めぇでるコラム

2016さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>★★幼稚園の入園テストとは(2) 課題遊び

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         「めぇでる教育研究所」発行
   「2016さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>」
              第5号
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幼稚園の入園テストとは(2) 課題遊び
 
マットの上でクマさんになり、高さの違うお山を3つ登り、跳び越える。
平均台を歩き、下りて、的に向かってボールを投げる。
         (東京学芸大学教育学部附属幼稚園竹早園舎)
 
ホールをかけ足で回り「走って!」「並んで!」の合図で、走ったり並んだ
りする。                  (白百合学園幼稚園)
 
自由遊びの中で、課題遊びが行われます。言葉はふさわしいかどうか疑問です
が、運動テストも、その一つです。先生方の目は、楽しそうに取り組んでいる
幼児に注がれています。
 
3~4歳頃には、運動機能の発育が盛んになります。部屋の中だけではなく、
外で遊ぶ機会も多くなり、運動量も増えてきます。危ないことでも、何気なく
やってしまいますから、うっかりできません。お母さん方なら、どなたも経験
されていると思います。「お家にいた方が手もかからないのに」と思うお母さ
んはいないでしょう。家事が一段落ついたところで、近所の公園などに出かけ、
一緒に遊んでいるのではないでしょうか。そうしたお母さんのやさしい心遣い
で、のびのび育てられた子は、先生の模範演技を見て、元気いっぱいに挑戦し
ます。
ですから、平均台でバランスを崩して落ちても、再び乗り、最後まで頑張り、
元気よく跳び下ります。 こういった一連の行動から、先生の話を聞き取る力、
理解し表現する力や取り組む意欲、こういったことがわかるわけです。難しい
ことはさせませんし、先生の指示通りにできればいいのです。2~4歳児なら
そなわっている言語や運動能力を、総合的に判定するのですから。
 
しかし、「横転が出来ない」、「30センチほどの高さから跳び下りることが出
来ない」のでは、年齢にふさわしい運動能力が、発育しているとは考えられま
せん。現代っ子は、骨折しやすいと言われています。最近では、「ぶらさがる」、
「転がる」、「跳び下りる」といった、簡単なことが出来ない子が増えている
そうです。運動能力は、自然に発達するのではなく、遊びや日常生活を通し、
体を動かす中で育まれます。もし、出来ないことがあるならば、そういった運
動をする機会を与えられなかったか、十分ではなかった結果ではないでしょう
か。
 
体験しないと育まれないのが、運動能力です。
もし、お母さんが、「危ないから、けがするから、そんなことをしてはいけま
せん!」と過保護や過干渉になり過ぎると、体験学習に必要な好奇心の芽を摘
むばかりか、それにともなう運動機能も、正常に発育しないおそれもあります。
これは子どもの責任ではなく、親の責任でしょう。なぜなら、現在あるお子さ
んの姿は、今まで手塩にかけてきた育児の結果だからです。
「ご近所に、一緒に遊ぶお友達がいないものですから……」
「都心のマンションですので遊ぶ場所もなく、交通量も多い所ですから危なく
て……」
「恐い事件が起きているものですから……」
不幸なことですが、幼児を取り巻く環境は、決して安全ではありません。しか
し、運動能力は、健康であることと密接な関わりを持っています。お子さんが、
ゼロ歳の頃を思い出してください。“はいはい”を始めたとき、部屋にある危
ないものは片付けました。時間を決めて、日光浴をさせました。歩き始めると、
外へ連れていきました。こういったことの目的は、五体の健全な発育ではなか
ったでしょうか。
 
幼稚園側の求めている子、それは健康な子どもです。健康な子は、元気で、明
るい子であり、情緒の安定しているのは言うまでもありません。
 
「大きな栗の木の下で」「糸巻きの歌」「ちょうちょ」「チューリップ」な
どから選び、好きな歌を一人で歌う。     (雙葉小学校附属幼稚園)
 
好きな動物のお面をつけて、その動物ごとにピアノに合わせ、先生と一緒に
お遊戯をする。               (雙葉小学校附属幼稚園)
 
幼稚園の遊戯会などで見かけることですが、楽しく歌うお子さんばかりではな
く、嫌々ながら歌っているお子さんもいれば、黙って下を向き、まったく歌わ
ないお子さんもいます。
幼児のことですから、ちょっとしたことで気分が変わってしまうこともありま
すが、こういった様子から、育児の姿勢などもわかるものです。
たとえば、お母さんがお子さんと一緒に、楽しく歌っていれば、お子さんは歌
います。テレビに映るアイドル歌手の動きを、真似しながら歌う子どもの様子
を見ると、言葉は幼児のボキャブラリーをこえていますから、舌足らずになり
がちですが、本当に楽しそうです。言葉より動作で表現する年齢ですから、そ
こには、屈託のない自然な動きが表われます。身振り、手振りによる身体表現
も、幼児の成長を推し量る、重要なポイントの一つです。豊かな愛情に包まれ、
のびのびとした環境で育てられた子には、明るい、子どもらしい表現がみられ
ます。
もちろん、巧拙は関係なく、「先生の指示に従う、真似をする」、これも、集
団生活を送るうえに、欠くことのできないものです。「むすんでひらいて」や
「ぞうさん」「チューリップ」などの曲を、お子さんと一緒に楽しく歌い、踊
れるお母さんであってください。幼児の歌や身体表現は、心身の発達のバロメ
ーターであることも忘れてはいけないと思います。
 
過去にこんな問題もありました。
 
ホールから上履きを脱いで、じゅうたんのある部屋に移り、チョコとせんべ
いをもらう。(お菓子を食べる前に先生にウェットティッシュで手を拭いても
らう)食べ終わった子どもから、ゴミを片付け、「ごちそうさま」をして、靴
をはき、並んで帰ってくる。          (白百合学園幼稚園)
 
先生からお菓子をいただいて食べる、おやつの時間です。基本的な生活習慣を
みているわけですが、ここでもいろいろなことがわかります。
 
「ありがとう」といえる子、黙っている子。「いただきます」「ごちそうさま」
が素直にいえる子。お菓子の包装紙を無造作にまとめ、机の上に置きっぱなし
にする子もいれば、部屋の隅にあるごみ箱へきちんと捨てる子、さまざまです。
2~4歳の幼児が、おやつをもらった場合、まず「ありがとう」「いただきま
す」、そして食べたならば「ごちそうさま」といって、お菓子の包装紙を片付
けるなどの習慣は、身につけておきたいものです。それに加え、食べる前に手
を洗う習慣が身についていれば、言うことはありません。おやつをどのように
食べるか、これほど簡単に優劣がついてしまうもの、お母さん方の子育ての姿
勢が表われるものもないでしょう。
 
ですから、「躾」に関しては、こういったおやつの時間を設ける他に、おみや
げに、子どもの興味をそそる折り紙やあめを渡したこともありました。こうい
ったことなどは、ごく自然に行われますから、幼児の態度にも、普段のありの
ままの姿が現れます。つまり、テストを受けているのはお子さんですが、「評
価されているのはお母さん」だということになるわけです。
 
「子どもの自主性を尊重し個性的に育てたい」と、おっしゃるお母さん方がい
ます。しかし、そういった考えを持ったお母さんに育てられた子は、親の期待
とは逆に、ともすると、あいさつもできない、わがままな性格になりがちです。
それは、2~4歳児ならば当然、身につけていなくてはならない「躾」を、な
おざりにしている場合があるからです。こういった「躾」は、その年齢にふさ
わしいときに、身につけるものばかりですから、お母さんの育児の方針、ご家
庭の教育方針など、手に取るようにわかります。
 
しかし、どの幼稚園でも、不自然な礼儀作法を身につけることを望んでいませ
ん。ある市の青少年育成運動のキャッチフレーズに「オアシス運動」というの
がありました。これは「オはよう」「アりがとう」「シつれいします」「スみ
ません」の頭文字を並べたもので、「しつれい」はともかく、日常生活に必要
なあいさつは、きちんとできるようにしておきたいものです。
 
  裏返しになっている洋服をもとに戻しなさい。
  洋服のボタンかけをしなさい。
  トイレットペーパーを上手にちぎりなさい。
                  (白百合学園幼稚園)
 
さっさと戻してしまう子、ボタンがけが苦手な子、先生の手助けが必要ではな
いかと思える子、どうにもならなくなってしまう子など、さまざまです。なぜ、
こういったテストが行われるのでしょうか。
幼稚園は、ほとんどの子にとり、生まれて初めて集団で生活する所です。集団
生活では、他人に迷惑をかけないことが基本的な条件ですから、自力でできな
くてはならないことがたくさんあります。衣服の着脱、食事、そして排泄、こ
の3つが、他人の手を借りずにできないようでは、たとえ他の面がすぐれてい
ても、入園はおぼつかないでしょう。その他、ハンカチ、ティッシュを持ち、
それらを正しく使えるか、つめは短く切ってあるかなどを通して清潔感は育っ
ているかなどを、幼稚園側は見ているわけです。ハンカチを持っていても、手
を洗ったときにズボンで拭いてしまう子、ティッシュを持っていても、はなを
手で拭いてしまう子では、お母さんの育児の姿勢は、明らかです。
 
さらには、スモックを着て、おやつを食べ、後片付けをする様子や、靴下を脱
がせ、後で自分のものをはくといった基本的な生活習慣をチェックしながら、
区別、選別といった知的な能力まで判定することも可能なわけです。こういっ
たことは、いずれも躾と同様、毎日の生活と深い関わりを持ち、育児の「かな
め」となっていることです。お子さんの反応は、お母さん方の日常生活の姿勢
が、そのまま表われるものですから、普段の生活がいかに大切であるか、おわ
かりいただけたと思います。
 
数えることができるより、文字を読めるよりも、まず、基本的な生活習慣がき
ちんと身についていることこそ、幼稚園が求めている子ども像でもあるのです。
お子さんの一日の生活を見直してください。何か出来ないことはないでしょう
か。毎日、一緒にいるだけに、お母さん方は、案外、気づかないものなのです
か……。
 
このように、テストからは、ご家庭の育児の姿勢が、手に取るようにわかるわ
けです。
しかし、基本的な生活習慣は、月齢の差がはっきりと出やすいものです。11
月の試験の時におむつが外れていなくても、「入園する4月までに取れていれ
ば結構です」という幼稚園もありますし、「まだ、すべてがきちんとできる年
ではないことを考えてあげましょう」という幼稚園もあります。生まれ月、月
齢を無視すると、お子さんの心が歪むことも忘れてはならない、大切な育児の
心構えです。入園試験のために、心が歪むような準備だけは、やるべきではあ
りません。
 
最後に、白百合幼稚園の清水前園長の話を、紹介しておきたいと思います。
 
「私どもが希望しておりますのは、小さいときから入園テストですとか、面接
を受けて訓練されることではなく、むしろ日常生活の中で、特に、お父さま、
お母さまの、生きたお手本の中で育てられたお子さま方、それから、年齢相応
に基本的な生活習慣が、ある程度、これはまだ完全にできませんから、ある程
度、身についたお子さま方、明るく、素直で、イキイキとしたお子さま、そう
いった子ども達を希望しております」
 
「生きたお手本の中で育てられたお子さま方」、これがすべてではないでしょ
うか。
(次回は、「入園テストの 3」についてお話ししましょう)

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