2027さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>
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「めぇでる教育研究所」発行
2027さわやかお受験のススメ
<現年中児 今から始める小学校受験>
(第17号)
2027年度入試(2026年秋に実施)を成功に導く手引です。
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なぜ、ペーパーテストを行わない学校が増えたのでしょうか
古い話で恐縮ですが、平成4年の秋のことです。慶應義塾幼稚舎の試験を受けてきた子ども達が、こう言いました。
「先生、ペーパーは1枚だけでした。」
事実、その年のペーパーテストは「話の記憶」1枚だけでした。
同じ年の12月のことです。今度は、お茶の水女子大学附属小学校の試験を受けてきた女の子が、
「先生、試験はありませんでした。」
正しくは「ペーパーテストはありませんでした」ですが、入試形式の突然の変化がありました。その原因を探してみると、新しい保育の形が影響していることが分かってきました。
この年から新しい学習指導要領が実施され、同時に幼稚園の保育も「幼稚園教育要領」の改訂が行われ、今までの一斉保育から自由保育となり、一人ひとりの個性を伸ばしていく保育に変わりました。ですから、皆さんのお子さんが通っている幼稚園の保育は自由保育で、ここに注目してみると、おぼろげながらペーパーテストを廃止した理由の一端がわかってきたのです。
ご存知のように、自由保育といっても自由奔放・何でもありの保育ではありません。簡潔に言えば、みんなで一斉に同じことを強制的にやるのはやめ、自発的に活動できるように導く保育のことです。例えば、知識や理解力を培うにも、自分自身で考えたり、工夫する機会や経験をたくさん持たせたり、自分勝手な考えではなく、客観的なものの見方や考え方を身につけるように指導する保育のことです。
つまり、一斉保育は他律の保育で、自由保育は自律の保育のことです。他律と自律の保育については、わかりやすい歌があります。童謡「雀の学校」(清水かつら作詩・広田龍太郎作曲)です。
チイチイパッパ チイパッパ 雀の学校の先生は
むちを振り振り チイパッパ チイチイパッパ チイパッパ
生徒の雀は輪になって お口をそろえてチイパッパ
まだまだいけないチイパッパ もう一度一緒にチイパッパ
チイチイパッパ チイパッパ
先生がムチを振りながら「こっちを向きなさい!」とやるのが他律の保育で、自由保育にはムチを持った先生はいません。こういった保育内容をふまえ、ここからは独自の解釈ですから、深くお考えにならずに読み流してください。
当時の新指導要領の狙いは、偏差値教育の弊害などを見直すことでした。大胆に言えば、今までの学習指導の基本的な考え方は、ペーパーテストのように持ち点を100として「これもできない、あれもダメ」と点数を引く減点方式であり、主に知力だけを判定したものでした。改訂された「幼稚園教育要領」では、持ち点ゼロから始め、子ども一人ひとりの個性を見極め「これもできた、あれもいいぞ」と点を積み重ね、合計で何点取れたかという加点方式に変えました。ペーパーを使わない行動観察型のテストは、この加点方式なのです。
ペーパーテストは取れた点数で子どもの限られた能力を評価しますから、個性の出る幕はありませんが、行動観察型のテストは、絵を描いたり、自分の意見を発表したり、課題に取り組む子ども達の様子を観察して採点しますから、プロセスを重視し個々の能力を評価します。つまり、個性の尊重です。
また、こんな定義はありませんが、計算の問題から考えてみました。ヒントになったのは「ママ、生まれたらこんなふうに育ててね」(家庭教育システム研究会著・横山ふさ子画・サンマーク出版刊)という育児の本で、「画」とあるように漫画です。
1+9=□は答えが1つしかありませんから、全員で同じことに取り組む集中思考型保育。□+□=10は答えが11通りありますから、一人ひとりを育てていく拡散思考型保育と考えると、
一斉保育(他律の集中思考型保育)→減点方式→ペーパーテスト
自由保育(自律の拡散思考型保育)→加点方式→行動観察型テスト
となり、幼稚園の保育の方針が他律の一斉保育から自律の自由保育に変わったことから、小学校の入学試験の形式も減点方式だけではなく、加点方式を加えたと言えるのではないでしょうか。
ペーパーテストを実施している学校も、課題遊び、自由遊びなどの行動観察テストや制作、運動テストなどを通して、社会性や協調性など集団生活への適応力を評価・採点し、バランスの取れた成長をしているかを判定しています。ですから、入試に必要な知識なるものを記憶だけに頼って詰め込む知育偏重型の受験対策は、どこの学校からも歓迎されないと言えるわけです。
前回でもお話ししましたが、現在、国立大学附属校ではお茶の水女子大学附属小学校、東京学芸大学附属竹早小学校等はペーパーテストをやっていません。私立校では、慶應義塾幼稚舎、学習院初等科、桐朋学園小学校、桐朋小学校、川村小学校などもやっていません(令和7年10月現在)。
おもしろいのは、以前は運動テストもなく、ペーパーテストしかやっていなかった立教小学校が、今ではペーパーテストを廃止して行動観察型に切り替え、運動テストはもちろんのこと、男の子が苦手とするダンスまで取り入れていることです。以前の学校説明会で、文言は正確ではありませんが「私学がよい子を取り合った時期があったが、それは間違いでした」と指摘され、「取りっこではなく分けっこの時期に入った」とおっしゃっていました。
「ペーパーテストを廃止した理由」を公表した学校があります。かなり前になりますが、慶應義塾幼稚舎の舎長が以前こうおっしゃったのです。これはわかりやすい話ですから紹介しておきましょう。余談になりますが、舎長は校長のことで、東洋英和女学院小学部、青山学院初等部は部長、学習院初等科は科長、光塩女子学院初等科は校長、国府台女子学院小学部は副学院長の名称となります。
「受験という現象がある以上、その競争の社会の中で、人より抜きん出て勝利を占めようと、どんどんエスカレートします。競争社会は結果を争うわけです。だから私たちは結果を争うようなテストをしません。結果を点数に直して、点数で序列をつけるような教育をしていない。点数で子どもの序列をしないということは、ペーパーテストはしませんというのが一番わかりやすいということです。」(週刊ポスト 平成6年4月3日号)
辞任されて教員に復帰された加藤三明元舎長は説明会で、毎年のように「幼稚舎の教育目標は、他人との競争ではなく自分との戦いである」とおっしゃっていました。
さらに注目したいのは、東京女学館小学校です。平成12年に就任された田浦桂三校長(同15年退任)は、面接と推薦状だけで入学を決めるAO方式(アドミッションズ・オフィス)を始めました。文言は正確ではありませんが、「受験のために子ども達に大きな負担をかけたのは、塾や親の責任ではなく、そういう環境を作った学校にある」と言い切った方です。募集人員80名中、AO方式20名からスタートし、令和7年10月現在、募集人員72名中AO方式40名程度(内約3名「国際枠」)、一般入試30名程度になっています。「やがてはすべてこの方式に変えていきたい」と先生は抱負を語っていましたが、もしこれが実現すると、「私学もやがて抽選で!」といった夢のような話……まあ夢でしょうけれど、子ども達のために頑張ってほしいと期待しています。残念ながら大学は、在学生全員が卒業した2016年3月に閉鎖されました。
ところで、「ゆとりの教育」を目指した平成14年度から実施された学習指導要領から、私学の大きな特徴であった週五日制・英語教育が公立でも始まりました。少人数制に至っては、私立の小学校は都心の公立校にかなわなくなっている学校もあるでしょう。この状態を「公立校の逆襲が始まった」と、東洋英和女学院小学部の寺澤東彦元部長は説明会でおっしゃっていました。ですから、私学には脅威でもあったわけです。
事実、日本女子大学附属豊明小学校、立教女学院小学校、東洋英和女学院小学部、青山学院初等部、成蹊小学校、昭和学院小学校、日出学園小学校、国府台女子学院小学部など、最近の私学の環境整備には目を見張るものがあります。
また、桐朋小学校は2年生まで1クラス24人、成蹊小学校では3年生まで1クラス28人、日出小学校は2年生まで25・26人編成の少人数制を実施するなど、私学ならではの対策が顕著になっているのも事実です。
さらに学校も増えています。2013年に慶應義塾横浜初等部、2014年4月には茨城県取手市に江戸川学園取手小学校、2015年4月には神奈川県藤沢市に日本大学藤沢小学校が、茨城県つくばみらい市には開智望小学校が開校され、2016年4月には千葉県流山市に国際暁星流山小学校が、2019年4月には東京農業大学稲花小学校が開校しました。北海道にも私立小学校が開設され、2024年には開智所沢小学校が開校となりました。
受験者が減る中で、なぜ新しく私学が創立されるのでしょうか。誤解を恐れずに言えば、画一的な教育よりユニークな教育環境でわが子を学ばせたいと希望する保護者が増えているからではないでしょうか。
なお、2022年4月に東京都立立川国際中等教育学校附属小学校が開校しました。公立も小中高12年間通しての教育、一貫教育に参入です。「公立校の逆襲」第2弾になるのでしょうか。今後も注目ですね。
さて、そこで問題になるのは、志望校の選び方です。
それは何かと言えば、小学校選びは聖書の「始めに言葉ありき」ではありませんが、「始めにご家庭の教育方針ありき」であるべきです。これが「始めに名門校ありき」では、かつてバブル経済全盛期の頃、マスコミがお受験騒動と指摘したように、ブランド志向によって起きた「受験戦争の低年齢化」「幼い子どもを受験戦士に仕立てていいのか」などと批判の対象になりかねないからです。
本当は、こういったことが起きること自体、異常なのですが、いわゆる「受験地獄」に陥らないためには、ご両親でよく話し合いをし、受験に取り組むことが大切です。
「教育は、家庭の教えで芽を出し、学校の教えで花が咲き、社会の教えで実がなる。」
これは明治初期に文部省から高等科(現在の5・6年生)の家庭に配布されたものですが、「どんな花を咲かせたいのか」、これこそ学校選びの基本ではないでしょうか。
小学校の受験は、前々回説明しましたスケジュールをもとに、慎重に計画を立て、「ゆっくり、じっくり、しっかり」と、ゆとりをもって挑戦するものであることを、肝に銘じて頂きたいのです。
(次回は、「求められる4つのパワー」についてお話しましょう)
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