めぇでるコラム

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>入試問題を分析する[5]常識に関する問題(1) 

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        「めぇでる教育研究所」発行
    2018さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第34号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★入試問題を分析する★★
 
千葉県私立小学校フェア 
日 時 2月26日(日) 10:00~14:00 
場 所 市川グランドホテル
       詳しくはホームページをご覧ください。
 
[5]常識に関する問題(1) 
文字通り、常識の分野です。
しかし、単なる知識ではなく、情操教育の領域から思慮分別まで入っています。
仲間分け、郵便屋さんとポストを結びつける職業に関するもの、道具や日用品
の名称と用途に関するもの、季節と行事に関するもの、公衆道徳やしつけに関
するもの、むかし話や名作物語の一部が描かれた絵を見て説明するものなどが
あります。
 
[仲間分け]
動物や昆虫、木や花、野菜や果物、乗り物、季節、文房具などの仲間を探す、
逆に仲間ではないものを見つける問題です。常識の問題だけではありませんが、
単に仲間に〇や仲間ではないものに×をつけ、「満点! 次に行きましょう!」
では、あまり有効な学習とはいえません。○や×をつけた理由を、自分の言葉
できちんと説明できるか確かめましょう。幼児の学習で大切なのは、自分で考
えたことを話せることです。つたない説明でもきちんと聞いてあげ、おかしな
ところは直してあげましょう。
 
こういった問題がありました。
◆(かき・くり・ぶどう・なし・すいかの絵が描いてある)
 かき・くり・ぶどう・なし・すいかの中で、仲間ではないものに×をつけな
 さい。
 
皆さん方は、何に×をつけるでしょうか。 聞き手に徹してみると、子ども達
は、実に、ユニークな発想の持ち主であることがわかります。
 
「すいかに×です。すいかは野菜で、他は果物です」
常識的な模範回答で、皆さん方は喜びます。
 
「すいかです。他のくだものは木になるけど、すいかは、地面になります」
すいか畑を見た経験があるのでしょう。
 
「すいかは、夏に食べますが、他は秋ですから、すいかに×です」
季節に違いを見つけましたが、季節感が希薄になっている中で偉いですね!
 
「すいかです。他は皮をむいて食べます」
またしても、すいかですが、食べ方の違いを見つけました。
 
「くりです。イガイガに入っていますから、手で触れません」
この子は、くり拾いに行ったことありますね、体験談です。
 
「くりです。そのままでは食べられません」
いいですね、くりご飯が好きなのでしょう。もしかしたら、生のくりをかじっ
たことがあるもかもしれません。
 
「ぶどうです。他は1個、2個と数えるけど、ぶどうは、そういうふうに数え
ません」
これも、いいですね、一房などといえなくても正解です。ぶどうの実は、1個、
2個・1粒、2粒と数えますが、全体を捉えて数えるときは、バナナと同様1
房、2房です。いつか、有島武郎が自分の子どもたちのために書いた「一房の
葡萄」を読んでほしいものです。
 
「くりです。種がありません」
ぶどうやすいかにも種のないものがありますが、これも正解ですね。
 
「かきとくりです」
「……?」
「『さるかに合戦』には、かきとくりが出てくるけど、むかし話に、他のもの
出てくるかな?」
さて、こうなるとわかりませんが、ぶどうとなしの出てくる話は、思い浮かび
ません。  
すいかはあります。老人が、意地悪をした商人から魔法を使い、すいかを取り
上げてしまう話で、今昔物語にも出ています。しかし、いいですね、発想がユ
ニークで。むかし話をたくさん読んでもらっているのではないでしょうか。
 
いかがでしょうか。子ども達は、こんなにたくさんの違いを見つけました。こ
れはたいへんな学習になっています。子どもの観察力や発想は、大人と違うこ
とがよくおわかりいただけたと思います。繰り返しますが、×をつけて終わり
では効果的な学習とはいえません。子どもの考えに耳を傾け、そして最後に、
「果物と野菜」「季節の違い」など設問の意図に従い、正解に導いてあげまし
ょう。
 
自転車とオートバイの違いを話す問題で、例によって、とことん、追求の目が
途絶えるまで、発表をさせたときのことです。
「仮面ライダーは、オートバイに乗るけど、自転車には乗らない」といったお
子さんがいました。その子は、「仮面ライダーは、オートバイに乗り、かっこ
よく出てくるけれど、自転車に乗って出てこない」といいたかったのです。そ
の日は、授業参観でしたから、お母さんは、赤面してうつむいてしまいました。
とかく私達大人は、構造や原理の違いや用途などから考えますが、こういった
考えのできるのが子どもなのです。もちろん、エンジンと人力で走らせる違い
に導きますが、なぜ、そういった考えが出てくるのか、子どもに聞いてみると、
実に傑作な答えが出るものです。その答えに妥当性があれば、そういう考え方
もあると認め、しかし、「この問題の本当の目的は」と順を追って話をすれば、
子どもたちは納得し、授業にのめり込んできます。
なぜでしょうか……。
それは、自分の考えを認めてもらえたからです。うつむいてしまったお母さん
と違い、お子さんは積極的に授業に参加し、楽しんでいました。「お子さんの
話に耳を傾けてください」とお願いしておきましょう。
 
このように、幼児の知識は、似ているところや違うところを見つけることから
始まります。物事の「類似差異」に気づかせることです。しかし、これを大人
が机の上だけで教えこむのは、お勧めできません。五感を働かせ、自分で学習
することが大切なのです。教え込まれることは、記憶に頼りますから忘れがち
です。五感で体験したことは、何かの思い出と一緒に身体が覚えますから、忘
れにくいのです。記憶は脳神経系の仕事で忘れることも仕事ですが、体験は中
枢神経系の仕事で、一度覚えると体が忘れないそうです。英単語は使わないと
忘れがちですが、一度自転車に乗れるようになると、しばらく乗らなくてもす
ぐに乗れるようになる、この違いだそうです。「幼児期には、五感に刺激を与
える自然と接する機会をたくさん作り、話をはずませ、楽しい思い出を残して
あげましょう」という理由は、ここにあるわけです。
 
[季節と行事に関する問題]
四季を代表する花や行事、春であれば、桜、たんぽぽ、チューリップ、おひな
さま、入学式、鯉のぼり、柏餅などを結びつけたり、年間の主な行事を1月か
ら12月まで絵カードで並べたりする問題です。暦の上では立春から春ですが、
幼児の世界では、春は3月、4月、5月、夏は6月、7月、8月、秋は9月、
10月、11月、冬は12月、1月、2月で教えてあげましょう。
 
変な話を聞きました。
「1月は正月・門松・たこ上げ・羽子板、二月は節分・豆まき・柊・いわしの
頭・鬼……」 
試験に出るから憶えるそうです。しかし、季節折々の行事は、知識として覚え
るものではなく、家族そろって楽しむものです。楽しんでいれば、覚えようと
しなくても、思い出と一緒に記憶されるものです。 記憶だけに頼ろうとする
と、「勉強、イコール記憶」となり、次第に苦痛になるのではないでしょうか。
学生時代に覚えた英単語、あんなに苦労したのに、どこへ消えてしまったのか
と、しゃくにさわりませんか。それでも、皆さんは目的を持って覚えたのです
から、苦痛にも耐えられたわけでしょう。
子ども達には、「受験のため」といった自覚はないはずですから、やっかいな
のです。
 
そうはいっても、現代っ子は、正月に、羽根つき、たこ上げ、カルタ取り、す
ごろくなどをやっているでしょうか。
節分に豆まきをして、いわしを食べているでしょうか。
女の子のいない家で、ぼんぼり、ひし餅、わかるでしょうか。
端午の節句に菖蒲湯に入る子も、少ないでしょう。
七夕は、幼稚園での年中行事で済ませていないでしょうか。
迎え火、送り火、精霊流し、やらないでしょうね。
中秋の名月を、すすきとだんごをお供えして、眺めているでしょうか。
大晦日に年越しそばを食べているでしょうか。
そばより、ラーメンやスパゲッティかもしれません。
「……でしょうか」ばかりで、何やら、落ち込みそうです。季節折々の行事を、
祝わない家庭が、増えているのでしょう。
 
このような年中行事は、自然への感謝と家族の幸せを願い、とりわけ、子ども
の健やかな成長を祝う、一つの節目になっています。
たとえば、端午の節句、この言葉も「子どもの日」といわなければ、通じない
でしょうが、なぜ、鯉のぼりを飾るのでしょう。疑問に思わないようです、現
代っ子は。 なぜ、くじらやさめのぼりでは、駄目なのでしょうか。くじらは
大きく、さめは見るからに強そうですが、代役を務めることはできません。鯉
は、非常に生命力が強い魚ですから、鯉のように強くて、たくましい子に育っ
てほしいという親の願いがこめられているのです。五月晴れの空に、雄大に泳
ぐ鯉のぼりの姿、あまり見かけなくなりました。
 
こういった行事は、いってみれば「家庭の文化」ではないでしょうか。 家庭
の文化は、ご両親が作るものです。子どもは、ご両親の作った文化の中で育っ
ていきます。ご両親が、季節折々の行事の意味を子どもに教え、一緒に祝い、
楽しい思い出として心に残してあげる。そのお祝いが、思い出が、子どもの情
操を培っていくのではないでしょうか。 団地のベランダに、小さな鯉のぼり
が泳いでいると、「頑張っているな!」と声をかけたくなります。
 
小学校の入学試験に出るからといって、問題集で教え込み、ましてや記憶させ
るなどは、本末転倒な話です。なぜ、こういった問題が出るのでしょうか。学
校側も、知識として知っているかではなく、家庭の文化を見ていると思います。
季節折々の行事を楽しんでいれば、問題集は、チェックシートの役割をはたし、
知識の整理になります。幼児の学習は、知識を詰め込むのではなく、たくさん
の経験を積ませ、そこから得た知識、知恵であることが大切です。
 
私事で何ですが、当教育研究所で配信していますメールマガジン「さわやかお
受験のススメ 保護者編 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」では、季
節折々の行事の由来を説明し、それに関係のある昔話を紹介していますので、
お読みになっていただければ幸いです。
 
「春一番」は、立春後に初めて吹く南風ですが、気象庁は2月17日、関東地
方に春一番が吹いたと発表。私の住む川越の郊外は、芋畑があるだけに砂ぼこ
りがすごかったですね。昨年は2月14日、ちなみに最も早かったのは昭和
63年2月5日、最も晩かったのは昭和47年3月20日だそうです。春一番、
英語では“The first spring storm”と言うそうですが、昨年は、「センテン
ス スプリング」が吹き荒れましたが、今年はどうでしょうか(笑)。
(拙著メルマガ 「日本の年中行事と昔話」 16号より)
(次回は、常識の問題(2)についてお話しましょう)
幼児の学習は、生活の中で、楽しみながら身につけていくことが大切です。
(次回は「常識の問題」についてお話しましょう)

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