めぇでるコラム

2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★なぜ、ペーパーテストを行わない学校が増えたのでしょうか

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        「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
            (第18号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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なぜ、ペーパーテストを行わない学校が増えたのでしょうか
 
平成4年の秋のことです。
当時、大手の幼児教室で、志望校別指導部門の慶應義塾幼稚舎を担当していま
した。試験を受けてきた子ども達が、こういったものです。
「先生、ペーパーは1枚だけでした」
事実、その年のペーパーテストは、「話の記憶」1枚だけでした。
 
同じ年の12月のことです。
今度は、お茶の水女子大学附属小学校の試験を受けてきた女の子が、
「先生、試験はありませんでした」
正しくは、「ペーパーテストはありませんでした」ですが、正直なところ、び
っくりさせられました。
受験塾で志望校を担当している者にとって、傾向を読めなかったのですから、
これほど恥ずかしい話はありません。名誉挽回とばかりに、その原因を探して
みました。
 
この年から、新しい学習指導要領が実施され、幼稚園の保育も「幼稚園教育要
領」によると、今までの一斉保育から自由保育となり、一人ひとりの個性を伸
ばしていく保育に変わりました。ですから、皆さんのお子さんが通っている幼
稚園は、自由保育になっているはずです。ここに注目してみると、おぼろげな
がら、ペーパーテストを廃止した理由の一端がわかってきたのです。
 
ご存知のように、自由保育といっても自由奔放、何でもありの保育ではありま
せん。一口にいえば、みんなで一斉に同じことを強制的にやるのは止め、自発
的に活動できるように導く保育のことです。例えば、知識や理解力を培うにも、
自分自身で考えたり、工夫する機会や経験をたくさん持たせたり、自分勝手な
考えではなく、客観的なものの見方や考え方を身につけるように指導する保育
のことです。
 
もっと簡単にいえば、一斉保育は他律の保育で、自由保育は自律の保育のこと
です。他律と自律の保育については、わかりやすい歌があります。前にも紹介
しました文部省唱歌の「雀の学校」(清水かつら 作詩 広田龍太郎 作曲)で
す。
 
    チイチイパッパ チイパッパ
    雀の学校の 先生は
    むちを振り振り チイパッパ
    チイチイパッパ チイパッパ
    生徒の雀は 輪になって
    お口をそろえて チイパッパ
    まだまだいけない チイパッパ
    もう一度一緒に チイパッパ
    チイチイパッパ チイパッパ
 
先生がムチを振りながら、「こっちを向きなさい!」とやるのが他律の保育で、
自由保育にはムチを持った先生はいません。以上の保育内容をふまえ、ここか
らは私の勝手な解釈ですから、深くお考えにならずに、読み流してください。
 
新指導要領の狙いは、偏差値教育の弊害など、今までの教育を見直すことでし
た。大胆にいえば、学習指導の基本的な考え方が、今までは、例えば、子ども
の知的な能力を判定する場合、持ち点を百として、「これもできない、あれも
ダメ、これもマイナス」といったように、点数を引いていく「減点方式」であ
ったわけですから、「ペーパーテストは減点方式」と考えるとわかりやすいと
思います。知力だけで能力を判定するわけですから、個性は出る幕もありませ
ん。皆さんが受けてきた教育が、これだったわけです。
 
新しい指導要領では、これを止めて、評価をする場合、持ち点ゼロから出発し、
「これができた、あれもできた、これもいいぞ」と点を積み重ね、合計で何点
取れたかと点数を加えていく「加点方式」になりましたが、行動観察型テスト
の採点は、この加点方式なのです。こう考えるとわかりやすいのではないでし
ょうか。
 
ペーパーテストは、取れた点数で子どもの限られた能力を評価します。行動観
察型のテストは、ある課題に取り組む子ども達の様子を観察し採点しますから、
プロセスを重視しながら、個々の能力を評価します。つまり、個性の尊重です。
 
さらに、こんな定義はありませんが、1+9=□は、答えは1つしかありませ
んから、全員で同じことに取り組む集中思考型保育、□+□=10は、答えが
10通りありますから、一人ひとりを育てていく拡散思考型保育ともいえるの
ではないでしょうか。
すると、小学校の入学試験は、
一斉保育(他律の集中思考型保育)→減点方式→ペーパーテストから、
自由保育(自律の拡散思考型保育)→加点方式→行動観察型テスト
に変わったといえると思います。
 
ペーパーテストを実施している学校も、制作や課題遊び、自由遊び、運動テス
トなどを通して、社会性や協調性を評価、採点し、バランスの取れた成長をし
ているかを判定しています。ですから、入試に必要な知識なるものを、記憶だ
けに頼って詰め込む知育偏重型の受験対策は、どこの学校からも歓迎されない
といえるわけです。
 
現在、国立附属校では、筑波大学附属小学校を除き、お茶の水女子大学附属小
学校、東京学芸大学附属竹早小学校等はペーパーテストをやっていません。私
立校では、慶應義塾幼稚舎、青山学院初等部、学習院初等科、成城学園初等学
校、桐朋学園小学校、川村小学校などもやっていません。
(平成25年10月現在)
 
おもしろいのは、以前は運動テストもなく、ペーパーテストしかやっていなか
った立教小学校が、今ではペーパーテストを廃止して行動観察型に切り替えて
いることです。校長先生は学校説明会で、文言は正確ではありませんが、「私
学がよい子を取り合った時期があったが、それは間違いでした」と指摘され、
翌年の説明会では、「取りっこではなく分けっこの時期に入った」とおっしゃ
っていました。
       
少し古くなりますが、学校側が「ペーパーテストを廃止した理由」を公表した
ことがあります。慶應義塾幼稚舎の舎長が、以前、こうおっしゃったのです。
これはわかりやすい話ですから紹介しておきましょう。
(舎長は校長のことで、東洋英和女学院小学部、青山学院初等部は部長、学習
院初等科は科長、国府台女子学院小学部は副学院長の名称となります)
 
 「受験という現象がある以上、その競争の社会の中で、人より抜きん出て勝
利を占めようと、どんどんエスカレートします。競争社会は、結果を争うわけ
です。だから、私たちは、結果を争うようなテストをしません。結果を点数に
直して、点数で序列をつけるような教育をしていない。点数で子どもの序列を
しないということは、ペーパーテストはしませんというのが、一番わかりやす
いということです」 (週間ポスト 平成6年4月3日号)
 
3月に辞任された加藤三明舎長は、昨年の説明会で幼稚舎の教育目標は、「他
人との競争ではなく自分との戦いである」とおっしゃっていました。
 
さらに注目したいのは、東京女学館小学校です。校長先生が代わった年から、
面接と推薦状だけで入学を決めるAO方式(アドミッションズ オフィス)を
始めました。20名からスタートし、現在40名になりましたが、やがてはす
べて、この方式に変えていきたいと話されました。もしも、これが実現すると、
「私学もやがて抽選で!」といった夢のような話になります。まあ、夢でしょ
うけれど。  
 「受験のために子ども達に大きな負担をかけたのは、塾や親の責任ではなく、
そういう環境を作った学校にある」と言い切った方です。その校長先生は代わ
られましたが、募集人員80名中、AO方式40名、一般入試40名で実施さ
れています。(平成25年10月現在) 子ども達のために頑張ってほしいと、
心から期待しています。残念ながら大学は、閉鎖されることになりました。
 
ところで、皆さんご存知のごとく、平成14年度から実施されていた学習指導
要領ですが、学習内容が削減された問題などを含め、早々と改訂されました。
しかし、すべてが悪かったわけではありません。「ゆとりの教育」を目指し、
私学の大きな特徴であった週五日制、英語教育も始まりました。少人数制にい
たっては、私立の小学校は都心の公立校にかなわなくなっているでしょう。こ
の状態を「公立校の逆襲が始まった」と、東洋英和女学院小学部の寺澤前部長
は説明会でおっしゃっていました。ですから、私学には脅威でもあったわけで
す。
 
事実、日本女子大学附属豊明小学校、立教女学院小学校、東洋英和女学院小学
部、青山学院初等部、成蹊小学校、昭和学院小学校、日出学園小学校、国府台
女子学院小学部など、最近の私立校の環境整備には、目を見張るものがありま
す。
 
また、桐朋小学校は1クラス24人、成蹊小学校では4年生まで1クラス28
人、日出小学校は2年生まで25、26人編成の少人数制を実施するなど、私
学ならではの対策が顕著になっているのも事実です。
 
創刊号でも紹介しましたが、昨年の慶應義塾横浜初等部、今年の4月には茨城
県取手市に江戸川学園取手小学校、そして来年の4月には神奈川県藤沢市に日
本大学藤沢小学校が、茨城県つくばみらい市には開智小学校が開校されます。
受験者が減る中で、なぜ新しく私学が創立されるのでしょうか。誤解を恐れず
に言えば、画一的な教育よりユニークな教育環境で、わが子を学ばせたいと希
望する保護者が増えているからではないでしょうか。
 
そこで問題になるのは、志望校の選び方です。
それは何かといえば、小学校選びは聖書の「始めに言葉ありき」ではありませ
んが、「始めにご家庭の教育方針ありき」であることです。これが「始めに名
門校の教育方針ありき」では、かつてバブル経済全盛期の頃、マスコミがお受
験騒動と指摘したように、「受験戦争の低年齢化」、「幼い子どもを受験戦士
に仕立ててよいのか」などと批判の対象になりかねないからです。本当は、こ
ういったことが起きること自体、異常なのですが、いわゆる「受験地獄」に陥
らないためには、ご両親でよく話し合いをし、受験に取り組むことが大切です。
前回お話ししたスケ―ジュールをもとに、慎重に計画を立て、「ゆっくり、じ
っくり、しっかり」と「3くり」で挑戦してほしいと願っています。
      (次回は、「小学校の入学試験の内容」についてお話しましょう)
 

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