
子どもたちに読んでもらいたい作品が残されています。
 
この話から、「ジャックと豆の木」を思い出しませんか。何回もいいますが、
人間、どこに住んでいても考えることは同じなのです。そう思うと、何やらう
れしくなります。本当は、心のやさしい生きものなのです、人間は。ところで、
「ジャックと豆の木」に出てくるのは「鬼」でしょうか、それとも「大男」で
しょうか。
 
 
 
 ◆お盆のはじまり◆
 
七月十五日は、祖先や亡くなった人たちの霊をなぐさめるお盆の日です。お盆
の縁起を伝える話が残されています。
 
 お釈迦さまに、目蓮上人という神通力にたけたお弟子がいて、修行中に息を
引きとり、あの世へ旅立ちました。死んだお母さんに会いたいと思い、三途の
川を渡り、閻魔大王のいる関所に着き、母に会わせてくれるよう、願い出たの
です。大王は、上人を、湯が煮えたぎる大きな釜の所へ連れていきました。釜
の中では、釜茹の刑を受ける人達がうめき、叫び声を上げていたのです。上人
が、母の名前を呼んでいると、釜の中から一匹のカメがはい上がり、「私がお
前の母だ」というのです。その訳を尋ねると、お前が可愛くて、賢いことを自
慢し、お前さえ長生きすればよいと罪深いことばかり考えていたからだという
のです。上人は、お母さんを助ける方法はないかと尋ねると、毎日、石に一字
ずつお経を書き、それからお経を読んでと言いかけたとき、番人の鬼がきて、
カメを湯の中へ投げ込んでしまい、二度と姿を見せません。そこで上人は、大
王にお礼を言うと、不思議なことに、再びこの世に戻ってきたのです。               
 次の日、上人は神通力で、八千人もの羅漢(悟りに達した仏教の修行者)を
集め、一つ一つの石に、一字ずつお経を書き、お母さんのために、盛大な供養
を行ったのです。すると、紫雲たなびく天上遥かから、「お前のおかげで極楽
浄土へ行けるようになったよ」というお母さんの声が聞こえてきたのでした。
上人は、その後、毎年、七月十五日になると、お灯明をあげ、祭壇に新鮮な野
菜を備え、お母さんや祖先の供養をしたそうです。
 これが、お盆の始まりだそうです。
  日づけのあるお話 365日 七月のむかし話 
                   谷真介編・著 金の星社 刊
 
この話を聞くたびに、「子煩悩」という言葉を思い出します。この言葉から、
子どもをかわいがる親のイメージを持ちがちですが、本当はそうではありませ
ん。煩悩とは、「心身にまといつき心をかき乱す、一切の妄念・欲望」(岩波
国語辞典)のことです。「子煩悩」は、「子は煩悩のもと」と考えるべきなの
です。すると、目蓮上人のお母さんが、なぜ地獄へ落ちたかわかります。
 
「お前のことが可愛くて、可愛くてね。お前が賢いことを人に自慢ばかりして
いたのじゃ。他の人は早く死んで、おまえだけ長生きしてくれればいいと、罪
深いことばかり考えていたからだよ」
 
少子化時代に過保護な育児をしていると、「子煩悩地獄」に落ちます。被害者
は、お子さん自身であることに、気づいてほしいものです。
 
また、「子ゆえの闇」という言葉があります。
    
「人の親の心は闇にあらねども 子を思ふ道にまどひぬるかな」 藤原 兼輔 
 
親の心は普段は正しいが、子どものことを思うときだけは、迷いが生じてしま
う、という意味の歌である。ここから「子ゆえの闇」という言い方が生まれた。
どんなに理性的な人でも、ことわが子が置かれた環境や将来の話になると思慮
分別をなくしてしまう……子を持つ親なら、そういう気持ちはよく理解できる
はずである。早い話が親ばかだが……。
 (知らない日本語 教養が試される341語  谷沢永一 著 幻冬社刊 P57)
 
「早い話が親ばかだが……。」わかっていますが、つける薬はないということ
ですね。
 
 
 
次に紹介する話は、「ナヌ?」となるはずです。そうです、芥川龍之介の世界
です。こういった作品に出会うと、「やってくれるではないですか」とうれし
くなりますね。
 
 
 ◆にんじんのしっぽ◆   水谷章三 著
 
 むかし、けちなばあさんが、じいさんと隣同士に住んでいました。じいさん
が風邪を引き、薬にんじんを分けてくれと頼むと、一本あげるのを惜しみ、細
いにんじんを半分に折り、曲がったしっぽのところを、あげたのです。じいさ
んの風邪は治りました。その後しばらくして、ばあさんは死にましたが、行き
先は地獄です。
 釜に投げこまれ、首だけ出して苦しみ、もがいていた時、天の神さまが、雲
に乗り通りかかったので、助けてくれと大騒ぎをしたのです。その声が神さま
の耳に届き、何か方法はないかと、使いの者を閻魔大王のもとへ走らせたので
した。困ったのは、大王です。ばあさんは、何も善いことをしていないからで
す。閻魔台帳を見ていると、やっと見つかったのは、隣のじいさんに、薬にん
じんをあげたことでした。大王は鬼に言いつけ、薬にんじんのしっぽを、使い
の者に渡しました。
 神さまは、「お前が人助けをした、にんじんのしっぽだ。これにつかまって
上がれ」と釜の上に降ろしたのです。それにつかまったばあさんを、神さまが
引き上げはじめました。釜から二本の足が出ると、右足に一人、左足に一人、
亡者が飛びついたのです。すると、四本の足に一人ずつ飛びつき、八本の足と
なり、十六人、三十二人と亡者が飛びつきます。ばあさんは、かなり上まで来
たと思い下を見ると、足の下に亡者がつながっているではありませんか。にん
じんが切れてしまうと、ばあさんが足をこねまわしたからたまりません。取り
ついていた亡者どもは、地獄の釜に落ちてしまいました。ばあさん一人になり、
天国に上れると思ったのですが、あと一息のところで、しっぽは切れ、ばあさ
んも地獄に戻ってしまったのです。そして、「人のこと、降り落とさねばよか
ったってか、どうかな」と、つぶやいたのでした。                    
 九月のはなし   きのこばけもの 松谷みよ子/吉沢和生・監修
                    日本民話の会・編 国土社 刊     
 
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」と違うのは、ばあさんの最後の一言でしょう。お釈
迦さまが、カン陀多(カンダタ)の無慈悲な心を哀れんだのに対して、このば
あさんの一声は、「人のこと、降り落とさねばよかったのではないのかだって、
どうかな。そんなことはわからないよ」と、ばあさん本人に言わせているとこ
ろがいいですね。後悔しないで開き直っています。昔話は、その時代に生きた
庶民の息吹を感じることができます。この話も意味深長ではないでしょうか。
人生を達観している気がします。。
 
 
 
最後に、うなぎに関した面白い話があるのですが、パソコンで検索しても見つ
かりません。寺村輝夫氏の「とんち話・むかし話シリーズ」の「わらいばなし
編」(あかね書房 刊)ではないかと思います。題もうろ覚えで間違っている
かもしれませんが、こういった話です。
 
 
 ◆においの値段◆
 
 うなぎ屋さんの店の前に、舌を出すのもいやな、けちべえさんが住んでいま
した。昼時になると、けちべえさんは、お茶碗にご飯をいっぱいつめ、家の窓
をあけ、うなぎの焼ける匂いをかぎながら、美味そうにご飯を食べるのでした。
うなぎ屋さんはこれがしゃくで、何とかお金を取れないものかと考えていたの
です。
 ある日のこと、請求書を持って、けちべえさんの家に行ったのでした。
 「けちべえさん、あなたは、毎日、お昼になると、うなぎの匂いをかいで、
ご飯を食べていますが、うなぎはただではありません。匂い代を払ってくれま
せんか」
 「ああ、いいですよ。毎日、ご馳走になっていますから」
といって、けちべえさんは、奥にいって、何と財布を持って出てきたではあり
ませんか。
 「いくらですかな?」
 驚いたのはうなぎ屋さんです。 けちべえさんが、お金を払ってくれるなど、
信じられなかったからです。
 「1月分ですから、ちょうど○○です」  
 「おや、安いものですな。じゃ、払いますよ」
といって、お金を床に投げ出したのでした。チャリン、チャリンと音を立てた
のを聞いたけちべえさんは、
 「私は、匂いだけをかぎましたから、お前さんにもお金の音だけで払ってあ
げましょう」
といって、お金を拾い、さっさと奥に入ってしまったのでした。
 
 
落語にも同じ話があったと記憶しています。これは、とんち話ですから、子ど
も達の方が知っているかもしれません。
 
 
  (次回は「終戦記念日、このことです」についてお話しましょう)
 
 
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話 
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>創刊号

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        「めぇでる教育研究所」発行
「2024さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>」
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2024年度入試(2023年秋に実施)を成功に導く手引きです。
          ★創刊号★
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 - 年中から挑戦される皆さんへ -
  
                          
小学校の入学試験は、文字も数字も使わずに、でも、かなりハイレベルな問題
で構成されています。
 
例えば、どこの学校でも出題されている「話の記憶」は、あらかじめ録音され
たナレーションを聞き、物語の内容を理解し、設問に答えますが、その内容は
小学校の中学年から高学年にかけて学ぶ「長文読解」に匹敵するほど難しいも
のです。
 
また、「数量の領域」では、1年生で学ぶ足し算、引き算、2年生で学ぶ掛け
算、3年生で学ぶ割り算、4年生で学ぶ分数まで出題され、数字や加減乗除の
記号(+-×÷)を使わずに、ただ○を書いて答えます。
 
こんなにも難しいことに挑むにもかかわらず、ペーパーテストには、答えは全
て、イラストなどで描かれていますが、設問はどこにも書かれていません。で
すから、話を聞く力が備わっていなければ、どうにもならないのが小学校の受
験なのです。
 
こういった情報は、市販されている過去の問題集、いわゆる過去問などに詳し
く紹介され、行きわたっていますから、受験を考えられている保護者の皆さん
方も、よく理解されているのではないでしょうか。
 
そのためでしょうか、家庭学習をしっかりやり、年長の夏休みから幼児教室へ
通う、短期合格達成型、こんな言葉はありませんが、このように考える保護者
の方が増えていることも確かでしょう。
 
ただ、現場の先生方から「もう少し早く教室へきてくれさえすれば」と悔やむ
声を耳にすることが少なからずあります。何が足りなかったのでしょうか。
 
これは、小学校の入学試験の難しさを表したもので、いやな言葉ですが、知的
なレベル、偏差値が高いだけでは、合格は不可能だということです。一昔前は、
「出身者有利」「コネがあるから」など怪情報、妙な噂があったのですが、そ
ういったことではなく、学校側の求めている子は、「知育・徳育・体育の3つ
の能力が、年齢相応にバランスよく育まれている子」なのです。
 
ある年の聖心女子学院初等科の説明会で「聖心の求める子ども像」をこうおっ
しゃっていました。文言は正確ではありませんが、紹介しましょう。
 
 ・心身ともに健康で子どもらしい子。 
 ・身の回りのことをきちんとできる子。
 ・人の話をきちんと聞ける子。
 ・じっくりと取り組む根気のある子。
 ・友達と仲良くできる子。
 ・わがままを言わず我慢のできる子。
 
 そのためには、以下のことを大切にしてほしい。
 
 ・実際に体を動かし、いろいろな体験を積むこと。
 ・心を安定させること。
 ・他人を大切にすること。
 ・褒めて子どもを育てること。
 ・規律正しい態度を育てること。
 ・どんな時でも笑顔で明るく挨拶すること。
 ・過ちをしたときには、素直に謝ること。
 
「人の話をきちんと聞くことができ、身の回りのことをきちんとできる子」と
は、基本的な生活習慣が身に付いている子であり、「規律正しい態度を育てる
こと」とは、そういったことを心がけて育児をする保護者のことなのです。
 
基本的な生活習慣とは、「他人の手を借りずに自力でできなければならないこ
と」であり、それは「規律正しい態度を育てるご両親から育まれる」からです。
 
こういった大切なことが等閑(なおざり)にされているように感じることがあ
ります。学校側も説明会で、「当たり前のことが当り前にできないお子さんが
増えている」と指摘しています。
 
例えば、あるミッション系の女子校の説明会で、「箸の正しい持ち方」をスラ
イドで上映しながら紹介し、「今年度、あえてこの場で申し上げますが、もし、
テストの中で箸を使う場面がございましたら、箸で物を運ぶ速さを競っている
のではなく、正しい箸の持ち方ができているかを見ていることをご理解頂きた
い。テストの趣旨はそこにあります。日本の文化でもある箸の使い方を、きち
んと身に付けてほしいと考えます」、文言は正確ではありませんが、こうおっ
しゃっていました。箸の持ち方がおかしければ、筆記用具の正しい持ち方にな
っていません。食事は日に3度のことであり、お母さん方の育児の姿勢がはっ
きりと表れるわけです。
 
また、入試の問題に「点図形模写」がありますが、模写は書写の基本ですから、
背を伸ばし、きちんとした姿勢で、正しく筆記用具をもって書いているかがわ
かるから出題されているのです。
 
学校側のいう「当たり前のこと」とは、こういった基本的な生活習慣をきちん
と身に付けることなのです。
 
問題集に取り組む前に、やっておかなければならない「育児の基本」なのです。
 
その準備期間を7月から10月の4ヶ月に絞り、どういったことを心がけてご
家庭でやっていかなければならないかを、過去に出題された問題などを紹介し
ながら進めていきますから、納得して頂けると思います。
 
何事も「はじめの一歩」が大切です。しっかりと基本的な生活習慣を身に付け、
11月からの本格的な学習に、無理なく、より効果的に臨めることを願い発信
するのが、本メールマガジンの狙いです。
 
「ゆっくり、じっくり、確実に」を目標に、来年の秋には志望校から招待状を
頂けるよう、微力ながらに応援致します。一緒に頑張りましょう。
 
 
                     めぇでる教育研究所 職員一同
 
 

 


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