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めぇでるコラム : 2016小学校受験 6ページ目

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★お子さんは、幼稚園(保育園)で、どのように評価されていますか。

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第17号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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最近の入学試験の傾向 
 
小学校の試験を目指す皆様方ですから、既に、ご承知と思いますが、最近の傾
向として、ペーパーテストを実施しない学校が増えてきたことです。
その経緯については、あとで詳しく紹介するとして、ここ数年間の出題傾向に
ついて、簡単に触れておきましょう。
 
ペーパーテストを行わない学校は、慶應義塾幼稚舎、青山学院初等部、学習院
初等科、立教小学校、桐朋学園小学校、川村小学校などで、いわゆる行動観察
型のテストを実施しています。
「ペーパーテストを行わずに、何がわかるのですか?」と、疑問視する方も大
勢いらっしゃるようです。
ところが、これがよくわかる仕掛けになっているのです。
仕掛けといっては失礼になるかもしれませんが、ある年の桐朋学園小学校の学
校説明会で、たまたま顔を出された校長先生が、面接についておもしろい話を
してくれたのでした。
 
「私どもが面接をしないのは、親御さんに『趣味は何ですか』とうかがっても、
本当は競輪や競馬が大好きでも『読書、音楽鑑賞です』とおっしゃるでしょう。
だから面接をしません。しかし、私どもでは二日間、お子さんを預かりますか
ら、どのような家庭環境で育てられているかわかるのです」
 
文言は正確ではありませんが、内容は間違いありません。
その通りではないでしょうか。
子ども達は演技ができませんから、育てられた環境を、そのまま正直に、試験
会場で見せることになります。
基本的な生活習慣やしつけ、言葉遣いから社会性や協調性といった集団への適
応力など、手に取るようにわかるのではないでしょうか。
ですから、「ペーパーテストがないから受験準備は楽だわ!」などと考えるの
は、とんでもない誤解で、行動観察型の試験は、ペーパーテストより難しいと
ころがあります。
なぜなら、先生方の言葉を聞き取り、理解し、考え、自分の言葉で表現したり、
絵を描いたり、行動する、それが行動観察型の試験だからです。
どういった準備が必要だとお考えでしょうか。
 
ペーパーテストを実施している学校は、暁星小学校、雙葉小学校、白百合学園
小学校、東洋英和女学院小学部、聖心女子学院初等科(一時期、ペーパーテス
トを止めていたのですが)、立教女学院小学校、光塩女子学院初等科、国府台
女子学院小学部などです。
このように学校名をあげてみると、何かお気づきのことはありませんか。
そうです、何とも不思議なことに、宗教教育を行っている学校が多いのです。
しかも、いずれも、いわゆる名門校ですから、試験問題の難易度は、高いこと
も共通しています。
なぜ、難しい問題が出題されるのでしょうか。
 
おそらく、過去問といわれている、以前に出題された問題を集めた本などを使
い、繰り返し問題を解くといった受験準備ではなく、基礎知識をきちんと身に
つけ、問題を解く力を備えてほしいと、学校側は考えているのではないでしょ
うか。
 
簡単に説明するのは難しいのですが、わかりやすい話だと思いますので紹介し
ましょう。
試験問題の中に、「四方図形」があります。
これは、テーブルの上に置かれた左手をあげた縫いぐるみを、前後左右から見
ると、どのように見えるかといった問題です。
この場合、四つの方向から見ることになりますから、四つの違った答えがある
わけです。
つまり、学校側は、答えは一つだけではなく、いろいろな方向、立場からもの
を見て判断する、そういった力を持つ子どもを求めているのではないでしょう
か。 
 
さらに、ここ数年、こういった問題がありました。
 
・雙葉小学校
お皿に入っているプラスチックの玩具の宝石20個ほどを、細かく分かれてい
る箱に、塗り箸でつまんで入れる。
 
・白百合学園小学校
プラスチック製の穴の空いた板に紐が通してあるお手本を見ながら、同じよう
に紐通しをする。
 
・暁星小学校
机の上に弁当箱、弁当箱のふた、弁当袋、箸、箸箱、箸箱のふた、校内着、半
袖のポロシャツ、ハンカチ、ティッシュ、本、靴下などがバラバラに置かれ、
それをファスナー付きのカバンの中にきれいに詰める。
 
靴を脱いで、机にある折り紙をとってきて、好きなものを折る。
(5個折らせた年もありましたし、少し力の必要な折り方が出題されたことも
あります)
 
・青山学院初等部
靴を脱いで手を洗いにいき、椅子をテーブル代わりにして、煎餅、クッキー、
お茶を自分で用意し、いただく。食べ終えたらゴミを分けて捨て、後片付けを
し、席で待つ。
 
・日本女子大学附属豊明小学校
いろいろなビーズの入ったトレーから、自分のお皿にできるだけ多くのビーズ
を塗り箸で移す。
細い紐にビーズを通して端を結びネックレスを作る。
クーピーで絵を濃淡に塗り分ける。
 
・東洋英和女学院小学部
机に置いてあるカゴの中から、弁当箱とハンカチをとってくる。次にテスター
が持っているカゴから、ピンポン玉2個と豆を箸で取り、弁当箱に入れる。そ
して、テスターの手本どおりにハンカチで箸と弁当箱を包み、指示された机に
置く。
 
・立教女学院小学校
塗り箸で、さいころの形をしたキューブを隣の紙のお皿に移す。
  
・千葉日本大学第一小学校
教室の後ろのテスターのところに並び、洋服をハンガーごと持ってくる。ハン
ガーから洋服を取り、着ている服の上からきる。ボタンを1つかける。ボタン
を外し、着た服を脱ぎ、ハンガーにかけテスターのところへ持って行く。
 
・早稲田実業学校初等部
靴を脱いでじゅうたんに上がり、お手本を見て封筒を作る。作り終えたら机の
中から雑巾を出して手を拭いたあと、机を拭き、たたんで机の中にしまう。
 
・田園調布雙葉小学校
持参した服に着替え、着ていた服を風呂敷で包む。
       
・横浜雙葉小学校
お友達と床に正座して、おしゃべりをせずに、持参した弁当を食べる。
   
・日出学園小学校
ふわふわボール6個を箸でつかみ、弁当箱に入れナフキンで包む。
 
学校側は、何を見ているか、おわかりいただけたと思います。
基本的な生活習慣が、きちんと身についているかを知りたいわけです。
基本的な生活習慣はしつけであり、それは、ご家庭の育児の姿勢でもあるわけ
です。
東洋英和女学院小学部の寺澤東彦前部長は、「しつけや言葉遣いは、生まれる
前に刷り込まれているわけではないから、強制的に教え込まなければならない」
とおっしゃっていますし、国府台女子学院の平田史郎学院長は、「訓練されて
いない個性は野性である」とさえいっています。
両校とも宗教教育を行う女子だけの学校です。
ご家庭の教育に何を求めているのでしょうか、受験準備のポイントは、ここに
あると思います。
つまり、知識だけ身についた偏った子どもではなく、知・徳・体の三つの能力
が、年令相応にバランスよく育った気力のある子を望んでいるのです。
 
ですから、小学校受験でもっとも大切なことは、就学前の子どもにふさわしい
基本的な生活習慣やしつけ、挨拶、言葉遣いなどを、きちんと身につけておく
ことなのです。
今からしっかりと計画を立てて、一つ一つ階段を上るように、地道な努力を積
み重ねていくことが求められています。
いわゆる、つけ焼刃などは、絶対にききません。
 
もう20年ほど前の話になりますが、バブル経済全盛期の頃で、私立志向が過
熱気味な状態にあったときでした。
あるミッション系の学校説明会で、校長先生は、こうおっしゃったものです。
 
「受験に必要な知識や礼儀作法なるものを泥縄式に詰め込んで、受験準備、事
足れりとお考えになるのは、間違いであることに気づいてほしい」
 
昔の話ですから文言は正確ではありませんが、内容は間違いありません。
このことではないでしょうか。
泥縄式とは、
「泥棒を見てから縄をなうことで、事が起こってからあわてて、その対策に手
をつけることをあざけていう言葉」
ですが、特に、幼児の受験の場合、泥縄式は、絶対に通用しません。
これからの毎日の生活の積み重ねが、来年の秋に実を結ぶことを、肝に銘じて
いただきたいのです。
 
(次回は、「なぜ、ペーパーテストを廃止する学校が増えたか」についてお話
しましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★受験までの1年間のスケジュール

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第16号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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受験までの1年間のスケジュール
 
「入試の準備は、いつ頃から始めるのがよいのでしょうか」
よく受ける質問です。
年少の11月から2年間かけて、無理なく進めていくのが理想ですが、皆さん
方は、来年の秋に受験されるわけですから、この1年間、どのような予定で進
めていくかを考えてみましょう。
 
ほとんどの幼児教室は、11月が新学期で、次年度受験の新年長クラスはここ
から第一歩が始まります。
11月から7月まで、基礎知識を身につける講座が続きます。
 
この月から、年長向けの公開模擬テストも始まります。
年中から準備をはじめているお子さんは、模擬テストを受けていますから、既
にご存じのことですが、結果表には、得点から総合順位、偏差値まで、ある時
期から、志望校への合否判定も添付されてきます。
結果表にある男女別の順位は、男子校、女子校を受ける際の判定の基準に、男
女の総合評価は、共学の学校の判定基準としても利用できます。
テストの内容は、2月頃から始まる「合否を判定する10項目」で、詳しく解
説する予定です。
また、幼児テスト特有の生活習慣や、躾、社会性などの判定もついてきます。
「意外に、内弁慶だった」などと、普段、皆さん方が気づかないお子さんの素
顔を見ることもできます。
これは、非常に大切なことですが、案外、軽く見られている傾向にあります。
チェックが入った場合、ご両親の責任と考え、お子さんを取り巻く環境を、真
剣に考えてあげましょう。
なぜなら、多くの場合、育児の姿勢に原因があるからです。
 
12月の後半には冬期講習会が、3月の後半には春期講習会があり、2月頃か
ら志望校別講座など、さまざまな目的を持った講座も始まります。
教室によっては、レベルの高い特別講座を設け、難関校への準備も始まります。
 
5月の後半から7月中旬にかけて、学校見学会や説明会が始まります。
できるだけ多くの説明会へ参加することをお薦めします。
ミッション系の学校に関心がなくても、ぜひ、一度は参加しておきたいもので
す。
宗教教育の目的が、わかるからです。
別学の学校はどうも、とお考えの方も、別学の学校を訪ねてみましょう。
共学にはないものを見つけることもできるからです。
雙葉小学校、学習院初等科、青山学院初等部、慶應義塾横浜初等部など、事前
に申し込む制度をとっている学校もありますから、受験を考えている小学校の
ホームページを、必ず見るようにしましょう。
 
授業参観をかねている場合は、とかく1年生の教室が注目の的になりがちです
が、上級生の教室もこの機会に参観してみましょう。
参加者も少なく、思ったより厳しい学習風景に出くわすこともあります。
 
説明会の日程は、各幼児教室で発表される一覧表を参考にし、うっかり忘れた
などのミスがないように、充分、注意しましょう。
学校によっては、説明会を1回しか開催しないところもあるからです。
学校見学会や運動会、文化祭などの行事に参加できるところもありますが、こ
ういった情報は、各学校のホームページに紹介されていますから、しっかりと
調べておきましょう。
面接で、説明会や行事に関して印象を尋ねられる場合もあります。
普段、入れない校舎に入り、子どもたちの遊ぶ様子から、意外な側面を見るこ
ともでき、学校選びの重要なポイントにもなります。
そして、トイレの場所も確認しておきたいものです。後で、役に立ちますから。
 
夏になると、ほとんどの幼稚園でお泊まり保育があると思います。
親のもとを離れて生活することで、どのくらい自立心が培われているかもわか
ります。
一人っ子の場合は、とかく、過保護、過干渉の環境となりがちです。
また、幼稚園や保育園の先生から保護者会の折りなどに、「少し、社会性に問
題があるようです」などといわれている場合は、日頃の育児の姿勢をチェック
する必要もあるでしょう。
 
7月の後半から、夏期講習会が始まります。
「夏を制するものは、秋を制する」といわれているほど大切な時期で、幼稚園
の休みを、いかに計画的に利用するかがポイントとなってきます。
基本的な生活習慣は、この時期までにきちんと身につけておくべきです。
かなりハードなスケジュールになりがちですから、旅行や里帰りなどは、お子
さんを中心に、計画しておきたいものです。
 
ご両親、特に、お父さん方の意識を高めるために、模擬面接指導も始まります。
この指導は、できるだけ早い時期に受けておくべきです。
「たかが、面接!」などと侮っていては、お父さんの面接で失敗します。
当研究所では、毎年、6月から始めています。
 
8月の後半から9月にかけて、直前講座が始まり、中断していた説明会も開始
され、願書も配布されます。
9月の後半から10月にかけて、願書の受け付けが始まります。
日程の関係で、出願してみないと併願が可能かどうかわからない場合がありま
す。
何校も出願する場合もあることを、頭に入れておいてください。
 
早いところでは、9月の中旬から面接が始まります。
そして、お子さんは直前の特別講習や個別の指導などを経て、ご両親は面接に
備えて心を一つにして、試験に臨むことになるわけです。
 
幼児教室や塾の選び方は、ご両親で研究されることです。
お母さん任せでは、手に負えません。
お父さんも一緒になって考えましょう。
そして、任せたからには、先生方のアドバイスに従い、家庭学習などもこなし
ていくべきで、幼児教室の掛け持ちはさけるべきです。
指導の方針に違いがあれば、迷ってしまうのはお子さん自身だからです。
 
公開模擬テストは、指導の結果をチェックできる大切な試験ですから、毎月1
回は受けるべきでしょう。
理解できていないところは、体験不足の結果と冷静に受けとめ、対応すること
が大切で、偏差値や順位に一喜一憂し、感情的にならないことです。
直前になれば、他の教室への他流試合も、本番になれるために必要ですが、あ
まり早くから挑戦するのは、お子さんにとっては、会場が変わるたびに緊張感
を強いられることになりがちですから、慎重な対応が求められます。
全統オープン等、小学校を会場とする模擬テストも上手に利用しましょう。
 
こういったスケジュールで1年間を過ごすことになります。
メールマガジンもこれに従って、ご両親で取り組むべきことを説明していきま
すが、最も大切な学校選びのポイントと願書の書き方、面接に関しては、当研
究所で発行しています「面接、ここがポイント 小学校編」と「面接克服、こ
こがポイント~That’s a Plenty」CD版を、志望理由についてのアドバイス
は、「おとうさん、おかあさんの受験対策 全20巻」で詳細に解説していま
すから、参考にしていただければ幸いです。
話の進め方として、面接と志望校選びについては、どうしても来年の8月以降
になりますので、ご両親の心の準備として、この2冊の本をお薦めいたします。
(次回は「最近の入試の傾向」についてお話しましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★手は第二の脳 (4)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第15号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★手は第二の脳 (4)★★
 
●模 写●
模写は、文字通り、お手本をまねて写すことです。図形と点図形の模写があり
ます。関西では、点図形を点結びともいいます。
 
図形の模写については後で詳しくお話ししますが、幼児にとって、非常に難し
く、また面倒な問題でもあり、今の段階で挑戦するのは酷なことですから、○
△□の描き方についてだけお話ししておきましょう。
 
〇△□といった図形の模写は、文字を書くときの基礎トレーニングです。
 
○は、下から時計まわりに描きましょう。上から左回りに描くのは数字のゼロ
です。
 
△は、頂点から左斜め下へ、そこから頂点に戻って右斜め下へ、最後に左から
右へ底辺を描きます。頂点から左斜め下へおり、いきなり右方向へ底辺を描き、
今度は左斜め上の頂点を目指すのは、大人の使う簡略法で、書写違反です。
 
□は、漢字の国がまえと同じです。左上から下におりて、そのまま戻らずに、
左回りで一周する子がいますが、これも書写違反です。  
 
今の段階で、○△□を正しく描けるようにしておきましょう。きちんと描ける
子は、文字もきれいに書けるようになります。文字には、筆順がありますから、
当然なのですが。           
 
点図形は、対称図形が多く、きれいですから楽しく取り組めます。簡単な問題
でも、きちんと線を引き仕上げましょう。面白いことに、性格までも姿を表し
ます。直線がよじれたり、点と点をつなぐときに脱線をしたり、通過すべき点
を外す子は、何をやっても雑になりがちです。スピードにこだわっているので
しょうが、描けていればいいのではありません。最初が大切で、ゆっくりと丁
寧に、時間をかけて、美しく描くことです。
 
そして、忘れられがちなことですが、姿勢が悪ければ線も乱れます。背筋をき
ちんと伸ばし、左手でペーパーを押さえてかく習慣をつけましょう。ローマの
哲学者キケロは、「習慣は第二の先生なり」といっています。「習慣は、いつ
しかその人の内部に深くしみこみ、生まれつきの性格のようになる」という意
味で、とても大切なことです。
何も偉そうに哲学者を引き合いに出すこともありませんが……(笑)。
 
点図形は、立体の模写ができれば卒業ですが、大人には簡単に思えても、子ど
もには難しい作業です。 どこから始めればよいのか、わからない問題もあり
ます。必ずしも点と点を結ぶとは限らずに、サードとショートの間を抜くヒッ
トのように、点と点の間を抜けていくのもあります。
これは、納得するのに時間がかかります。
「点と点を結ぶのに、何で抜かすのですか?」
こう思っている子がいますが、こだわるから仕掛けに気づき間違いません。で
すから、じっくりと取り組む根気が必要です。どこがどうなっているのか、試
行錯誤をさせた方が、後で効果が表れます。観察力と集中力、そして、持久力
や忍耐力も身につきます。 さらに、全体のバランス感覚を養うのにも役立ち
ます。なぜなら、隅から隅まで、全体をきちんと見なければならないからです。
絵を描くときにも、それが生きてきます。
 
ところで、頼りない線を引く子がいますが、鉛筆をしっかり持てていないから
で、おそらく箸の持ち方もおかしいでしょう。問題集をやる以前の問題で、こ
れを解決してから挑戦しましょう。
ただし、箸の持ち方は、食事の時に注意をしないことです。三度、三度、同じ
こといわれていては、気が滅入ります。文句をいわれているお子さんの気持ち
を察してあげましょう。キチンとした線が引けるようになれば、箸も正しく持
てるはずです。このトレーニングに取り組むのが、先ではないかと思います。
 
Bか2Bの鉛筆で、直線や曲線、円などをなぐり書きをさせると効果が表れま
す。これは、スピードをあげてもかまいません。なぜなら、速く書くには鉛筆
をしっかりと持たねばなりませんし、どの辺を持てばよいかもわかるからです。
力み過ぎはいけませんが、そのバランスも、やっている内にマスターできます。
そして、指や腕の筋肉を鍛えましょう。鉄棒、雲梯や登り棒、縄跳び、ボール
付き、ブランコ、シーソーなどで、楽しく遊びながら握力がつきます。このよ
うな、遊びを通した筋肉トレーニングも必要です。あえていえば、今日まで見
過ごしてきた、ご両親の責任ではないでしょうか。
 
13号で、箸を使った問題を紹介しましたが、ああいった問題があるからといっ
て、箸を使い、物を摘まむ訓練をするのは、試験がある以上仕方がないことで
すが、出題の意図を考えれば、基本的な生活習慣が身についているか、しつけ
はきちんとできているかといった、子どもの成長過程を見ることにあるのです
から、本末転倒なことをやっていることに気づいてほしいですね。
 
書道の先生が、箸を持ち、その内の1本を抜き取った時、筆を持つ形ができて
いれば、箸をきちんと持って食事をしていることになるとおっしゃっていまし
たが、お子さんはいかがでしょうか。ペーパーテストが始まると、先生方が一
斉に筆記用具の持ち方を見るのは、育児の姿勢を判定するためといわれるのも、
やはり根拠があるのです。
 
大切なことですから、あえて繰り返しますが、今年の6月に行われた立教女学
院小学校の学校説明会で、教頭先生は、憮然とした表情でこうおっしゃいまし
た。
 
  「あえてこの場で申し上げますが、テストの中で、箸を使う場面がありま
したら、箸で物を運ぶ速
さを競っているのではなく、正しい箸の持ち方ができているかを見ていること
をご理解いただきたい。テストの趣旨はそこにあります。日本の文化でもある
箸の持ち方を、きちんと身につけてほしいと考えています」
 
ここ数年、繰り返し同じ話をするということは、筆記用具のおかしな持ち方を
する子がいるということでしょうか。しかも、受験生は女の子です。お子さん
は大丈夫でしょか。箸をきちんと持てていれば、筆記用具も正しく持っている
ことになります。小学校の国語の授業は、正しい筆順で文字を書くことから始
まります。国語は、すべての教科の基礎、基本です。
 
なぜ、入学試験に、図形や点図形の模写があるか、お分かりいただけたのでは
ないでしょうか。
「たかが、○△□の書き方など」と侮っていると、お子さんは小学校のスター
トでつまずきかねないことをしっかりと考える、賢いお母さんになってほしい
ですね。
(次回は、「受験までの1年間のスケジュール」についてお話しいたしましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★手は第二の脳 3

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第14号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★手は第二の脳 3 ★★
 
●絵 画●
お絵描きは、歌や踊りと同様、子どもにとって大切な表現方法です。
子ども達はお絵描きが大好きですが、これも生まれ月、月齢差が表れますから、
このことを考えてあげなければ、発育状況にそぐわない要求をしがちで、子ど
も達には困ったことになります。             
                                       
まず、お子さんの絵の描き方を、思い出してみましょう。              
2歳頃は、点や線のなぐり書きでした。                    
3歳頃から、円や四角らしきものが表われて、ある日、突然、頭から手足がニ
ョキニョキ出ている絵を描き、やがて頭と体も分かれ、一応、人間らしくなり
ますが、手は電信柱のように、横に真っすぐ伸びたままで、年長になった頃か
ら手も下におり、やっと人間と認められる絵になったのではないでしょうか。
そして、必ずといっていいほど、お日さまが輝いています。
ここまで来るのに、4、5年かかる子もいますから、子ども達には大変な仕事
でもあるわけです。
しかも、絵を描く作業は、促成栽培的に腕をあげることはできません。
お子さんの生育史が、そのまま表れてくるのではないかと思います。
 
なぜ、小学校の入学試験に、絵を描かせる課題があるのでしょうか。             
ただ、単に、絵の巧拙を評価するためとは、考えにくいことです。                          
大人は、自分の考えを相手に伝えるのに言葉だけで足りますが、幼児は、それ
だけでは十分とはいえません。                   
言葉で足りなければ、体全身で表す身体表現も、大切なコミュニケーションの
手段ですが、絵も、その一つです。                              
自分の思っていることを、絵で表したいのです。                  
ですから、子どもは、絵の巧拙にこだわらずに、せっせと描きます。         
そばで見ていると、本当に楽しそうで、こういうときの子どもの目は輝いてい
ます。
以前、慶應義塾幼稚舎が、イーゼルを立てて絵を描かせたことがありました。
評価のポイントは、初めてのことに積極的に取り組む意欲や行動力だと考えま
したが、舎長は、ある雑誌のインタビューで「子どもの顔を見たかったから」
と答えていました。
                
第9号でも紹介しましたが、思い出してください。                 
絵は、子どもの感性が、そのまま表れるものだと思います。         
 
 【(環境+五感が受けた刺激)×好奇心×観察力÷そしゃく力=感性】   
       
また出てきました、おかしな式です。                      
しつこいようですが、感性とは、子ども自身が、与えられた環境の中で、自ら
の力で培ってきた、自前の能力だといいたいのです。
ですから、親の思惑で、絵についていろいろと注文をつけ始めると、面白くな
い絵になるのではないでしょうか。
それは、お子さんの自前の感性で描いた絵ではなく、第三者に教えこまれた絵
だからです。
 
受験のためのお絵描き教室も、その一つではないでしょうか。
絵を描かせる学校が増えていますから、その対策用のお絵描きです。
これも噂の一つで真偽の程は確かではありませんが、「テーマは秋」だとする
と、10人が10人とも枯葉の舞う絵を描き、しかも全員、申し合わせたよう
に葉っぱを黄色に描くそうです。
こんなことをしていると、子どもの感性は、おかしくならないでしょうか。
第一、子どもが落葉を見て、ホッとため息をついて、「人生、無常ですね!」
などと枯葉の舞う様子を描いているとは、考えられないことです。
秋であれば、子どもが楽しみにしていることは、たくさんあるのではないでし
ょうか。
お月見、遠足で出かけた芋掘り、ぶどう狩りや運動会など、楽しい思い出が残
っていれば描くはずです。
こういった噂は、本当に噂であってほしいものです。
 
自分の描きたいことを、自分流儀で描ければ、いいのではないでしょうか。
ウルトラマンと戦う怪獣が、ものすごい勢いで、真っ赤な炎を口から吐き出し
ている絵を見たことがあります。
画用紙全体を使って、迫力がありました。
子どもに聞くと、
「どんな武器を持っていても、ウルトラマンは、絶対に、負けないんだよ!」
と興奮気味に話していましたが、「これだ!」と思いました。    
何だかよくわからない怪獣でしたが、口から出る怪しげな炎の色といい、鋭い
つめの形といい、「あやうし、ウルトラマン!」の感じが、よく表れていまし
た。
その子は、ウルトラマンは天下無敵だと信じているから、こういう絵になった
のでしょう。
「ウルトラマンは絶対に負けない」と信じている子どもの気持ちが、素直に伝
わってきます。
 
画用紙全体を使って描いているのも、いいですね。 
左右の端っこに、細かくコチョコチョと、何やらわからないように描かれてい
るようでは、心配です。
しかも、色が黒や灰色などで、暗い感じのする絵では、お子さんの置かれてい
る環境を、早急にチェックする必要があると思います。
「絵は心の窓」ともいわれているように、子どもの感性は、鏡に映るように表
れるからです。
 
また、絵を描きたがらない子が増えていると聞きますが、絵を大人の思惑で評
価しているのではないでしょうか。           
そうだとすれば、かわいそうです。                     
子どもの描く絵に口を出さずに、のびのびと描かせてあげることが大切です。                    
もし、お父さんやお母さんが、絵を描くのを苦手としていたら、なおさらのこ
とです。
                                          
小学校側も、大人が考えるような、巧い絵を期待していないと思います。   
その子に育まれている感性をみたいのです。           
ですから、一つの話を聞いた後で、                    
「この話は、どのようになっていくと思いますか。それを絵に描いてみましょ
う」
といった問題に発展させ、子どもの頭の中をのぞきたいのです。
絵の巧拙だけを、見ているのではありません。
百人の受験生がいれば、百枚の違った絵が描かれるのではないかと思います。
逆を考えてみましょう。
もしも、百枚とも同じ絵だとしたら、マインドコントロールされているという
ことではないでしょうか。
これは、恐ろしいことです。
過保護、過干渉では、子どもの感性まで、コントロールすることにもなりかね
ません。
 
「個性を伸ばしてあげたい」とお考えなら、子どもの感性を磨ける環境を作っ
てあげましょう。
専門家の先生にお叱りを受けるかもしれませんが、子どもの描く絵は、写生で
はなくイメージ、想像力の集結されたものだと思います。
五感の触角を刺激してあげれば、感性は育まれるものです。
本を読んであげることからも、たくさんの刺激を与えることができます。
また、日本には、恵まれた自然があり、四季折々の自然の変化を、五感を通し
て、きちんと身体にしみ込ませておきましょう。 
絵を描くテクニックより、ものを観る心の眼を育てることです。          
小さい時こそ、本物に触れる機会をたくさん持つことが、大事ではないでしょ
うか。
そこから感性は育ってきます。
感性は、ご両親の作る環境で培われるものです。 
 
「お母さん、ぼく、絵描きさんになりたい!」
心の準備ができてからの絵画教室は、最高の教場になるはずです。
お断りしておきますが、「絵画教室が駄目だ」などと、そんなだいそれたこと
をいっているのではありません。
プロの先生方に叱り飛ばされます。
皆さん、お子さんの感性を大切にして指導されていますから、何ら心配ありま
せん。
心配なのは素人の方、特に、お母さん方が、お子さんの描く絵に注文をつける
ことです。 
繰り返しますが、感性はご両親の作る環境で培われるものです。         
いいづらいのですが、遺伝もあります……。
 
最後に、お願いしておきたいことがあります。
それは、描いた絵について、何を描いたか聞いてあげることです。
それらしく見えなくても、何を描きたかったのかわかりますから、そこを褒め
てあげましょう。
幼児が描いた絵は、その時点で、お子さん自身の最高作品であることを忘れな
いでください。 
(次回は、「鍛えてほしい第二の脳4」についてお話しましょう)                
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★手は第二の脳 2★★

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第13号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★手は第二の脳 2 ★★
 ●切る●
「切る」は、はさみの場合、ナイフのように押して切るのではなく、文字通り
チョッキン、チョッキンと音がするように、上下の刃をしっかりと開閉させて
切るようにします。
最初は、5センチほどの細長い紙を切らせ、はさみの操作をマスターしましょ
う。   
できるようになれば、はじめは直線からです。
これもスピードは、必要ありません。 
「かにの床屋」ではありませんが、あくまでもチョッキン、チョッキンです。
音がリズミカルになれば、曲線や円、三角、そして複雑な形に挑戦しましょう。
新聞に挟まれてくる広告やダイレクトメールには、上質紙を使い、デザインの
凝ったものがありますから、利用させてもらいましょう。
「ママが、後で使うから切り取っておいてください!」
お母さんのお手伝いだと聞けば、子ども達は頑張ります。
ただし、はさみは、操作を誤ると危険な道具になりますから、必ず、一緒にや
りましょう。
 
成蹊小学校や学習院初等科では、2本の線で囲まれた中心をはさみで切る問題
がありましたが、これは難しいですね。
きちんと操作できるようになってから、挑戦してみましょう。
 
そして、はさみを相手に渡す場合、どうすればよいかを教えてください。
後輩から聞いた話ですが、大卒の女性新入社員が、はさみを渡すときに、相手
に刃の方を向けているのに驚き、その訳を聞いたら、
「だって、私が刃の方を持つと危ないではないですか!」
といったそうで、ここまで自己中になれるものかと、あきれていました。
躾やマナーは、小さい時から身につけさせるべきで、これは家庭の文化だと思
いますが、いかがでしょうか。
 
 ●貼る●
次は、「貼る」です。
貼るは、現代っ子の苦手とする作業の一つでしょうが、そうならざるを得ない
でしょう。
家で糊を使っているでしょうか、主役はセロテープでしょうね。
リップスティック型の糊は、あるかもしれませんが、少しつけただけでピタリ
と貼れますから、幼児用の糊とは、接着力も使い方も違います。
 
幼児の使う「つぼ型の容器」に入った糊には、いろいろと教育的な配慮がなさ
れています。
ふたを開けることを考えてみましょう。
右利きの子なら、左手に糊の入った容器を持ち、右手でふたについている取っ
手を持ち上げ開けます。
両手を使っていますから、目も手元の作業を監視しています。 
司令塔からの命令です。
 
次に、使う量ですが、これが難しいですね。
適量を取れるようになるには、ある程度の経験をつまなければなりません。
貼る面積を計算し、分量を計りで量るわけではなく、目分量、勘です。
分量を間違うと、多ければベタベタに、少なければ直ぐにはがれます。
数を見極める直感と同じです。
 
まだ、あります、糊のつけ方です。
左手で糊をつける紙をしっかりと押さえ、右手人差し指は、表面全体に、のり
が滞りなく行き渡るよう、ノビロ、ノビロとつけていきます。
これは練習が必要ですし、根気がいります。
このことです……。
根気のいる作業を丁寧に続けることで、持久力や忍耐力も培われてきます。
 
ところで、作業に時間がかかるお子さんや、器用ではないお子さんに、いって
ほしくない言葉があります。
「ハヤク シナサイ!」、この一言です。
子ども達が、お母さんからいわれたくない嫌な言葉の第一位は、これです。
子ども自身は、一所懸命にやっているにもかかわらず、うまくできないからで
す。
苦戦している時に、せかされるのですからあせります。
あせるとプレッシャーがかかり、うまくできません。
こんなことが続くと、やがて、苦手意識を持ちはじめ、手作業を嫌がるように
なります。
第二の脳の発達は、これで止まります。
お子さんにとって大変な損失であることを、肝に銘じて下さい。
 
お子さんには、大雑把に分けると「ウサギ型」と「カメ型」があります。
「ウサギ型」は、器用に物事をこなしますが、根気に欠けます。
「カメ型」は、作業の一つ一つを納得しながら取り組みますから、時間はかか
りますが、根気があります。
「ウサギ型」は、小学校の低学年までは光り輝いています。
「カメ型」は、中学年頃から光りはじめ、やがて、立場は逆転します。
「カメ型」は、試行錯誤を繰り返していますから、じっくりと考える習慣が身
についてくるからです。
カメ型のお子さんは、せかさないことです。
ウサギ型のお子さんには、「うちの子、頭がいいわ!」で安心せずに、考えさ
せる工夫をしましょう。
ところで、イソップ物語にある「ウサギとかめ」の話、明治時代の教科書では、
どのようなタイトルがついていたと思いますか。
「油断大敵」です。           
明治時代の漢字文化が生きていますね。(脱帽)
 
「面倒だな。お母さんのを借りよう!」
楽をしようとしていますが、これだから不器用になるのでしょう。
はっきりといわなくても、これは手抜きです。
「手が汚れるから、セロハンテープにしようかな!」
こういった発想は、いただけませんし、この場合の「かな!」は、子どもらし
くありませんね。   
 
最後は、事後処理です。
手を拭き、糊の容れ物にふたをして、終わりです。
糊で汚れた手を拭く作業までも含まれていますが、「汚れたらきれいにする」
は、幼児にとって清潔感を身につける、大切な、大切な学習です。
手の汚れないのが気に入らない理由は、これです。    
        
このように、糊を使う一連の手作業には、深い教育的な配慮がなされているこ
とが、おわかりいただけたのではないでしょうか。
ですから、だじゃれのようですが、使わない手はありません。
こういった手順を踏んだ作業は、子どもの成長に欠かせない大切な経験です。
手順は記憶され、作業に流れのあることがわかり、やがて、手際よく進める工
夫をする、基本的な訓練になっているのです。
使いやすく、便利になるのは結構ですが、子どもの発育段階を考え、今は面倒
でも、糊を使うべきだといった見識を持つのも、親の役目ではないでしょうか。
 
また、糊を使うのを嫌がる子は、泥んこ遊びをやらせていないと思います。
砂場で遊べない子は、糊を使うのを嫌がるはずです。
お子さんは、いかがですか。
 
最後に貼る練習ですが、切るところで紹介しました新聞に入ってくる広告など
切り取ったものを、スケッチブックに貼ってみましょう。
初めは少量の糊で貼れる面積の狭いものを選び、中心に糊をつけ、ノビロ、ノ
ビロと満遍なく伸ばす練習をすることです。
同じ大きさのものを扱うことで、適量をとるこつもわかってきます。
そして、次第に大きなものへといった段階を踏むことが大切です。
 
最後に、セロテープについて、気にかかることをお話ししておきましょう。
なかなか適切な長さに切れないものです。
これも難しい作業ですから、少し無駄になりますが、2,3センチの長さに切
れるように練習することです。
練習しなければ、何ごともうまくなりません。
うまくできない時は、切り取るぎざぎざの部分にセロテープを固定させ、右端
から少し斜め下へ引っ張るように切ってみましょう。
慣れてくれば、必要な数だけ切り、テーブルの端などに軽く貼っておくと、
「切る」と「貼る」の作業が、スムーズにできます。
 
 ●結ぶ●
「ひも」もそうですね。
昔は、寝巻でしたから、毎日、ひもと付き合っていました。
結ばなければ、格好がつきません。
パジャマはボタンですが、ボタンかけにも苦労している子、いますね。
お母さんが、いつまでも手を貸しているからではないでしょうか。
お子さんにさせましょう。
過保護からは、自立心は育ちません。
 
箱にひもをかけて、結び方を練習しておきましょう。
あやとりもいいですね。
巧緻性ばかりか記憶力も刺激されます。
複雑な作品になると、手順を忘れるとどうにもなりません。
ところが不思議なもので、遊びとなるとかなり複雑なものでも、積極的に練習
をし、覚えてしまうものです。                     
おばあちゃんに教わったといって、三段梯子をこしらえたお子さんがいました
が、お子さんが、どのような環境で育てられているかわかりますね。
お母さんが作って見せ、お子さんに好奇心を持たせることです。
「ママ、すごい!」と間違いなく賞賛され、お子さんの知的な能力も開発され
ます。
一石二鳥ではありませんか(笑)。
 
 ●摘む(つまむ)●
 「箸を使った問題」
 
 :お椀の中のものを、別のお椀に箸を使って、一つずつ移してください。
 
これが試験です。
立教女学院小学校や白百合学園小学校などで出題されています。
豆を買ってきて、割り箸を使い、懸命に練習する話を聞きますが、何かおかし
くないでしょうか。
これは練習をして身につけるものではなく、身体の運動機能的な発達にかかわ
ることですし、基本的な生活習慣の一つですから、しつけと関係あります。
一応の目安として、箸は3歳頃から使えるようになり、5歳頃には巧みに使え
るようになるといわれています。
練習用の工夫された箸がありますから、もっと早く使えるようになっているか
もしれません。
問題集を読むと、箸でカラーボールや玩具のミニチュアの果物、大豆、ビー玉、
落花生、金平糖を摘む(つまむ)、積み木をハンカチで包むなどの課題がありま
す。
なぜ、学校側がこんな試験をするのでしょうか。
手先の器用な子は頭もいいから、箸を持たせて選抜しようとは、考えにくいこ
とです。
しかし、箸を満足に持てない子が多いからとすれば、これこそ問題です。
園児がペーパーテストに強くても、箸を使って食事をできない方が、よほど恐
ろしい話ではありませんか。
こんなことまで試験で調べるのは、幼き戦士たちは、頭が良くても、こういっ
たことが苦手なのでしょうか。
誤解を招いてはいけませんから、今年6月に行われた立教女学院小学校の学校
説明会での教頭先生の話を紹介しておきましょう。
 
  あえてこの場で申し上げますが、テストの中でお箸を使う場面がありまし
  たら、お箸で物を運ぶ速さを競っているのではなく、正しい箸の持ち方が
  できているかを見ていることをご理解いただきたい。テストの主旨はそこ
  にあります。日本の文化でもある箸の持ち方を、きちんと身につけてほし
  いと考えています。
 
第3号でも、「正しい箸の持ち方の写真を2カット使用した説明があった」と
紹介しましたが、それほど箸の持ち方のおかしな女の子がいるのかなと首をか
しげたくなりましたが、お子さんはいかがでしょうか。
 
五感に刺激を与え、脳を鍛えましょう。
言葉は使わなければ進歩しないと同様、手作業もやらなくてはうまくできません。
しかも、この二つの能力は、ご家庭で楽しみながらできることです。
 
お母さん方が、もっとも得意とする料理、レシピを見ながら作るでしょうか。
素材選びから料理の手順、味付けまで、きちんと頭に入っているはずです。
司令塔の脳と実戦部隊の手との共同作業がスムーズに行われるのは、積み重ねた
経験が、頭脳にしっかりと記憶され、手が指示通りに反応しているからです。
 
失敗を恐れず、試行錯誤を繰り返しながら挑戦することで、第二の脳は鍛えられ
ます。
鍛えられると同時に、自力でできるようになることで、自立心が育まれます。
「手は第二の脳」といわれるのは、こういった仕組みになっているからです。
家庭でやらないとは、もったいない話ではないでしょうか。
 
以上が、ご家庭でやってほしい基礎トレーニングです。
しかし、手作業は、月齢差が無残なほど表れますから、その点をきちんと判断し
ながら、あせらずに頑張ってください。
これまでのトレーニングだけでも、脳の活性化はかなり進み、お子さん自身、物
を作ることに興味を持ち始めてはいないでしょうか。
物を作る楽しさを体験させる、絶好のチャンスです。
市販されている幼児用の制作、折り紙、お絵描きなどの本を参考に、お子さんと
一緒に取り組みましょう。
季節折々の年中行事も、格好の教材になります。
門松、鬼の面、ひな人形、かぶと、紫陽花、朝顔、七夕飾りなどを作り、楽しい
思い出をたくさん残してあげましょう。
その思い出から、独特の家庭の文化が間違いなく築かれていくのです。
 
ところで、私のお勧めしたい手作業は折り紙で、お金をかけずに、これほど楽し
める遊びはありません。
といっても、後期高齢者になった私は、ぼけ防止のためにやっているのですが(笑)。
 
(次回は、「鍛えてほしい第二の脳3」についてお話しましょう。

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★手は第二の脳 1★★

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第12号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★手は第二の脳 1★★
ペーパーテストの対策は、ご家庭でも問題集などを使い、充分すぎるくらい行
われているようですが、ものを作る作業、制作やモールにおはじきを通す、糸
を結ぶ、箸を使うといった手作業の問題に関しては、教室や塾の指導にお任せ
の場合が多いのではないでしょうか。
いわゆる、巧緻性の問題です。
辞書を引くと、「きめこまかく上手にできていること」となっています。
聞き慣れない言葉ですが、小学校の入学試験では、きちんとやっておかなけれ
ばならない重要な項目の一つです。
 
「塗る、折る、切る、貼る、結ぶ、摘む」などの手作業の他に、制作や絵を描
く、手本と同じものを描く模写の問題があります。    
手作業からは、手伝ってもらわずに自分で思っているようにできることから自
立の状態が、筆記用具の持ち方からは、基本的な生活習慣やしつけ、制作やお
絵描きからは、身体表現と同様に、幼児が自分の考えを表す大切な方法、手段
ですから情緒の発達状況が、模写からは、観察力、模写力、集中力が判定でき
るので、出題されるわけです。
     
こういった作業は、子どもの発育段階と密接な関係があり、その年令にふさわ
しい経験を積んで身につくもので、手を抜くとできません。
学校側は、年令にふさわしい経験を積んでいるかを見たいのです。
 
さらに、もう一押ししておきましょう。
なぜ、筆記用具の持ち方から基本的な生活習慣やしつけがわかるのでしょうか。
それは、食事をするように箸を持ち、一本抜くと、正しい筆記用具の持ち方に
なっているからです。
妙なボールペンの持ち方で字を書いている若者がいますが、小学校の勉強が始
まる前に、身についてしまう場合が多いようです。
「名は体を表す」ともいいますが、字もそうではないでしょうか。
メールでわからなくても、書いた字を見れば一目瞭然です。
就職するときにあわてても間に合いません。
「たかが筆記用具の持ち方」などと思う前に、お子さんのための大切なしつけ
と考え取り組みましょう。
巧緻性の問題が、「ご両親の育児の姿勢を評価している」といわれる理由は、
ここにあるからです。
年中から年長にかけて、たいへん重要なことですから、4回に分けてお話しま
しょう。
ただし、巧緻性は、子どもの発育状態と密接な関係がありますから、お子さん
の月齢を十分に考慮しながらお読みください。
         
◆基礎作業編◆
 ●塗る●
まず、「塗る」から考えてみましょう。
簡単なようですが、子ども達は、大変な作業をやっているのです。
たとえば、クレヨンで、円の中をはみ出さないように塗ることを考えてみまし
ょう。
まず、左手で紙を押さえます。
そして、右手でクレヨンを持ち、はみ出さないように注意しながら、できるだ
け丁寧に、白い部分が残らないように、まんべんなく塗ります。
この一連の作業を、試験の場合を想定し分析してみましょう。
 
まず、最初に、先生の模範演技を見て、頭脳の司令塔にある何とかいう神経に、
目と耳から情報がインプットされます。
説明終了と同時に、きちんと理解した脳から指示が出ます。
 
 「右手で赤のクレヨンを持って、左手は、画用紙が動かないように、しっか
 りガードしなさい。
 まず、黒く印刷されている円の内側を、円に沿って、はみ出さないように描
 きなさい。 
 次に左から右へ塗る反復作業を根気よくやりなさい。
 左上の方、少し塗りが足りません、至急、補足しなさい。
 残り時間は、あと30秒程です。
 スピードを上げなさい」
 
目は手元を、指示どおりにやっているか見ています、監視カメラですね。
リアルタイムで、次々と正確な報告が届きます。
それに従い、即座に指示が出ます。
話を聞き取る力が備わっていないと、こうはいきません。
きっちりとした指示が出ないことには、手の方も、動きません。
このことです……。
 
手先の器用な子の知的な能力は高いといわれています。
それは、持って生まれたものではないと思います。
頭も使わなければ、よくなりません。
試行錯誤を繰り返すことで手順を覚え、その度に司令塔から指示が出、手先も
それに応えて頑張ります。
記憶する力がつき、手先も器用になるのです。
いってみれば、頭と目と耳と手の合同訓練ですね。
 
これがバラバラでは、おかしなことになります。
目がきちんと見ていないと、状況がわかりません。
耳がしっかりと聞いていないと、指示されていることが理解できません。
わからない状態ですから、脳からの指示も、不正確になります。
この意味不明、「……わかりません」の状態で作業が始まると、どうなるでし
ょうか。
色を塗れば線からはみ出します。
折り紙を折れば、グチャグチャに折ります。
はさみで切れば、ギザギザだらけです。
糊を使えば、量を無視してベタベタに貼ります。
紐を結べば、ユルユルです。
 
こうなるでしょうね、合同練習不足です。
最近、こういう子が増えているそうです。
この責任の一端は、ご家庭の教育にありではないでしょうか。
過去問などを買い求めて知的なトレーニングは、積極的になさっているようで
すが、こういったことこそ、ご家庭で時間をかけ、ゆっくりと、じっくりとや
ってほしいのです。
お子さんと一緒にやりましょう、簡単にできますから。
それに、問題集を使っての勉強と違い、腹を立てないで済みます。
 
たとえば、色塗りです。
5センチの正方形を縦、横4個ずつ作って、色を塗らせましょう。
色を決めて、斜めに塗ると、きれいな模様ができます。
最初は、この程度から始めて、ます目を増やしてあげましょう。
後で出てくる系列完成の学習にもなります。
・・・・・・・・・・・・・
・ 赤 ・ 緑 ・ 青 ・ 赤 ・
・・・・・・・・・・・・・
・ 緑 ・ 赤 ・ 緑 ・ 青 ・
・・・・・・・・・・・・・
・ 青 ・ 緑 ・ 赤 ・ 緑 ・
・・・・・・・・・・・・・
・ 赤 ・ 青 ・ 緑 ・ 赤 ・
・・・・・・・・・・・・・
こういった遊びから、脳も手先も鍛えられ、美醜の感覚も育ってきます。
塗り絵の苦手な男の子は、こういった遊びをしていないのではないでしょうか。
大人には何でもないことが、幼児にはとてつもなく難しいということがたくさ
んあります。
何事もそうですが、基本的な作業をおろそかにしないことです。
 
塗る問題でも難しいものがあります。
 
★鉛筆を使い、一番目の四角を最も濃く塗り、二番目は少し薄く、三番目はそ
れより薄く塗りなさい。
 
日本女子大学附属豊明小学校で、よく出題されています。
今の段階では、まだ難しいですが、こういった問題もあることを覚えておきま
しょう。
 
●折る● 
「折る」は、折り紙の登場です。
これから折り紙には、いろいろな領域でお世話になりますから、常備しておき
ましょう。
折ってみるとわかりますが、メーカーにより色が微妙に違い、厚さにも変化が
あり、硬いもの、柔らかいものがあります。
柔らかいものだけ使っていると、硬いものは折りにくくなります。
最初は柔らかいものを使い、うまく折れるようになれば硬いものも使ってみま
しょう。
 
折り紙は、楽しいものです。
何しろ、1枚の紙から、立体作品ができるのですから、すぐれものです。
簡単なものから始めましょう。
 
大切なのは、最初の一折りで、ここを、キチンと押さえましょう。 
スピードは、必要ありません。
丁寧に、しっかりと折ることが大切で、一つ一つの作業は、まさに巧緻性その
ものです。  
さらに、折り紙は、手順を忘れると完成しませんから、記憶力もつき、一石二
鳥の効果を期待できます。
基本は、折り紙の角をきちんと揃えて半分に折り、長四角と三角を作ることで
す。
 
正確にきれいに折るには、指先の力も鍛えなければなりません。
うまく折れない場合には、紙をちぎりましょう。
新聞紙で十分です。
最初はうまくちぎれなくても心配ありません。
きちんとちぎれるようになるには、いろいろと工夫する必要があります。
これは、とても大切なことで、教える前に挑戦させてください。
 
「子どもが、考え、工夫する前に、教え込んでしまう」のは、決していいこと
ではありません。
育児が過保護や過干渉のタイプのお母さん方は、とかく教えがちですが、まず、
子どもにさせることです。
 
うまくちぎれるようになるには、工夫が必要です。
工夫してできるようになれば、やる意欲も育ちます。
できたことから達成感を味わえるからです。
大人から見れば「何だ!」と思えることが、子どもにはすばらしい発見でもあ
るのです。
ちぎった紙を使って、1つに丸めた後折り紙などで包み、ボールを作ってみま
しょう。
はさみを使わずに、紙をちぎってものを作るテストもあることも覚えておいて
ください。
 
また、機会があれば、お母さんが折ったものを広げて、どういった線ができて
いるか見せてあげましょう。
あまりにもきれいな幾何学的な模様に、きっと驚くと思います。
左右、上下が対称になっているなどと難しい説明はいりませんが、やがて挑戦
しなければならない対称図形の学習に役に立ちます。
 
以前、暁星小学校では、少し工夫しないと難しいと思える折り方をさせました。
日本女子大学附属豊明小学校では、座布団に正座をして折り紙をしたこともあ
りました。
 
ところで、私には信じがたい話ですが、鶴を折れないお母さんがいるようです。 
お子さんは、さみしがりませんか。
お子さんばかりに要求せず、練習し、お子さんの期待を裏切らないようにして
ください。
 (次回は「手は第二の脳2」についてお話しましょう)

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★ご家庭で楽しくできる受験準備 養ってほしい数感覚 2

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第11号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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ご家庭で楽しくできる受験準備
★★養ってほしい数感覚 2 ★★
 
[アバウトから正確に] 
さて、何回も続けていく内に、お子さんは、たとえば10と5では、10の方
が多いとわかると、今度は数字で多少の判定をはじめます。
そこまでわかってきましたら、「では、いくつ違いますかゲーム」に切り替え
ましょう。
ゲームのやり方は、同じです。
  
最初は、同じマークから始めましょう。
1枚ずつカードをめくり、お子さんが8、お母さんは3が出たとします。
お子さんは、「ぼくの勝ち!」と宣言して、その違いを調べます。
この場合も、[8-3=5]ではなく、数の少ない方のカード[3]を覚え、
数の多い[8]のカードのマークを3個、指で押さえて隠します。
そして残ったマークを数え、「ぼくの方が5個多い」と、必ず、言葉で判定結
果を言うようにします。
 
今度は、お子さんのカードが4、お母さんのカードが7で、お母さんが勝った
場合も、 「ぼくの負け!」とお子さんに宣言をさせ、お母さんのカード[7]
を使い、4個を指で押さえ、残ったマークを数えて、「ぼくの方が3個少ない」
とお子さんに判定させ、結果を言うようにします。
お母さんは、一切、言葉をはさむ必要はありません。
正解の場合は「ピン、ポン!」、間違った場合は「ブッ、ブー!」と警告する
程度にし、ゲームの進行は、お子さんに任せます。
このゲームは、正確に「いくつ違うか」を判定するものですから、スピードは
必要ありません。 
先程も触れましたが、[10と9]、[8と7と6]のカードでは、マークの
配列が[4と3]の違いに気づけば、どこをどう押さえて隠せばよいかもわか
り、真ん中のマークの数だけで判定できるようになると、自然とスピードアッ
プしますが、答えは、必ず、口頭でキチンといえるようにします。
4種類のカードをまぜてやるのは大変ですから、2種類、10回戦で十分です
が、お子さんが希望する場合は挑戦してみましょう。
 
これができるようになれば、次に同じマークのカードを4枚並べ、「一番多い
ものと少ないもの」を見分けるゲームをやってみましょう。
指でさして、答えさせます。
これも直感で判定させたいのですが、ここまで、かなりゲームの量をこなした
ことになりますから、数字とマークの数の関係で、わかるお子さんも出てくる
でしょう。
 
例えば、[5、3、7、9]のカードが、並んだとします。
「9が一番多くて、3が一番少ない」
と、数字でいえるようになれば、もう、カードでのゲームは、卒業してもいい
でしょう。
 
ところで、数字は抽象的ですから、数詞がつかなければ、幼児には具体的な数
は、わかりにくいものです。
[1]といってわからないことでも、「りんごが1個」となると、頭にりんご
が1個浮かび、具体的な数を把握できるわけです。
トランプは、5のカードであれば、数字の5とマークが5個ありますから、抽
象的な数字をマーク5個で具体的に表しています。
小学校の入試では、数字を使いません。
ですから、1は○が1個、2は○が2個、10は○が10個であることが理解
できれば、十分なのです。
数の多少がわかれば、トランプでのゲームを卒業し、数字のない遊びへ進みま
す。
しかし、お子さんがゲームを面白がるようでしたら、楽しみながら続けてあげ
ましょう。
 
ここまで進むと、数字を書きたいお子さんも出てくるでしょう。
その場合、[0・5・7・8・9]の書き順を、きちんと教えてください。
自己流で覚えてしまうと、直すことになりますから、小学生になってから苦労
します。
そして、数字を覚えても、問題集や模擬テストなどでは、「絶対に数字を使っ
て答えてはいけない」と約束しましょう。
答が合っていても、得点にはならないからです。
当然のことですが、入学試験で数字を使って答えては、絶対に合格しません。
設問のどこにも、数字で答えなさいとの指示はないからです。
新しいことを覚えると、つい、使いたくなるものです。
ここで、きちんと押さえておきましょう。
 
次の遊びは、お母さんが教材を作ります。
トランプより少し大きい長四角のカードを20枚(1から10まで各2枚ずつ)
作り、ハートやスペードの代わりに●で表します。
トランプに慣れていますから、最初はマークと同じ配置にしましょう。
慣れてきたら、市販されている問題集などを参考に、オリジナルカードを作っ
てあげましょう。
市販されているシールを貼って作ると、きれいなカードができます。
 
最初のゲームは、直感で見分けた「多少の違い」をやってみましょう。
今度は数字がありませんから、直感が頼りです。
きちんと見分けられれば、「いくつ違うか」のゲームに挑戦しましょう。
今度は、トランプより大きいですから、答えも出しやすいと思います。
 
それもできるようになれば、4枚並べ、直感で「一番多いものと、一番少ない
もの」を当てるゲームに進みますが、お母さんが意図的にカードの配置をした
方がいいと思います。
[1・2・3・4][1・10・5・8]のように、[1と10]が入ったも
のばかりでは、緊張感に欠けるからです。カードをうまくアレンジしてあげま
しょう。
市販されている「数量の問題集」などを参考にされるのもいいですが、難易度
を考えて選んでください。
 
慣れてきましたら、「二番目に多いものと、二番目に少ないもの」に挑戦して
みましょう。
やり方は「一番多いものを見つけ、それより少ないものが二番目」になり、
「一番少ないものを見つけ、それより多いものが二番目に少ないもの」になり
ます。
最初は戸惑うかもしれませんが、あくまでもゲーム感覚で、楽しみながらやっ
てください。
 
幼児の場合は、何事においても誕生日、生まれ月を考慮する必要があります。
衣服の着脱、歯磨き洗顔などの基本的な生活習慣はもちろんのこと、こういっ
た遊びを通した知的なトレーニングにも、十分に注意してほしいと思います。
「隣のケンちゃんができるのに、なぜ、うちの子はできないのかしら」
と思う前に、必ず、生まれ月を考えましょう。
早生まれのお子さんには、無理をしないように気をつけてください。
「できなくても、できるまで待ってあげる」、この気持ちが大切です。
 
お子さんのおむつを外すとき、お母さん方はどうしましたか。
粗相をしても、叱り飛ばさなかったはずです。
その心は、「まだ、できないから待ってあげる」であり、その心は「今に、必
ずできる」ではなかったでしょうか。
待ってくれたから、お子さんは期待に応えたのです。
 
知的な能力の開発も、同じです。
いや、知的なことだけに慎重な対応が必要なのです。
できなくても、あせる必要はありません。
幼児は、体験を積んでいないからできない場合が多く、決して能力だけに問題
があるわけではありません。
いろいろと体験させ、待ってあげましょう。
待ってあげるお母さんのやさしい心が、必ず、できるように導くからです。
待ってあげるやさしい思いやりから、頑張る意欲は育ってきます。
お子さんの成長した姿を見て、自信を持ちましょう。
 
こういった遊びで、十分に数感を養ってから、○を使った数の多少、和(合わ
せていくつ)、差(いくつ違うか)、対応(いくつ必要か)、分割(分けると
いくつ)といった問題に進むのが、幼児にふさわしい算数の学習であることを、
ご理解いただけたのではないでしょうか。
ゆっくり、じっくり、しっかりと、ゲーム感覚で楽しんでください。
 
最後に、トランプの絵札は、普通、11はJ、12はQ、13はKとアルファ
ベットで表されています。
Kはキングで王さま、Qはクイーンで王女さまの頭文字であることはわかりま
すが、Jは何を表しているのでしょうか。
これは、「ジャック」という名前の頭文字からとったものだそうです。
ジャックとは、イギリスではありふれた名前の代名詞で、日本では「太郎」に
あたると考えればわかりやすいでしょう。
よくある名前を付けることで、名もない一兵士を象徴させているそうです。
騎士道の精神ではないでしょうか。
そういえば、中学一年で習い始めた英語のテキストは、「JACK AND 
BETTY」だと記憶していますが、ベティーは「花子」にあたるとすれば、
「太郎と花子」になるわけですね。
フルネームは、JACK JONES とBETTY SMITH でしたか
ら、JONESとSMITHは、鈴木さんや小林さんになるかどうかは、定か
ではありません(笑)。
  (次回は、「第二の脳を鍛えましょう1」についてお話しましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★ご家庭で楽しくできる受験準備(3)養ってほしい数感覚 1 

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第10号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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ご家庭で楽しくできる受験準備
(3)養ってほしい数感覚 1           
 
[数感はアバウトの感覚から]   
奇妙なタイトルだと思われるかもしれませんが、「話の記憶」と共に、ほとん
どの学校で出題されている「数量」の問題に対処するには、語感と同様に数感
を養っておくことが大切です。
受験準備となると、すぐに問題集を使用した勉強と考えられがちですが、幼児
の場合は、その前にやらなければならないことがあります。
物を使った具体物での学習です。
これをきちんと体験しておかないと、「勉強は記憶に頼るもの」となり、幼児
にとっては、つらい受験準備となりがちだからです。
前にもお話しました「学習と勉強の違い」を思い出してください。
特に、年中から年長にかかる時期には、教える人は、「すずめの学校の先生」
にならない注意が必要です。
 
トランプを用意してください。
トランプはさいころと共に、数感を養うすぐれた教具です。
問題集に取り組む前に、数に関する感性、数感を鍛えておきましょう。
「数感教育」の大切なことを教えてくれたのは、香川大学名誉教授の小林先生
でした。
後で紹介しますが、「幼稚園の年長さんでもつるかめ算を解きますよ」と、実
に衝撃的な学習の仕方を教えてくれた先生です。
 
その時のことです。
「2才の幼児でも数がわかるよ」と、2つのさいころを使った、面白い遊びを
見せてくださったのです。
幼児が、さいころをふると6が出ました。
次に先生がふると3が出たのです。
すると先生は、
「キミの勝ちだよ」
といって、幼児に勝ったことを教えます。
最初は、きょとんとしていましたが、数回続けているうちに、どうやら、たく
さん黒丸のある方が勝ちであることが、幼児にもわかってきました。
しばらくすると、先生がいわなくても、
「ぼくの勝ち?」
といい始めました。
数字を使った引き算ができなくても、「数の多少」を理解できるのです。
1と6であれば、●と●●●●●●であり、2と3のときは●●と●●●で、
子どもの頭の中は、おそらく、「6の方に黒い丸がたくさんあるぞ!」であ
り、2と3のときは、「3の方が少しだけ多いかな?」といった、おおよその
見当、推量であり、「アバウト(about)の感覚」なのです。
見た感じで「どっちが多いかな」と直感力で判断するわけです。
大切なのは、この直感力を培うことです。
       
例えば、2枚のお皿にクッキーを5個と4個に分けて入れておき、お子さんに、
「多い方をとっていいよ」
といったときに、数えずに5個入ったお皿をとれば、直感力は順調に発達して
いるといえます。
おやつの時に試してみましょう。
数の多少を見分ける力が身についているかがわかります。
       
この直感力を鍛える遊びを紹介しましょう。
数えなければ不安で、答えを出せない子ども達と、よく一緒に遊んだゲームで
す。
トランプは、4種類のマークの数と同じ数字が書かれていますから、これを利
用します。
まず、1から10までのカードを用意してください。
1はA、エース(ACE)のAとマークが1個しかありませんが、1個だけ書
かれていますから、1と説明します。
そして、マークの数を数えながら、1から10まで並べ、マークの数と数字は
同じであることを確かめます。
この時の数え方は、「イチ、ニ、サン」と漢語読み、音読みにします。
11・12・13と10以上の数え方にも対応できるからです。
なお、7は掛け算を思い出してください、「シチ」です。                   
 
最初は、ハートのマーク1組でいいでしょう。
よくきって積み上げ、ジャンケンで順番を決め、1枚ずつめくり勝ち負けを争
います。
例えば、お子さんが先にめくり8が出たとします。
お母さんがめくると4が出たとします。
そこで、どちらが勝ったかお子さんに聞きます。
そのとき、[8-4=4]でお子さんの勝ちとするわけではありません。
また、ハートの数を数えて、8個と4個ですから、多い方の8のカードを4個
押さえ、8の方が4個多いとするのでもありません。
数の多少を、見た感じ、直感で決めることを約束します。
初めは戸惑いもあるでしょうが、やっている内に、トランプのマークの並び方
に、ある決まりがあることがわかるはずです。
それに気づけば、瞬時に判断できるようになるでしょう。
 
間違えたときは、「ブッ、ブー」と警告をします。
答を教える必要はありません。
カードは2枚ですから、すぐわかります。
勝者が2枚のカードをもらえます。
これを繰り返していると、直感で見分けられるようになり、数えなくては不安
であったことも解消できます。 
 
終わったところで、お互いのカードを2段に並べて比べます。

 お子さんのカード □□□□□□
                               ││││
 お母さんのカード □□□□
 
1対1対応で差が出ますから、計算しなくても、その差が答えになります。             
 
直感で判断することに慣れれば、カードを増やしましょう。             
ハートとダイヤといった組合せがいいでしょう。
マークの色が違うと混乱する場合もあるからです。
10枚増えると5回戦から10回戦になり、慣れてくればスピードもあがります。               
 
次に、スペードとクローバーでやってみましょう。
形や色が違っても、数は同じであることがわかれば、いよいよ4組のカードを使
います。
40枚で争いますからゲームとしても面白くなり、スピードがあがれば集中力も
働き、俊敏な判断力もついてきます。
 
40枚になると、結果を判定するのに、横に並べるのも大変ですから、一工夫し
ます。 
お互いに自分で取ったカードを1枚ずつ置きながら、5枚単位で段を作ります。
5枚で一固まりに分ける習慣がつくと、数の合成、分解にも役立ちますし、算数
の足し算、引き算の計算に、すぐに対応できます。
どちらかの手持ちがなくなったときにストップをかけ、そこから「1枚、2枚」
と数え勝負を決めます。
下の図のように、■のカードの部分で、8対0でお子さんの勝ちとなります。                         
   お子さんのカード          お母さんのカード                     
   □□□□□ □□□□□        □□□□□ □□□□□ 
   □□□□□ □■■■■        □□□□□ □    
   ■■■■               
5枚の固まりに分けるのに慣れれば、10の固まりで数えてみましょう。
算数の勉強で最初につまずく、繰り上がりや繰り下がりの計算にも、スムーズに
対応できます。
余談になりますが、このカードの並べ方を、あまり手先の器用ではないお子さん
にさせると、面白がってやることから優れたトレーニングになり、効果も期待で
きます。                                 
 
本題に戻って、過去の入試問題集などで、例えば、          
「みかん10個と8個の絵があり、多い方に○をつけなさい」  
といった多少の判定をする問題が5問あり、制限時間は15秒であれば、1つ1
つ数えていては、とても時間内に終わりません。
学校側が知りたいのは、計算して答えを出すのではなく、「直感力が養われてい
るか」ではないでしょうか。
 
数の多少だけではありません。                       
2枚のハンバーグや2つのコップに入ったジュースを見て、
「ぼくの方が小さいじゃん!」
「私の方が少ないわ!」
とこだわるのは、アバウトの感覚で「量の違い」を見分けているのであり、決し
て卑しいのではなく、直感力が順調に養われている証ですから心配ありません。
 
この違いを小学校へ入ってから「数」は加減乗除で、「量」はデシリットル、リ
ットル、「重さ」はグラム、キログラム、「長さ」はセンチメートル、メートル
と正確な計算、単位として学んでいくわけです。
年中から年長の頃は、直感で見分ける機会をたくさん持つことが大切です。
なぜなら、「直感は、経験の積み重ねで養われる力」だからです。         
 (次回は、「養ってほしい数感覚 2」についてお話しましょう)
 

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★ご家庭で楽しくできる受験準備(2) 「話の読み聞かせ」のすばらしい効用 (2)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第9号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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ご家庭で楽しくできる受験準備
(2)「話の読み聞かせ」のすばらしい効用 (2)
 
前回お話しましたように、話の読み聞かせは、「語彙」を増やし、「イメージ
をふくらます空想力や想像力」、「話を聞く力」、「構成力や思考力」、「表
現力」、「物事に取り組む意欲」といった能力の開発に、はかりしれない影響
を与えています。
しかも、誰かに命令され、要求されて、やっているわけではありません。
子どもは、自発的に、積極的に楽しみながら能力を培っているのです。
        
これだけではありません。
さらにもっとすばらしい能力の開発に貢献しているのです。
しかもそれは、小学校の入学試験で、重要なものばかりなのです。
 
「竜宮城って面白い所だな。絵に描いてみようかな?」
となると、絵画の領域です。
ファンタジーの世界で夢もふくらみます。
絵を描こうとする動機は純粋です。
幼児にとって、この「……かな?」と思ったときが、好奇心の芽を育む、絶好
のチャンスなのです。
「小学校の入学試験に、絵を描かせる学校があるから、絵画教室へ行きましょ
う」
これでは、動機が不純です。
絵を描くことが好きになれるとは思えません。
これは何も絵だけではなく、ピアノや英会話といった早期教育にも同じことが
いえるのではないでしょうか。
応接間の飾りものになっているピアノを見かけますが、ショパンやリストの名
曲を弾いてほしいと、怒っているかもしれませんね。
 
ところで、最近、絵を描くことを、嫌がる子どもが増えていると聞きます。
その原因は、想像力が培われる前に、大人の求める望ましい上手な絵を描くこ
とを、期待するからではないでしょうか。
感性が磨かれていなければ、絵は描けません。
 
[(環境+五感が受けた刺激)×(好奇心+観察力)÷そしゃく力=描かれた
絵]
 
妙な式らしきものですが、冗談です。
専門家の先生方に、叱り飛ばされますね。
でも、感性は、子ども自身が、与えられた環境の中で、自らの力で養ってきた
自前の性能ではないかといいたいのです。
親が、注文をつけ始めると、面白くない絵になると思います。
そこには、子どもにはない、大人の感性が入り込むからではないでしょうか。
どなたがおっしゃったのかわかりませんが、大人の手垢のついた絵です。
 
まだ、あります。
昔話をはじめ、子どもの読む本は、善いことを勧め、悪いものを懲らしめる
「勧善懲悪」から成り立っています。
正義は、必ず勝ちます。
倫理、道徳、善悪について、襟を正して教えなくても、きちんと学習していま
す。
いってみれば、お子さま用の「修身、道徳講座」です。
「情操教育の基礎、基本」を学習しています。
このことです……。
    
これからは、わたし流の勝手な解釈ですから、深く詮索なさらずに、さらっと
読み流してください。
三歳頃から、自立が始まります。
そして、毎日、いろいろな経験をしながら、さまざまな感情も培われてきます。
これが、情緒です。
未分化であった情緒が、五歳頃から分化されます。
 
今までは、いってみれば、玩具箱の中に乱雑に入れられていた玩具が、「自動
車はここ」、「縫いぐるみはこっち」、「ままごと道具はあっち」というよう
に、次第に整理される状態になるのです。
まだ、整然とはいきませんが。
つまり、未分化だった情緒が分化され、大人にみられる情緒が表われてきます。
喜び、悲しみ、怒り、恐れ、心配、快いといった情緒です。
ついこの間までは、嬉しくても、悲しくても、お腹がすいても、泣くしか表現
できなかったことを思えば、格段の進歩です。
 
ですから、いろいろな話を聞き、喜怒哀楽など心の動きを誘い起こされ、幼い
なりに、自我を作っていると思います。
大胆にいえば、正しいこと、悪いことの分別を学習しているのです。
修身、道徳講座のシミュレーション学習ではないでしょうか。
 
まだ、あります。
これがもっとも大切だと思います。
お母さんが感情をこめて読んであげると、子どもは真剣に聞きます。
気持ちをこめて聞くものです。
そこから、人の話を静かに、行儀よく聞く姿勢が身につきます。
これは、小学校へ入って勉強するために、きちんと身につけておきたい「基本
的な学習態度、心構え」です。
話が聞けないようでは、いくら漢字が読めても、足し算や引き算ができ、九九
をそらんじていても、学習効果をあげることはできません。
小学校の先生方に聞いてみると、みなさん、そうおっしゃっています。
それほど、話を聞く姿勢を身につけることは、大切なのです。
 
小学校の入学試験も、同じです。
大切なことですから繰り返しますが、ペーパーテストには、答えは書いてあり
ますが、どこにも設問はありません。
話を聞いていなければ、何も答えられません。
行動観察型や他の試験も同じです。
話をきちんと聞き、理解していなければ、どうにもなりません。
合否の鍵は、「話を聞く姿勢ができているかどうか」にかかっているのです。
 
それを、あまり本を読んであげずに、
「人の話は、きちんと聞きなさいと、いつもいっているでしょう、お母さんは!」
恐い顔をして、厳しく、何十回いっても、無駄です。
子どもは、自分の好きな本を読んでもらい、静かに聞くことで、話を聞く姿勢
を、意識することなく、身につける訓練になっているのです。
話を聞けない子になる原因の一つに、話を聞きたがる大切な時期に、読み聞か
せが少なかったことも、あるのではないでしょうか。
 
さらにすごいと思うのは、前にも少し触れましたが、
「言語能力を高めるためのお勉強ですよ!」
といった意識は、お母さんにも子どもにも、まったくないはずです。
自主的に、積極的に、しかも楽しく学習しています。
これこそ「教えない教育」のもっとも効果的な方法ではないでしょうか。 
「教えない教育」とは、誤解を恐れず、わたし流にいえば、「本人は勉強だと
思わないのに、ものすごい勉強をしている」ことです。
何かを学ぼうとする気持ち、「学習意欲」が身につきます。
 
しつこいですけれども、まだ、あります。
お母さんの表情豊かな、優しい語りかけが、何よりのスキンシップとなります。
ですから、子どもの好きな本をたくさん読んであげるお母さんは、子どもに慕
われます。
それは、お母さんとお子さんが、同じ土俵に上がり、同じ気持ちで、物語の世
界を楽しんでいるからです。
お母さん方は、こんな荒唐無稽な話などありえないと思っても、また、少し抵
抗を感じる言葉があっても一切、無視して、子どものレベルに合わせて読んで
あげています。
視線は同じ高さですから、心が通うのです。
視線の高さが違ってくると、命令と忍従の関係になりがちで、そこには、教え
てあげるという姿勢が表われ、子どもがもっとも嫌う母親に変身するからです。
 
しかし、一つだけいっておきましょう。
いくら本の読みきかせがすばらしいといっても、お子さんが興味を示さない本
では、あまり効果はありません。
「少年少女 世界名作全集 全十巻」など買いそろえても、無駄かもしれませ
んね。   
「本当は、『かちかち山』の話をしてほしかったのに……」
こういったずれは、小さいときからありがちです。
気をつかってください、無神経は駄目です。
 
一緒に図書館へ行って、最初は、お母さんが選んであげ、あとは、お子さんに
任せてみましょう。
そして、お子さんが選んだ本は、たとえ年齢にふさわしくない幼い内容であっ
ても、いやな顔をせずに読んであげ、自分で選べたことをほめましょう。
それから、お母さんの勧める本を選んであげる、こういった手続きも必要です。
読書の芽は、自主的に育まれなければ、親が期待するように育たないからです。
 
また、図書館には、紙芝居がたくさんあります。
本に興味を示さない場合は、これを利用しましょう。
ビデオと違い紙芝居は、親子で向き合いますから、お子さんの表情がよく見え、
話を理解しているかだけではなく、どういったことに感情が刺激されるか、何
に興味があるかなどがわかるからです。
 
このように幼児期は、知識を詰め込み、文字や数字を使った計算を教えるより、
心をこめて本を読んであげ、心の通った会話がたくさんできる環境を作るべき
です。
そういう時期なのです。
 
小学校受験でもっとも重視されるのは、「話を聞く姿勢ができているかどうか」
なのです。
そこから、ご両親の育児の姿勢がわかります。
普段から、会話が弾み、本をたくさん読んであげる環境であれば、自ずと培わ
れてくる能力だからです。
これは、塾や幼児教室だけに任せて身につく力ではありません。
ご両親が、ご家庭で育てていくものです。
  
小学校受験の第一歩は、ここから始まり、合格を勝ち取る力となることを忘れ
ないでいただきたいと思います。
 
猛暑も峠を越したようですが、まだ油断はできません。幼稚園も始まります。
健康管理には十分、注意してあげましょう。
(次回は「数感をみがこう」についてお話しましょう)
 
拙著のメールマガジン「2015 さわやかお受験のススメ 保護者編 情操
教育歳時記 日本の年中行事と昔話」は現在44号まで配信されています。ご
家庭で年中行事と昔話を楽しんでいただくことを目的に編纂したもので、11
月から「2016年の新版」を配信する予定ですので、参考にしていただけれ
ば幸いです。    
注 編纂 いろいろな材料を集め整理し書物をつくること。
 
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2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★ご家庭で楽しくできる受験準備(2) 「話の読み聞かせ」のすばらしい効用 (1)

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第8号)
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ご家庭で楽しくできる受験準備
(2)「話の読み聞かせ」のすばらしい効用 (1)
 
本を読んであげる「話の読み聞かせ」は、とても大切です。
ビデオやDVDなどで見る「フランダースの犬」や「アルプスの少女ハイジ」
などのアニメの作品は、映像と語りだけではなく、臨場感を盛りあげる音楽や
効果音まで駆使し、瞬く間に物語の世界へ誘い込まれ、楽しいものです。
これほど便利なものはありませんが、反面、幼児が疑問を抱いても、教えてく
れない不便な点もあります。
幼児には、ご両親の生の声が何よりです。
五歳頃になると、絵が主役であった絵本から、字の多い絵本に変わり、話も筋
道立てて進む物語になっていると思います。
 
ここで、お母さんに本を読んでもらっていることを少し考えてみましょう。
読んでもらっているときの子どもの頭の中は、どうなっているのでしょうか。
絵を見ながらですから、お母さんの読んでくれる言葉を絵に置き換える、映像
化するといった作業が、フルスピードで進んでいるのではないかと思います。
絵本や図鑑、テレビや実際に見た映像が浮かんでいるのでしょう。
ところが、聞いたことがない言葉が出てくるとストップがかかります。
「お母さん、オニタイジって、どういうこと?」
やさしいお母さんは、お子さんの言葉に置き換えて説明します。
そこでお子さんは意味を確かめ、納得し、新しい言葉を覚え、「語彙」が増え
ます。
 
そして、一人になると、まだ、字を読めないはずですが、何やらぶつぶつとい
いながら絵本を見ています。
あれは、本当に不思議です。
おそらく、読んでもらった本が面白かったから、お母さんの言葉を思い出しな
がら確かめているのだと思います。
絵を見ながら、記憶した言葉をもとに映像を描き、イメージ化しているのです。
考え、想像しているのです、しかも「言葉」でです。
これは、すごいと思いませんか。
それが証拠に子どもは、とかく同じ本を何回も繰り返し、飽きもせずに読んで
くれとせがみます。
それも読んでいる途中に、
「ママ、ありがとう。そこまででいいです」
といったことが、しばしば起こりがちです。
そのところを忘れてしまったのかどうかわかりませんが、話が進まなくなり、
イメージ化が中断してしまうのです。
読んでもらってつながったから、そこまででいいのでしょう、あとは覚えてい
ますから。
話を一所懸命に覚えようとしているのに違いありません。
そこから「記憶力」がつきます。  
 
さらに繰り返し読んでもらうことで、描かれた映像は、より鮮明になり、そこ
から、「空想力や想像力」が培われるのではないでしょうか。
 
ところで、昔話を何か思い出してください。
昔話だけではありませんが、幼児の読む本は、「起承結」で成り立っていませ
んか。
「起承転結」の「転」はなく、話は複雑になっていません。
 
江戸時代の漢学者、頼 山陽が、漢詩を説明するために「京都西陣帯屋の娘」
と題して、面白い例を残しています。
 
   京都西陣帯屋の娘   (起)
   姉は十八、妹は十六  (承)
   諸国の大名は刀で殺し (転)
   姉妹二人は目もとで殺す(結)
 
「ショコクノダイミョウって、ナンですか?」
余計なものが入ってくると、すっきりしなくなります。
帯屋の娘の話は、帯屋の娘で終わらなければ、子どもは承知しません。
桃太郎が、鬼退治をしたついでに、海賊までやっつけるとはなりません。
すっきりと終わって、「めでたし、めでたし」が、昔話には欠かせない決まり
です。
 
さらに物語は、「序破急」と快適なテンポで進みます。
浦島太郎の竜宮城で過ごしたひと時が、何十年であっても何ら差し支えありま
せん。
話は快く聞けるように仕組まれていますし、単純明快ですから、「話を理解す
る力」がついてきます。
 
しかも、話は、
「むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」
で始まります。
「むかし、むかし」は、「いつ」と時間の設定ですが、いつのことだかわかり
ません。 
「あるところ」は「場所」ですが、どこだかわかりません。
「おじいさんとおばあさん」は「だれ」と大切な登場人物ですが、名前もさだ
かではありません。
みんな「あいまい」です。
その「あいまい」なままに、話は、「何を」「なぜ」「どのように」と展開し
ます。
これも考えてみると大変なことです。
 
時代はいつでも、場所はどこでも、名前がなくても、何ら不都合なことはあり
ません。
奈良時代であろうが平成時代であろうと、北海道だろうが沖縄であろうと、み
んな、「むかし、むかし、あるところで」で済ませてしまいます。
時代考証も、場所の設定も、登場する人物像をイメージ化する面倒な説明もあ
りませんから、すっきりとした気持ちで話に入っていけるのです。
 
これを仮に、
「江戸時代の元禄十五年、大晦日をむかえる二日前の朝、上総の国は蒲郡、大
字蒲、字大和村の一本杉の近くに、四代目の山之上太郎左衛門というじいさま
と花というばあさまが住んでいました」
とやられては、聞いてみようかなという気持ちにもなれないでしょう。
「ママ、もう眠いから……」
こうなるに違いありません。
 
ところで、昔話は、
   いつ(when)
   どこで(where)
   だれが(who)
   なにを(what)
   なぜ(why)
   どのように(how)
といった[5W+1H]から成り立っていますが、これは文章を書くときや情
報を伝える時の基本で、小説や新聞、テレビのニュースなども、この形式(フ
ォーム)で構成されています。
ということは、話を聞きながら[5W+1Hのフォーム]を、小さいときから
学んでいることになります。
これは、すごい知恵ではないでしょうか。
 
もちろん、子ども達が、「いつ、どこで、だれが」などと意識して聞いている
わけではないでしょうが、理路整然とセオリーどおりに話は進んでいきますか
ら、楽しく話を聞き、その話を覚えることで、筋物事を考える、「思考力や構
成力」が、おのずと身についてきます。
 
そして、子どもは、話を覚えると話したがります。
誰かに聞いてもらいたいのです。
それには、自分自身が話をよく理解しなければできませんから、そのための訓
練が、自発的に始まります。
それが、「表現力」につながります。
しかも、「覚えなさい!」といわれて覚えたのでもなく、「話してみなさい!」
といわれて訓練したものでもありません。
自ら、積極的に努力して得た力です。
 
こんなに大切な能力開発を、誰にもいわれずに挑戦しているにもかかわらず、
「パパ、『桃太郎』の話、知っている?」
「ああ、知っているよ。桃太郎が猿と犬と雉の家来を連れて、鬼退治にいく話
だろう!」
と無造作に応じてしまっては、せっかく積んできたトレーニングの成果を試せ
ません。
子どもは、話したいのです。
成果を試したいのです。
 
「うん、パパも子どもの頃は、よく知っていたけど、どういう話だったかな?」
とやさしく受けてあげましょう。
お子さんは、一所懸命に話すはずです。
そして話し終えた時には一言、「よく覚えたな、偉いぞ!」とほめてあげるこ
とです。
お父さんにほめられて、不愉快になるはずはありません。
「よし、今度は『カチカチ山』を覚えるぞ!」
となり、新しい話に挑戦します。
記憶力どころか、「物事に取り組む意欲」を培うことになります。
しかも「自発的」にです。
 
猛暑の続く暑い夏も、もう一息でしょう。お子さんの健康管理には十分に気を
付けてください。
(次回は、「話の読み聞かせ」のすばらしい効用(2)」についてお話しまし
ょう)
 

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