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めぇでるコラム : 2016小学校受験 5ページ目

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第27号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★入試問題を分析する★★
 
あけましておめでとうございます。
秋には吉報が届きますように頑張りましょう。微力ながらお手伝いさせていた
だきます。
 
[一]入学試験の出題範囲
テストの形式は、わかりましたから、今回は問題の内容を紹介しましょう。そ
の前に、4歳や5歳児の心や身体は、どの程度、発達するのでしょうか。これ
は平成4年に改訂された「幼稚園指導要領」の解説に添付されていた資料で、
昭和23年3月に文部省から出された保育要領(幼児教育の手引き)の中で紹
介されたものです。身体の成長は、現代っ子の方がまさっていますが、運動や
知的能力、情緒の発達や社会性などの発達の内容は、現代でも通用する幼児教
育のバイブルともいわれているそうです。こういった資料を見ると、学校側の
ねらいは、どの辺にあるか理解できると思います。
 
★身体の運動的発達★
[4 歳 児]
1 スキップができる。
2 片足立ちをしようとする。(少しの間ならできる)
3 走り幅跳び、立ち幅跳びができる。
4 ボールをじょうずに投げられる。 
5 はさみで形の切り抜きができる。
6 ひもを結ぶことができる。(固結び)
 
[5 歳 児]
1 片足立ちができる。
2 小さい物を巧みに扱える。
3 三角形を模写する。
4 はしを巧みに使う。
 
★知的能力の発達★
[4 歳 児]
1 13まで正しく数える。
2 重さの比較ができる。
3 3つの数字の反唱ができる。
4 3つの命令を正しく実行する。
5 語数の増加が著しい。
6 発音が正しくなり、赤ちゃんことばがなくなる。
7 非常によく質問する。
8 簡単な課題を解決する。
 
[5 歳 児]
1 求知心が強くなる。
2 想像と現実との区別が十分につかないところが間々ある。
3 1つのことを始める前に一定の計画を持っている。
4 用途によって物の定義をする。
5 手の指の数が正しく言える。
6 右と左の区別ができる。
7 成人との話が自由にできる。
8 いろいろな貨幣の名前をいえる。
9 昨日、今日、明日の区別ができる。
10具体的推理ができる。
 
運動テストやペーパーテストの内容を見ると、身体や知的な能力の発達を考慮
して、入学試験は行われていることがよくわかります。こういう標準的な発達
から逸脱しないばかりか、さらに生まれた月の差を考慮して試験を実施すると
発表している小学校もありますが、このデータを見ているとうなずけます。何
といっても、受験生は幼児だからです。
 
★情緒的発達★
[4 歳 児]
1 3歳児と同じようなことで泣きやすいが、だいぶ自制できるようになる。
2 理由のない恐怖心(たとえば、暗やみに対する)が多い。
3 かんしゃくは、ほとんど起こさなくなる。
4 怒ったときの表情が次第に抑制されるようになってくる。
5 小さい子供を可愛がることを喜ぶようになる。
6 反抗期が終わり、大人の権威や命令に従うようになる。
 
[5 歳 児]
1 泣くことが非常に少なくなる。
2 恐怖心が、やや 少なくなるのが普通である。
3 怒り、かんしゃくは、ほとんど抑制される。
4 感情や情緒は分化して、大人に見られる大部分の情緒が現われる。
(例 はにかみ、恐れ、心配、怒り、しっと、うらやみ、失望、不快、いみき
らい、親への愛情、小さい者への愛情、のぞみ、喜び、快い等) 
 
★社会的発達★
[4 歳 児]
1 自分で着物を着たり脱いだりする。 
2 排便のことは全部自分でできる。
3 歯をみがく。
4 顔を洗う。
5 多人数の中にある自分というものを意識しはじめる。
6 他の子供たちと協同的に遊びはじめるが、2人か3人グループが多い。
7 簡単な遊戯の規則を守ることができる。
8 ごっこ遊びが、最も盛んである。
 
[5 歳 児]
1 独立的で自信を持ち、従順になるので物事をまかせられる。
2 小さい者をいたわる。
3 自分の周囲の社会生活を遊びに取り入れる。
4 2人ないし5人ぐらいのグループで協同的に遊べる。
5 友達と遊ぶことを好む。
6 自己主張をし、他人への依頼感を持ち社会的協同性を持つようになる。
 
いかがでしょうか。
親の手を借りずにできることが増え、一人の人間として、集団生活を送るため
に必要な能力の培われていく時期であることが、よくわかると思います。3歳
頃から始まっていた、親のもとを離れる準備が、完了する時期といえます。就
学前とは、小学校生活を送るにふさわしい能力を身につけ、自分の力で大地に
しっかりと足を踏張り、自力で立つ時です。
 
こんな大切な時に、過保護や過干渉な育児になり、さらに、知的な能力だけを
訓練して鍛えるのは、決して幼児にふさわしい受験準備ではありません。基本
的な生活習慣やあいさつなどをきちんと身につけさせ、子どもの感性に刺激を
与え、好奇心を引き出し、学習に意欲的に取り組める環境を作ってあげるのが、
幼児期にふさわしい受験準備であり、こういった意識を持つことが、小学校の
受験に取り組むご両親の、大切な心構えではないでしょうか。
 
よく練り上げられたカリキュラムをもとにした適切な指導は、決して過激で猛
烈な受験勉強ではなく、子どもたちが楽しく学習しながら、合格への道を歩む
パスポートであるはずなのです。お子さんは、教室へ行くことを楽しみにして
いますか。楽しみに通っているのであれば、心配ないでしょう。
 
「受験戦争の低年齢化!」「猛烈な準備に耐え、突破した子だけが合格する!」
などと言われているようですが、これも怪情報、うわさの一つです。こういっ
たことは、バブル経済の全盛期の頃の話であり、NHKの「お入学」やTBS
の「お受験」が放映され、注目を集めた時のことで、幼稚舎でさえ志願者が減
ったことからも、小学校の受験は、一つの転換期を迎えていると考えられます。
さらに、2011年3月11日に起きた東日本大震災は、「安全な通学」も学
校選びに欠かせない条件になり、躊躇されるご両親も増えたのではないでしょ
うか。皆様が参加されている公開模擬テストの参加者数を見ても、私学志向に
変化が起きていることが、おわかりいただけると思います。
 
とはいえ、倍率の高い学校は、依然として入学の条件は厳しく、それなりの準
備は必要です。しかし、先程紹介したようなうわさを信じて準備を始めると、
親子で受験地獄に陥ることになりかねません。そのようなことを避けるために、
入学試験では、どのような問題をやっているのかを紹介しましょう。すると、
いろいろな形で出題されている様々な領域の問題は、幼児の日常生活と深いか
かわりのあることがわかるからです。
(次回は、「合否を判定する必須十項目」についてお話しましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★よく聞かれる質問にお答えします

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第26号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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よく聞かれる質問にお答えします
 
今回は、読者の皆様からよく聞かれる質問を編集した『さわやかお受験のスス
メ小学校受験 Q&A編(100問)』から抜粋したものを紹介しましょう。
 
Q「問題集をやりたがらないのですが、無理にでもさせた方がいいでしょうか」
 
A「教室から配布される家庭用の学習か、過去に出題された問題集での勉強か、
状況がわかりませんが、問題集を使っての家庭学習の場合をお話しましょう。
 
幼児の場合は、問題集を開いて、即、勉強とはなりません。
赤ちゃん時代を思い出してください。
例えば、歩くことを考えても、いきなり歩けるようになったわけではなく、は
いはいをし、つかまり立ちをし、歩いては転ぶことを繰り返し、やっと歩ける
ようになったはずです。
幼児が一つの能力を身につけるには、それにふさわしい体験を積むことにより
習い学ぶ、体験学習が必要です。
中高大学の入試と小学校の受験準備の異なるのは、勉強と学習の違いにあると
いえます。
勉強は、字のごとく「強いて勉める」であり、学習は「習い学ぶ」ことです。
幼児は、体験していないことは理解出来ません。
 ですから、問題集を嫌がるのは、自分で体験していない領域のことをさせら
れているからではないでしょうか。
泳げるようになると、十数年泳がなくても機会があれば泳げるのは、体が覚え
ている、中枢神経系に属しているからだそうです。
教室での宿題であれば、体験したことの復習ですから、苦にしないはずです。
 
『なぜ、嫌がるのか』、その点を見極め、無理をしないことが大切です。」 
 
Q「幼稚園の先生から、話をきちんと聞いていないといわれているのですが」
 
A「小学校の受験で最も大切なのは、話を聞く姿勢を身につけることです。
ペーパーテストのプリントを見ても、答えはダミーも含め、すべて出ています
が、設問はどこにも書かれていません。
中高大の試験のように、『苦手な問題は飛ばして後でやろう』など、出来ない
相談です。
文字を使えませんから、スピーカーから流れる言葉を聞き取り、素早く対応し
なければならないのです。
行動観察型のテストも同様で、先生の言葉を聞き、理解し、迅速に活動しなけ
れば、得点になりません。
幼稚園の先生に言われる迄もなく、ご家庭でもサインは出ているはずです。
まず、お子さんの話をきちんと聞いてあげましょう。
話を聞いてくれるのは、子ども達にはとてもうれしいことなのです。
そこから、お子さんは「話はきちんと聞くものだ」ということを学習している
のです。
そして、本をたくさん読んであげましょう。
好きな本であれば、お子さんは静かに聞くはずです。
『話をきちんと聞きなさい!』と柳眉を逆立て、何回言っても改まらないでし
ょう。
話を聞く姿勢は、言葉のキャッチボール、楽しい会話と、お子さんが興味を持
っている本を読んであげる、本の読み聞かせなどから身につくものだからです。」
 
Q「同じ本を何回も読んでくれとせがむのですが、記憶力が弱いのでしょうか」
 
A「そんなことはありません。
お子さんは、読んでもらった話が面白いから、一所懸命に覚えているのです。
読んでもらったときは、『面白いな!』といった漠然としたイメージが、繰り
返し読んでもらうことで、物語を少しずつ覚え、小さな木が、時を経て成長す
るように、今では、かなりはっきりと話の筋を記憶しているものです。
完全に覚えてしまうと、次の本へ移っていくはずです。
一人になったとき、ぶつぶつと何やらつぶやきながら、本を見ていないでしょ
うか。
お母さんに読んでもらった話を、思い出しているのです。
また、読んであげている途中に、突然、『そこまでで、いいです』ということ
はないでしょうか。
一人で思い出しながら読んでいるときに、忘れてしまったのか、そこをはっき
りさせたくて『読んでください』と来るわけです。
これは大変なことで、言葉を覚えることで語彙は増え、物語を記憶することで
表現する力もついてきます。
話を聞く姿勢をきちんと身に付けることは、小学校受験で、もっとも大切なこ
とですから、根気よく読んであげましょう。
文字を習い、自分で読めるようになると、もう『読んでください』と言わなく
なりますから。」
 
Q「読んだ後に感想を聞いても、きちんと答えられないのですが」
 
A「読んだ後に感想を聞くのは、まだ、早いと思います。
先にも触れましたが、1回だけ読んでもらい、きちんとした感想をいえないの
は、その本に対するイメージが、まだ、出来ていないからです。
何回か読んでもらうことで、次第に固まってきます。
そこまで待ってあげましょう。
ですから、1回だけ読んで、『面白かったでしょう』『何が面白かった』とい
った話かけは、するべきではありません。
また、よく聞く話ですが、お母さん方は、子どもの頃に読んでもらい、面白か
った本を読んであげることがあるようです。
それはいいのですが、『どう、面白かったでしょう』と聞いたことはないでし
ょうか。
そんな時、お子さんは、『……?』となったのではありませんか。
まだ、しっかりとイメージ化ができていないと、答えようがないからです。
2、3回読んだ後で、聞くようにしましょう。
ただし、『お母さんは、おばあちゃんに読んでもらい、こういったことを学ん
だのですよ』と、お母さん自身の感想をいうのは、いいのではないでしょうか。
『ママは、こういったことを感じたんだ』と、考えるヒントになるからです」
 
Q「昔話の出題率が高いようですが、なぜでしょうか」
 
A「常識の領域で、例えば、桃太郎と猿、犬、雉の家来や、黍団子、鬼など物
語に出てくるものを線で結ぶといった形で出題されています。
昔話は、多くの場合『昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが、住ん
でいました』と、『いつ、どこで、誰が』と明らかにし、『何を、なぜ、どの
ように』と、いわゆる[5W+1H]の形式で展開しますから、わかりやすく
出来ています。
そして、内容は、勧善懲悪で、正しいものは必ず報われ、悪者は、懲らしめら
れます。
5歳頃から未分化であった情緒が分化され、喜怒哀楽の感情がはっきりと表れ
てきます。
それに刺激を与えられることで、ずるい人間には憤りを覚え、悲しい話には涙
ぐみ、幼いなりにも善悪に対する分別、倫理観や道徳観を育んでいると考えら
れます。
 
ですから、昔話が出題されるのも、うがった見方をすれば、昔話で学習した様
々なことを、幼稚園や保育園の生活で実地訓練をし、社会性、協調性といった
集団生活への適応力を養い、それが小学校生活をスムーズに送れる基礎となっ
ているからではないでしょうか。
 
ちなみに、日本の五大昔話は、『桃太郎』『花さかじいさん』『舌切り雀』
『さるかに合戦』『かちかち山』です。
皆さんがたは、この5つの昔話のあらすじを話すことができるでしょうか」
 
Q「3月生まれですが、図書館へ行っても幼い内容の本しか選べません。心配
ないでしょうか」
 
A「お子さんは3月生まれですから心配ありません。
興味を持って選べたことを褒めてあげ、必ず読んであげましょう。
お母さんが心を込めて読んであげれば、お子さんはきちんと理解し、次のステ
ップへ向かい、確実に歩み始めるはずです。
選んだ本が、自分で面白くないと判断できることが大切です。
「何よ、こんなやさしい本を!」と言ってしまうと、お子さんの自尊心は傷つ
き、自分から本を選ぶ気持ちもなくなります。
いろいろな本を読んでもらい、試行錯誤を重ねながら、取捨選択し、自力でレ
ベルをあげていくものです。
お母さんのお気に入りの本ばかり選んで読んであげても、内容をよく理解出来
なければ、読んでもらっている本人は、つらい思いをするだけで、結果的には
本の嫌いな子になりかねません。
 
ゆっくりと時間をかけ、お子さんの期待に応えてあげることが、レベルアップ
につながるのです。早生まれのお子さんの場合は、4月2日と翌年の4月1日
では、1年の差があるのですから、そのことを忘れずに無理をしないことです。
他のお子さんと比べて評価するのは、賢いお母さんのすることではないと思い
ます」
 
なお、CD版 『さわやかお受験のススメ 小学校受験 Q&A編(100問)』は、目下、好評、発売中です。
 
今年の最後の配信になります。ご愛読いただきましてありがとうございました。
よいお年をお迎えください、来年もよろしくお願いいたします。
めぇでる教育研究所
 所長 藤本紀元
(次回は、「入試問題の出題範囲」についてお話しましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★まもなくクリスマスです

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第25号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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まもなくクリスマスです。お子様と楽しいひと時をお過ごしください。
 
最後は、面接テストです。ほとんどの学校は親子面接ですが、学習院初等科の
ように両親面接のところもあります。面接は、ほとんどの学校で考査前に行わ
れていますが、成蹊小学校、日本女子大学附属豊明小学校のように考査後に、
学習院初等科のようにお子さんの考査当日に、暁星小学校、早稲田実業学校初
等部のように一次試験合格者のみ行う学校もありますから、説明会に参加した
ときに確かめておきましょう。暁星小学校は、2013年度から親子面接にな
りました。
 
小学校側が面接をする目的は、ご両親が考え、実行している育児の方針と小学
校の教育方針に、共通認識があるか、限りなく同じ方向に近づいているかどう
かを知ることです。
まず、大雑把に分けて説明しましょう。
「私どもは、共学で、宗教色のない小学校を希望します」
の場合は、慶應義塾幼稚舎、学習院初等科、成城学園初等学校、成蹊小学校、
早稲田実業学校初等部、千葉日本大学第一小学校があります。  
 
「共学で、宗教教育をやっている学校が、いいですね」
となると、ミッション系の青山学院初等部、玉川学園小学校、聖学院小学校、
仏教の淑徳小学校などでしょう。
 
「女の子がいると勉強の邪魔になるから、男子だけの学校を考えています」
となれば、立教小学校か暁星小学校です。
 
「女の子で一人っ子ですから、女子だけの宗教教育をやっている学校が、合っ
ていると思いますけど」
たくさんあります。
ミッション系では、雙葉小学校、田園調布雙葉小学校、横浜雙葉小学校、白百
合学園小学校、聖心女子学院初等科、東洋英和女学院小学部、立教女学院小学
校、光塩女子学院初等科、仏教系では国府台女子学院小学部、この辺で勘弁し
てください。
 
「女の子だけの学校で宗教教育をやっていない学校を希望します」
の場合は、日本女子大学附属豊明小学校、東京女学館小学校、川村小学校でし
ょう。
東京女学館は、残念ながら大学を廃止することになりました。
 
「私どもの子は、一人っ子ですから、受験で苦労させたくないのですが」
となると、大学まである小学校を選ぶことになります。この発想は、あまり歓
迎できませんが、過保護にならないことを祈っています。
 
「それがいやなんですよ。生きることは競争です。社会人になる前に、自分の
能力を確かめられる受験を体験させておきたいのです!」
となれば高校まである小学校を選べば、いいですね。暁星小学校、日出学園小
学校、昭和学院小学校(短大まであります)、桐朋小学校、桐朋学園小学校、
森村学園初等部でしょう。桐朋は、小学校は共学ですが、中学から国立にある
桐朋中学校は男子校に、調布市仙川にある桐朋女子中学校は女子校と別学にな
ります。
 
国立市にある国立学園小学校は、幼稚園と小学校だけの特殊な学園で、千葉に
ある聖徳大学附属小学校は、中高は女子だけですから男子は受験となりますが、
目的は名門中学校への受験でしょう。
 
こういった、大雑把な希望から方向を定めて、それから、それぞれの小学校の
教育方針と我が家の育児の方針が、合っているかどうかを検討するわけです。
       
幼稚舎の教育方針がわかりやすいので、紹介しておきましょう。作文も面接も
なくなりましたが、願書には、志望理由を書きますから参考にしてください。
 
幼稚舎の徳育の根本は、独立自尊の精神にあります。その規範となるものが、
「幼稚舎修身要領」(10か条)です。これは通信簿の第1ページにも記して
あります。成績よりも前に目を通してほしい大切な事項だという意味です。新
1年生になった時に3つの約束をしますが、「幼稚舎修身要領」の中から特に
大切なものを取り上げたものです。
     1つ、うそをつかない。
     2つ、お父さん、お母さん、先生のいいつけを守る。
     3つ、自分でできることは自分でする。
これは福沢諭吉の精神を表した「幼稚舎修身要領」(10ヶ条)の中から、特に大
切な項目を選んだものです。 
(子どもと向かい合う教育 元慶應義塾幼稚舎長 川崎悟郎 著
 リヨン社 刊)
 
普段、子どもにいって聞かせていることを考えると、
「うそをついてはいけません!」
「約束は、守りなさい!」
「自分でできることは自分でしなさい、お母さんを頼っても知りませんよ!」
だとします。これを破ると、叱り、諭しているとします。そうであれば、お母
さんの育児の姿勢と幼稚舎の教育方針は、一致していることになります。
そして、共学が自然だと思っているとします。
宗教教育は、両親共に経験がないので、なじめないものがあると考えていたと
します。
大学まであって、受験戦争に参加しなくて済みますし、学部がたくさんありま
すから、将来、目指す道が広いのも魅力だと思っているとします。
通学に約1時間、しかし、体力、気力ともに心配ないとしましょう。
たくさんお金はかかりますが、頼れる祖父母が健在です。冗談、冗談です。幼
児には、「シックス ポケット」があると言われています。両親には、祖父母
が二人ずついて、教育資金となるポケットが6つあるということです。
こういう図式ができていれば、面接があったとしても、幼稚舎を選んだ理由を、
きちんと胸を張って説明できます。これが、面接の目的です。
 
幼稚舎の他にも、面接をやっていない小学校があります。桐朋小学校、桐朋学
園小学校、国立附属では筑波大学附属小学校、東京学芸大学附属世田谷小学校、
千葉大学教育学部附属小学校などですが、面接をやらない理由は、以前にも紹
介しました、桐朋学園小学校の鈴村元校長の話を思い出してください。文言は
正確ではありませんが、次のような内容でした。
 
 「大人は、趣味を尋ねられると、本当は、競馬、競輪などの博打が大好きで
も、『趣味は、読書と音楽鑑賞です』と平気でいうものです。演技もできます。
ですから、やっても無駄なのです。本音をおっしゃいませんから。しかし、子
どもを2日間預からせてもらうと、子どもは正直ですから、みんな本当の姿を
見せてくれます。育てられている環境は、わかります。ですから、私どもでは、
面接をしないのです」 (注 桐朋学園小学校のテストは二日間)
 
その通りではないでしょうか。大人は、猫をかぶりますから、面接は、ニャー
ニャー大会かもしれません。子どもは正直で、演技をしませんから、育てられ
ている環境を、そのまま見せてくれます。
ですから、面接で、つけ焼刃は効かないのです。
 
いや、面接だけではありません。小学校の入学試験、そのものも、メッキでは
駄目なのです。メッキは、はげるものです。最後に、先にも紹介しました、あ
るミッション系の校長先生の言葉を思い出してください。
 
「入学試験に必要な知識や礼儀作法なるものを、泥縄式に詰め込み、『受験準
備、事足れり』とお考えでしたら、それは誤りであることに気づいてほしい」
 
繰り返しますが、その通りではないでしょうか。赤ちゃんを育てたとき、あれ
これと泥縄式に詰め込みましたか、お母さん。そんなばかげたことは、しなか
ったはずです。子どもの成長に合わせ、一歩一歩、ゆっくりと、一緒に、階段
をのぼってきたのではありませんか。その心は、「できるまで待ってあげよう、
忍の一字」ではなかったでしょうか。小学校は、無理やり受験戦士に育てられ
た子を望んでいません。
 
子どもの知育は、子ども自身が、「知りたい、識りたい」と、身体、全体から、
ふつふつと湧き出るときに、与えるものであることが大切なのです。モンテッ
ソーリの「その時期に最も活動が盛んになり成長する敏感期」です。お子さん
の成長を見極め、学習するためにふさわしい環境を作ってあげるのが、親の役
目です。主導権は、子ども自身にありです。それを、親が握り締めていないで
しょうか。勉強だけではなく、遊びまでもです。
 
やはり、親は、教育に関して信念というか哲学を持つべきだと思います。しか
し、これを言うのには、勇気が必要です。小学校の受験にしても早期教育にし
ても、親は、子どものためによかれと思って始めるのですから、「そんなこと
は、余計なお世話だ!」となりがちです。    
 
そこで、来年の1月から、名門小学校の入試問題を紹介し、就学前に何が必要
なのかを、考えてみたいと思います。誤った受験準備をしないことが、お子さ
んのためですから……。 
(面接に関する情報は平成25年12月現在のものです)
(次回は、「よくある質問」についてお答えしましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★★★[2]5つの試験形式 運動テスト

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第24号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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■■[2]5つの試験形式■■
(4)運動テスト
  
みんなで一斉にする集団テストと、一人ひとりでする個別テストがあります。
集団テストには、先生のお手本を見て、その通りにする模倣体操や、タンバリ
ンなどのリズムに合わせて行進をする、片足で三十秒間ほど立つバランス感覚、
指の屈伸などがあります。
 
個別テストは、ケンケン、ケンパー、くま歩き、ボール遊び、ゴム段、跳び箱、
平均台といった運動をいくつか組み合わせて、先生の模範演技の後に一人ひと
りが挑戦するものです。
たとえば、こういった組み合わせです。
 
「床に引かれた真っすぐな線の上をケンケンで進み、平均台を渡り、次に
跳び箱に登り、元気よく跳び降り、得意なポーズをする」
         
ほとんどの学校でやっています。しかし、これは技を競う「競技大会」ではあ
りません。ボールを投げたり、ついたり、走ったりしながら、年齢にふさわし
い運動機能の発育状態を見ているだけです。ですから、難しいものはありませ
ん。ウルトラなんとかなどは、オリンピックの話で、一所懸命、子どもらしく、
挑戦出来れば、いいのです。
 
これも生活体験が、そのまま出ます。ボールをついたことのない子にボールを
つけといっても、絶対にできません。運動は、身体全体で学習するものですか
ら、正直に表れます。これは、誰の責任でしょうか。親です。運動器官に、何
らかの障害がある場合はともかく、普通の発育状態で、みんなが出来る運動も
出来ないのは、親がさせていないからと言えないでしょうか。こういう子は、
比較的に頭が、よいそうです。頭だけよくても、みんなが出来ることが出来な
いと、いやな言葉ですが、いじめの原因になったりもします。
 
逆も、あるのだそうです。スポーツ教室に通って、きちんと技をみがき、それ
は、それでいいのでしょうが、
「みんな、下手だな……! こうやるのだよ!」
見下しているのです。態度がでかいのです。ボール遊びなどでこういうことも
あるそうですが、これも駄目ですね。
 
早期教育にも、こういう欠点が、現われがちではないでしょうか。
「九九もできないの!」
これと同じです。油断して、かめさんに抜かれるうさぎさん、たくさんいるそ
うです。うさぎさんは、ひらめき型で、かめさんは、じっくり考えるタイプで
す。試行錯誤をするかめさんを、あたたかく見守ってあげるお母さんになりま
しょう。かめさんは、小学校の4年生頃から、うさぎさんを追い抜きはじめま
す。その理由は、選択肢が2つか3つの場合は、直感力がすぐれているひらめ
き型のうさぎさんは、あまり苦労することなく答えを選び出せますが、選択肢
がふえてくると、直感力だけでは解決できなくなります。じっくり考えるかめ
さん型は、選択肢が少なくても、一つひとつ検証して答えを出すので、時間は
かかりますが、試行錯誤を重ね、きちんと考えて答えを出す習慣を身につけて
いるからです。イソップの寓話「うさぎとかめ」にありますね。
 
ところで、話は変わりますが、負けたうさぎはどうなったかご存知ですか。か
めに負けた駄目うさぎとして、うさぎ村から追放されてしまいますが、「子う
さぎを餌に差し出せ!」と脅迫する狼をやっつけ、無事、うさぎ村に復帰しま
す。子どもから聞いた話で、真偽のほどは定かではありませんでしたが、図書
館でやっと見つけました。狼をやっつける方法が、用心深いウサギらしくて面
白いのです。
(「それからのうさぎ」
  読んであげたいおはなし 松谷みよ子の民話(上)  筑摩書房 刊) 
 
話を戻しまして、問題点は、まだ、あります。指示されたとおりに出来るかで
す。先程のいろいろな運動を組み合わせたものや、模範演技を、しっかり見て、
理解し、同じように出来るかです。指示の理解と的確な行動力を判定している
と思います。
 
まだ、あります、待っている間です。自分の番が来るまでは、緊張しています
から心配ありませんが、自分の番が終わると、ゆるみがちです。他の子どもが
やっている間、キチンと体操座りで待っていられるかです。本当は、これが学
校側の狙いだと思うのですが……。
 
最後に、一言。これは、笑えない話ですね。あるミッション系の小学校の説明
会で聞いた話です。
先生が模範演技をして、さて始めようとしたとき、一人の女の子が聞いたので
した。
「先生、これテストですか?」
「………!」
先生は、何とも言えません。どこの学校も、子どもたちには、テストというプ
レッシャーをかけないように気をつかっていますから、「試験です!」とは、
言いがたいのです。
「試験でないなら、やりたくありません!」
子どもの正直な告白です。毎日、やること、全て、試験のための訓練になって
いるのでしょう、悲しくなりますね。しかし、体を動かすことをいやがる子ど
もなど、いるのでしょうか。「お子さんを追い込むような準備はしないでほし
い」と、シスターはおっしゃっていました。やはり、おかしいです。
おかしくしているのは、誰でしょうか。ほんの一部の猛烈受験ママの話でしょ
うが、こういったことからマスコミの言う「受験戦争の低年齢化」となり、針
小棒大に騒がれてしまうのでしょうけれど、お子さんのためです、こういった
お母さんにはならないでいただきたいとお願いしておきましょう。
 
昔の話ですが、お父さんが海外へ単身赴任しているお子さんの志望校は、ボー
ルを使った運動テストが行われる暁星小学校でした。お父さんの代わりは出来
ませんが、盛んに話しかけてくるので、やはり、寂しいのだなと耳を傾け、時
には叱ったりしたものでした。子どもから聞いた話ですが、お母さんと近所の
公園で、毎日のようにボール遊びや縄跳びをしていたそうです。試験のためで
はなくても、親子で汗を流すのは大切なことです。少し太めであったお母さん
が、スリムになってきたので、絶対に合格するだろうと思いました。親子が心
を一つにして目標に向かえば、望みはかなえられるものです。入学式の帰りに
挨拶に見えましたが、一番うれしそうだったのは、何と初対面のお父さんでし
た。
 
何から何まで、塾や教室の先生方にお任せだけでは、よい結果は出ないことも
覚えておいてください。
(次回は、「面接テスト」についてお話しましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★★★[2]5つの試験形式 集団テスト

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第23号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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■■[2]5つの試験形式■■
(3)集団テスト
 
10名から20名位のグループで、部屋に置かれている遊び道具、ボールや縄
跳び、積み木や輪投げなどを使い、各人が自由に遊んでいる様子や、先生のま
ねをして踊ったり、熊や象などの動物のまねをしているところを観察するもの
や、話を聞いて、話の続きを想像して絵に描いたり、全く条件を与えられない
で好きな絵を描いたりします。
 
遊んでいる様子から自発性を、何かを作ったり、絵を描いたりすることから表
現力や創造力、巧緻性などを見ます。巧緻性は、きめ細かく上手にできている
ことで、「手は第二の脳」で詳しくお話しましたから省略しますが、一言でい
えば、普段、両手を使う作業をやっているかを見るわけです。
テストの狙いは、親の手を借りずに、どのくらい自分自身でできるか、自立心
ですね。さらに、基本的な生活習慣も関わっています。もちろん、積極的に参
加する意欲や自主性もわかりますから、手を抜けません。
 
また、たとえば、クリスマス・ツリーなどを作る課題を与えられ、5、6名の
友だちとグループを組み、相談をしながら、自分の考えをいい、相手の意見に
も耳をかたむけながら、仲良く作り上げていく問題もあります。社会性や協調
性が培われているかを見る行動観察型のテストです。
 
[自由遊び]
「好きな道具を選んで、自由に遊びなさい」
といわれて、戸惑う子がいます。子どもの仕事は、遊びですから、信じられま
せんね。なぜでしょうか。その原因は、日常生活が何から何まで管理されてい
ることにあるのではないでしょうか。お母さんの指示どおりにしないと、お母
さんの気持ちが済まないようです。その心は、無事に〇〇小学校へ入るためで
す。これでは、学校側が求めている自発性や自主性は、育たないと思いますね。
お子さんの通っている幼稚園は、自由保育です。お母さんのやっていることは、
管理育児です。こんな言葉はないでしょうけれど、保育の方針に逆らっていま
す。
 
遊んでいるときに、子ども本来の姿が表れるもので、そこを学校側はみたいの
です。みんなが自分の好きな遊びに熱中している時に、お母さんの子だけが、
何やら不安気に、ボーッとしていると、先生方は、どう思うでしょうか。育児
が過干渉である証で、自分の意志を持たない「受験サイボーグ戦士」と思われ
るかもしれません。その心配なしとは言えませんね。
 
こんな子もいるそうです。今、ボールで遊んでいたと思ったら、今度は縄跳び、
と思う間もなく輪投げです。一ヶ所にジッとできません。これは、この時期に
見られる子どもの成長を現す一面で、目移りではなく、好奇心が旺盛なのです。
とは言っても、次から次へと手を出し、人が遊んでいるおもちゃを横取りした
り、いくつも独占したり、あげくのはてには散らかしっぱなしはどうでしょう
か。
これでは、好奇心が旺盛とは言えません。単なるわがままか、飽きっぽいだけ
で、育児が過保護になっている証拠です。
       
遊ばせれば、子どもの育てられている環境はわかります。幼児の試験は、これ
が最も適切ではないでしょうか。子どもたちは、全身で育てられている環境を
表します。無心に遊ぶ、ちょっとしたしぐさから、育児の姿勢が伝わってくる
ものです。
 
[身体表現]
先生のやっている動作をまねる、いわゆる身体表現です。
たとえば、あざらしの歩き方をまねたりします。これは、かなり、難しいです
ね。両手で体重を支え、両足をそろえて伸ばし、両手を交互に出しながら前に
進みます。まさに、あざらしさんです。腕力と腹筋を使いますから、かなりき
ついですね。もちろん、あざらしそっくりにできればいいのですが、それだけ
ではありません。これも積極的に参加する意欲があるかどうかです。ちょっぴ
り照れながらも、顔を真っ赤にして挑戦する子、いいですね。
 
幼児は自分の考えを表すときに、言葉だけでは十分でない場合、どうするでし
ょうか。身体全体を使って表現しようとするものです。しかし、これは表現す
る対象をよく観察していないと出来ません。あざらしを見たことのない子に、
まねられるでしょうか。たとえお手本があっても、ぎごちないでしょう。見た
ことのある子は、「不思議な歩き方だな?」と思うはずです。「思う」とは、
注意を呼び起こされることです。「どこが、どう違うのかな?」と観察を始め
ます。
幼児の学習は、これが基本です。
興味があれば、細かいところまで見極めようとします。他の動物との違いを見
つけられれば、素晴らしい学習になります。大切なのは、実物を見ることです。
同じところと異なったところを見つける、類似差異の見極めです。そこから、
新しい知識が備わってきます。机の上で、いろいろと知識を詰め込まれても、
あざらしを見たことがなければ、はつらつと表現できるでしょうか。このテス
トの目的は、生活体験、自分を取り巻くものへの関心や、そういったものに対
する観察力ではないかと思います。
 
かつて、アメリカでベストセラーとなった「人生に必要な知恵はすべて幼稚園
の砂場で学んだ」の第1章 私の生活信条(クレド)に、「不思議だな、と思
う気持ちを大切にすること。(中略)ディックとジェーンを主人公にした子供
の本で最初に覚えた言葉を思い出そう。何よりも大切な意味を持つ言葉。“見
てごらん”」があります。(“  ”は引用者)
幼児に大切なのは、教え込むより、疑問の芽を育ててあげることではないでし
ょうか。発想が兼好法師の「徒然草」とそっくりなことに驚かされましたが、
著者のロバート・フルガムは、牧師であったことから納得したものでした。
 
[共同制作]
クリスマス・ツリーを作ることを考えてみましょう。折り紙、モール、きびが
ら、発泡スチロール、リボン、厚紙などの材料から、セロテープやのりなどの
接着剤、はさみ、穴あけパンチ、ホチキスといった道具が用意され、相談しな
がら作ります。共同制作です。
「制作、得意なんです、私に任せといて!」
「苦手なんだ、はさみを使うの。手を出さないで見てよう!」
そうはいきません。みんなで相談しながら作ります。自主制作ではありません、
共同制作です。
 
しかし、これは、本当に大変です。考えてください、全員、今日、初めて会っ
たのです。幼稚園や保育園、近所の気心のわかりあった友だちではありません。
名前も性格も技量も趣味も、全く、わからない集りです。ですから、育てられ
ている環境が、姿を現します。
「自分のことは自分でしなさい」
と、自主性を培う育児に徹していれば、自分からやります。過保護、過干渉な
育児では、積極的に参加出来るでしょうか、出来ないと思いますね。学校側の
狙いは、ここにあるのではないでしょうか。
 
ある年の、幼稚舎の試験に、こういうのがありました。教室に紙を貼ったイー
ゼルが立てかけてあり、その前に数種類の絵具が用意され、絵を描かせたので
す。学校の狙いは、何でしょう。絵の巧拙でしょうか。それはないと思います、
挑戦する意欲だと思います。そうでしょう、4、5歳の幼児が、イーゼルを使
って絵を描く機会があるでしょうか。ほとんどの子どもは、「何だろう、これ
は?」となるに違いありません。新しいもの、未知なるものに挑戦する意欲で
す。積極的に挑戦する子の好奇心は、旺盛です。これですね。
体中から好奇心という触角を出して、うるさいほど知りたがるのが子どもです。
こういう子は、やります。筆につけすぎた絵具をボタボタ落としながらでも。
手や顔どころか、服まで絵具だらけになるかもしれませんが、幼稚舎の試験は、
体操着に着替えてしますから心配ありません。どうして、体操着に着替えるの
でしょうか、受験される方は、これを考えましょう。
 
ところで、「なぜ、イーゼルで絵を描かせたのですか」の質問に、「子どもの
表情を見たかったのです」とおっしゃった当時の舎長のコメントが印象に残っ
ています。なぜなら、一心に絵を描いている子ども達の表情は、実に生き生き
としているからです。知的能力だけではなく、身体全体から表われる子どもら
しい成長の証(あかし)を見ているのです。大切なポイントです。
 
制作、絵画は、完成した作品の巧拙だけを見極めるのではありません。積極的
に楽しく取り組む意欲や共同で作業を進める協調性です。協調性は、社会性と
共に、大切な集団生活への適応力を育むものです。
ペーパーテストは、満点を取っても、集団テストの苦手な子を、学校は歓迎す
るとは考えにくいことです。社会性がどのくらい培われているか、子どもは態
度で示します。過保護、過干渉の環境では、こういう子になりがちではないで
しょうか。
通っている幼稚園の先生や保育園の保育士さんに聞いてみましょう。「集団生
活に、少し心配な点が見られますね」などの答があった場合は、「ものすごく
心配な点がある」と受け取り、お子さんに対する育児の姿勢、取り巻く環境を
総点検する必要があります。
 
繰り返しますが、「ご両親の育児の姿勢」を総合的に判定するのが、小学校の
入学試験です。このことを、肝に銘じておくべきではないでしょうか。
  (次回は、運動テストについてお話しましょう)

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★[2]5つの試験形式 個別テスト 

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第22号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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■■[2]5つの試験形式■■
(2) 個別テスト 
 
文字通り、先生と一対一、個別で行われるテストです。口頭試問と考えたらい
いでしょう。
しかし、幼児のことですから、言葉だけでは答え切れません。おはじきやプレ
ート、絵、時には本物や、それに近い物を使って出題され、おはじきを置いた
り、絵に指を差して答えたり、プレートで指示された形を作ったりします。学
校によっては、いくつもの部屋を回り、何人もの先生とお話しする場合もあり
ます。
 
この形式では、ペーパーテストと異なり、設問を聞き逃しても、「一巻の終わ
り!」とはなりません。勇気があればの話ですが、聞き直しが出来ます。幼児
のテストは、こういった個別テストが適しているのではないでしょうか。しか
し、答える子ども達には、つらいことになります。口頭試問の場合、問題を聞
き、考え、言葉で答えるからです。ペーパーテストでは、答えがわからなくて
も、適当に印をつけても正解になる場合もあります。時には、偶然が支配する
幸運もあります。個別テストには、それがなく、全部、自分でやらなければな
りません。育てられている環境、そのものがズバリと顔を見せます。
 
育児が過保護や過干渉になっていると、親離れが出来ていませんから困るでし
ょう。
「ママ、手伝って!」
「どうしたらいいの、ママ!」
そんなことを言っても、誰も手を貸してくれません。態度も、オドオドとして
落ち着きがないでしょう。
こういった子育てをしているお母さん方は、おくめんもなくおっしゃるそうで
す。
「私となら何でもできるのに。やっぱり、コネなんだわ!」
少し解説が必要ですね。試験を受けたのですが、合格しませんでした。その子
は、お母さんと一緒であれば、何でもできる抜群の能力の持ち主だそうです。
ですから、落ちたのは成績ではなく、出身者ではないから、また、紹介者、つ
まり、コネクションがないために、合格しなかったとおっしゃりたいらしいの
です。出身者だけを入学させたくても収容人員は限られていますし、紹介者が
いれば合格するのであれば、受験料を取ることは詐欺行為になります。ですか
ら、こういった怪情報は、単なる噂に過ぎません。
 
小学校の入学試験の狙いは、お母さんのもとを離れて、「一人で、どれだけの
ことが出来るか」であり、頼りになるのは自分だけです。 こういうお母さん
方が、面接で、
「お子さんを育てるにあたって、どういったことに気をつけていますか」
と聞かれたとします。すると、お母さんが、格好よく、
「子どもの自主性を育てることに留意しています」
と答えたら、先生方は「……!?」となるでしょうね。
 
個別試験に対して、入学試験問題集を買い込んで試験に備えるのは、試験があ
る以上、やらねばなりませんが、子どもの発育状態、生まれ月、これを考えず
にやってしまうと、困ったことになりかねません。
 
例えば、一枚の絵を見て自分で話を作る問題があります、創作です。うまく出
来ないと、お母さんが作った話を記憶させるようです。大人の考えた話や発想
は、大人のものですから、子どもは抵抗を感じないでしょうか。うまくでき過
ぎているからです。それを覚えさせるそうですが、自分で考えたものではなく、
お母さんの創作ですから、ついていけません。そして、記憶させられた話は、
忘れやすいものです。しかし、お母さんの前では、大丈夫なのです。何回も繰
り返し教え込まれるのですから、覚えるでしょう。
 
ところが、小学校の入学試験は、生まれて初めて入った場所で、初めて会った
先生のいうことを聞き、いろいろなことをしなければなりません。場所が変わ
り相手が変わると、うまくいかないものです。プレッシャーが、かかるからで
すね。大人の世界でもあるでしょう、ブルペン・エースです。練習では豪速球、
生きたボールを投げるのですが、マウンドに立つと平凡なボールを投げては、
ノックアウトされるピッチャーのことです。
 
さらに、問題集にある通りの絵が出てくる幸運は、ほとんどありません。たと
え幸運に恵まれても、先生は、お母さんに教えられたとおりに、聞いてくれる
保証もありません。同じような問題でも、ちょっとひねられると、それで、お
しまいです。先生方も、そこを見ていると思います。子ども自身の考えかどう
かですね。ですから、単に記憶させるだけでは駄目なのです。
 
ペーパーテストは、答えがあっていても、子ども自身の考えかどうか、わから
ない場合もあります。
個別テストは、ここが、はっきりとわかります。これが、いいですね。子ども
が自信を持って答えられるのは、日常生活で、きちんと体験していることです。
 
また、親の教育に対する姿勢も、はっきりと表れます。
「うちの子、引っ込み思案で、消極的だから、個別テストに向いていないわ」
とおっしゃるお母さんがいますが、子どもが好き好んでそうなったのではなく、
お母さんの育児の姿勢がそのまま表れているだけです。試験の形式だけで学校
を選ぶようでは、本末転倒な話で出発点から誤りです。
 
私学には、独自の建学の精神、教育理念があります。ご両親の教育に対する考
え方と、学校の教育方針に共通認識があり、限りなく近いことが、学校選びの
条件です。小学校の教育は、家庭と学校とお子さんの三人四脚で行われるもの
であり、決して忘れてはならないことです。
 
ところで、お嬢ちゃんで、一人っ子であると、消極的になりやすいものです。
しかし、過保護から身についた甘えん坊や、過干渉からなってしまった消極的
な性格から出る引っ込み思案とは、違います。一人っ子でも、自分でやるべき
ことを、きちんとさせているお母さんに育てられていると、一所懸命に取り組
みます。わからない問題にぶつかっても、簡単にあきらめません。精一杯、挑
戦したのですが、できなかったとしても、
「わかりません」
という顔に、悔しさこそあれ、明るいそうです。普段の生活が、そのまま出て
いるからです。失敗を恐れずに、一所懸命に考え、頑張り、挑戦する意欲のあ
る子に育てたいと考えているご両親の姿が、そこにあるからです。学校側の求
めている子は、こういう子です。自分で考えていることを、自分の言葉で話せ
る子です。
 
前にもお話しましたが、最近は、こういった問題が増えています。
◇机の上に半そでのYシャツと、近くの箱に500mlのペットボトルとプラ
スチックのコップ3個と黄色と赤色のリボンが入っている。
・Yシャツを着て、ボタンを留めましょう。
・箱からペットボトルを出し3個のコップに同じになるように水を入れましょ
 う。
・終わったらペットボトルに黄色いリボンでちょう結びをしましょう。
・最後にYシャツを脱いで、たたんでください。
 
基本的な生活習慣やしつけ、自立心までわかります。個別テストからは、子ど
もの生育史をみることが出来るのです。それが、ご両親の育児の姿勢であり、
学校側の言う「ご家庭の教育方針」です。こういったことを理解していないと、
ご両親が面接で、どんなに格好のいいことを言っても、そうでないことをお子
さんが、きちんと見せるものです。
 
個別テストでは、自立心や自律心がどの程度、培われているかもはっきりと表
れます。「自分の考えを言葉で表す」のは、幼い子ども達には、とても難しい
ことですが、基本は、ご両親との対話から培われるものです。「対話の反対は
沈黙ではなく、命令と強制です」とおっしゃったのは、立教小学校の元校長で
あった田中司先生で、本校のペーパーテストを廃止した方です。
 
「こうしなさい」「それはだめ」などと一方通行では、対話は成り立ちません。
お子さんとの対話を弾ませることから、言葉で考え、表現する力は培われます。
 
お子さんは、ご両親の目を見ながら楽しく話をしているでしょうか。
(次回は、集団テストについてお話しましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★[2]5つの試験形式 ペーパーテスト 2

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第21号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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■■[2]5つの試験形式■■
ペーパーテスト 2
 
正直にいって、この先生が恐いのです。
お母さんは、何とか力をつけようと夢中になってしまい、自分の言っているこ
と、やっていることが、わからなくなるようですね。たとえば、難易度の高い
「図形」の問題などで、子どもがよく理解出来ていないときに、こういったこ
とが起こりがちです。お母さん自身は、説明したことでお子さんも理解出来た
と思い、問題に取り組むのですができません。1回ぐらいの間違いは許容範囲
ですが、何回も同じ間違いが続くと、お母さんの顔つきも変わり、
「何回、教えたらわかるの!」
「こんな簡単な問題が、どうして出来ないの!」
と、なりがちなのです。
幼児がわからないというときは、本当にわからない、理解出来ていないのです。
このことをしっかりと肝に銘じ、お母さんの説明が不十分であることを考え、
お子さんがわかるように工夫してあげることが大切で、お子さんを責めるべき
ではありません。
 
また、昨日教えたことが、今日になると出来ない場合もありがちです。それは
お子さん自身が経験していないことを、記憶だけに頼って憶えさせている場合
が、多いからなのです。子どもは興味や関心のないことをやっても、すぐに忘
れがちです。
 
ですから、幼児は、机の上だけで知的な訓練をするのは、適切な方法ではあり
ません。お母さんのやり方が間違っています。それを棚に上げて、思わず子ど
もの頭を叩いてしまうお母さんもいるそうですが、何も悪いことをしていない
にもかかわらず、いくらお腹を痛めたからといって、手を上げる権利は、母親
といえどもありません。子どものためにも言っておきたいことがあります。
お母さんの子どもの頃、どうだったかということです。冷静に聞いてください、
冷静に。
 
ここでおさまると、まだ、両者の歩み寄る機会は残されています。しかし、こ
の線を越えて、怒鳴り散らしてまで受験勉強をすると、子どもも切れますが、
耐えるしかありません。お母さんに見捨てられたら、子どもは生きていけませ
ん。
「ボク、本当にお母さんの子かな?」
こうなったらトラウマになりかねません。
 
昔は「子をもって知る親の恩」と言いましたが、最近では、受験準備に熱が入
りすぎると、「合格の二文字のために忘れる子どもの心」とも言われているよ
うです。わが子を虐待して殺してしまう、鬼のような親がいるご時勢です。訂
正、鬼もわが子を手にかけなかった話が残っていますから、畜生にも劣る親と
します。ですから、「受験を始めて忘れてしまう子どもの心」になるようでは、
受験をする資格はないと考えましょう。先人の知恵でもある「三つ子の魂百ま
で」を、絶対に忘れないでください。小さい時に経験したことで、お子さんの
性格は築かれていくからです。
 
子どもをプリント漬けにし、来る日も来る日も、毎日、何時間も、入試問題集
を広げ、猛練習をして力がついたと思うのは錯覚です。類似問題を数こなせば、
出来るようになるでしょう。しかし、この方法は、一種の条件反射的なトレー
ニングです。これで考える力がつくでしょうか、疑問だと思います。行動観察
型のテストでは、対応できないでしょう。自ら考え、答えを導く力は、年月を
かけ、試行錯誤を繰り返しながら出来上がったカリキュラムがあり、それをよ
く理解している先生方の的確な指導のもとで身につくものなのです。
 
なぜ、このような受験準備が、行われてしまうのでしょうか。
例えばの話ですが、幼稚舎に入れば、余程のことがない限り、大学まで行けま
す。子どもの努力次第では、医学部へ進める可能性さえあります。子どもの将
来のためと考えるのも、無理からぬ親心です。
さらに、合格すれば、受験準備はこれっきりです。
場合によっては、中学、高校、大学と3回も受験戦争に参加させられる可能性
もあるわけですから。
「手のかからぬ内に入れてしまおう!」
このことです……。
思春期になり、難しい年齢になっての受験は、正直いって、しんどい話です。
身体は大人に近くなっても、精神年齢は年齢以下といったアンバランスな成長
をしている子、かなり見かけます。同じような大人も結構いますから、説得力
に欠けますけれど……。
 
さらにです。
年齢が下がれば下がるほど、能力の差は出にくいものです。ここで何とか手を
つくせば、志望校へ入学できるのではと考えるのも当然でしょう。しかし、厳
しい現実が控えています。お子さんの将来を案ずる親心は、どなたの心にも強
く、深く、ひそんでいます。ですから倍率は高くなり、10倍を越える学校も
あるほどです。
 
この現実を考えると、生半可な受験準備では、合格などありえないと考えるの
も無理からぬことで、かなりハードな受験準備が、待っていることになりがち
です。しかし、受験勉強をさせられる子どもの立場になると大変です。先にも
お話しましたように、何事もそうですが、過熱気味になると当事者は、自分の
やっていることが、わからなくなる仕組みになっています。「合格」の二文字
に、冷静さを失いがちですが、受験生のお母さん方全部が、こうなるわけでは
なく、ごく、一部のお母さん方であって、熱心すぎるだけで悪気はないのです。
こういう被害を子どもたちが受けないためにも、ペーパーテストのなくなるこ
とは、いい傾向にあると思います。誤解されると困るので言っておきますが、
ペーパーテストが悪いと言っているのではなく、準備の仕方にとかく問題があ
りがちだと言いたいのです。
 
また、ペーパーテストがないから問題集などやらなくてもいいと思っている方
がいると聞きますが、それはとんでもない間違いで、必ず、クリアしなければ
ならないハードルがあり、そのために問題集は必要です。問題に○や×をつけ
るだけではなく、行動観察型の試験のように、「どうしてそうなったか」など、
言葉で説明する口頭試問に対する準備です。
 
ところで、最近の入試問題を読むと、「幼稚園での生活能力があればできるテ
ストを実施したい」と考える学校が増えているのは確かで、これは歓迎すべき
ですね。
たとえば、部屋の一角にじゅうたんが敷いてあり、机の上に紙に包まれたお菓
子が置いてあって、ペットボトルに入った麦茶らしきものとコップが用意され、
「さぁ、おやつですよ」といった試験がありますが、チェックポイントは、以
下のようになっていると思います。
まず、靴を脱いで、キチンと揃えられるか。
お菓子を食べる前に、ハンカチで手の汚れをぬぐえるか。
包装紙でくるまれたお菓子を出すのにてこずらないか。
せんべいやクッキーであれば、ボロボロとこぼさないで食べられるか。
ペットボトルから、うまく麦茶をコップに注げるか。
「いただきます」、「ごちそうさま」をいえるか。
後片付けができるか。
みんな「……か」と、クエッション・マークつきです。
これがテストです、何を評価しているのでしょうか。
 
さらに、この話をどう思われますか。
教育者、特に小学校の先生方は、見るところが違います。テストが始まると、
子どもたちの姿勢と筆記用具の持ち方を見るそうです。姿勢がよければ、ご両
親がよいお手本を見せており、筆記用具を正しく持てていれば、おはしをきち
んと持って食事をしているはずですから、育児の方針がわかるというのです。
テレビを付けっ放しで食事をし、ダラダラ時間をかけていると、直ぐに腰が砕
けて、姿勢も崩れがちです。これは、お父さんにも責任の一端、ありです。特
に、朝食です。テレビを聞きながら新聞を読み読み、ご飯を胃袋に流しこんで
いませんか。親が、お手本です。
 
これはしつけ以前の基本的な生活習慣です。
ですから、直そうと思っても、直ぐにというわけにはいかないものです。食事
は毎日のことですから、おざなりにしていると、お子さんは学習の第一歩で苦
しむことになります。知識を詰め込むより、こういった生活習慣を大切に育て
ているお母さんは、お子さんから尊敬されます。
なぜなら、お母さんの手を借りずに出来ることは、子ども心にも嬉しいからで
す。間違いなく、「自分でやろうとする意欲」が育ちます。
 
ペーパーテストといっても、知的能力だけを見ているのではありません。
受験生は、幼児です。
親の育児の姿勢を評価しています。
このことをきちんと心に納めておかなくては、合格の二文字はありえません。
 
机の上だけで、記憶に頼った知識の詰込みばかりやっていると、頭でっかちで、
かたよった経験しか持っていない子になりがちで、被害者は、言うまでもなく
子ども自身です。ペーパーテストが中心になっている学校を受験される場合は、
こういった結果が残るような準備だけは、避けてほしいと思います。
 
これからの毎日の体験は、お子さんの心に残ることを忘れないでいただきたい
のです。年中から年長にかけては、将来の学習意欲も培われていく大切な時期
であり、人格を形成する重要な時期でもあるからです。
  (次回は、個別テストについてお話しましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★[2]5つの試験形式 ペーパーテスト 1

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第20号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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■■[2]5つの試験形式■■
ペーパーテスト 1
 
有名小学校の入学試験は、5つの試験形式から構成されています。
 
   1 ペーパーテスト
   2 個別テスト
   3 集団テスト
   4 運動テスト
   5 面接テスト
 
昔は、ペーパーテストだけの小学校もありましたが、今は、ありません。
逆に、ペーパーテストを廃止した小学校もあります。
個別テストのない小学校もあります。
5つ、全部やってしまう小学校もあります。
面接テストをやっていない小学校もあり、いろいろです。
推薦状と面接だけの学校もあります。
それは、私立の小学校ですから、「建学の精神」や「教育方針」に、いろいろ
な特徴があり、それによって教育が行われていますから、試験にも、その学校
独自の自前のカラーがあって、当然なのです。
 
しかし、どこの学校も知的な能力だけで、合否の判定をしているわけではあり
ません。育児の集大成、まだ中間報告ですが、そこを見ているのです。その集
大成を判定する5つのテスト形式について具体的にお話しましょう。
 
1.ペーパーテスト 
20人から30人程のグループで、オーディオの音声や動画、または口頭での
説明を聞きながら、一斉に答える筆記テストです。皆さん方も経験済みの、お
馴染みのテスト形式です。しかし、これは大変です。
何といっても幼児は、原則として、文字を読めないし書けません。
ですから、プリントのどこを見ても、文字で書かれた設問は、ありません。
おかしな話ですが、絵や図形などを使いダミーも含めて、全部、答えが描かれ
ています。
そして説明を聞いて、そのプリントに用意された筆記用具を使い、○や△、□
や×などの記号を書いたり、線を引いたり、色を塗って答えるわけです。
 
こんな問題があります。
B4判の大きさのプリントに、門松や節分、七夕、七五三、クリスマスといっ
た四季を代表する行事が描かれていて、解答はクレヨンを使いなさいと指示が
あり、
「春の仲間にはピンク色で○を、夏の仲間には青色で△をつけなさい」
といったコメントが、スピーカーから流れてきます。
これが、設問です。
一回きりで、後は、静かに時は流れるだけです。
当然、時間は限られています。30秒ぐらいで解答します。
「春は、○だったかな?」
などと悩んでいたら駄目です、そんな余裕はありません。
「何かいっていたな?」
などとぼんやりしていると、最悪の状態になってしまいます。
設問を聞き逃せば、それでおしまい、ゲームセットです。
設問は、どこにも書かれていないからです。
前にもお話ししましたが、中学、高校、大学の試験のように、わからない問題
は飛ばしておいて、
「後でやろう!」といったことは、絶対にできません。
 
そういったことを考えれば、いちばん厳しい条件の試験ではないでしょうか。
指示を正確に聞き取り、出来るだけ速やかに解答しなければ得点になりません。
こんなことはないと思いますが、その時に、ちょっと耳がかゆいと気を散らし
たら、それまでです。時間がくれば、次の問題に移りますから、まさに「待っ
たなし」なのです。
 
さらに、テストが始まると同時に、普段の生活習慣やしつけなど育児の姿勢が
わかります。話を静かに聞く姿勢が身についているか、筆記用具を正しく持っ
ているかなど、いろいろな様子が表れるからです。先ほどお話した「育児の集
大成」です。単に、常識や記憶力を見ているのではありません。こう考えると、
問題集だけやって「受験準備、こと足れり」とはならないことを、ご理解いた
だけるのではないでしょうか。
 
ところで、ペーパーテストに問題点はないのでしょうか。
ペーパーテストのメリットは、子どものあらゆる能力を判定することは出来ま
せんが、ある面は確実に評価できることでしょう。しかも手っ取り早いし、試
験官の数も少なくて済みますし、ペーパーに答えが残りますから判定も公平で
す。ですから、ペーパーテストを行う小学校が多いわけです。誤解を招くと困
りますから断っておきますが、他の試験は不公平というのではありません。
 
先ほどもお話しましたが、ペーパーテストだけを実施している小学校はなくな
りました。かつて、ペーパーテストだけを実施していた立教小学校は、現在で
はペーパーテストを廃止し、運動テストや制作に加え、ここ数年、シャイな男
の子の苦手な「ダンス」まで取り入れています。なぜでしょうか。
 
これも、以前にお話しましたが、ペーパーテストだけでは、社会性や協調性、
自主性、基本的な生活習慣やしつけなどは判定できないからです。逆に、知的
能力だけが高い、偏った経験を持つ子の集団になる可能性もあるからです。 
 
こういう話を説明会で聞いたことがありました。
ペーパーテストの結果に従って、高得点者から順番に合格者を選んだところ、
早生れの子どもが少なくなり、翌年から生年月日順に切り替えたそうです。当
然でしょうね。4月2日生まれと翌年の4月1日生まれは、学年が一緒です。
1年間の差がありますから、早生れの子には、ハンディキャップになります。
生年月日順は、その配慮があるわけです。願書の受付順や五十音別に受験番号
をつける場合は、年齢の配慮はありません。
しかし、今では、多くの小学校で月齢への配慮をしていると言っていますから、
早生れのお子さんも心配はありませんが、「募集人員 男女約○○名」といっ
た場合は、男女を問わず、成績順に合格を決めますから、注意が必要です。説
明会へ参加し、きちんと確かめておきましょう。
 
もう一つ問題があります。
それは、ペーパーテストの対策、受験準備、これが過激になりがちなことです。
試験の難易度が高く、生半可な準備では、とてもクリアできない小学校もあり
ます。きちんとしたカリキュラムのもとに指導を受けているお子さんは、心配
ないでしょうが、少し気になる話を耳にします。幼児教室や塾を掛け持ちする
子もいるようです。指導方針が違っていれば、お子さんは混乱するだけです。
 
たとえば、こんなことはないと信じていますが、数を数える問題で、A教室で
は「線などを引かないで数える」と教わり、B塾では「線を引いて数える」と
いったように、全く相反する数え方を教われば、迷ってしまうのはお子さんで
す。皆さん方は、どちらが正しい指導方法だと思いますか。
 
たくさん受けさせれば効果があるとでも考えているとすれば、それは大きな間
違いです。そういったお母さん方は、うわさにも弱いようで、親子で受験地獄
に陥りがちです。受験地獄など、あるわけはないのですが……。
 
家に帰ると、お母さんが先生です。最近は、お父さんが力を入れている家庭も
増えてきました。 このことです……。ペーパーテストに対する過激な受験準
備、ここに問題があるようです。
 
次回は、「ペーパーテスト2」についてお話しましょう。
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★有名小学校の入学試験とは ■■[1]求められる四つのパワー■■

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第19号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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有名小学校の入学試験とは
■■[1]求められる四つのパワー■■
 
過去にNHKの「お入学」、TBSの「お受験」の放映で、全国区に昇格した
かどうかはわかりませんが、私立の名門小学校の受験騒動、話題になりました。
過熱気味であった私立志向も、バブルが弾けて静かになったようです。しかし、
学習指導要領も「ゆとりの教育」から「心の教育」に改訂されるなど、公教育
の指針は安定しないことから、私立志向は根強く息吹いています。
 
その証といっては何ですが、埼玉県には、私立は浦和ルーテル学院小学校、1
校しかありませんでしたが、今では、開智小学校(所在地岩槻市)、学校の中
に水族館とプラネタリウムがあるさとえ学園小学校(さいたま市)、西武学園
文理小学校(狭山市)、星野学園小学校(川越市)と5校になりました。登下
校時の東上線川越駅は、西武文理小と星野学園小のかわいい子ども達で混雑し
ています。小江戸と呼ばれている静かな城下町川越、そこの住人である私には、
信じられない光景です。
さらに、副都心線の開通で川越から渋谷まで乗り換えなしで50分、青山学院
初等部、東京女学館小学校、慶應義塾幼稚舎、聖心女子学院初等部など、都心
の学校を受験される方も増えました。また、東急東横線が副都心線と相互乗り
入れを開始し、元町・中華街まで乗り換えなしで行けるようになり、横浜雙葉
小学校などへの受験も可能になりました。
茨城県には、江戸川学園取手小学校、他5校に加え、来年4月から開智望小学
校(仮称)が開校します。
 
そして、書店をのぞくと入学試験問題集も、たくさん売られています。中には、
「こんな難しい問題、本当にできる子いるのかな?」と、首を傾げたくなるの
もあります。しかし、問題集を読んでいると、学校側がどのような子どもを求
めているかが、おぼろげながらわかってきます。うわさでは、何やら、椎名誠
風な表現で照れますが、「頭脳明晰成績優秀名門家庭の子女」だけを求めてい
るといわれているそうですが、そんなことはありません。
「知力・徳力・体力・気力が、その年齢にふさわしくバランスよく育っている
子」です。この4つの能力は、小学校受験に必要な基本的な力ですが、一朝一
夕に身につくものではありません。何もできなかった赤ちゃんを、根気よく、
忍の一字で育ててこられた皆さま方ですから、納得していただけると思います。
受験準備は、育児と同様に、一歩一歩、確実に前進を目指す、地道な努力が必
要です。では、学校側は、この4つの能力を、どのように判定しているのでし
ょうか。
 
第1は知力です。
これについては、わかりやすい解説がありますので紹介しましょう。
 
「知能の定義には、いろいろありますが、ここではその中身を、知覚力・記憶
力・言語能力・数能力・思考力としておきましょう。
知覚力は、見たり聞いたりするものを、注意深く受け止める能力です。
記憶力は、覚えこむ力・覚えている力・忘れたものを思い出す力で、観察力・
弁別力もこの中に入ります。
言語能力は、語彙力・表現力などです。
数能力は、数・量・図形・空間に関する能力です。
思考力は、推理力・構成力・判断力(洞察力・見通す能力)などを含みます。
思考力には、答えをいくつも考えられる拡散思考能力(創造的思考力)もあり
ます」
「ママ、生まれたらこんなふうに育ててね」 P224
 (家庭教育システム研究会 著 横山ふさ子 画 サンマーク出版 刊)
 
「画」とありますように、この本は漫画です。
サブタイトルが「赤ちゃんは親を選べません」と、何とも厳しいのです。
このタイトルに惹かれて買ったのですが、内容はわかりやすく、これからママ
になる方に推薦したい本の一冊です。
 
第2は徳力です。
これはいうまでもなく、社会性や協調性といった「集団生活への適応力」です。
集団生活は人との関わりの中で培われていくものですから、自主的に取り組む
姿勢や自身をコントロールする自己統制力が養われてきます。
家では許されることでも、集団生活では認められないことを、幼稚園や保育園
での生活を通して経験し、少しオーバーではありますが、「共生、共に生きる
こと」を学んでいるはずです。
グループ別に行われる行動観察系のテストや運動テストなどで、日常の生活環
境や体験が姿を現します。
過保護であればわがままに、過干渉であれば消極的な態度になりがちです。
 
また、一つの例として、ペーパーテストでも、指示されたことをきちんと守ら
ないと、大きなマイナス点になります。
「始め!」 と言われる前に始めてしまったり、「止め!」 と言われても止め
られなくては、人の言うことを聞く姿勢ができていないと判定されるでしょう。
規則や約束を守ることは、集団生活をスムーズに進めるために、欠くことので
きないルールです。
公開模擬テストを受けて、「社会性や協調性に問題あり」とチェックが入った
場合は、通っている幼稚園や保育園の先生に相談しましょう。
「少し、問題がありますね!」
といった返事があった場合は、「大いに問題あり!」と受け取り、お子さんを
取り巻く環境を、ご両親で見直す必要があります。
 
第3は体力です。
指示を理解し体で表現する理解力、機敏性や俊敏性を問う運動能力、どれだけ
頑張れるかといった持久力や耐久力などが判定されます。
もちろん、通学に必要な体力が培われているかも大切なポイントになります。
もやしっ子を鍛え直すために始めた暁星小学校のサッカーを持ち出すまでもな
く、現代っ子はスタミナ不足です。
都会から原っぱが姿を消し、車が子どもの足代わりとなっている生活が、スタ
ミナをつける源を奪っているようです。
 
スタミナ不足は、単に体力的な面だけではなく、持久力や耐久力を培う「頑張
る意欲」にも、大きな影響を与えていることを、もっと真剣に考えるべきでは
ないでしょうか。
集中力に欠け、すぐに飽きてしまうお子さんは、体力不足にも原因があるとも
言われています。
 
5分も歩かない内に「おんぶ!」と言うようでは心配です。
夏休みから秋の試験当日まで、大変なエネルギーを必要とします。
それをクリアしなければ、小学校の試験に挑戦できません。
ボールつきや縄跳びは、全身を使いますし、微妙なバランス感覚を養う運動で
す。
目標を立てて挑戦し、続けることで力がつく、「持続こそ力を育む」ことを、
体験を通して学習させるべきだと思います。
 
お子さんの運動能力をチェックし、問題があれば、お父さんの出番です。
      
第4は気力です。
まだ、実感はわかないかも知れませんが、5歳の秋を制する決め手は、「気力」
です。 
そして、これだけは、何十冊の問題集をこなすだけで身につくものではありま
せん。
本人の自覚です。
本人にやる気力がわかなければ、本当に頑張る力はつきません。
これは、ご両親の育児の姿勢と深い関わりがあります。
 
過保護や過干渉な環境で育てられていると、白百合学園小学校、立教女学院小
学校のようにペーパーの枚数が多く、限られた時間内に、ドンドンとやってい
かなければならない試験に、俊敏に対応できるはずはありません。
 
また、かつて慶應義塾幼稚舎が出題したようにイーゼルを立てて絵を描けとい
った、初めて経験することには、手が出ないでしょう。
 
成蹊小学校のように、反復運動を繰り返す運動テストに耐えられないと思いま
す。
 
私がいう気力とは、自分一人でやり遂げた体験、体験学習を豊富に積んでいく
ことから身についた「意欲」のことです。
ご両親が失敗を恐れずに、積極的にチャレンジさせ、自立心を身につけるよう
に心がけていれば、自ずと備わってくるものです。
ご両親は、叱ることが少なく、励ます言葉が多く、大らかな心を持っているは
ずです。
お子さんのお手本は、ご両親です。
そういったご両親であれば、お子さんもできないからと言い訳をすることもな
く頑張ります。
むやみに叱らないご両親からは、相手を思いやる心が育ちます。
誤解されては困りますが、「何事にも叱ってはいけない」と言っているのでは
ありません。
約束を守らない、嘘をついたときなどは、真剣に叱ります。
「叱るべきときは叱り、褒めるべきときは褒める」ご両親のことです。
 
自分でやり遂げた経験がたくさんあると、達成したときの快感を味わっていま
すから、何かに取り組もうとする意欲が育っています。
そして、いろいろなことを体験しているお子さんは、過去に出題された問題集
をやってみると、これと同じことを、普段、家庭や幼稚園で、一人遊びや仲間
遊びを通して、何らかの形でやっていることに気づくはずです。
 
幼児を対象にした試験は、大学などの入学試験とは違います。
誤解を恐れずにいえば、必要なのは、記憶だけに基づいた知識の量ではなく、
体験をふまえて培われた知恵の量だと思います。
 
すでに、公開模擬テストを受けられた方でしたら、ご存知のように、テストの
出題範囲は、ほとんどの場合、以下の10項目になっているはずです。
 
1.話の記憶  2.数量   3.常識   4.推理・思考  5.記憶力 
6.構成力   7.巧緻性  8.社会性  9.言語     10.運動
 
先にあげた4つの力を、ペーパーテストや行動観察、面接を通して、こういっ
た項目に分けて判定しているわけです。
小学校側も、この10項目内で判定していると思います。
まもなく発売される今年度の問題集をお買いになると、納得できるでしょう。
10項目については、12月頃から解説する予定です。
      
以上の4つの力に加え、慶應義塾幼稚舎、桐朋小学校、桐朋学園小学校などを
除き、ご両親には面接があるわけです。その学校を選んだ理由をきちんと話す
ことで、合否の判定が行われます。小学校の入学試験は、試験を受けるのはお
子さん自身ですが、「判定されるのはご両親の育児の姿勢である」といわれる
のは、こういった仕組みになっているからです。
 
最後に、東日本大震災は、電車通学する子ども達に大きな課題を与えました。
「災害時に対応できる気力と体力」です。
東日本大震災が起きた年、成蹊小学校の説明会で8時間かけて自宅にたどり着
いた1年生の子どもの話が紹介されましたが、親切な女性3名の保護があった
とはいえ、まさに、幼いなりに気力と体力を振り絞った体験談でした。今年の
暁星小学校の説明会では生徒全員の寝袋を用意している話や、慶應義塾幼稚舎
ではプールの水を飲料水に還元できる機器や自家発電装置を設置した話なども
ありました。
学校側も十分な対策を立てていると説明していますから、その点は学校にお任
せし、来年の学校選びには、登下校時に地震が起きた場合を想定して、それに
対処できる気力と体力を充実させる育児を心がけることも、学校選びの大切な
条件になるのではないでしょうか。
      
次回からは、実際に行われている入学試験についてお話しますが、城山三郎氏
の著作、「素直な戦士たち」ではありませんが、かなり、すごいことをやって
います。
しかし、きちんと段階を踏んで学習し理解していけば、そんなに心配するもの
ではありません。
そのためにも、まず、試験の形式から説明しましょう。
 (次回は、試験の形式についてお話ししましょう)
 
注 「素直な戦士たち」 城山三郎 著 新潮社 刊 昭和53年 発売 
内容は小学校の受験だけではありません。
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★なぜ、ペーパーテストを行わない学校が増えたのでしょうか

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第18号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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なぜ、ペーパーテストを行わない学校が増えたのでしょうか
 
平成4年の秋のことです。
当時、大手の幼児教室で、志望校別指導部門の慶應義塾幼稚舎を担当していま
した。試験を受けてきた子ども達が、こういったものです。
「先生、ペーパーは1枚だけでした」
事実、その年のペーパーテストは、「話の記憶」1枚だけでした。
 
同じ年の12月のことです。
今度は、お茶の水女子大学附属小学校の試験を受けてきた女の子が、
「先生、試験はありませんでした」
正しくは、「ペーパーテストはありませんでした」ですが、正直なところ、び
っくりさせられました。
受験塾で志望校を担当している者にとって、傾向を読めなかったのですから、
これほど恥ずかしい話はありません。名誉挽回とばかりに、その原因を探して
みました。
 
この年から、新しい学習指導要領が実施され、幼稚園の保育も「幼稚園教育要
領」によると、今までの一斉保育から自由保育となり、一人ひとりの個性を伸
ばしていく保育に変わりました。ですから、皆さんのお子さんが通っている幼
稚園は、自由保育になっているはずです。ここに注目してみると、おぼろげな
がら、ペーパーテストを廃止した理由の一端がわかってきたのです。
 
ご存知のように、自由保育といっても自由奔放、何でもありの保育ではありま
せん。一口にいえば、みんなで一斉に同じことを強制的にやるのは止め、自発
的に活動できるように導く保育のことです。例えば、知識や理解力を培うにも、
自分自身で考えたり、工夫する機会や経験をたくさん持たせたり、自分勝手な
考えではなく、客観的なものの見方や考え方を身につけるように指導する保育
のことです。
 
もっと簡単にいえば、一斉保育は他律の保育で、自由保育は自律の保育のこと
です。他律と自律の保育については、わかりやすい歌があります。前にも紹介
しました文部省唱歌の「雀の学校」(清水かつら 作詩 広田龍太郎 作曲)で
す。
 
    チイチイパッパ チイパッパ
    雀の学校の 先生は
    むちを振り振り チイパッパ
    チイチイパッパ チイパッパ
    生徒の雀は 輪になって
    お口をそろえて チイパッパ
    まだまだいけない チイパッパ
    もう一度一緒に チイパッパ
    チイチイパッパ チイパッパ
 
先生がムチを振りながら、「こっちを向きなさい!」とやるのが他律の保育で、
自由保育にはムチを持った先生はいません。以上の保育内容をふまえ、ここか
らは私の勝手な解釈ですから、深くお考えにならずに、読み流してください。
 
新指導要領の狙いは、偏差値教育の弊害など、今までの教育を見直すことでし
た。大胆にいえば、学習指導の基本的な考え方が、今までは、例えば、子ども
の知的な能力を判定する場合、持ち点を百として、「これもできない、あれも
ダメ、これもマイナス」といったように、点数を引いていく「減点方式」であ
ったわけですから、「ペーパーテストは減点方式」と考えるとわかりやすいと
思います。知力だけで能力を判定するわけですから、個性は出る幕もありませ
ん。皆さんが受けてきた教育が、これだったわけです。
 
新しい指導要領では、これを止めて、評価をする場合、持ち点ゼロから出発し、
「これができた、あれもできた、これもいいぞ」と点を積み重ね、合計で何点
取れたかと点数を加えていく「加点方式」になりましたが、行動観察型テスト
の採点は、この加点方式なのです。こう考えるとわかりやすいのではないでし
ょうか。
 
ペーパーテストは、取れた点数で子どもの限られた能力を評価します。行動観
察型のテストは、ある課題に取り組む子ども達の様子を観察し採点しますから、
プロセスを重視しながら、個々の能力を評価します。つまり、個性の尊重です。
 
さらに、こんな定義はありませんが、1+9=□は、答えは1つしかありませ
んから、全員で同じことに取り組む集中思考型保育、□+□=10は、答えが
10通りありますから、一人ひとりを育てていく拡散思考型保育ともいえるの
ではないでしょうか。
すると、小学校の入学試験は、
一斉保育(他律の集中思考型保育)→減点方式→ペーパーテストから、
自由保育(自律の拡散思考型保育)→加点方式→行動観察型テスト
に変わったといえると思います。
 
ペーパーテストを実施している学校も、制作や課題遊び、自由遊び、運動テス
トなどを通して、社会性や協調性を評価、採点し、バランスの取れた成長をし
ているかを判定しています。ですから、入試に必要な知識なるものを、記憶だ
けに頼って詰め込む知育偏重型の受験対策は、どこの学校からも歓迎されない
といえるわけです。
 
現在、国立附属校では、筑波大学附属小学校を除き、お茶の水女子大学附属小
学校、東京学芸大学附属竹早小学校等はペーパーテストをやっていません。私
立校では、慶應義塾幼稚舎、青山学院初等部、学習院初等科、成城学園初等学
校、桐朋学園小学校、川村小学校などもやっていません。
(平成25年10月現在)
 
おもしろいのは、以前は運動テストもなく、ペーパーテストしかやっていなか
った立教小学校が、今ではペーパーテストを廃止して行動観察型に切り替えて
いることです。校長先生は学校説明会で、文言は正確ではありませんが、「私
学がよい子を取り合った時期があったが、それは間違いでした」と指摘され、
翌年の説明会では、「取りっこではなく分けっこの時期に入った」とおっしゃ
っていました。
       
少し古くなりますが、学校側が「ペーパーテストを廃止した理由」を公表した
ことがあります。慶應義塾幼稚舎の舎長が、以前、こうおっしゃったのです。
これはわかりやすい話ですから紹介しておきましょう。
(舎長は校長のことで、東洋英和女学院小学部、青山学院初等部は部長、学習
院初等科は科長、国府台女子学院小学部は副学院長の名称となります)
 
 「受験という現象がある以上、その競争の社会の中で、人より抜きん出て勝
利を占めようと、どんどんエスカレートします。競争社会は、結果を争うわけ
です。だから、私たちは、結果を争うようなテストをしません。結果を点数に
直して、点数で序列をつけるような教育をしていない。点数で子どもの序列を
しないということは、ペーパーテストはしませんというのが、一番わかりやす
いということです」 (週間ポスト 平成6年4月3日号)
 
3月に辞任された加藤三明舎長は、昨年の説明会で幼稚舎の教育目標は、「他
人との競争ではなく自分との戦いである」とおっしゃっていました。
 
さらに注目したいのは、東京女学館小学校です。校長先生が代わった年から、
面接と推薦状だけで入学を決めるAO方式(アドミッションズ オフィス)を
始めました。20名からスタートし、現在40名になりましたが、やがてはす
べて、この方式に変えていきたいと話されました。もしも、これが実現すると、
「私学もやがて抽選で!」といった夢のような話になります。まあ、夢でしょ
うけれど。  
 「受験のために子ども達に大きな負担をかけたのは、塾や親の責任ではなく、
そういう環境を作った学校にある」と言い切った方です。その校長先生は代わ
られましたが、募集人員80名中、AO方式40名、一般入試40名で実施さ
れています。(平成25年10月現在) 子ども達のために頑張ってほしいと、
心から期待しています。残念ながら大学は、閉鎖されることになりました。
 
ところで、皆さんご存知のごとく、平成14年度から実施されていた学習指導
要領ですが、学習内容が削減された問題などを含め、早々と改訂されました。
しかし、すべてが悪かったわけではありません。「ゆとりの教育」を目指し、
私学の大きな特徴であった週五日制、英語教育も始まりました。少人数制にい
たっては、私立の小学校は都心の公立校にかなわなくなっているでしょう。こ
の状態を「公立校の逆襲が始まった」と、東洋英和女学院小学部の寺澤前部長
は説明会でおっしゃっていました。ですから、私学には脅威でもあったわけで
す。
 
事実、日本女子大学附属豊明小学校、立教女学院小学校、東洋英和女学院小学
部、青山学院初等部、成蹊小学校、昭和学院小学校、日出学園小学校、国府台
女子学院小学部など、最近の私立校の環境整備には、目を見張るものがありま
す。
 
また、桐朋小学校は1クラス24人、成蹊小学校では4年生まで1クラス28
人、日出小学校は2年生まで25、26人編成の少人数制を実施するなど、私
学ならではの対策が顕著になっているのも事実です。
 
創刊号でも紹介しましたが、昨年の慶應義塾横浜初等部、今年の4月には茨城
県取手市に江戸川学園取手小学校、そして来年の4月には神奈川県藤沢市に日
本大学藤沢小学校が、茨城県つくばみらい市には開智小学校が開校されます。
受験者が減る中で、なぜ新しく私学が創立されるのでしょうか。誤解を恐れず
に言えば、画一的な教育よりユニークな教育環境で、わが子を学ばせたいと希
望する保護者が増えているからではないでしょうか。
 
そこで問題になるのは、志望校の選び方です。
それは何かといえば、小学校選びは聖書の「始めに言葉ありき」ではありませ
んが、「始めにご家庭の教育方針ありき」であることです。これが「始めに名
門校の教育方針ありき」では、かつてバブル経済全盛期の頃、マスコミがお受
験騒動と指摘したように、「受験戦争の低年齢化」、「幼い子どもを受験戦士
に仕立ててよいのか」などと批判の対象になりかねないからです。本当は、こ
ういったことが起きること自体、異常なのですが、いわゆる「受験地獄」に陥
らないためには、ご両親でよく話し合いをし、受験に取り組むことが大切です。
前回お話ししたスケ―ジュールをもとに、慎重に計画を立て、「ゆっくり、じ
っくり、しっかり」と「3くり」で挑戦してほしいと願っています。
      (次回は、「小学校の入学試験の内容」についてお話しましょう)
 

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