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めぇでるコラム : 2021保護者: 2019年11月

さわやかお受験のススメ<保護者編>第1章(3)情操教育、難しく考えることはありません 季節の行事、これも欠かせません

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2021さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第5号
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第1章 (3) 情操教育、難しく考えることはありません
季節の行事、これも欠かせません
 
季節折々の行事を祝うことも大切です。
昔は農耕民族でしたから、1年の生活は農作業を中心に営まれ、休みも仕事の
進み具合により取るようにしていましたが、今は法律で定めた国民の祝日にな
っているものが多く、全国的に休暇を取るようになりました。以前は、祝祭日
に日の丸を掲げたことから「旗日」ともいわれていたのですが、ほとんど見か
けなくなりました。
祝祭日を家庭で祝うことも、少なくなっているのでしょう。
元日に雑煮を食べない家庭もあるそうですから、当然かも知れません。しかし、
七五三や成人式は、華やかに行われていますし、ひな祭りと端午の節句、これ
はおじいちゃん、おばあちゃんの気張りどころでしょう。国産ではありません
が、クリスマスもきちんと祝い、ハロウィンも仲間入りしてきました。いずれ
も国産化され、「少し違うのではないかな?」と違和感を覚えますが(笑)。
 
お父さん、お母さんに聞いてみましょう。
 「なぜ、門松は、松竹梅で飾るのでしょうか」
 「なぜ、鬼は、柊(ひいらぎ)、いわしの頭、豆を嫌うのでしょうか」
 「なぜ、菱餅は、白、桃色、緑の三色なのでしょうか」
 「なぜ、お釈迦さまに甘茶をかけるのでしょうか」
 「なぜ、端午の節句に、鯉のぼりを飾るのでしょうか」
これくらいにしておきましょう。
 
私は、こういった四季折々の行事を、家族で祝い、その意味を両親から話して
もらった記憶があります。今でも忘れられないのは、正月の門松でした。室町
時代頃から飾るようになったそうですが、これには、きちんとした科学的な根
拠があるのです。詳しくは1月に説明しますが、ここでは、私が親父から聞い
た話を紹介しましょう。突然、大阪弁になって恐縮ですが、親父は関西の出身
でしたから、この方が、実感がわくのです。
 
「松は、一年中、葉が青くて、冬にも色が変わらん。元気で健康な証拠や。
竹は、真っすぐに伸び、雪が積もっても折れへん我慢強さがある。しか
も、中は空っぽやから腹に一物もなく、きれいや。『竹を割ったような性格』
っていうやろ、正直や。男は、これでなきゃあかんのや。
梅は、他の木がつぼみさえ持たん寒い冬に、リンと咲く強さやな。
それに、咲く姿は清らかや。
みんな、それぞれ、それなりの理由がある。みんな縁起もんや。そやから、
これらを飾って、新しい年神様を迎えて、健康で、辛抱強く、正直に生きて、
家内繁盛を願ったのや」
 
こういった話を、元日の朝祝いの時に、必ず聞かされていました。
季節折々の行事は、自然への感謝の気持ちと家族の幸せを願って、家族みんな
で祝ったものです。その行事の意味を子どもに教え、楽しく祝い、一つの思い
出として残してあげ、子どもが親になった時に、その楽しい思い出をわが子に
も伝える、そういった風習が残っていました。何しろ今と違い、情報量の少な
かった時代でしたから、これも親の大切な役目でもあったわけです。
 
しかし、最近は、「鬼は外、福は内!」の声など、聞こえなくなりました。そん
なことは迷信だといって、だんだん、影をひそめていくようです。
「月にうさぎが住んでいる」と信じている子はいないでしょうが、「サンタクロ
ースはいる」と信じている子はたくさんいます。事実、サンタさんから送られ
てきた手紙を、目を輝かせ、得意そうに見せてくれた子もいました。
 「迷信と切り捨てる」のと、「迷信でも子どもの夢を一緒に楽しんであげる」
とでは、どちらが子どもにとって幸せでしょうか。
 「サンタクロースなんて迷信で、プレゼントはお父さんが買ってくるんだよ」
といった先生を許せないと、涙ながらに語る友人の話を、池波正太郎の随筆で
読んだことがあります。12月に紹介しますが、この先生には、クリスマスの
思い出は、何もなかったのでしょう。あれば、こんな残酷なことは言えません。
でも、これは許せない!
 
豆をまき、菖蒲(しょうぶ)湯に入って菖蒲で鉢巻したり、短冊につたない字で
願い事を書いたり、お月見に薄(すすき)を飾ってお団子を食べ、素朴に祝って
いたのでしょう。「素朴」、いい言葉ではありませんか。最近、あまり聞かれな
い言葉の一つになりましたけど……。
 
しかし、その時に、父や母から話を聞くことが楽しみでした。今のようにテレ
ビもなく、昔話の本などあまりなかった戦後の貧しい時代でしたから、ほとん
ど両親の記憶によるものでした。祖父母や親によって語り継がれる、昔話の原
点が、まだ、残っていました。
特に、鬼の話や地獄の話は恐かったものです。悪いことをすると地獄に落ち、
針の山に追われ、血の池に放りこまれる話などは、心から信じていました。私
にとっては 「情操教育」であったと思います。こういった家族全員で祝うこ
とがなくなったのも、家族の絆が薄くなった原因の一つであることは、間違い
ないでしょう。季節折々の行事も、心を培う「情操教育」に欠かせない、家庭
でやらなければならない大切なイベントだと思います。
 
そこで、月々の行事を取り上げ、その行事に関係のある昔話を紹介しようと試
みたのですが、素人の悲しさですね、日本中の行事といえば気が遠くなるほど
ありますし、昔話となると、とてもではありませんが手に負えない、ものすご
い数です。
 
行事は、全国的に行われているものから選びましたが、その基本的な資料とし
て使わせていただいたのは、永田 久先生の「年中行事を『科学』する」(日本
経済新聞社 刊)でした。専門用語が使われ難しいものですから、わたし流に
解釈させていただきましたが、詳しくは、最後の「おわりに」のところで説明
いたしますので、ご本家の方をお読みいただければ幸いです。
 
昔話は、進学教室でうけた話を中心に、私の独断と偏見で選んでみました。児
童文学を修めたことも、民話などを研究したこともありませんから、間違った
解釈をしているところも多々あると思います。専門家の諸先生方に一笑される
かもしれませんが、覚悟の上です。何やら強気のようですが、目に触れる心配
などありえませんから、気楽に考えているだけです(笑)。
紹介する話は、ほんの氷山の一角で、しかも私の感覚で要約したダイジェスト
版になっています。面白いと思われましたら、本物を読んであげてください。
それも、本メールマガジンの狙いの一つです。紹介する本は、ほとんどが図書
館で読んだものです。お住まいになっている図書館の子ども部屋にはあると思
いますので、作者と出版社名を明記しましたから、参考になさってください。
 
お父さん、お母さん、頑張ってください。
情操教育は、心の教育です。心の教育は、幼児期に基本的なことを学習してお
くべきです。今は学習ではなく、勉強が幼児の心をむしばんではいないでしょ
うか。文字の成り立ちからもわかるように、学習は「習い学ぶこと」で、勉強
は「強いて勉めること」です。幼児を取り巻く環境は、何やら落ち着きません。
親が勉強せず、子どもだけに勉強を強いる傾向にあると思えてならないのです。
情緒が不安定で、情操の乏しい子が増えているといわれていますが、知識を詰
め込むことにこだわり、心を育てる育児が、おろそかになっていないでしょう
か。
 
キリスト、お釈迦さま、マホメッドと共に、世界の四大聖人である孔子さまも、
「論語物語」の「うぐいすの声」でいっています。うぐいすのひな鳥が、親鳥
の美しく鳴く声を聞きながら、繰り返し練習をし、やがて一人前に鳴けるよう
になる話です。その心は、「親鳥のようになりたい……」、このことです。ある
年の7月、上高地へ出かけた時、大正池で、実際に聞くことができ感激しまし
た!
 
幼児期は、「強いて勉めるときではなく、習い学ぶとき」です。心の教育は、お
子さんの人生観の基礎を培う大切な学習です。お手本は、ご両親です。ご両親
が、うぐいすの親のようにならなければ、迷うのはお子さん自身です。心の教
育こそ、ご両親が力を合わせて、育み、培うものです。
 
ご両親が受けてきた教育を、そのままお子さんにも受けさせたいとお考えでし
ょうか。もし、不安を感じているようでしたら、教育についての考え方を、改
めるべきではないかと、赤面しながら、あえて言い切っておきましょう。私は、
「教育とは自己学習のできる人間を育てること」であり、ご両親が作る環境から
培われていくものだと考えています。通信簿に表れた目先の結果だけにこだわ
らず、どのような子どもに育ってほしいのか、大らかな心をもち、お子さんの
教育について考える、賢いお父さん、お母さんになってあげましょう。背伸び
をし過ぎましたが、それがご両親の役目、親の責任ではないでしょうか。
 
  最後に、落語「桃太郎」の全編を紹介しましょう。大人用は、複雑に脚色さ
れた噺が多く、長くなりますから、「こども古典落語」から選びました。
「桃太郎」は、「かちかち山」「花さか爺さん」「さるかに合戦」「舌きり雀」と
共に、日本の五大お伽話といわれています。1940年生まれの私には信じが
たいのですが、この五つの話を知らない子がいます。20数年ほど前の進学教
室時代の話ですが、「フランダースの犬」や「アルプスの少女ハイジ」の方が、
人気があるようでした。今は、どうでしょうか。TVのコマーシャルにハイジ
は顔を出していますが……。余談になりますが、落語ですから声を出して読ん
でみてください。黙読とは一味違うはずです。
 
★★古典落語「桃太郎」の作者 乾坤坊 良斉(けんこんぼう りょうさ
い)の意図★★
 
桃太郎のお話を一席申し上げます。
近頃の子どもは学校に入る前に、大概、幼稚園や保育園に行っていますから、
昔とは大変に違います。昔は親が子どもを寝かしつけるのに、
「おとっつぁんが、面白い話をしてあげるから寝るんだよ。いいかい、あのね。
むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいてね。ある日、
おじいさんは山へ芝を刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行ったんだよ。そして、
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきたから、家に持って
帰って割ってみると、男の子が生まれたんだよ。桃の中から生まれたから桃太
郎と名前をつけてね。大きくなると桃太郎は、犬と猿と雉を連れて、鬼が島に
鬼退治に行ったんだ。そうして、鬼を退治して、宝物をたくさん持って帰って
きて、おじいさん、おばあさんを喜ばしたんだよ。どうだい、面白かったかい
……。おや、坊や……。もう寝ちまったよ。子どもなんて罪のないもんだね」
という具合だったんですが、今は、そうはいきません。
「坊や、お父さんが面白い話をしてあげるから早く寝な」
「せっかく親が面白い話をしてくれるのに、寝ちゃあ失礼だよ」
「失礼でもいいから寝なよ」
「あのね、むかしむかし」
「むかしむかしって、何年前?」
「ずうっと昔だよ」
「それじゃ、何世紀頃のお話?」
「何世紀だって、いいじゃないか!」
「あるところに、おじいさんとおばあさんがいたんだ」
「あるところって、どこ? おじいさんとおばあさんの本名は?」
「あるところはあるところさ。おじいさんとおばあさんには、名前がないんだ
よ!」
「でも、名前がない人っていないよ」
「貧乏だから、名前を売っちゃったんだよ」
「変なこと言ってら!」
「黙って聞きなよ!」
「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行ったんだ。おばあさ
んが洗濯をしていると、大きな桃が流れてきたから、これをもって帰って割っ
てみると、男の子が生まれたから、桃太郎と名前をつけた。この子が大きくな
ると、犬と雉と猿を連れて、鬼が島に鬼退治に行ったんだ。そうして鬼を退治
して、宝物をたくさん持って帰ってきて、おじいさん、おばあさんを喜ばした
んだ……。あれっ、まだ寝ないのかい?」
「お父さんの話を聞いていたら、さっきまで眠かったのに、パッと目が覚めち
ゃった。だってこの話は、もっと深い意味があるんだよ」
「ほう、そうかい?」
「話してあげようかい、君!」
「あれっ、親をつかまえて、“君”というやつがあるかい! まあ、話してごら
ん」
「むかし、むかし、あるところにというのは、何時代のどこと決めてもいいん
だけど、日本中の子どもがこの話を聞くわけでしょう。だから、子どもたちの
想像させるために、わざとぼかしてあるんだよ。おじいさん、おばあさんとい
うのは、本当はお父さん、お母さんなんだけど、やわらかみを出すために、お
じいさん、おばあさんにしてあるんだ。そして、それぞれ山と川に行くでしょ。
あれはね、父の恩は山より高く、母の恩は海よりも深いということを表してい
るんだよ。そして、海のない地方もあるから、わかりいいように川にしたんだ」
「えっ……、なるほど。これは、大人が聞いてもためになるな」
「そうさ。桃の中から子どもが生まれたというけど、あれは、桃のようなかわ
いい赤ちゃんが生まれたということなんだよ。第一、桃の中から赤ん坊が生ま
れてごらん。果物屋さんは、赤ん坊だらけになっちゃうよ」
「なるほど、なるほど、それから?」
「そんなに前に乗り出してこないでよ。そしてね、鬼が島に行くというのは、
つまり、父母のもとを離れて、世間に出るということなんだよ。犬、雉、猿を
連れて行くというのはね、犬は思いやりというものがある。難しい言葉でいう
と仁というんだよ。猿には知恵がある。雉は勇気がある。つまり人間は、世間
に出たら、仁、知、勇、この3つを働かせなければいけない。そうすれば段々
に偉くなってきて、世間から信用という宝物を得ることができるということな
んだよ。それをお父さんみたいに、この話をしたんじゃ、このお話の作者が泣
くよ。わかったかい、お父さん……。お父さん、あれぇ、お父さん寝ちゃった
よ! へえー、大人なんて、罪のないもんだ!」
こども古典落語1 あっぱれ! わんぱく編 
   小島 貞二 文 宮本 忠夫 画  アリス館 刊
 
きび団子の説明が抜けていますが、きびでできた団子は美味いものではなく、
人間いかなる時も
おごってはいけないという戒めを表しています。桃太郎伝説のモデルといわれ
ている岡山県の吉
備津神社で食べたきび団子は美味かったので、子どもたちから「うそでしょ
う?」と言われるかもしれ
ませんが(笑)。
 
いかがでしょうか、説得力があると思いませんか。
歳月を経て伝えられてきた話は、研ぎ澄まされており、実に無駄がありません。
しかも、落語であるところが愉快ではありませんか。笑いながら、人生修業を
しているのですから。落語は、最後の「下げ」が勝負になりますが、これも決
まっていますね。YouTubeで視聴できます。
 
最近、落語を聞く機会がなくなりましたが、落語は素晴らしい話芸です。図書
館の視聴覚室をのぞいてみましょう。古今亭志ん生師匠をはじめ、咄家のすば
らしい名人芸がCDに収録されています。疲れたときに聞いてみませんか。落
語は、声を出して笑うことが、いかに大切であるかを教えてくれるからです。
「笑う門に福来る」とも言うではありませんか。ご両親の笑顔は、お子さんの
健やかな成長を支える促進剤です。
ちなみに英語では、“Fortune comes in by a merry gate”、面白いのは、
“Laugh and be fat”(笑えば肥る)とも言うそうで、後の方が、実感があり、
納得できますね。(「故事ことば辞典」より)
 
ところで、あるミッション系の小学校の面接試験で、「最近、大笑いしたことが
ありますか」と尋ねられたことがありましたが、この質問の意図を、どのように
お考えでしょうか。
 
朝夕、散歩する雑木林の枯れ葉が少ないですね。木枯らしが吹かないせいでし
ょう(11月26日現在)。木枯らしは、10月半ばから11月30日までに吹
く毎秒8メートル以上の北風で、昨年は昭和54年(1979年)以来39年
ぶりにありませんでした。一番遅かったのは昭和58年11月28日(198
3年)だそうですが0.369、今年はどうでしょうか。
  (次回は12月の年中行事についてお話しましょう)

さわやかお受験のススメ<保護者編>話の読み聞かせ (2)

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2021さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第4号
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第1章 (2)情操教育、難しく考えることはありません
話の読み聞かせ (2)
 
「竜宮城って、おもしろいところだな。絵に描いてみようかな!」
となると絵画の領域です。幼児期の絵は、写生ではなく、イメージ、想像し
て描いたものではないでしょうか。ファンタジーの世界ですから夢もふくら
みます。絵を描こうとする動機は純粋です。幼児には、この「……かな?」
がついた時こそ、好奇心の芽を育む絶好のチャンスなのです。「小学校の入
学試験に、絵を描かせる学校があるから、絵画教室に行きましょう」と考え
て始めるのは、子どもの希望ではありませんから、絵を描くことが好きにな
るとは思えません。
 
最近、絵を描くことをいやがる子どもが増えていると聞きますが、想像力が
培われてくる前に、大人の求める望ましい上手な絵を期待するからではない
でしょうか。感性が磨かれなければ、絵は描けません。
 
 (環境+五感が受けた刺激)×(想像力×好奇心÷そしゃく力)=描かれ
た絵
 
妙な式ですが、私見ですが私の経験では、感性は、子ども自身が与えられ
た環境の中で、自らの力で培ってきた「自前の能力」ではないだろうかとい
いたいのです。親が、注文を付け始めると、おもしろくない絵になりがちだ
からです。
 
お子さんの絵について、振り返ってみましょう。
2歳頃から、点や線の殴り書きが始まったのではないでしょうか。
3歳頃から、直線や曲線を使って○や□らしきものが表われ、それこそ、あ
る日突然、頭から手足がニョキニョキ出ている頭足人間を描いたと思います。
やがて、頭と体が分かれ、一応、人間らしくなりますが、手は電信柱のよう
に、横に真っすぐのびたままで、年長になって、やっと手も下におり、人間
と認められる絵になったのではないでしょうか。
ここまで表現できるようになるには、これだけの段階を踏んでいるのです。
絵は、言葉や身体表現と比べ、差のつきやすい能力といえます。うまい絵を
求めるより、何を描きたがっているのか、その内容に注目し、楽しく描ける
雰囲気を作ってあげることが大切です。
 
「絵は心の窓」ともいわれ、心の屈折が表れるそうです。冷静にお聞きくだ
さい。もしかしたら、遺伝もあるかも知れません。ご両親、特に、お母さん
は子どもの頃、どういった絵を描いていたか、ご自身のお母さんに聞いてお
きましょう。
 
話の読み聞かせの効果は、まだ、あります。
昔話をはじめ、子どもの読む本は、勧善懲悪から成り立っています。正義は、
必ず勝ちます。倫理、道徳、善悪について、襟を正して説教をしなくても、
きちんと学習しています。いってみれば、お子さん用の「修身、道徳講座」
です。情操教育の基礎、基本を学習しています。
このことです……。
 
3歳を過ぎる頃から自立が始まります。自立が始まると、いろいろな経験を
重ねながら、さまざまな感情も一緒に培われます。これが情緒です。この情
緒の分化が、5歳頃から始まります。
赤ちゃん時代は、「ママ!」の一言ですべての要求を表し、ついこの間までは、
望みが叶わなければ何でも泣くだけで表現していたことを考えれば、言葉で
表せるのは、格段の進歩ではないでしょうか。今まではおもちゃ箱の中に、
乱雑に入れられていたおもちゃが、「自動車はここ」、「縫いぐるみはこっち」、
「ままごと道具はあっち」と、きちんと整理されて行く状態になるのです。
まだ、整然とはいきませんが。
つまり、未分化だった情緒が分化されて、大人に見られるような、「喜び、
怒り、楽しみ、悲しみ、望み、不安」といった情緒が表れ、いろいろな話を
聞くことから、喜怒哀楽など心の動きが誘い起こされ、幼いなりに自我を作
っているのです。
 
ずる賢い人には怒りを覚え、悲しい話になると涙ぐみ、正直な人が報われる
と笑顔を見せ、恐い話になると表情も変わってきます。話をきちんと理解し
ている証拠です。正しいこと悪いことの分別を、感情を移入しながらシミュ
レーション学習をし、幼いながらも、正義に対する憧れや悪に対する嫌悪感
を養っているのです。それが自我であり、個性を培っていく基本的な学習に
なっているのです。
「三つ子の魂百まで」の意味は、ここにある事も忘れてはならないでしょう。
小学校受験編でも紹介しましたが、英語では“The leopard cannot change his 
spots”というそうで、世の東西を問わず、育児の鉄則となっているようで
す。 
 
まだ、あります。これが最も大切だと思います。お母さんが感情こめて読ん
であげると、子どもは真剣に、心をこめて聞くものです。そこから、人の話
を静かに、行儀よく聞く姿勢が身につきます。これは、これから始まる小学
校の勉強に、スムーズに取り組むために身につけておきたい、大切な心構え
であり、学習態度です。話が聞けないようでは、いくら漢字が読め、足し算
や引き算ができ、九九をそらんじていても、駄目です。小学校の先生方に聞
いてみると、みなさん、そうおっしゃいます。それほど、話を聞く姿勢を身
につけることは大切なのです。話を聞く姿勢ができていないと、勉強につい
ていけず、落ちこぼれることにもなりかねません。
 
あまり本を読んであげずに、
「人の話は、キチンと聞かなくては駄目だと、お母さんはいつもいっている
でしょう!」 
と、恐い顔して、厳しく、何十回といっても無駄でしょうね。言葉だけで説
得できません、態度で示すに限ります。本を読んであげることで、お母さん
自身が、よいお手本を見せています。
それが、話を聞く姿勢を身につける訓練になっているのです。
 
ひたすら自己中心に行動する子や、落ち着きがなくじっとしていられない子
になる原因の一つとして、話を聞きたがる大切な時期に、読み聞かせを怠っ
たことも考えられるのではないでしょうか。モンテッソーリの「敏感期」で、
その時期に著しく成長し、それを過ぎると鈍感になる成長過程のことです。
真偽の程は定かではないようですが、言葉の敏感期に人間の言葉に触れなか
ったため、言葉を話せないまま成長したインドの狼少女は、敏感期を実証し
た話ではないでしょうか。
  マリア・モンテッソーリ
イタリアのローマで医師として精神病院で働き、知的障害児へ感
覚教育を実施し、知的水準を上げる効果をみせ、1907年に設立
した貧困層の健常児を対象にした保護施設「子どもの家」において、
独特の教育法を完成させた。以後、モンテッソ―リ教育を実施する
施設は「子どもの家」と呼ばれるようになった。
 (ウィキペディア フリー百科事典より)
 
それはともかくとして、話の読み聞かせは、予想もつかない力も育みます。
話がおもしろければ、そしてそれが長編ともなれば没我の世界の中で、一つ
のことに集中できる持久力や耐久力さえ身につきます。気力や体力は、運動
だけで培われるものではありません。こういった精神力を鍛えることで、物
事に取り組む意欲や頑張る力も育まれます。
 
さらに、すごいと思うのは、
「言語能力を高めるためのお勉強ですよ!」
といった意識は、読んでいるお母さんも、聞いているお子さんにも、まった
くないはずです。無意識の内に、自主的に、積極的に、しかも楽しく学習し
ています。これこそ、「教えない教育」の最も効果的な方法ではないでしょ
うか。「教えない教育」とは、誤解を恐れずにいえば、本人は、勉強だと思
っていないにもかかわらず、ものすごい勉強をしていることです。何かを学
ぼうとする気持ち、学習意欲が身につきます。
 
しつこいですけれど、まだ、あります。
お母さんの表情豊かな、やさしい語りかけが、何よりのスキンシップなので
す。ですから、本をたくさん読んであげるお母さんは、子どもに慕われます。
それは、お母さんとお子さんが、同じ土俵に上がり、同じ気持ちで、物語の
世界を楽しんでいるからです。お母さんは、こんな荒唐無稽な話などありえ
ないと思っても、また少し抵抗を感じる言葉でも、一切、無視し、お子さん
のレベルに合わせて読んであげているはずです。視線は同じ高さですから、
心は通います。
視線の高さが違ってくると、命令と忍従の関係になりがちです。
 
しかし、一つだけいっておきたいことがあります。
いくら話の読み聞かせは素晴らしいといっても、お子さんが興味を示さない
本では、あまり効果はありません。「少年少女 世界名作全集 全十巻」な
どを買い揃えるのはどうでしょうか。
「本当は、『かちかち山』の話、読んでもらいたいのだけど……」、こういっ
たことは、小さい時から、とかくありがちです。気を使ってください、親の
考えを押し付けるのは、決していいことではありません。私たち親は、とか
く子どものためによかれと思ってやることが、案外、子どもには迷惑な話と
なっている場合があるものです。「あなたのためなのに……!」という前に、
親のエゴが優先していないか考えましょう。
 (お断わり 同名の「少年少女 世界名作全集 全十巻」があったとして
も、その本とは一切関係ありません)
 
また、ご両親が子どもの頃に読み、印象に残った本を読んであげることもあ
るでしょうが、「どう、面白かった?」といった言葉がけはやめましょう。
親のイメージを押し付けることになりがちだからです。
「ケンちゃん、どうだったかしら?」
と軽い気持ちで聞き、反応が今一の場合は、引き下がる思いやりも必要です。
読んでほしいとリクエストがあり、数回読んであげて、しっかりとしたイメ
ージが出来上がってから、感想を聞くようにしましょう。
 
ところで、本の選び方ですが、一緒に図書館へ行き、最初はお母さんが選ん
であげ、後はお子さんに任せてみましょう。お子さんが選んだ本は、たとえ、
年齢にふさわしくない幼い内容であっても、いやな顔をせずに読んであげて
ください。そして、自分で選んだことを褒めてあげましょう。お子さん自身
が興味を持たなければ、本の好きな子にならないからです。読書の芽は、ご
両親の優しい心遣いから培われるものではないでしょうか。
 
また、「読書の時間です」などと、スケジュールをキッチリと組むのもどう
でしょうか。お子さん自身に読んでほしいという意欲がないときは、あまり
効果的とはいえません。お子さん自身が望んだときが、最高の教場となるか
らです。習慣にしてよいのは、寝る前に読んであげることではないかと思い
ます。再開された横浜雙葉小学校の説明会でも、学園長は「お子さまと添い
寝をしながら本を読んであげる機会が少なくなっているのでは」と懸念され
ていましたが、皆さん方はどうでしょうか。
 
最後に、図書館には紙芝居がたくさんありますが、利用してみましょう。紙
芝居は、絵と言葉の表現に無駄がありませんから解りやすく、また、親子で
向き合っていますから、お子さんの表情がよく見え、どういったことに興味
をもっているかがわかるからです。
 
ところで、図書館で騒いでいる子や遊んでいる子もいますが、公衆道徳を教
えるのは、ご両親の大切な仕事です。手を抜いていると、あとで困るのは、
お子さん自身です。
 
また、借りた本は大切に扱う習慣をつけましょう。落書をされた本やジュー
スなどをこぼしたあとさえ残っているものも見かけます。「みんなで使うも
のは丁寧に扱う」、これも守らなければいけない規則です。たった1冊の本
から、育児の姿勢が至るところに顔を出しています。
 
そして、返却期日は、必ず、守りましょう。こういった約束事は、幼児期に
きちんと身につけてあげれば、お子さんの人格形成の礎(いしずえ)にもな
るからです。繰り返しますが、「三つ子の魂百まで」は、「良い習慣は幼児期
に身につく」ことを伝える、育児の鉄則ではないでしょうか。
 
このように、幼児期は、文字を教えこむより、心をこめて本を読んであげ、
心の通った会話ができる環境を作ってあげることが大切です。「文字よりも
言葉」です。小学生になれば、覚えた言葉を文字で表す学習に進み、国語を
楽しく勉強できるようになるものです。これが私の考えているご家庭ででき
る「情操教育の基礎、基本」ですが、納得していただけたでしょうか。
 (次回は、季節の行事についてお話しましょう) 

さわやかお受験のススメ<保護者編>本を読んであげてください 〔1〕

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2021さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第3号
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第1章 (1) 情操教育、難しく考える必要はありません
本を読んであげてください 〔1〕

本を読んであげる、話の読み聞かせは、とても大切です。
安易に、テレビやDVDなどに、子守をさせてはいけないと思います。確か
に、このような教具は、映像と語りだけではなく、臨場感を盛り上げる音楽
や効果音を駆使して、瞬く間に、たくさんの情報を与えてくれます。これほ
ど便利なものはありませんが、送信する側と受信する者は一方通行ですから、
疑問を感じても質問できないといった不便な点もあります。わからないまま
に、話はどんどん進みますから、疑問を残したままになり、消化不良を起こ
しがちではないでしょうか。しかも、伝える側に感情はありません、このこ
とです……。

幼児には、お父さんやお母さんの生の声が何よりです。5歳頃になると、絵
が主役だった絵本から、字の多くなったものに変わり、話も筋道を立てて進
む物語になっていると思います。

ところで、本を読んでもらっている時の子どもの頭は、どうなっているので
しょうか。絵を見ながら読んでもらっていますから、お母さんの読んでくれ
る言葉を、絵に置き換えるといいますか、映像化する作業がリアルタイムで
行われ、絵本や図鑑、テレビや実際に見た映像が、浮かんでいるのではない
かと思います。

聞いたことのない言葉が出てくると、声がかかります。 
 「お母さん、オニタイジって、どういうこと?」
そこで、お母さんは、お子さんのわかる言葉に置き換えて説明をします。お
子さんは、その意味を確かめ、納得し、新しい言葉を覚え、少しずつですが、
確実に語彙が増えていきます。

そして一人になると、まだ、字を読めないはずですが、何やらブツブツいい
ながら、絵本を見ています。あれは、本当に不思議ですね。おそらく、読ん
でもらった本がおもしろかったので、お母さんの言葉を思い出しながら、確
かめているのだと思います。絵を見ながら、その状況を記憶した言葉をもと
に、映像を描き、イメージ化しているのではないでしょうか。つまり、「言
葉で考え、想像」しているのです。これは、すごいことだと思います。

それが証拠に子どもは、同じ本を、それこそ何回も何回も、飽きもせずに読
んでくれとせがみます。それも、読んであげている途中に、
 「お母さん、ありがとう、そこまででいいです」
といったことが、しばしば起こりがちです。
読んでもらったところを忘れてしまったのか、思い出せないのかわかりませ
んが、話が先に進まなくなってしまったのでしょう。イメージ化の中断です。
読んでもらい話がつながったので、そこまででいいのでしょう、後は覚えて
いますから。あれは、話を一所懸命に覚えようとしているのに違いありませ
ん。覚えようとする力、「記憶力」がつきます。

さらに、繰り返し読んでもらうことで、頭に描かれた映像は、より鮮明に具
体的になり、そこから、独自の「想像力や空想力」が培われてきます。

ところで、昔話を何か思い出してください。
子どもの読む話は、「起承結」で成り立っています。「起承転結」と、「転」
はなく、話は複雑になっていないはずです。「起承転結」は、漢詩を組み立
てる形式の一つで、転じて、「ものごとの順序・作法を表す言葉」ですが、
わかりやすい例えがありますので紹介しましょう。江戸時代後期の儒学者・
詩人・歴史家であった頼山陽が作った「京都西陣帯屋の娘」です。
   京都西陣帯屋の娘    (起)
   姉は十八、妹は十六   (承)
   諸国の大名は刀で殺す  (転)
   姉妹二人は目もとで殺す (結)
「ショコクノダイミョウって、なあに?」
余計なものが入ってくると、イメージ化する作業が複雑になります。帯屋の
娘の話は、帯屋の娘で終わらないと、子どもは安心できません。ですから、
鬼退治をした桃太郎が、ついでに海賊をやっつけることもなく、すんなりと
終わって、「めでたし、めでたし」が昔話に欠かせない決まりです。   

さらに、物語は、「序破急(初め・中・終わり」と快適なテンポで進みます。
浦島太郎が、竜宮城で過ごした時間が何十年であっても、何らさしつかえあ
りません。話は、快く聞けるように仕組まれています。しかも物語は、簡潔
明瞭に展開しますから、話の世界へ引き込まれていきます。そこから、話を
理解する力、「理解力」が培われてきます。

そして、何とも素晴らしいのは、自然と話に引き込んでいく、あの約束事で
しょう。イントロダクション、導入部などの言葉が、白々しくなるほど決ま
っています。「むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが、
住んでいました」で始まりますが、これが、実に重大な役目を果たしている
ではありませんか!などと興奮することもありませんが(笑)。

 「むかし、むかし」は「いつ」と時間の設定ですが、いつのことだかわか
りません。 
 「あるところ」は「場所」ですが、どこだかわかりません。
 「おじいさんとおばあさん」は「だれ」と大切な登場人物ですが、名前も
ありません。みんなあいまいで、そのあいまいなままに「何を、なぜ、どの
ように」と話は展開していきます。

これも、考えてみると大変なことです。
時代はいつでも、場所はどこでも、名前がなくても、何ら不都合はありませ
ん。奈良時代だろうが平成時代であろうが、北海道だろうが、はたまた沖縄
であろうが、みんな「むかし、むかし、あるところ……」で済ませてしまい
ます。時代考証も、場所の設定も、人物の履歴も、何も必要ありません。で
すから、子どもたちは、何ら抵抗なく、心安らかに、期待に胸を躍らせなが
ら、話の世界へ入っていけるのです。しかも、没我の世界です。

これを、几帳面に、
 「江戸時代の元禄十二年、大晦日を迎える二日前の朝、上総の国、蒲郷郡、
大字蒲郷、字大和村の一本杉の側に、山之上太郎左エ門という名の爺さまと
お熊という名の婆さまが住んでいました」では、聞いてみようかなとはなら
ないでしょう。
 「お母さん、もう眠いから……」、こうなるのに違いありません。読むお母
さん方も疲れてしまいますね。

昔話の構成や作者の意図について、「なるほど!」と納得し、肯かざるを得
ない古典落語、「桃太郎」があります。確か、古今亭今輔師匠が得意とした
噺ではなかったでしょうか。お薦めの話、第一号として、この章の最後にダ
イジェスト版ではなく、全編を紹介する予定です。

ところで、昔話は、
   いつ(when)
   どこで(where)
   だれが(who)
   何を(what)
   なぜ(why)
   どのように(how)
と文章を書くときの基本である[5W1H]から成り立っていますが、新聞
記事やテレビのニュースなどを瞬時に理解できるのは、この原則に従ってい
るからです。ということは、昔話を聞きながら、[5W1H]を小さい時か
ら学んでいることになります。これは、すごい知恵ではないでしょうか。

もちろん、子どもたちは、「いつ・どこで・だれが」などと意識して聞いて
いるわけではないでしょうが、話は理路整然とセオリーどおりに進んでいき
ますから、繰り返し話を読んでもらい、話を覚え、絵本を見ながら言葉で表
現することで、物事を筋道立てて考える訓練にもなっているのです。物事を
組み立てる、考える力、「構成力や思考力」が自ずと身につきます。

そして、子どもは話を覚えると話したがります。
それには、自分自身が、話をよく理解していなければできませんから、その
ための訓練が自発的に始まります。話の流れをきちんと記憶し、組み立て、
味わい、自分の言葉で話す訓練です。それが「表現力」につながります。

こんなに大切な能力開発を自ら積極的に挑戦しているにもかかわらず、
「パパ、『ももたろう』の話、知っている?」
「ああ、知っているよ。猿と犬と雉の家来を連れて、鬼退治に行く話だろう」
と無造作に応じてしまうと、折角、積んできたトレーニングの成果を試す
こともできません。
「今までの努力は、何だったのだ!」
とは思わないでしょうが、悔しい思いをさせているのではないでしょうか。
子どもは覚えた話を、話したいのです、聞いてもらいたいのです。
「うん、パパも子どもの頃は、よく知っていたけど、どういう話だったかな?」
と、やさしく受けてあげましょう。
お子さんは、一所懸命に話すはずです。

そして話し終えたときに一言、「よく覚えたな、えらいぞ!」と、褒めてあ
げましょう。褒められて不愉快になるはずはありませんから、さらに、話を
覚えようとします。そこから、「物事に取り組む意欲」が芽生えます。
意欲は、新しい能力を開発する起爆剤です。
しかも、「覚えなさい!」といわれて覚えたものではなく、「話してみなさ
い!」といわれて訓練したものでもありません。強制されずに、自発的に、
楽しみながら積極的に挑戦し、能力を開発しているのですから、その効果は
一石二鳥どころではなく、計り知れないものがあります。

このように話の読み聞かせは、
「語彙を増やす」だけではなく、
「イメージをふくらませる空想力や想像力」
「話を聞く力」
「構成力や思考力」
「言葉での表現力」
「物事に取り組む意欲」
 といった能力などの開発に、とてつもない大きな影響を与えているのです。
しかも、これだけではありません。
  (次回は、「本を読んであげてください 2」についてお話しましょう)
    
芦田愛菜ちゃんの挨拶、中学生とは思えませんでしたね。
女子学院と慶應の中等部に合格したとき、「努力をしても報われない努力は、
まだ努力が足りない」、これは王さんの明言ですが、これを座右の銘として
頑張ったそうです。なかなかできないことですが、偉いですね。将来が楽し
みです。愛菜ちゃんでは失礼かな。(笑)


さわやかお受験のススメ<保護者編>事の始まりは、ある幼稚園の進学教室からでした

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2021さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第2号
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-事の始まりは、ある幼稚園の進学教室からでした-
 
私は、長い間、幼児教育のパイオニアである旧伸芽会教育研究所でお世話にな
っていました。「情操を育むために、年中行事と昔話が大切な役目を果たしてい
るのではないか」と模索していたのは、幼児教育の本質が少しわかりかけてき
た、50歳になった頃ではなかったでしょうか。平成元年に、「年中行事を『科
学』する」という素晴らしい本にめぐり合い、進むべき道が見えてきました。
 
そして、この考えに「間違いはない」と自信らしいものが出てきたのは、ある
経験からでした。
創刊号でもお話ししましたが、当時私は、約10年間にわたり、板橋区にある
淑徳幼稚園の課外保育であった進学教室を担当していたのですが、後半の5年
間は、一人で年中組と年長組を指導することになりました。この間の子ども達
のやり取りとお母さん方の反応から、年中行事と昔話を組み合わせた「情操教
育歳時記」といった何とも大仰なタイトルですが、気軽に読んでいただける本
を作ってみようと思い始めていたのです。育児の専門家ではない「わたし流の
育児書」というわけです。
 
私どもの研究所の教室へやってくる子ども達は、全員、「受験のために勉強にき
ている」といった意識が、しっかりと培われていましたから、授業もやりやす
かったのです。「幼児教室は、こういうものだ」と思っていた私には、この進学
教室は、まさに青天の霹靂で、勝手が違い、思わぬ苦労をしました。
 
その日の保育が終わった後に、同じ教室でやるのですから、子ども達にとって
は、「自分たちの土俵に変な先生が入ってきた、エイリアン!」といった感じだ
ったのでしょう、いつものように授業を始めることができなかったのです。そ
のために、まず、授業に集中できる雰囲気を作ることからはじめました。試行
錯誤を積み重ねながらできあがったのは、授業の前に、その月の行事、11月
でしたら七五三をテーマに、昔からの言い伝えを子ども達にわかるように話し、
その月に関係ある昔話をするといった方法でした。
 
回を重ねる内にわかったのは、子ども達は、「フランダースの犬」や「アルプス
の少女ハイジ」を知っていても、「一寸法師」や「花さか爺さん」などの昔話を、
あまり知らないことでした。しかし、話をしてみると、熱心に聞いてくれるの
です。それならばと、徹底的に昔話をすることにしたのですが、年長組は週2
回で月8回、1年間で、ざっと96の話をすることになり、少々心配になりま
した。「絵本を見ながら読んであげればいいか!」と気軽に考えていた私は、子
ども達から思わぬしっぺ返しを食い、悪戦苦闘が始まったのです。
 
それは、本を見ながら話す時と見ないで話す時では、子どもの興味を示す様子
が、微妙に違うことでした。話を覚えている場合は、子ども達の目を見ながら
話をしますから、目をそらす子はいません。「目をそらさない」は、話をしっか
りと聞く基本的な姿勢です。本文でも紹介しますが、「大勢の子ども達に、話を
読み聞かせる重要なポイントは、話を記憶することだ」と教えてくれたのは、
進学教室の子ども達でした。
 
毎週2つの話を記憶するのは大変でしたが、子ども達は私の話を楽しみに待っ
てくれ、授業にもスムーズに入れるようになりました。見つけた時には私も驚
きましたが、「シンデレラ物語」とそっくりな話である「ぬかふくとこめふく」
を話した時の、子ども達の驚いた顔を忘れることができません。
 
ある時、椋 鳩十の動物の話をしてみました。すると、次の時間にもとリクエ
ストがあり、動物達の話に興味があることもわかりました。そこで、長編でも
ある「丘の野犬」をアレンジして話したところ、何と熱心に聞いてくれ、涙さ
え浮かべる子も出てきたのです。この時ばかりは、今、思い出しても、ぞくぞ
くするほど感激したものです。
 
進学教室の役目は、併設する淑徳小学校での勉強に、スムーズに対応できる力
を身につけることでした。小学校へは、受験勉強をし、力をつけてきた大勢の
子ども達が入学してきます。そういった子ども達に共通しているのは、「話を聞
く姿勢」が身についていることで、小学校の受験でもっとも大切なのは、この
「話を聞く力」なのです。ペーパーテストを例にとっても、プリントの上にダ
ミーを含めて、答はすべて出ていますが、「設問」はどこにも書かれていません
から、話を聞き逃すと、解答できないわけです。
 
昔話や年中行事のいわれなどを聞きながら、子ども達は意識することなく、「話
を聞く姿勢」を身につけてきたのです。こうなるとしめたもので、授業は私の
仕事でしたから、後は楽なものでした。集中さえできれば、問題を解く力もつ
き、面白くなりますから、取り組む意欲も違ってきます。難易度の高い問題に
も挑戦し始め、当時、毎月1回行われていた2,000名近くの子どもが参加
する公開模擬テストで、10番以内に入る子も出てきたのです。
 
さらに、思わぬ収穫になったのは、お母さん方の反応でした。授業終了の5分
ほど前に、お母さん方に集まっていただき、今日取り組んだ問題を解説しなが
ら、家庭学習の要点を説明し、今月の行事とその日に話した昔話を紹介してい
ました。
 
すると、「先生、ママが菱餅を買ってきて、何で三色なのか、先生と同じ話をし
てくれたんだよ」と、女の子がいない家庭にもかかわらず、「おひな様を飾るわ
けや、菱餅の色」について、子どもに話をするお母さんも出てきたのです。話
してくれる子ども達の顔は、みんなうれしそうでした。四季折々の行事の意味
を説明してきたことが、話だけで終わらずに、各ご家庭で祝ってくれるように
なったのです。このことです……。
 
ここからは「わたし流の解釈」ですから、軽い気持ちで読み流してください。
話を聞こうとしなかった子ども達が、なぜ、楽しみに授業を待ってくれるよう
になったのか、それは子ども達の心の中に、幼いながらも、何らかの刺激を求
める小さな芽が、しっかりと培われてきていたからだと考えました。後で詳し
くお話しますが、その小さな芽は、分化され始めた「情緒」だったのです。「情
緒とは、喜怒哀楽の感情の表れたもの」と考えていただければ、わかりやすい
と思います。きっかけを与えたのが、昔話であり年中行事であったわけです。
育まれてきた小さな芽である情緒に刺激を与えてあげれば、素直に反応をする
こともわかりました。そうでなければ、あれほど真剣に話を聞くはずがないか
らです。
 
私の話でさえ一所懸命に聞くのですから、ご両親の話であれば、もっと歓迎す
るはずです。「パパがね、先生が話してくれた『おぶさりてえのおばけ』の本を
買ってきてくれたんだよ!」と嬉しそうに話してくれる子ども達も増えてきま
した。創刊号でもお話しましたが、話を聞く姿勢は、幼児教室や塾で身につく
ものではなく、ご両親の「本の読み聞かせ」や「対話」から育まれるものです。
 
こういった体験を何とか記録に残し、皆様方に読んでいただきたいと考え、で
きあがったのが、このメールマガジンです。話を聞く姿勢さえ身につけば、小
学校の受験は、決して難しくありません。また、年中行事を、ご家庭で楽しむ
ことにより、楽しい思い出がたくさん残り、それが豊かな情操を育む礎になっ
ていることも否めない事実です。
 
小学校の入試に季節の行事が出題されるのは、なぜでしょうか。知識として知
っているかを判断しているのではありません。四季折々の行事を楽しむ、ご家
庭の文化があるかどうかを見ているのではないでしょうか。家庭の文化は、ご
両親の育児の姿勢であり、それが受験する小学校の建学の精神や教育方針と限
りなく近ければ、それが志望理由になるわけです。
 
この1年間、お子さんは受験勉強に励むわけですから、ご両親にも勉強をして
いただき、ご家庭の文化を築き上げてほしいと思います。話を聞く姿勢が身に
つくのも、豊かな情操が育まれるのも、ご両親の育児の姿勢次第です。小学校
の受験で必要な能力の基礎、基本は、「ご家庭で培われる」ことを学習していた
だき、お子さんと三人四脚で、ゴールを目指して頑張ってほしいと願っていま
す。
 
次回は「本の読み聞かせ」についてお話しましょう。

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