めぇでるコラム

さわやかお受験のススメ<保護者編>★★第9章(1)七夕祭りでしょう 文月

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
             -第32号-
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第9章(1)  七夕祭りでしょう   文 月
 
物の本によると、文月(ふみづき)のいわれは、七夕の短冊に、字がうまくな
るようにと書いてお願いをすることから文月になった、といわれているようで
すが、七夕は、日本で始まったものではなく、中国から伝わってきた行事です
から、これはおかしいとして、稲の「穂含月(ほふみづき)」「含月」からと
する説もあるそうです。
 
★★何といっても七夕祭り★★
7月といえば、何といっても七夕祭りでしょう。
 
 たなばたさま
 作詞 林 柳波   作曲 下総 皖一
  
一、 笹の葉さらさら   二、 五色の短冊
   軒端にゆれる       私が書いた
   お星さまきらきら      お星さまきらきら
   金銀砂子         空から見てる
 
何とものどかで、暑さもふきとぶ、夜空が浮かんできますね。
しかし、今はどうでしょうか。都会では、天の川も、逢瀬を楽しむ彦星も織女
星も、よく見えません。
明かりのせいでしょう。プラネタリウムで見ると、あまりに鮮やかすぎて、イ
メージが壊れそうですね。七夕は、古来、多くの人々に夢を与え続けた祭りの
一つです。万葉集の中にも、星祭りとして七夕を詠んだ歌が残されています。
かの、紀貫之も一首、『新古今和歌集』に詠んでいます。
 
七夕は 今や別るる 天の川 川霧立ちて 千鳥鳴くなり
 
「川霧立ちて 千鳥鳴くなり」、千鳥が鳴くのを、別れを惜しむ織姫の忍び泣
きと詠ったものでしょう。しかし、紀貫之が生きていた時代の田園風景を再現
するのは無理でしょうが、残された和歌の世界で味わえるのは、やはりすばら
しいことで、大切な文化遺産です。
「幾星霜」とはいささかオーバーですが、年月を刻んで受け継がれてきた文化
は、遺伝子として心の中に組み込まれているようで、日本人には和歌や俳句を
作ることではないでしょうか。小学生になると、特に教えなくても、「五七五」
の俳句を作るのですから。
 
さて、その七夕ですが、ご家庭で、短冊に願いごとを書いて、笹に飾り、お祝
いをしているでしょうか。幼稚園や保育園での夏のイベントになっているので
はありませんか。七夕祭りの事の起こりは、中国の星の伝説でおなじみの「織
姫と彦星」の話です。   
 
★★七夕のルーツ★★
中国の歳時記に、こういう話が残されているそうです。
 
天の川の東に織女が住んでいた。天帝の子である。いつも機織りをして、鮮や
かな天衣を織りなした。天帝が独身であるのをかわいそうに思って、天の川の
西に住んでいる彦星と結婚することを許した。しかし結婚した後は、機織りを
しないので、天帝は怒って二人を別れさせ、天の川の西と東に帰らせた。ただ
7月7日の夜だけ、川を渡って逢うことを許したのである。日本で最もよく知
られた七夕の星の物語である。おりひめとひこぼしが愛し合っていながら一年
に一度しか会えないという物語が日本人の共感を呼んで、万葉集の時代から
「星祭」として、七夕にさまざまな思いを馳せたのである。
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P134-124)
 
天衣は、“あまごろも”、羽衣(はごろも)のことで、日本でもおなじみの天
女の証です。
「天衣無縫」という四字熟語がありますが、これは、「物事に技巧などの形跡
がなく自然なさまをいい、天人・天女の衣には縫い目がまったくないことから、
文章や詩歌がわざとらしくなく、自然に作られていて巧みなこと。また、人柄
に飾り気がなく、純真で無邪気なさまをいう」(goo辞書より)意味に用い
られていますが、語源は「天衣」なんですね。例によって類似語は、今でもよ
く使われている「天真爛漫」です。
 
ところで、七夕の2つの星、彦星と織女は、どんな星でしょうか。
彦星、牽牛星は、鷲座の1等星アルタイルのことで、地球から16光年の彼方
にあり、太陽の8倍の明るさがあります。
1光年は、9兆4605億キロで、その16倍です。
本当にはるか、はるか、かなたです。
アルタイル星の両側にある2つの星を牛に見立てて「牽牛」と名付けたのです。
面白いことに、あの清少納言も「枕草子」に書いています。 
  
「星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばいぼし、すこしおかし。おだになか
らましかば、まいて」
(第二百五十四段 新潮日本古典集 下巻)
 
すばるは、牡牛座にある星団プレアデスの和名、ひこぼしは、牽牛です。ゆふ
づつは、日没後、すぐに西の空に輝く、宵の明星、金星で、よばいぼしは、流
れ星のことです。「尾がなければよいのですが」ということでしょうが、尾は
流れ星が大気圏に突入して、燃えつきる現象です。さすがの才媛も、まだ、ご
存知なかったことでしょうね。
 
織女は、琴座の1等星ヴェガのことで、地球から26光年離れ、明るさも太陽
の48倍もある北天第一の星ですが、もう想像外の明るさと距離です。ヴェガ
と天の川をはさんだアルタイル星が、天の川の中にある白鳥座のデネブ星とで
作るのが、夏の大三角形です。小学校時代に、理科で習ったのでしょうけれど
も、記憶のかけらもありません。
 
この2つの星が、7月7日に際立って、美しく輝きます。それを見た昔の人が、
天の川にさえぎられているために、1年に1回しか会えない、恋人の話に仕立
てたのでしょう。
作者は、何ともロマンチストではありませんか。中国生まれの伝説らしく、ス
ケールが大きいですね。
 
ところで、天の川は、中国や日本の専売特許ではありません。昔から世界中の
人々の注目を集めていました。
 
エジプトでは天のナイル川、インドでは天のガンジス川、中国では銀色の川で
銀河と呼びます。ところが、ヨーロッパでは川ではなく道にたとえられ「乳の
道(ミルキーウェイ)」と呼ばれています。 これはギリシャ神話で、力持ち
のヘラクルスが赤ちゃんのとき、お母さんのおっぱいを力強く吸ったため、こ
ぼれてできたといわれているからです。
(心を育てる 子ども歳時記 12か月 監修 橋本裕之 講談社 刊 P65)
 
★★なぜ、短冊にお願いごとを書くのでしょう★★
こういうことらしいのです。
中国には「乞巧奠」(きこうでん)といって、星祭りの他に、七夕には、大変、
重要な行事があり、こう書いてあるそうです。
 
「7月7日は牽牛と織女が相会する夜だ。夫人たちは7本の針に5色の糸を通
し、庭にむしろをしいて机を出し、酒、肴、果物、菓子を並べて織物が上手に
なることを祈った」 
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P132)
 
これが、そもそもの始まりらしいのです。
牽牛は、牛飼いで畑仕事をし、織女は、機織りです。そこで、男の人は畑仕事
が、女の人は機織りや縫い物が上手にできますようにと、お祈りをするように
なったのでしょう。それが、時とともに、織物の切れ端を、短冊のように切っ
て、笹の葉につけ、歌にあるように「軒端」に出すようになり、それが、今の
ように布から紙に変わり、笹竹は長い竹となり、お願いごとも、裁縫や字が上
手になることよりも、ピアノが上手く弾けるようにとか何とか、何やら、椎名
 誠氏風の表現で恐縮ですが、願望成就希望達成型に変身したようです。
 
しかし、無理もない話です。
お母さん方、針を持って縫えますか。いや、その前に、裁縫箱を持っています
か。裁縫が上手になりたいと思っているお母さん方、いらっしゃるでしょうか。
何ですか、「……ますか、……ますか、……でしょうか」で、頼りのない話で
す。
「良妻賢母」が「料裁健母」と置き換えられた時代がありました。今は、「料
裁健夫」でなければ、お嫁さんにきてもらえないのでしょうか。独身男性が、
増えるわけです。いや、嫁にきてもらうなどと消極的な考えでは、女性に敬遠
されるのではないでしょうか。嫁さんは、自分で探すものです。
 
ところで、なぜ、笹竹なのでしょうか。
 
笹竹は、日本独自の祭り方で、竹は1日に1メートル伸びるといわれるほど成
長が早く、人々は、その秘められたすばらしいエネルギーに願いを托し、天に
届くようにと気持ちをこめたのです。
(絵本百科 ぎょうじのゆらい 講談社 刊 P21)
 
祈るだけではなく、強烈なエネルギーまで取り込んでいるんですね、恐れ入り
ました。
 
余談になりますが、12月に紹介しました妙心寺の沙羅双樹の花、「沙羅の花
をめでる会」が始まりました。会は30日までですが、You Tubeでも楽しめま
す。
(次回は「なぜ、仙台の七夕は、8月なのですか他」についてお話ししましょう)
 

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