めぇでるコラム

さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>幼稚園の試験とは

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
         「めぇでる教育研究所」発行
   「2017さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>」
            第4
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
幼稚園の試験とは
 
[「幼稚園の試験とは」に関しては、以前、(株)攻文社から発行された拙著
の「ご存知ですか、お母さん! 幼稚園編」(現在は発売されていません)の
原稿の一部を、加筆、訂正したものを紹介しましょう]
 
一般に、幼稚園の試験は、
  ・集団テスト
  ・運動テスト
  ・個別テスト
  ・面接テスト
の4項目に分けることができます。
といっても、幼稚園の生活は、小学校のように1時間目国語、2時間目算数と、
教科別に学習しているわけではありませんから、ほとんどの幼稚園では、集団
テストの中で、発達状況を判定するために必要な領域が組み込まれた形式にな
っています。
また、知的な能力も「数能力・記憶力・推理、思考力・言語力」といったよう
に、領域ごとに分けて判定しているわけではありません。テストの流れの中で、
いろいろな課題を通して、知育・徳育・体育の3つの能力が、バランスよく発
達しているかを総合的に判定するものですが、ここでは説明の便宜上、4つの
形式に分けてお話しましょう。
 
[集団テスト]
5名から20名単位で行われ、試験官は3名から6名程度。
自由遊びが中心で、ままごとセット、ブロック、積み木、ぬいぐるみ、木製の
家(中に入れるもの)、滑り台、粘土、お絵描き道具、絵本などの中から、好
きなものを選んで遊ばせます。遊んでいる様子から、社会性や協調性などの集
団生活への適応力、基本的な生活習慣やしつけ、性格、2歳児から4歳児にふ
さわしい知的な能力が備わっているかなどを観察します。
 
[運動テスト]
自由遊び、集団テストの延長として行われることが多く、年齢にふさわしい運
動能力が発達しているかを判定します。
先生方の話を聞き取り、指示通りに行動できるか、指示の理解と行動力などを
みていると共に、通園は保護者と一緒ですが、都心の幼稚園に通うには体力が
必要ですから、心身の発達の状態も考慮されています。
 
[個別テスト]
1~5名単位で行われることが多く、先生の指示に従い、絵や話の記憶、積み
木などでものを作ったり、折り紙、クレヨンなどを使い基本色を理解できてい
るかどうかをみます。
また、小道具を用いて数の理解や形(○、△、□など)の構成など、いろいろ
と工夫されて出題されます。
年齢にふさわしい知的な能力を判定しますが、日常生活で幼児が体験できるこ
とが基本になっています。
 
[親子テスト]
親子が一緒になって、指示された問題に取り組むものです。
挑戦する様子や雰囲気、会話などから、普段の育児の姿勢も判定されます。
 
[面接テスト]
園長先生を中心に2、3名の試験官によって行われ、両親の育児の姿勢と幼稚園
の保育の方針に違和感がないかなどを判定するもので、ほとんどの幼稚園で親子
同伴の面接が行われます。
テストを受けるのは、2歳から4歳の幼児で、能力の差など見極めにくい年代で
すから、両親面接の占める比重は大きく、幼児の発育状態2割、両親の面接8割
とさえ言われています。
父親には「園を選んだ理由、志望理由」、母親には「育児の姿勢」などを中心に
した質問が行われています。ご両親には、かなりのプレッシャーがかかるようで
すが、きちんとした準備をしていれば問題ありません。
子どもには、成長の様子がわかる簡単な質問が中心になっていますから、年齢に
相応しい幼児らしい対応ができれば問題はなく、「面接試験!」などと大げさに
考える必要はありません。
 
以上、試験の概要についてお話しましたが、狙いがどこにあるか、おわかりいた
だけたと思います。幼稚園側は、ご両親の育児の姿勢と成果、といっても、まだ
出発したばかりの、しかも中間報告のようなものですが、そこをみているのです。
育児は、毎日の積み重ねであり、今日あるお子さんの姿は、ご両親の「育児の成
果」であるからです。
その育児の方針と園の保育の方針に違和感や矛盾がなく、共通認識のあることが、
合格への道につながるわけです。入園準備は、「はじめに有名幼稚園がありき」
ではなく、「はじめに我が家の育児の方針ありき」でなければならない理由は、
ここにあります。
 
ある名門小学校の説明会で、校長先生が、こうおっしゃったことがありました。
 
「受験に必要な知識や礼儀作法なるものを、泥縄式に詰め込んで、受験準備、
事足れりとお考えでしたら、それは誤りであることに気づいてほしい」
 
幼稚園の受験準備も同じこと、いや、年齢を考えると、泥縄式に詰め込むのは、
もっと危険であり、心がゆがんでくることを忘れてはならないでしょう。まして
や、志望する幼稚園の保育方針に合わせるために、育児の方針を変えるなどは、
賢明なお母さん方のやるべきことではありません。
 
次に、有名幼稚園で実施されている入園テスト内容について説明いたしましょう。
 
(1)プレイ・ルームでの自由遊び
2歳から4歳の幼児であれば、当然、興味を示すおもちゃが用意されたプレイ・
ルームで、10数人の子どもたちが遊んでいます。
 
ほとんどの入園テストは、自由遊びから始まります。
幼児には、初めて入った所であり、初めて会った先生であり、初めて会ったお友
達という、「初めて尽くし」の経験です。ここで泣いて入室できなければ、失格
になる幼稚園もあるといわれていますが、多くの幼稚園の場合、大らかに対処し
ているようです。「お母さんのもとを離れても楽しいことがある」ことを、きち
んと体験しているお子さんは心配ありません。入園テストの第一関門は、お母さ
んから離れることができるかどうかなのです。
 
入室した子どもたちは、先生方のやさしい誘導を受け、じゅうたんの上に靴を脱
いであがります。靴の向きを変え、きちんと並べられる子もいます。教室で見て
いても、その仕草はあどけなく、とても可愛いものです。そして、遊び道具が目
に入ると、遊びがはじまります。子どもは遊びが仕事ですから、いろいろなこと
がわかるものです。
例えば、おもちゃを見ても何の反応も示さない子、逆に、遊ぶことより所有欲が
先行し、おもちゃを独り占めすることに熱心な子、一つのおもちゃで満足して遊
んでいる子、かと思えば、次から次へと手を出しては飽きて放り投げてしまう子、
お母さんのことが気にかかり、おもちゃで遊ぶどころではない子、どうしてよい
のかわからずに泣きだす子など、さまざまです。また、友達と仲良く遊ぼうと積
極的に話しかける子、反対に引っ込み思案でうまくとけこめない子、協調性のな
いわがままな子、神経質な子といったように、その子の性格や社会性、言語の発
育状況などもわかります。
 
繰り返しますが、子どもは遊びが仕事であり、新しい体験を積み重ねる場です。
遊びを支えているのは、好奇心です。旺盛な好奇心こそ、幼児の心身の発育を促
す原動力です。幼児にとって遊びは、生活の基本的なリズムであり、健全な発育
をとげているかどうかを知るバロメーターでもあるのです。ですから、どのよう
な育児をしてきたか、その結果が、無心に遊ぶ子どもの姿に、ごく自然に表われ
ます。
「育児、それは生まれて今日までの、ご家庭における教育の集大成である」とい
われる理由は、ここにあるのです。
 
友達と仲良く遊ぶには、コミュニケーションが求められます。それには、年齢に
ふさわしい言語の表現力、理解力が必要です。コミュニケーションができれば、
楽しく遊ぶには、自分のやりたいことだけを押し通せないことや、仲良くするこ
と、また守るべきルールのあることなど、いわゆる共通の約束事、社会性が必要
であることもわかってきます。ですから、友達と仲良く遊べる子は、自分の考え
を言葉で表現でき、相手のいうことも理解でき、わがままは通らないといったこ
とを知っているわけです。これは非常に大切なことで、幼いながらも、年齢にふ
さわしい自我と自我をぶつけあい、やっていいこと悪いことを、体験を経て学習
し、身につけているのです。
 
このように自由遊びを通して、子どもを取り巻く環境、子育ての姿勢がにじみ出
てくるもので、これほど正直に表われるものもないでしょう。幼稚園側の狙いは、
ここにあるのです。
 
以前にもお話しましたが、4歳児の話せる言葉は、1500以上と飛躍的に伸び
てきますが、お母さんと一緒に遊んでいるだけでは、なかなか増えないものです。
子どもは、いつも使っている言葉を、無意識の内に学習していくもので、子ども
同士の遊びが不足すると、当然、話す機会も少ないため、うまくコミュニケーシ
ョンができないものです。核家族化、少子化に伴い、兄弟、姉妹も少なく、近所
に同じ年齢の子どもがあまりいないなど、子どもを取り巻く環境の変化を見逃す
ことはできませんが、だからといって、子どもを一人で遊ばせ、お母さんだけが
相手の毎日では、やはり、コミュニケーションがうまくいかない子になりがちで、
引っ込み思案な子、わがままな子になる傾向にあるようです。3年保育が過熱気
味にあるのも、こういった環境から、わが子を解放してあげたい気持ちが強く働
いているのではないでしょうか。
 
[親子テスト]
ところで、お茶の水女子大学附属幼稚園や暁星幼稚園、白百合学園幼稚園、雙葉
小学校附属幼稚園のように、親子でプレイ・ルームへ入り、一緒に遊ぶテストが
あります。遊ぶ様子から、普段の親子のかかわり方、母親の心遣い、親子の絆な
どを見ています。
 
例えば、以下のような態度を示したお母さん方から、先生方は、どのような印象
をもたれるでしょうか。
「子どもだけ遊ばせ、お母さんは見ている」
「子どもよりお母さんが夢中になってしまう」
「むやみに注意や指示を出し、その言葉がきつい」
「自分の思い通りにならないからと、子どもを叱ってしまう」
「(積み木の模倣構成など)間違いをすぐに注意する」
いかがでしょうか。
 
冷静なときには隠せても、わが子が苦戦をし、うまくいかないと、本性の表われ
るお母さん方がいます。普段、お子さんを叱るときの言葉遣いを思い出してくだ
さい。語気鋭く、かなり乱暴な言葉になっていないでしょうか。そういった傾向
にあると、つい、言葉が、態度が、正直に出やすいものです。逆に、親子で楽し
く遊ぶ姿からは、あたたかい家庭の雰囲気や育児の姿勢がうかがえ、先生方にも、
よい印象を与えるのはいうまでもありません。こういったところに、日頃の家庭
の素顔が出がちなのです。
 
子どもだけ遊ばせているのでは、一緒に遊ぶ目的を達していませんから論外です。
子どもの自主性に任せるのは結構ですが、「お母さんと一緒に」と指示されてい
ることに注意してください。遊びを通して、普段、どういった生活を送っている
かを見ているからです。
また、いかにも育児に専念していますとばかりに、その熱意を示すのはいいとし
ても、お子さま不在の遊びは、これも問題外です。
 
以上のケースに関しては、まだ笑って済ませられますが、子どもを叱り、その叱
る言葉がお母さんらしくない品性に欠けるものであったらどうでしょうか。たと
え、その時まで順調に進んでいたとしても、大きなペナルティーとなるのはいう
までもありません。
 
さらに、何から何まで指図をし、どちらが主人公なのかと、先生方を苦笑させる
過干渉型のお母さん方もいます。こういったお母さんのもとでは、2歳児から4
歳児に、もっとも大切な好奇心は育ちません。好奇心は、小さな疑問を解決する
意欲を育てる起爆剤です。その意欲から行動が生まれ、試行錯誤を積み重ねて得
たものが知恵となります。これは、勉強をして身につける知識ではなく、子ども
らしい子に育っていくために、体験を通して培われた、大切な知恵です。
好奇心は意欲を育て、意欲は知恵を育みます。
 
「どうも、うちの子は消極的で、私がいないと何もしないのですよ」
と嘆くお母さん方がいますが、それは、お子さんが好き好んでそうなったのでは
なく、育児が、過干渉な結果であることに気づいてほしいですね。
 
また、ある幼稚園のジェスチャー遊びで、「掃除機を使って掃除の真似をする様
子」を演じたところ、子どもには、何のことかわからず、なかなか答えが出ませ
ん。
「ほら、ママが、いつもこうやっているでしょう?」
「あっ、ゴルフだ!」
と答えたそうで、笑い話のようですが本当にあった話です。お母さんはキャリア
ウーマンで、一緒に住んでいたおばあちゃんが、家事を仕切っていたことから起
きたものですが、考えさせられたものでした。普段、母親の家事をする様子をあ
まり見ていない結果だったわけです。
料理、洗濯、掃除などをお母さんがやっていれば、こういうことも起きないでし
ょうが、育児の大半をベビーシッターなどに任せているようでは、こんな時に、
しっくりといかない親子関係が、顔をのぞかせる可能性のあることも、肝に銘じ
ておきましょう。
(次回は、「幼稚園のテスト(2)についてお話しましょう)

過去の記事

全て見る