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めぇでるコラム : 2016小学校受験: 2015年4月

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★[8]構成力・観察力に関する問題(1)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第42号)
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★入試情報★
○学習院初等科学校説明会
日時 5月16日(土)9:30~11:30 13:00~15:00  
要 上履き・下足入れ 保護者対象で幼児不可
参加票持参 
 
○日出学園小学校 お父さんための説明会
日時 5月21日(木)・5月22日(金)18:30~
要 申し込み (5月7日より受付開始)
 
いずれも詳しくは、ホームページをご覧ください。
 
★★入試問題を分析する★★
[8]構成力・観察力に関する問題(1)
 
基本は図形ですが、その他に模倣や同図形、異図形の発見などがあります。
 
[図形合成の問題]
三角形、正方形、長方形、菱形、円形などの形についての理解力を問う問題で
す。
これも、かなり難しいですね。
 
◆プレート合成
★(数枚のプレートが置かれている)
「三角のプレートを使って、お手本と同じものを作りなさい」
 
難しくて、どこがどうなっているのか、わからないものがあります。とにかく
プレートを持って悩んでいても始まりません。しかも時間は限られています、
45秒程ですから、迅速な対応が求められます。
 
問題集でやる場合、プレートがついていれば、それを切り取り利用できますが、
ない場合は、少し厚手の紙で同じ物を作ってあげましょう。そして、問題集に
取り組む前に、お子さんにいろいろな形を作らせて遊ばせ、「おもしろいな!」
と興味を持たせることが大切です。プレート構成の意味が理解できてから、挑
戦しましょう。
 
◆分割合成
★(5つに切り離されたプレートが、バラバラに置かれている)
「プレートをうまく組み合わせて、もとの円い形にしましょう」
 
三角形、正方形、長方形、円形が4つから5つに分割されたものを、元の形に
復元する問題で、ジグソー・パズルのように、絵が描かれている場合は、かな
りできますが、真っ白なパネルでは、苦労しますね。
お子さんにさせてみるとわかりますが、「△とは、□とは」と、定義を前提に
せずに、どんどんと作っていきます。
言うまでもありませんが、円は、外は曲線です。
三角は、3本の線で囲まれて、角は3つです。
四角は、4本の線で囲まれて、角は4つです。
しかし、子ども達は、これを無視して取り組みますが、しばらくすると、「で
きました!」となるのですから、やはり、遊びの感覚ですね。図形の定義を抜
きにした構成力で、本当に不思議なものです。
ただし、完成した時には、△、□、○などを言葉でいえるようにしておきまし
ょう。
三角形は「さんかく」、正方形は「ましかく」、長方形は「ながしかく」、円
形は「まる」でいいでしょう。
 
★「左の形を作るには、右の長四角の中の、どれを使えばよいです
 か。3つずつ探して○をつけなさい」
 
先程、パネルでやった問題を、プリントで答える応用問題となります。いきな
り問題集をやると、直ぐにお手上げになりかねませんから、プレートを使い、
基礎トレーニングを十分積んでから挑戦しましょう。その基礎トレーニングで
すが、またしても折り紙の登場です。形がそろわないとうまく構成できません
から、きちんと折り、丁寧に切ることが大切です。角を合わせて2回折ると4
個の三角ができますから、それをお子さんに切らせます。
 
2枚使って三角を作ります。
 
次に四角です。 
 
この四角を作るときに、角と角を合せて蝶々を作ることを覚えると、4枚で真
四角を作るときに役に立ちます。
平行四辺形もできますが、名称は、覚える必要はありません。
今度は、4枚で三角と四角と長四角を作ります。
 
三角は二通りできます。
 
ここで、お母さん、挑戦しましょう。お子さんが三角4枚で作った四角を使い、
それより大きな四角を作ってください。かつて、東京女学館小学校で出題され
た問題ですが、頭が固いとできません。
 
今度は、四角を折ってみましょう。
 
上下の辺を合わせて折り、広げて折っていない方を同じように折ると四角が4
つできます。三角は、何回切っても三角に変わりはありませんが、四角は、長
四角と四角の繰り返しですね。
 
次に、円形です。コンパスがなくても、茶わんを使えば描けます。
 
半分に折ると扇形ができます。さらに、半分に折ると4個の扇形ができます。
バラバラにして組み立てられれば、円と扇形の構成がわかります。
 
ところで、○の分割で、ケーキを3人、5人、6人で分けるといった問題があ
りますが、子ども達には難問です。○を三等分、五等分、六等分に分けたもの
を作り、それを切り取り、形を覚えておきましょう。
この問題を解くときに、器用に分けられる女の子がいるものです。
 
「ママが、ケーキを切るのを見て、粘土でまねをしたの!」
お手伝いをしながら、5つ、6つに分けたのを見て、
「ママ、すごい!」
と驚き、実験して覚えたそうです。やはり、体験学習は、貴重な財産になって
いますね。
 
同じ体験ですが、「丸い粘土の固まりを使い、同じ大きさの玉を3個作りなさ
い」といった問題で、粘土の固まりを板の上にのせ、手でゴシゴシとこすり、
細長い棒状に伸ばして、それを三等分し、3個の玉を作った子がいました。
「ママとクッキーを作ったとき、こうすれば同じ大きさに作れると教わったの!」
と嬉しそうに話してくれたものです。こういった日常生活での体験が、大きな
知恵となっていることがよくわかります。
 
少し脱線しますが、3個に分けた玉を一つに丸めて、「○が3個でも1個にな
る」という子ども達がいるものです。つまり、1+1+1=3ではなく1だと
いうわけです。3個の玉を、もとの固まりに丸めると1つの固まり[○]になり
ますから、確かに[1]になります。
これは、「ある量のものをいくつに分けても、もとの量は変わらない」という
「量の保存」のことですが、量と数の違いは、粘土で説明するとわかりやすい
でしょう。
私がお預かりした子ども達の中にも何人かいました。いずれもペーパーテスト
をしない難関校に入りましたが、こういったことにこだわるお子さんには、き
ちんと説明してあげることが大切です。小学校4年生で習う分数の基本です。
 
最後に、作った形を真四角、長四角、三角、円といった形でまとめてみましょ
う。どこかで見たことはないでしょうか。そうです、積み木の箱です。一つの
形を作ってきちんと収納されていませんか。 図形の基本ですね。
三角2つで四角が、四角2つで長四角、長四角2つで四角、扇形4つで円がで
きます。積み木を片付けながら図形の構成を学習しているわけです。スケッチ
ブックなどにそれぞれの形を描き、その枠内にしまう練習もやってみましょう。
 
積み木は、頭脳のトレーニングになる遊びです。
遊んでいる子どもには玩具の一つですが、幼児期の図形学習や構成力、観察力
や立体感覚を養うために欠かせない大切な教具です。巧緻性のところでお話し
た「手は第二の脳」を思い出してください。手を使う作業は、目でとらえた情
報を脳に伝え、それをいかに行動に表すかを脳が考え、正しい指示を出し、手
先が適切に作業をする、体と脳の共同作業だとお話しました。
 
こういった共同作業をスムーズにできる子の知的な能力が高いといわれるのは、
それだけ試行錯誤を積み重ね、苦労をしながら、自発的に学習し、理解したも
のであり、先天的な能力だけではないと思います。しかも、子ども自身は、
「図形や構成力のお勉強!」などと思って、取り組んでいるわけではないので
すが、構成力がつくだけではなく、夢中になって取り組むことで、集中力や学
習意欲も培われます。
 
子どもは、単に記憶にだけ頼るのではなく、身体全体を使い、学習をしていま
す。子どもの遊びは、すべて、何らかの学習につながっているのです。「遊び
はいけないこと」と考えるお母さん方がいると聞きますが、それは間違いです。
幼児期の遊びは、工夫する力を培う大切な作業であり、学習の場と考えましょ
う。考え行動することから、自発性が養われていくからです。
 
これで基礎トレーニングは、終わりです。基礎をしっかり理解してから、問題
集に挑戦しましょう。三角形、四角形のパネルつきのゲーム感覚の教材を選ん
でください。図形の問題に強くなると、考える力がつきます。複雑な問題にな
ると時間もかかりますから、集中力や持久力もつきます。 
 
スムーズにできないと、苛立つお母さん方がいるようです。
「……! ……? ……こうやるの!」などと、子ども達が試行錯誤している
時に、口を出さないことです。
「お母さん、これ、どうなっているのかな……?」
相談されたらアドバイスしてあげましょう、お母さんにも根気が必要です。そ
の心構えが、お子さんの持久力や取り組む意欲や自発性を育てます。
 
先程の、お子さんが作った□を使って、それより大きな□を作る問題ですが、
中心に集まっている4つの頂点を、底辺を軸に、それぞれ左、右、上、下へ裏
返しにします。お子さんの作った□の外側に、4つの三角の屋根ができ、大き
な□となるはずです。仕掛けがわかると何でもないように思えますが、「コロ
ンブスの卵」と同じですね。日能研のキャッチフレーズではありませんが、
「□(シカク)いアタマを○(マル)くする」、子どもとの付き合いで大切なのは、
親の既成概念、思い込みを押しつけないことです。
(次回は、「構成力 観察力2」についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★[7] 記憶に関する問題

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第41号)
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★★入試問題を分析する★★
 
◆入試情報◆
◎立教小学校は佐々木正校長、淑徳小学校は多田元樹校長、日出学園小学校は
平山淳子校長が新しく就任されました。淑徳小学校と日出学園小学校のホーム
ページには、校長先生のメッセージが掲載されています。
 
◎説明会の日程も発表されています。
雙葉小学校の説明会は、7月17日(金)と18日(土)に実施されます。昨
年と同様、はがきで申し込むシステムで、申し込み受付は、5月7日(木)~
6月19日(金)の消印有効。詳しくはホームページをご覧ください。
 
なお、めぇでる教育研究所のホームページの「お受験情報・リンク」を開き、
各学校のアドレスをクリックすると、説明会の日程など詳しく知ることができ
ますのでご利用ください。
 
 [7] 記憶に関する問題
 
プロジェクターを使って、スクリーンに映し出された映像を何十秒か見て、ど
れだけ覚えているかをみる問題です。映像は、イラスト、色、図形、位置など
があります。
 
上映されている間、問題用紙は裏返しにし、本人には見えないようになってい
ます。
ところが、問題がスクリーンに映っている間に、覚えなくてはならないのです
が、裏返しにされている答案用紙を、そっと見る子がいるそうです。
そんな暇はないのですが……。
こういった態度には、どんなチェックが入るのでしょうか。
まさか、「カンニングの行為でマイナス5点!」などはないでしょう。
ただ、不安なのです。
不安の種は、どうやら子どもの頭に浮かぶお母さんの顔のようです。
できないと、怒られるからなのでしょうか。
もし、そうだとすれば、こういったところに、普段の育児の姿勢である「満点
主義の教育ママ」の顔が、表われかねませんね。
結果ばかりにこだわらないで、どうしてできないのだろうと、そのプロセスを
考えてあげるお母さんになってほしいのです。
「私どもは、試験でさえもプロセスを大切に見極めています」
文言は正確ではありませんが、桐朋小学校の説明会で聞いた話です。
「プロセス重視」、これは家庭学習で忘れてはならない大切な心構えです。 
 
◆絵の記憶
公園で動物たちが遊んでいる絵を20秒ぐらい見て、うさぎがいたところに○、
たぬきがいたところに×、りすがいたところに△をつける問題です。
スクリーンをボーッと見ていたら、
「動物が遊んでいたなぁ……!」
でおしまいですね。
 
◆色の記憶
四角や、三角、丸などの図形に、三色から多くても五色ぐらいの色を塗ったも
のを見て、それと同じところに同じ色を塗る、同じ色のシールを貼るなどの問
題です。
「きれいだな!」
気持ちはわかりますが、感心している場合ではありません。
あっという間に終わります。                 
集中力です。
 
◆形の記憶
☆△□○といったように、形が並んでいるものを見た後に、下の中から同じも
のを選んで印をつける問題です。
形は、難しいですね。
抽象的で、つかみどころがないからです。
 
◆ 位置の記憶
ます目の中に、動物や昆虫、花や果物、記号や図形がかかれているものを見て、
右側の解答用紙の同じ所に印をつけたり、おはじきを置いたり、シールを貼っ
て答える問題です。
動物や花などは、覚えやすいようですが、図形は抽象的だけに難しいのです。
 
◆音の記憶
例えば、太鼓が6回たたかれた音を聞き、その数だけ○を書くとか、テレビを
使って、動物たちが順番に楽器を鳴らし、だれが、どの楽器であったか、動物
と楽器を線で結ぶ問題などがあります。
 
記憶の問題は、やった経験がなければ、ほとんどできないでしょう。
テストは、このように行われるからです。
 
 (スクリーンには、動物たちが公園で遊ぶ様子が映されています)
 ★スクリーンを見てください。………………………(20秒経過)
「くまさんがいたところに○、うさぎさんのいたところには×をかきましょう」
 
「記憶の問題です」などといった説明もなく、スクリーンに問題が映り、しば
らく沈黙が続きます。
「スクリーンを見てください」といっていますから、説明なしとはいえません
が、ボーッと見ていたら、それまでですね。
人間の脳は、「覚えなさい!」との明確な指示があって、初めて記憶する作業
が始まりますから、これは、心構えが必要です。
 
登場する動物も多く、公園の様子も複雑な問題がありましたね。 
子どもは、どのようにして覚えるのでしょうか。
大人は、「ブランコにくまがいて、滑り台にパンダが、砂場にはうさぎが……」
と理詰めに記憶しようとしますから、これでは覚えきれません。
ところが、子どもは、全体をパシッと頭に収めてしまうそうです。
カメラを考えれば、いいようです。
全体を、頭に写し撮ってしまうらしいのです。
子どもの頭は柔軟ですから、記憶できるそうです。
 
子どもの記憶力には、驚かされることがあります。
電車の好きな子が、東海道線の全部の駅の名前を覚えた話など聞きませんか。 
車博士から鉄道博士、昆虫博士と、よくぞ覚えたものだと感心させられます。
そういえば、3年間分のカレンダーを覚えている年長の子に会ったことがあり
ました。
「平成〇○年の12月31日は、何曜日?」
「水曜日!」
なぜか、去年と今年と来年分の3年間なのです。             
話を聞いてみると、お父さんのもらってきた手帳が、余ったのでもらったそう
です。  
そのカレンダーを見ていて覚えたらしいのです。
前後3年間というのも面白いですが、どの年の、月日と曜日を尋ねても、ピタ
リと当たるものですから不気味でしたね。
どうなっているのでしょうか、子どもの頭は。
しかし、記憶の範囲は前後3年間であることから仕組みがわかりました。来年
の12月31日は水曜日と当てるのですが、再来年の1月1日は、何曜日かが
わからないのです。次の日、翌日のことです。素晴らしい記憶力には感心しま
したが、単に覚えているだけでは、余り役に立たないということです。
 
こういった問題があるからといって、問題集を買い、ひたすら繰り返し訓練す
るのは、考えものです。第一、面白くありません。20秒ぐらい絵を見せられ
て、サッと隠して、
「今、何がありましたか!」
「こんなことして、何になるの、お母さん?」
こういわれて説得できなければ、やっている親の立場がなくなりますね。
お気に入りの絵本の、1ページに描かれている情景をいわせてみると、驚くほ
ど細部にわたり記憶しているものです。こういったものを利用しながら、記憶
するという意識を刺激してみましょう。
トランプを使った「神経衰弱」なども、絶好の教材となります。
こういったステップを十分に踏み、それから問題集を利用すれば、お子さんも
やる気十分に挑戦するはずです。
問題意識が芽生えないと、興味を示しませんから、意欲もわきません。
 
記憶は、本当に気ままなものです。 
自分の好きなことは覚えますが、嫌いとなると、もういけません。
やはり、出発点は好奇心ですね。 
そこから、注意力や集中力が働いて、記憶するのでしょう。
普段から、注意力の散漫な子は、やはり、覚えるのも苦手ではないでしょうか。
身辺の整理ができない、おもちゃ箱が乱雑な子も、どうでしょうか。
過保護、過干渉な育児も駄目でしょうね。
何でも自分でやらなければ、段取りがわかりません。
段取りは、前にやった時の経験が生きてきます。
経験は記憶されますから、自分でやることが大切です。
記憶力も試行錯誤の繰り返しで身につくもので、子どもの生活体験と深い関わ
りがあります。
自発性にとみ、自立心の身についている子の記憶力は、すぐれているはずです。
それは、いろいろなことに自力で挑戦しているからです。
 
小学校側も、単に記憶する能力をみているのではないでしょう。
五感を刺激されていれば、記憶力もつきます。
このことです。
ですから、机の上で、問題集でたたき込まれただけの知識は、あまり役に立ち
ません。
単に、大脳神経の回路を刺激して記憶するだけですから、忘れやすいのです。  
しかし、頭と体が一体となって覚えたものは、忘れません。
それは、知識ではなく知恵だからです。
身についた知恵の主語は、自分自身です。
詰め込まれた知識の主語は、多くの場合、第三者やお母さん、お父さんではな
いでしょうか。
 
記憶力を培うのは、五感に刺激を与える環境だと思います。
お子さんが、夢中になって取り組む遊びはありますか。
好奇心の旺盛な子は、やはり、記憶力も順調に発達しているといえるのではな
いでしょうか。
(次回は、「構成力・観察力 1」についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★[6] 推理・思考に関する問題 (3) 

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第40号)
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★★入試問題を分析する★★
[6] 推理・思考に関する問題 (3) 
 
◆入試情報◆
◎神奈川私立小学校フォーラム
  日時 5月6日(祝)10:00~15:00
  場所 新横浜プリンスホテル5F
   日本大学藤沢小学校他29校参加 
   詳しくは「神奈川私立小学校フォーラム」のホームページをご覧ください。
 
◎横浜雙葉小学校 
  学校説明会 5月12日(火)午前10時~11時30分 (申し込み不要)
  オープンスクール 6月20日(土)午前中 約1時間30分
          (要 事前の申し込み)
   詳しくは「横浜雙葉小学校」のホームページをご覧ください。
 
[科学性の問題]
(風の吹く向き、影や水に映っている絵を見て)
 ◆ 下の絵で、おかしなところに×をつけなさい。
 
問題集に取り組む前に、以下の実験をしておくと、好奇心の触角となる「ナゼ、
ナゼ、ドウシテ?」の探査用アンテナを張りはじめます。
風の吹く様子は、ぶら下げたひもにドライヤーで風をあててみましょう。
影は、お日さまの出番ですが、懐中電灯でもわかりやすいでしょう。
水に映る様子は、前回の実験で使った画用紙を縦にして半分に折り、上の部分
に矢印↑や▲を描いてみましょう。  そして、色を塗り、重ねて、よくこす
ります。どのように写るかががわかれば、直ぐに理解できるでしょう。
 
磁石にくっつくもの、水に浮くもの、沈むもの、これも同じです。
磁石を持たせて、十分も遊んでみると、わかります。おもちゃ箱には、いろい
ろなものが入っていますし、部屋の中にも、実験用の教材は豊富です。しかし、
うっかりコンセントに近づけると危険ですから、よく説明しておき、絶対に一
人ではやってはいけないと約束し、実験中も監視の目をゆるめないことです。 
缶はアルミ製とスチール製を用意しましょう。「エッ!」となるはずです。砂
の中に磁石を入れると面白いのですが、最近の砂場は衛生上、問題があります
から勧められません。砂場で砂鉄を採集し、紙の上にのせ、下から磁石をあて
てみましょう。これは、子どもにとっては、驚きの現象となるはずです。
少し難しいかもしれませんが、どうすれば折り紙を磁石で持ち上げることがで
きるか、挑戦してみましょう。ヒントは、クリップなど磁石にくっつくものを
利用することです。
 
コップや空き缶は、どんなときに浮き、沈むのでしょう。
ジュースの入ったビンは、浮くでしょうか。
水をいっぱい入れたビンと、少し空気を入れたビンでは、どうなるでしょうか。
1円玉、10円玉は、どうですか。
紙は、条件で変わります。
輪ゴムも面白いですね。
さつま芋は浮くでしょうか。すいかも面白いのですが、今は、丸ごと買いませ
んから、ピンチヒッター、メロンでどうでしょう。
 
ところで、昔、大関に小錦という大きなお相撲さんがいましたが、プールで泳
いでいるのを見て、
「どうして、あんなに大きなお相撲さんが、水に浮くのですか?」
と真剣な顔をして質問した子がいました。今では、逸ノ城(身長192cm 
体重202kg)でしょういか。みなさん方は、どのように説明しますか。
 
その他に、植物の成長の段階や昆虫の生育状態を、絵を並べて答える問題もあ
ります。
朝顔やひまわり、チューリップなど家で栽培できるものを、お子さんと一緒に
育てながら、観察絵日記をつけるのも、効果がありますね。
おたまじゃくし、めだか、やごなどは、川にはいくらでもいましたが、今は、
その気になって出かけて探しても、いません。
♪春の小川は さらさらいくよ♪
などという風景は、どこにあるのでしょうか。
本物に勝るものはありませんからお勧めできませんが、図鑑などで説明するし
かないでしょう。「手に入らない、見ることができない」といっても、興味や
関心の芽は育てておきたいものです。
 
文部省唱歌「春の小川」の情景は、どこにあったかご存知でしょうか。
渋谷を流れていた河骨川だそうで、今はコンクリートで固められた汚れた川、
宇田川と呼ばれ、東急東横線の渋谷駅前の歩道橋から見ることもできますが、
あまり見栄えのよい景色ではありませんから、お勧めできません。歌碑は、小
田急線の代々木八幡駅付近の線路沿いに建てられています。
ところで、東急東横線の渋谷駅は地下にもぐって副都心線と乗り入れになり、
川越から元町・中華街まで乗り換えなしに行けるようになりましたが、地下鉄
を利用するたびに思うことは、すべて電気が頼りですから、電気が止まると、
後期高齢者は、あの階段を上り下りできませんね。停電の場合、どうなるので
しょうか。
 
[鏡映像]
これも勘違いしやすい問題です。
「左と右が、反対に映るんですよ!」
理論上は、そうですが、子どもには難しい問題です。
「お母さん、どうして左と右が反対になっているのに、上と下は変わらないの?」
こうなると、収拾がつきません。
鏡の前で、いろいろなポーズをとって、遊んでみましょう。右手を上げると鏡
の中の自分は、左手を上げていることに気づかせます。
わかってきたら、子どもと向き合って、「鏡ゲーム」で遊びましょう。お母さ
んが鏡になり、子どもが右手をあげたら、どちらの手を上げますか。左手です
ね。お母さんのいうとおり、左右が反対に映っているのですが、理論的なこと
は、どういうふうに映るかが、よくわかってからにしましょう。
 
ところで、実際に出題されたかどうかわかりませんが、問題集にこのようなも
のがありました。
 
(子どもが、鏡の前で右手を上げている)
◆どのように映っているか4枚の絵から選びなさい。
 
鏡は手前にあり、どのように映っているかわからない仕掛けになっています。
子どもの絵を180度回転させなければわかりませんが、「鏡ゲーム」でやっ
てみると、右手に歯ブラシを持っている子は、鏡の中では左手に持っているこ
とがわかります。
 
ところで、鏡は不思議です。左右が逆になるのに、なぜ、上下は、そのまま映
るのでしょうか。
「そんなこともわからないの。壁に掛かっているからだよ。足元に置いたら、
先生の姿は、逆さまになっているでしょ!」
こういって、鏡を私の足元に置いた子がいましたが、お父さんがお母さんの使
っている等身大の姿身を床に置いて見せてくれたそうです。幾何学的にいえば、
逆転しているように見えるのは、左右ではなく前後(奥行き)だそうですが、理
屈抜きです。このお父さんのように、実際にどう映っているかを見せることが
大切で、幼児の学習は、これに限ります。難しい原理や定理は、大きくなって
学力がつき、疑問に思ったその時に、自分で調べることができるからです。
 
[四方図形]
最後は、四方図形です。
真ん中に、旗を持ったくまの縫いぐるみの人形があり、それを前後左右から見
ると、どう見えるかを答える問題です。
 
これも実験です。
大きめのコーヒーカップをテーブルの上に置いて、前、右、後、左と、回り方
はどちらからでもいいのですが、スケッチブックに描いてみると、すぐにわか
ります。前から見るのと後ろから見るのとでは、逆になります。右側から見え
た持つところは、左側からは見えません。これがわかれば理解できます。
 
しかし、積み木の四方図形は難しいですね。
二等辺三角形を上から見ても、横から見ても長方形に見えるのですが、これが
なかなか理解できないようです。
傾斜を平面としてとらえるのは難しいですね。
底辺が四角の場合は四角に、長四角の場合は長四角に見えることを、よく確か
めておきましょう。
円柱もそうですね。上から見ると○ですが、横から見た場合は、長さにより違
いますが、四角や長四角にも見えます。
扇形も、見る位置を変え、上から見ると長四角に見えます。
積み木をいろいろな角度から見て、スケッチブックに描いてみましょう。傾斜
が平らに見えるのは、描いてみると「なるほど!」と理解できます。
 
もう一押ししておきましょう。
対称図形でやった矢印です。
これを切り抜いて、お母さんが持って、子どもの前に立ち、
「お母さんから見たら、この矢印、どっちに向いていますか?」 
「(ぼくから見ると左向きだから、お母さんから見ると逆だな。)
お母さん、右向きでしょ!」
「ピン、ポン!」
しっかりと理解している証拠です。
 
しかし、こんなにややこしい四方図形などを、どうして出題するのでしょうか。
かなり、出題頻度の高い小学校があります。
「これは思うに」などと気取ることでもありませんが、物は、見る方向によっ
て、いろいろな形に見えますから、ある方向からだけ見るのではなく、いろい
ろな方向から見ることが大切なのだといっているのではないでしょうか。 
子どもも、同じです。子どもの能力をある方向から、たとえば、知的な能力だ
けで判断してはいけないということですね。子どもの持つ様々な能力を、きち
んと見極めてあげるのが、親の大切な仕事ではないでしょうか。
 
ところで、出題頻度の高い小学校は、愛子さまの通っていた学習院初等科で、
掲げる教育目標は、「視野の拡大と個性の尊重」ですが、学校にお伺いしなけ
ればわかりませんが、考え過ぎでしょうね(笑)。
 
いかがでしたか。
推理思考の問題は、やってみると、子どもの日常生活と、深くかかわりを持っ
ていることがわかります。幼児の試験ですから、判じ物のような試験をするわ
けはありません。問題集だけで知識を教え込むのではなく、子どもの周りには、
たくさんの教材がありますから、これを利用することが大切です。好奇心をそ
そるように仕向けていくのが、賢明な方法であり、問題意識を持たせることで
す。
「なぜ、どうして?」という疑問の芽を育ててあげましょう。そういった疑問
を、小学校に入ってから系統立てて勉強していくわけです。
 
問題集を広げ、鉢巻きを絞めて、机の上でガンガン、ビシビシと教え込むだけ
が受験準備ではありません。前にもお話しましたが、記憶力は学習効果を高め
る大切な能力の一つですが、記憶力だけに頼るのは、やはり、拙いのではない
でしょうか。本物の力は、体験を伴った学習から培われるものです。疑問の芽
を育てる環境から、子どもの意欲は培われることを肝に銘じておきたいもので
す。この意欲こそ、あすの学習につながるからです。理解できない問題は決し
て無理をせず、お母さんも考え、一緒に悩んでください。そして、「あしたは、
今日より、きのうより」の気持ちを大切に頑張りましょう。
(次回は、5「記憶に関する問題」についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★[6] 推理・思考に関する問題(2)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第39号)
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★★入試問題を分析する★★
[6] 推理・思考に関する問題(2)
 
小学校の遠足以来、訪ねる機会がなかった大宮公園の桜を見てきました。月曜
日の午前中のこともあり、人も少なく、満開の桜を堪能してきました。カラオ
ケで騒ぐ人も、酔っ払いもいない静かな公園、満開の桜に酔いました(笑)。
 
[図 形]
重ね図形、回転図形、対称図形などですが、かなり難しいですね。
問題集を買ってきて、「さぁ、やるぞ!」方式は失敗しがちです。
まず、お母さんがやってみましょう。
やってみるとわかりますが、折り紙やセロハン紙、それとA4位のビニールで
できている袋や書類入れ、画用紙などを用意しておくと役に立ちます。
遊びの感覚を忘れないことが大切で、特に女の子は、推理の問題を苦手としが
ちですから注意しましょう。
 
★重ね図形
2枚の絵を重ねるだけですから問題なさそうですが、何事も実験することが大
切です。
1枚の紙にひまわりの花を描いて、それを透明な書類入れに挟み、今度は茎と
葉っぱを、その上に描かせます。
書類入れに挟んだ紙を引き出して比べると、2枚の絵に分かれていることがわ
かります。
これを理解した後に、自分の好きな絵を、同じ要領で描かせます。 
面白がって描くはずで、上下左右、そのままに重なることがわかれば問題ない
でしょう。
 
★回転図形
言葉で説明すると、難しいですね。
こういった矢印[↑]を描いて実験すると、わかりやすいものです。
a ↑ a がお手本です。これを右に回すと90度、回転したことになり、
b → b になります。
c ↓ b を右に回すとc になり、180度回転したことになります。
d ← c を右に回すとd になり、270度回転したことになります。
   dを右に回すとaに戻るわけです。
 
もちろん、幼児の世界ですから、90度といっても理解できません。
ですから、90度は「グルリ」です。
180度は「グルリ、グルリ」と繰り返します。
回転図形にはかなり難しい問題がありますから、理解できるまで、こういった
矢印や上下の形が違っているものを使って、子どもと一緒にゲームの感覚でや
ることです。
チューリップの花などを描かせてやってみるのも、いいでしょう。
 
問題によっては、錯覚を起こしやすいですから、その場合は切り抜いて、条件
に合わせて動かし、どのように変化していくか、その様子をしっかりと確かめ
させましょう。
大切なことは、上下、左右がどうなるかを見極めることです。
プリントをぐるぐる回す子がいますが、初めのうちはいいのですが、これが習
慣になると、推理する力はつきません。
ただ、変化する様子を見つけているだけです。
この種のテストの目的は、推理・思考する力が、年齢にふさわしく培われてい
るかを判定する問題ですから、仕掛けが理解できれば、プリントを回すことは
やめて、考える力を養いましょう。
 
★対称図形
正直にいって難しいです。
大人でも音をあげたくなる問題があります。
ここでも問題集先行型は、失敗しがちです。
折り紙の出番ですね。
はさみも使いますから、手先も器用になります。
1枚の折り紙を半分に折った背の側(山折りになっている側)に、図形などが
描かれており、それを広げた場合にどうなるか、それを推理する問題です。
 
半分に折った折り紙に、何回も描いては切る、この実験を繰り返し、対称を理
解することですね。
折った背の側に描かなければ、形はできてもバラバラ事件になります。
まず、これに気づかせます。
雪だるま、クリスマスツリー、チューリップなど左右が対称の絵から始めて、
図形に移っていくのが無理のない方法です。
マスターできたら、四分の一に切った折り紙を使い、いろいろな対称図形を切
り取り、その両方をスケッチブックに貼りましょう。
この貼り方にも、工夫が必要です。
「手は第二の脳」でも詳しくお話しましたが、糊の使い方は難しいものです。
最初は、折り紙の上部左右の二ヶ所に、切り取ったものには上のところの一ヶ
所に、ほんの少しだけ糊を付け、貼る練習をしましょう。
繰り返し練習をすることで、糊の適量も、全体に薄くのばすこともわかってき
ます。
これは、とても大切な作業ですから、家でしっかりと身につけてください。
そして、汚れた手はタオルなどできちんとふき取ることも大切です。
こういったことまで教室で指導を受けるのは、時間の無駄遣いと考えましょう。
うまく貼れない場合は、箸の使い方やボタン掛けにもその影響が出ているので
はないでしょうか。
繰り返しますが、幼児の手作業は、脳と運動機能の連携作業であることを思い
出してください。
 
難しい問題があります。
これも実験で克服できます。
半分に折った画用紙と、はっきりと色のつくクレヨン、赤色か黒色を用意しま
す。
折った画用紙の左側中央に矢印←を描いて、しっかりと色を塗ります。
そして、上の左端に三角▲、下の折り線のそばに四角□■を書きます。
きちんと塗らないと実験は成功しません。
そして、点線から半分に折って重ね、上からゴシゴシと擦ります。
これも、しっかりと擦らないと写りません。
そして、ひろげます。
まったく逆向きになるはずです。
矢印は→、上の左端の三角は右端に、下の□■は■□と、これも逆になってい
ます。
折り線に近い■は、逆になっても線に近く、線から遠い□は線から離れていま
す。
この実験で、位置や向きが逆になることを確かめて、問題に挑戦しましょう。
難しい問題は、半分に折った紙に、黒色か赤色で問題と同じように線を引き、
重ねて擦ります。
そして、どのようになったかを、子どもに説明させましょう。
口でいえないときは、まだ十分に理解していませんから、再び、実験です。
 
同じことですが、半分に折った紙に矢印を描いて、はさみで切って広げてみま
しょう。
左右が逆になっていることを確かめられます。
手先も器用になりますし、後で出てくる巧緻性にもつながっていきます。
これを十分に理解してから、問題に取り組みましょう。
「右側に折って重ねるのだから、左と右が逆になるの!」
こんな乱暴な説明をするお母さんはいないと思いますが、言葉だけで説明して
も、わかりません。
まだ、左右の弁別もあやしいのですから、とにかく、実験を繰り返すことです。
 
スタンプの問題や湖に映った逆さ富士のように、水に映るとどうなるかといっ
た問題も一緒で、半分に折った紙の左側に、○、□、△を真ん中から半分に分
け、左側に色を塗り、合わせてこすり、変化の様子を確かめてから、問題集に
挑戦しましょう。
特に、スタンプの問題は、大人でも錯覚しやすいですから、しっかりと実験を
し、どのように変化するかを見極めることが大切です。
 
推理の問題は、いきなり問題集でやるのは、やめた方が賢明で、いたずらに混
乱するだけではないでしょうか。
まず、ご両親で学習し、理解をしておくことですね。
そして、実験、実験の繰り返しです。
実験は、疑問を解決する楽しい学習であり、遊びの感覚で取り組めますから、
子どもたちも喜ぶはずです。
このことを、忘れないでほしいですね。
(次回は、推理・思考に関する問題(3)についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★[6] 推理・思考に関する問題(1)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第38号)
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★★入試問題を分析する★★
[6] 推理・思考に関する問題(1)
 
東京は桜の開花宣言、春一番が吹かなかったのは3年ぶりだそうです。白百合
学園小学校、暁星小学校を受験される方、学校見学がてら、靖国神社、千鳥ヶ
淵を散策されてはいかがでしょうか。実に見事です。
 
系列完成、欠所補完、図形、科学性に関するもの、鏡映像などの問題ですが、
これもかなり難しいですね。
知能指数(IQ intelligence quotient 知能検査で得られた精神年齢を、
実際の年齢で割り百倍した数で、100が普通程度を表す)を調べる知能テス
トに、このような形式の問題があるのは、お母さん方もご存じだと思います。
 
かつて、この種の問題が小学校入試の基本であった頃に、「IQが120以上
でなければ合格しない!」との噂がまことしやかに流れたことがありました。
ある小学校の説明会で校長先生が、「IQが120位ないと入学してから大変
ですよ」とおっしゃったのですが、これに尾ひれがつき、「140以上なけれ
ば合格できない!」と姿を変え、指数を上げるために繰り返し練習することが
行われたものでした。
私は説明会場にいて、ことの真相を知っていましたから、無責任な噂が恐くな
り、「そんなことをしていると、お子さんの実際の知能指数がわからなくなる
から止めなさい」と、その弊害をお母さん方に話したことを覚えています。
本来、知能テストは、たとえば5歳の子どもなら、他の多くの5歳の子どもと
比べて、知能の発達の度合いを調べるテストで、訓練をし、無理に上げるもの
ではありません。今は、そういった噂も誤解も、姿を消したようですね。
 
[系列完成]
動物や果物、記号やさいころの目などが、ある決まりで並び、ところどころに
空欄がもうけてあり、そこに入るものを考える問題で、おもしろいことに美醜
の感覚やリズム感まで刺激を与えていることがわかります。
 
    ○△□○△○△□○△□○△○△□
    ●○△●▲○▲□●○△●□○▲●
 
上段は、見た目もきれいで、リズミカルで心も落ち着きます。
下段は、見た目も煩わしく、不協和音が聞こえそうで、心もいらだちます。
きれいな並び方には、一定の決まりや規則性があり、それを見つける問題です。
 
 1  リンゴ・( )・ミカン・リンゴ・バナナ・ミカン
 2  □○△( )□○△◎( )○△◎
    ↑     ↑
   (左人差し指)(右人差し指)
 
3つか4つ、多くても5つまでの系列ですから、上の問題のように、
「リンゴ・ナントカ・ミカン・リンゴ・バナナ・ミカンだから、バナナだな!」    
と口調もなめらかで、抵抗なく出てきます。
 
下のような問題は、ちょっと困ります。
しかし、左右の人差し指で、同じものを(この場合は□)押さえて、右へ1つ
ずつ移動させると、□○△◎の決まりであることがわかります。これを私は
「お引っ越しゲーム」といっていました。決まりを見つけるゲーム感覚でやる
と、子どもは面白がって挑戦します。 
このゲーム感覚ほど、子どもの学習意欲に刺激を与えるものはないでしょう。
 
身の回りに注目してみましょう。
この決まりを守っているものが、たくさんあると思います。ブラウスやセータ
ーの図案、カーテンの模様、台所やふろ場のタイル、外に出れば、舗装された
道路のタイルなど、きちんとした決まりで並んでいませんか。
お子さんと一緒に、決まりを見つけるのも楽しいものです。大切なのは、こう
いったことから好奇心の芽を養うことです。好奇心は、やる気を起こす起爆剤
で、その意欲から自発性も芽生えてきます。
 
  [欠所補完]
文字通り、欠けているところを補い完成させる問題で、ジグソーパズルの感覚
で取り組めます。
全体の中で欠けている部分を推理し、4枚程の中から、そこに入るものを見つ
けます。
正解は1枚でダミーが3枚入っていますから、それを除いていけばいいわけで
す。  
直感力のすぐれている子は、サッと見つけますが、それで安心して、「うちの
子、頭、いいわ!」などと早合点をすると、後々、困ったことになりがちです。
選択肢は、わずか4枚で、確率四分の一ですから、偶然に答えが見つかる場合
もあるからです。 
時間が、かかってもかまいません。
1枚、1枚、比べて、
「これは、ここが違っている! これも違う!」
と、辛抱強く比較していくことが大切です。
 
繰り返しますが、この違いを見つけることは、観察力を培う大切な作業です。
しかも、根気が必要ですから持久力もつきます。そこから、じっくりと物事に
取り組む姿勢も身につきます。コンピュータの基本的な原理も、一つ一つ比べ
る比較選別方式ですが、桁違いに速い結果が出るのは、電気で処理しているか
らです。
     
以前にも紹介しましたが、イソップ物語の「うさぎとかめ」の話を思い出して
ください。油断をいさめた寓話ですが、ひらめき型とじっくり型の話として読
むと、幼児期の教育のあり方について、重要なヒントになっているのではない
かと思います。毎度のことですが、私の勝手な思い込みですから読み流してく
ださい。
 
ウサギは、ひらめき方の直感派で、カメは、じっくり型の思考派です。小学校
の低学年までは、断然、直感派がリードをします。選択肢が2つか3つの場合
は、直感力の優れているひらめき型のウサギさんは、あまり苦労することなく
答えを選び出せます。じっくり型のカメさんは、選択肢が少なくても、一つ一
つ検証して答えを出しますから、時間はかかりますが、試行錯誤を繰り返すこ
とで、きちんと答えを出します。
 
ところが、分数や小数、光合成といった、目に見えない世界の学習が始まる中・
高学年になると、思考派が徐々に頭角を現します。じっくり型の思考派のカメ
型タイプの子は、欠所補完の問題でも、一枚一枚、きちんと比べて納得してい
ますから、慎重に考えながら物事に取り組む習慣が身につきます。しかし、ど
ちらがいいのだろうなどと、決めてかかるのはどうでしょうか。いろいろなタ
イプの子がいて、当然です。
 
「じっくり型の、思考派の、カメ型のタイプは理系だな!」と思い込み、「何
で、もっと、じっくりと考えないの!」となるようでは、子どもには迷惑な話
になりかねません。問題集をやる時などに、答えが間違っていると、こういい
がちではないでしょうか。しかも、そういう時のお母さん方は、恐い顔をして
いますから、子どもも考えようとせずに、隣の絵をさっと指差したりします。
それも間違っていると、
「何回、いったらわかるの。考えなきゃ駄目だといっているでしょう!」
これでは何回やっても同じです。子どもは、怒られたくない一心で答えている
だけですから考えていません。お母さんは、考える時間をあげていないことに
気づいてほしいですね。
 
幼児の場合、正解を求めるだけが学習ではありません。
なぜ、お母さん方は、「どうしてなの?」と聞いてあげられないのでしょうか。
不思議な気がしますね。「正解は一つしかない」と信じて疑わないからではな
いでしょうか。答えは間違っていても、意外に、面白いところへ目をつけてい
るときもありますから、その理由を聞いてあげましょう。それから間違ってい
ることを説明してあげれば、子どもも納得します。
こういったことをしてあげずに、子どもの考えを無視して、繰り返し、ひたす
ら正解なるものを求めていると、お母さんの顔色を見て答えはじめます。これ
では学習ではなく勉強です。「強いて勉めるのが勉強」であることを思い出し
てください。お母さんの気持ちを満足させるためにやっているようなものです
から、止めた方がいいですね。
 
「ひらめき型」には、言葉で説明するチャンスを。
「じっくり型」には、これは手を付けない方がいいでしょう。うっかり急がす
と、思考回路が混乱しかねません。
 
子ども達に、「お母さんからいわれる、いちばん嫌いな言葉は何かな」と聞い
てみると、「ハヤクシナサイ!」が圧倒的に多いのです。大人は何とか工夫し
ますが、できるように配線が組みこまれないと、できないのが子どもです。子
どもが「わからない」という時は、「本当にわからない」のです。そこを考え
てあげないと、お子さんはパニック状態に陥りがちです。いやな思いをさせて
は、小学校へ入る前から勉強嫌いな子になりかねません。
「忍の一字」で過ごした、おむつを外した時のことを思い出してください。
 
ところで、負けたウサギはどうなったかご存知でしょうか。「カメに負けた駄
目ウサギ」として、ウサギ村から追放されますが、「子ウサギをえさに差し出
せ!」と脅迫してきた狼を負かし、無事、ウサギ村へ復帰します。
 
脱線したついでに、なぜ、ウサギの耳は長いのでしょうか。
ウサギは弱い動物で、ほとんど抵抗できずに、強い動物の餌食になってしまい
ます。そこで神様は襲ってくる動物の存在を、いち早くキャッチして逃げられ
るように、よく聞こえ自在に動く耳と強じんな後ろ足を授けたそうです。「弱
肉強食」の世界をお創りになったのは神様でしょうけれど、いささか不条理で
はないでしょうか。入試問題で、「□肉□食」を「焼肉定食」と答えた学生が
いたそうですが、冗談だと思いたいですね。このイソップの話、明治時代の小
学生の教科書の題名は、何と「油断大敵」です。(脱帽!)
(次回は 「推理・思考」の2についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★[5]常識に関する問題(2)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第37号)
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★★入試問題を分析する★★
[5]常識に関する問題(2)
 
[公衆道徳・躾に関する問題]
公園の中で、いろいろなことをしている子どもの絵を見て、やってはいけない
ことをしている子どもに×をつけたり、服を一人で着たり、後片付けができて
いない絵などから、自分一人でできた方がいいと思うものに〇をつけたりする
問題です。言うまでもありませんが、入学試験のために身につける知識ではな
く、しつけであり、マナーであり、基本的な生活習慣ですから、ご両親の育児
の姿勢、教育方針をみています。
 
変なお母さんが増えています。電車に乗ると、子どもは、なぜか、外を見たが
ります。それは、いいのです。しかし、靴を脱がない子がいます。お母さんの
言葉、ショックでした。
「○○ちゃん、お靴脱ぎますか、脱ぎませんか?」
「脱ぎたくないの」
「そうですか」
これで、おしまいです……!
おかしくありませんか。
着ている制服から、大学まである総合学園の幼稚園であることがわかります。
私の年代では、こういうことは考えにくいことです。親は、一貫教育制度のあ
る附属幼稚園に入れて、子どもの人生航路の設計図なるものを、小さい頃から
キッチリと引いてあげているにもかかわらず、他人様と共存して生きるために、
最低限必要なルールは、子どもの判断に任せていいのでしょうか。
いいわけはありません、これは逆です。
人生航路は自分で開いて行くものですが、しつけは親が責任をもって子どもに
身につけさせるものです。このような考え方を「子どもの自主性を認める」と
はいいません。放任です。親の責任を放棄していることに気づいてほしいので
すが、こういうお母さんが増えているようです。誰がかわいそうって、子ども
です。後で困るのは、子ども自身ですから。
 
試験で電車の中で悪いことをしている子に×をつけても、実際に電車に乗って、
靴を脱がずに外を見ているのでは、おかしいと思いませんか。これは常識であ
り、守るべきルールです。知識として知っていても「実際にはできない」、ど
ういうことでしょう。
これは知識と知恵の差です。
知識は知っているだけで、知恵は知っていることを実行する心の働きです。幼
児期の知識の詰込みは、こういう結果になりがちではないでしょうか。こんな
本末転倒なことを許していると、幼児の世界も、おかしくなります。
 
「三つ子の魂百まで」は、幼児期に身につけたことは、大人になっても、その
まま受け継いでいくことを戒めた先人の知恵です。良い習慣をきちんと身につ
けてあげるのは、お子さんにとっても幸せであり、大切な財産になると思いま
す。「習慣は第二の天性である」と古代ローマの政治家、哲学者であるキケロ
も言っていますなどと、何も哲学者を出すこともありませんが、「大切だ」と
言いたいのです(笑)。
 
[その他の問題]  
果物や野菜を、縦や横から輪切りにしたものから、何であるかを推理する問題
もあります。
これも体験でしょう。子どもは、見えないところを見たがるものです。りんご
やみかんを食べるとき、ただ、皮を剥くだけではなく、縦や横に輪切りにして、
見せてあげましょう。喜びます。
野菜なら、ピーマンなどを切ってみせると、不思議そうに見ています。ついで
に、匂いもかがせてみましょう。玉ねぎなどは、涙を流しても見たがります。
 
私が現役時代、「どうしてレンコンはあんなにたくさん穴があいているのかな?」
と聞かれ、絶句したことがありました。普段、そんなことを考えませんね、大
人は。こういう疑問には、即座に答えてあげなくては、子どもの信頼を裏切る
ことになりますから、家内に電話して、すぐ調べてもらい、事なきを得ました。
「レンコンの住んでいるところは泥の中で空気がなく、あの穴の中に空気を取
り入れ、それで呼吸しているのだよ。その穴は水の上に出ている葉っぱとつな
がっていて、茎がちょうどシュノーケルの役をしているんだよ」と説明できま
したが、今はパソコンで簡単に調べられますから、お子さんが「なぜ?」と聞
いてきたときには後回しにせず、きちんと答えてあげましょう。
そして、野菜や果物を水の中に入れ、浮かぶか沈むか、実験してみましょう。
「すいかは、絶対に浮かばない!」と思い込んでいるお子さんが、かなりいま
す。見たことがないのです。丸ごと一個のすいかを買う機会は少ないでしょう
が、お子さんが疑問を持ったときには、説明するより見せることです。
 
動物の足の絵から、その動物が何かを考えたりする問題もあります。
かなり昔の話で、時効も成立しているはずですから紹介しましょう。さる国立
の名門大学の学生さんが、「鶏には足が4本ある」と真面目な顔で言い、話題
になったことがありました。見たことがないのです。
幼児には、見せるしかありません。動物園の出番です。
「今度の日曜日、ゴルフの予定もないから動物園に行くぞ!」
「……。」
お父さんの都合でお子さんに興味がない時に、動物園に行っても効果はありま
せん。
「お父さん、にわとりの足、どうなっているのかな?」
この「かな?」がついた時、子どもが興味を示した時が、絶好のチャンスです。
ジィーっと見ています、飽きもせずに。観察力だけではなく、集中力や持久力
もつきます。しかし、動物園に鶏、いるでしょうか、心配です。
我が家が川越へ越してきたのは、子ども達が幼稚園に入る頃でしたが、近所の
お百姓さんの庭には、放し飼いにしていた鶏がいました。長男は何が面白いの
か、毎日出かけて行っては、ジッと見ているのです。「パパ、ニワトリさんは
鳥でしょう。どうして、空を飛べないのかな」、これが不思議だったんですね。
お百姓さんに話したところ、一番元気のよさそうな鶏を抱き上げ、空へ放り投
げてくれたものです。羽をバタバタさせて飛びますが、すぐに着地してしまう。
「太っているから飛べないんだ!」と嬉しそうに答えたものでした。お百姓さ
んが実験して見せてくれたことが、どんなに子どもにとって貴重な体験である
か、教えられたものです。
その逆ですが、テレビのコマーシャルでペンギンが空を飛ぶ映像が流れた時、
「先生、ペンギンは、空を飛べないんですよね」と怒った子がいました。子ど
もは自分が知っていることと違ったことが起きると、許せないんですね。最近
は、牛が胡坐をかいている映像があったのを見て、先生方は困っているのでは
と心配しましたが(笑)。
 
最後に、絵を見て話をする問題です。
これは、お母さんからたくさん本を読んでもらっている子は、得意です。たと
えば、かぐや姫の絵だとします。読んでもらったことのない子は、話せません
ね。本を読んであげることは、前に説明しましたから止めますが、言語の学習
から情操教育まで、大変な学習になっています。話を聞く姿勢ができている子
は、本を読んでもらうことが好きです。しかも、本人もお母さんも勉強をして
いるとは思っていません。教えない教育の成果です。しっかり読んであげまし
ょう。読んであげられるのも卒園までです。一人で読めるようになるのも、後
わずかだからです。読めるようになると、もう頼みにきません。そうなると、
お母さんの読書時間も増えます。親の本を読む姿は、最高の教材です。  
 
テレビの内容にもよりますが、視聴時間の長さと教養の深さは、反比例するそ
うです。うまいことをいう人が、いるものですね、感心しました。こういった
お母さん方は、子ども達に、
「ゲームばかりやっていないで、お勉強をしなさい、お勉強を!」
といいがちではないでしょうか。これでは、説得力などありません。
 
絵を見て話をする問題については、言語のところでお話しましたから、もう一
度ご覧ください。「お母さん(お父さん)、あのね方式」です。
 
その他に、新幹線やブルドーザーなどの絵を見て名称と用途、花の名前と咲く
季節などをたずねる問題があります。昔話に出てくる「きね」「うす」「かま
ど」、雪国ではおなじみの「つらら」、「たけぼうき」「はたき」「ちりとり」
といった昔の掃除道具三点セットなど、普段、目にしなくなったものには、出
会ったときにきちんと説明しておきたいものです。
 
余談になりますが、北陸新幹線開通、寝台特急トワイライトエクスプレスは引
退、ゆっくり旅情を味わう時代は過ぎ去り、駅弁もデパ地下で買う時代になっ
たようです。
(次回は、4 推理・思考の問題についてお話しましょう)
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★[5]常識に関する問題(1)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第36号)
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★★入試問題を分析する★★
[5]常識に関する問題(1)
 
文字通り、常識の分野です。
しかし、単なる知識ではなく、情操教育の領域から思慮分別まで入っています。
仲間分け、郵便屋さんとポストを結びつける職業に関するもの、道具や日用品
の名称と用途に関するもの、季節と行事に関するもの、公衆道徳やしつけに関
するもの、むかし話や名作物語の一部が描かれた絵を見て説明するものなどが
あります。
 
[仲間分け]
動物や昆虫、木や花、野菜や果物、乗り物、季節、文房具などの仲間を探す、
逆に仲間ではないものを見つける問題です。常識の問題だけではありませんが、
単に仲間に〇や仲間ではないものに×をつけ、「満点! 次に行きましょう!」
では、あまり有効な学習とはいえません。○や×をつけた理由を、自分の言葉
できちんと説明できるか確かめましょう。幼児の学習で大切なのは、自分で考
えたことを話せることです。つたない説明でもきちんと聞いてあげ、おかしな
ところは直してあげましょう。
 
こういった問題がありました。
   ◆(かき・くり・ぶどう・なし・すいかの絵が描いてある)
     かき・くり・ぶどう・なし・すいかの中で、仲間ではないものに×
     をつけなさい。
 
皆さん方は、何に×をつけるでしょうか。 聞き手に徹してみると、子ども達
は、実に、ユニークな発想の持ち主であることがわかります。
 
「すいかに×です。すいかは野菜で、他は果物です」
常識的な模範回答で、皆さん方は喜びます。
 
「すいかです。他のくだものは木になるけど、すいかは、地面になります」
すいか畑を見た経験があるのでしょう。
 
「すいかは、夏に食べますが、他は秋ですから、すいかに×です」
季節に違いを見つけましたが、季節感が希薄になっている中で偉いですね!
 
「すいかです。他は皮をむいて食べます」
またしても、すいかですが、食べ方の違いを見つけました。
 
「くりです。イガイガに入っていますから、手で触れません」
この子は、くり拾いに行ったことありますね、体験談です。
 
「くりです。そのままでは食べられません」
いいですね、くりご飯が好きなのでしょう。もしかしたら、生のくりをかじっ
たことがあるもかもしれません。
 
「ぶどうです。他は1個、2個と数えるけど、ぶどうは、そういうふうに数え
ません」
これも、いいですね、一房などといえなくても正解です。ぶどうの実は、1個、
2個・1粒、2粒と数えますが、全体を捉えて数えるときは、バナナと同様1
房、2房です。いつか、有島武郎が自分の子どもたちのために書いた「一房の
葡萄」を読んでほしいものです。
 
「くりです。種がありません」
ぶどうやすいかにも種のないものがありますが、これも正解ですね。
 
「かきとくりです」
「……?」
「『さるかに合戦』には、かきとくりが出てくるけど、むかし話に、他のもの
出てくるかな?」
さて、こうなるとわかりませんが、ぶどうとなしの出てくる話は、思い浮かび
ません。  
すいかはあります。老人が、意地悪をした商人から魔法を使い、すいかを取り
上げてしまう話で、今昔物語にも出ています。しかし、いいですね、発想がユ
ニークで。むかし話をたくさん読んでもらっているのではないでしょうか。
 
いかがでしょうか。子ども達は、こんなにたくさんの違いを見つけました。こ
れはたいへんな学習になっています。子どもの観察力や発想は、大人と違うこ
とがよくおわかりいただけたと思います。
×をつけて終わりでは、あまり効果的な学習とはいえません。子どもの考えに
耳を傾け、そして最後に、「果物と野菜」「季節の違い」など設問の意図に従
い、正解に導いてあげましょう。
 
自転車とオートバイの違いを話す問題で、例によって、とことん、追求の目が
途絶えるまで、発表をさせたときのことです。
「仮面ライダーは、オートバイに乗るけど、自転車には乗らない」といったお
子さんがいました。その子は、「仮面ライダーは、オートバイに乗り、かっこ
よく出てくるけれど、自転車に乗って出てこない」といいたかったのです。そ
の日は、授業参観でしたから、お母さんは、赤面してうつむいてしまいました。
とかく私達大人は、構造や原理の違いや用途などから考えますが、こういった
考えのできるのが子どもなのです。もちろん、エンジンと人力で走らせる違い
に導きますが、なぜ、そういった考えが出てくるのか、子どもに聞いてみると、
実に傑作な答えが出るものです。その答えに妥当性があれば、そういう考え方
もあると認め、しかし、「この問題の本当の目的は」と順を追って話をすれば、
子どもたちは納得し、授業にのめり込んできます。
なぜでしょうか……。
それは、自分の考えを認めてもらえたからです。うつむいてしまったお母さん
と違い、お子さんは積極的に授業に参加し、楽しんでいました。「お子さんの
話に耳を傾けてください」とお願いしておきましょう。
 
このように、幼児の知識は、似ているところや違うところを見つけることから
始まります。物事の「類似差異」に気づかせることです。しかし、これを大人
が机の上だけで教えこむのは、お勧めできません。五感を働かせ、自分で学習
することが大切なのです。教え込まれることは、記憶に頼りますから忘れがち
です。五感で体験したことは、何かの思い出と一緒に身体が覚えますから、忘
れにくいのです。記憶は脳神経系の仕事で忘れることも仕事ですが、体験は中
枢神経系の仕事で、一度覚えると体が忘れないそうです。英単語は使わないと
忘れがちですが、一度自転車に乗れるようになると、しばらく乗らなくてもす
ぐに乗れるようになる、この違いだそうです。「幼児期には、五感に刺激を与
える自然と接する機会をたくさん作り、話をはずませ、楽しい思い出を残して
あげましょう」という理由は、ここにあるわけです。
 
[季節と行事に関する問題]
四季を代表する花や行事、春であれば、桜、たんぽぽ、チューリップ、おひな
さま、入学式、鯉のぼり、柏餅などを結びつけたり、年間の主な行事を1月か
ら12月まで絵カードで並べたりする問題です。ちなみに、一般常識では立春
から春ですが、幼児の世界では春は3月、4月、5月、夏は6月、7月、8月、
秋は9月、10月、11月、冬は12月、1月、2月で教えてあげましょう。
 
変な話を聞きました。
「1月は正月・門松・たこ上げ・羽子板、二月は節分・豆まき・柊・いわしの
頭・鬼……」 
試験に出るから憶えるそうです。しかし、季節折々の行事は、知識として覚え
るものではなく、家族そろって楽しむものです。楽しんでいれば、覚えようと
しなくても、思い出と一緒に記憶されるものです。 記憶だけに頼ろうとする
と、「勉強、イコール記憶」となり、次第に苦痛になるのではないでしょうか。
学生時代に覚えた英単語、あんなに苦労したのに、どこへ消えてしまったのか
と、しゃくにさわりませんか。それでも、皆さんは目的を持って覚えたのです
から、苦痛にも耐えられたわけでしょう。
子ども達には、「受験のため」といった自覚はないはずですから、やっかいな
のです。
 
そうはいっても、現代っ子は、正月に、羽根つき、たこ上げ、カルタ取り、す
ごろくなどをやっているでしょうか。
節分に豆まきをして、いわしを食べているでしょうか。
女の子のいない家で、ぼんぼり、ひし餅、わかるでしょうか。
端午の節句に菖蒲湯に入る子も、少ないでしょう。
七夕は、幼稚園での年中行事で済ませていないでしょうか。
迎え火、送り火、精霊流し、やらないでしょうね。
中秋の名月を、すすきとだんごをお供えして、眺めているでしょうか。
大晦日に年越しそばを食べているでしょうか。
そばより、ラーメンやスパゲッティかもしれません。
「……でしょうか」ばかりで、何やら、落ち込みそうです。季節折々の行事を、
祝わない家庭が、増えているのでしょう。
 
このような年中行事は、自然への感謝と家族の幸せを願い、とりわけ、子ども
の健やかな成長を祝う、一つの節目になっています。
たとえば、端午の節句、この言葉も「子どもの日」といわなければ、通じない
でしょうが、なぜ、鯉のぼりを飾るのでしょう。疑問に思わないようです、現
代っ子は。 なぜ、くじらやさめのぼりでは、駄目なのでしょうか。くじらは
大きく、さめは見るからに強そうですが、代役を務めることはできません。鯉
は、非常に生命力が強い魚ですから、鯉のように強くて、たくましい子に育っ
てほしいという親の願いがこめられているのです。五月晴れの空に、雄大に泳
ぐ鯉のぼりの姿、あまり見かけなくなりました。
 
こういった行事は、いってみれば「家庭の文化」ではないでしょうか。 家庭
の文化は、ご両親が作るものです。子どもは、ご両親の作った文化の中で育っ
ていきます。ご両親が、季節折々の行事の意味を子どもに教え、一緒に祝い、
楽しい思い出として心に残してあげる。そのお祝いが、思い出が、子どもの情
操を培っていくのではないでしょうか。 団地のベランダに、小さな鯉のぼり
が泳いでいると、「頑張っているな!」と声をかけたくなります。
 
小学校の入学試験に出るからといって、問題集で教え込み、ましてや記憶させ
るなどは、本末転倒な話です。なぜ、こういった問題が出るのでしょうか。学
校側も、知識として知っているかではなく、家庭の文化を見ていると思います。
季節折々の行事を楽しんでいれば、問題集は、チェックシートの役割をはたし、
知識の整理になります。幼児の学習は、知識を詰め込むのではなく、たくさん
の経験を積ませ、そこから得た知識、知恵であることが大切です。
 
私事で何ですが、当教育研究所で配信していますメールマガジン「さわやかお
受験のススメ 保護者編 情操教育歳時記 日本の年中行事とむかし話」では、
季節折々の行事の由来を説明し、それに関係のあるむかし話を紹介しています
ので、お読みになっていただければ幸いです。
(次回は、常識の問題(2)についてお話しましょう)
 

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