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めぇでるコラム : 2016年4月 2ページ目

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>入試問題を分析する   記憶に関する問題

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        「めぇでる教育研究所」発行
 2017さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
             第40号
 年長児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★入試問題を分析する★★
 
◆入試情報◆
早稲田実業学校初等部 
学校入試説明会 
日時 5月29日(日)
   1回目 10:00~11:30  2回目 13:00~14:30
   会場 早稲田大学 大隈講堂  予約不要 上履き不要
学校見学会
   日時 9月3日(土) 9:00~12:00
   予約不要 上履き不要 学校案内・願書頒布
                    (初等部ホームページより)
 
成蹊小学校
  第1回 学校説明会 日時 6月 4日(土)時間未定
  第2回 学校説明会 日時 9月 3日(土)時間未定
  オープンスクール  日時 6月24日(金) 10時40分~12時15分
                    (小学校ホームページより)
※いずれも詳しくは、ホームページで確認してお出かけください。
 
めぇでる教育研究所のホームページの
「お受験情報・リンク」https://www.medel.jp/link/
を開き、各学校
のアドレスをクリックすると、説明会の日程など詳しく知ることができますの
でご利用ください。
 
 [7] 記憶に関する問題
 
プロジェクターを使って、スクリーンに映し出された映像を何十秒か見て、ど
れだけ覚えているかをみる問題です。映像は、イラスト、色、図形、位置など
があります。
 
上映されている間、問題用紙は裏返しにし、本人には見えないようになってい
ます。問題がスクリーンに映っている間に、覚えなくてはならないのですが、
裏返しにされている答案用紙を、そっと見る子がいるそうです。そんな暇はな
いのですが……。
こういった態度には、どんなチェックが入るのでしょうか。まさか、「カンニ
ングの行為でマイナス5点!」などはないでしょう。ただ、不安なのです。不
安の種は、どうやら子どもの頭に浮かぶお母さんの顔のようです。
できないと、怒られるからなのでしょうか。
もし、そうだとすれば、こういったところに、普段の育児の姿勢である「満点
主義の教育ママ」の顔が、表われかねませんね。結果ばかりにこだわらないで、
どうしてできないのだろうと、そのプロセスを考えてあげるお母さんになって
ほしいのです。
 
「私どもは、試験でさえもプロセスを大切に見極めています」
文言は正確ではありませんが、かつて、桐朋小学校の説明会で聞いた話です。
「プロセス重視」、これは家庭学習で忘れてはならない大切な心構えです。 
 
◆絵の記憶
公園で動物たちが遊んでいる絵を20秒ぐらい見て、うさぎがいたところに○、
たぬきがいたところに×、りすがいたところに△をつける問題です。
スクリーンをボーッと見ていたら、
「動物が遊んでいたなぁ……!」
でおしまいですね。
 
◆色の記憶
四角や、三角、丸などの図形に、三色から多くても五色ぐらいの色を塗ったも
のを見て、それと同じところに同じ色を塗る、同じ色のシールを貼るなどの問
題です。
「きれいだな!」
気持ちはわかりますが、感心している場合ではありません。
あっという間に終わります。
集中力です。
 
◆形の記憶
☆△□○といったように、形が並んでいるものを見た後に、下の中から同じも
のを選んで印をつける問題です。
形は、難しいですね。
抽象的で、つかみどころがないからです。
 
◆ 位置の記憶
ます目の中に、動物や昆虫、花や果物、記号や図形がかかれているものを見て、
右側の解答用紙の同じ所に印をつけたり、おはじきを置いたり、シールを貼っ
て答える問題です。
動物や花などは、覚えやすいようですが、図形は抽象的だけに難しいのです。
 
◆音の記憶
例えば、太鼓が6回たたかれた音を聞き、その数だけ○を書くとか、テレビを
使って、動物たちが順番に楽器を鳴らし、だれが、どの楽器であったか、動物
と楽器を線で結ぶ問題などがあります。
 
記憶の問題は、やった経験がなければ、ほとんどできないでしょう。
テストは、このように行われるからです。
 
(スクリーンには、動物たちが公園で遊ぶ様子が映されています)
★スクリーンを見てください。………………………(20秒経過)
「くまさんがいたところに○、うさぎさんのいたところには×をかきましょう」
      
「記憶の問題です」などといった説明もなく、スクリーンに問題が映り、しば
らく沈黙が続きます。
「スクリーンを見てください」といっていますから、説明なしとはいえません
が、ボーッと見ていたら、それまでですね。人間の脳は、「覚えなさい!」と
の明確な指示があって、初めて記憶する作業が始まりますから、これは、心構
えが必要です。
 
登場する動物も多く、公園の様子も複雑な問題がありましたね。
子どもは、どのようにして覚えるのでしょうか。
大人は、「ブランコにくまがいて、滑り台にパンダが、砂場にはうさぎが……」
と理詰めに記憶しようとしますから、これでは覚えきれません。
ところが、子どもは、全体をパシッと頭に収めてしまうそうです。
カメラを考えれば、いいようです。
全体を、頭に写し撮ってしまうらしいのです。
子どもの頭は柔軟ですから、記憶できるそうです。
 
子どもの記憶力には、驚かされることがあります。
電車の好きな子が、東海道線の全部の駅の名前を覚えた話など聞きませんか。
 車博士から鉄道博士、昆虫博士と、よくぞ覚えたものだと感心させられます。
そういえば、3年間分のカレンダーを覚えている年長の子に会ったことがあり
ました。
「平成〇○年の12月31日は、何曜日?」
「水曜日!」
なぜか、去年と今年と来年分の3年間なのです。話を聞いてみると、お父さん
のもらってきた手帳が、余ったのでもらったそうです。そのカレンダーを見て
いて覚えたらしいのです。前後3年間というのも面白いですが、どの年の、月
日と曜日を尋ねても、ピタリと当たるものですから不気味でしたね。 どうな
っているのでしょうか、子どもの頭は。              
しかし、記憶の範囲は前後3年間であることから仕組みがわかりました。来年
の12月31日は水曜日と当てるのですが、再来年の1月1日は、何曜日かが
わからないのです。次の日、翌日のことです。素晴らしい記憶力には感心しま
したが、単に覚えているだけでは、余り役に立たないということです。
 
こういった問題があるからといって、問題集を買い、ひたすら繰り返し訓練す
るのは、考えものです。第一、面白くありません。20秒ぐらい絵を見せられ
て、サッと隠して、
「今、何がありましたか!」
「こんなことして、何になるの、お母さん?」
こういわれて説得できなければ、やっている親の立場がなくなりますね。
お気に入りの絵本の、1ページに描かれている情景をいわせてみると、驚くほ
ど細部にわたり記憶しているものです。こういったものを利用しながら、記憶
するという意識を刺激してみましょう。
トランプを使った「神経衰弱」なども、絶好の教材となります。
こういったステップを十分に踏み、それから問題集を利用すれば、お子さんも
やる気十分に挑戦するはずです。問題意識が芽生えないと、興味を示しません
から、意欲もわきません。
 
記憶は、本当に気ままなものです。 
自分の好きなことは覚えますが、嫌いとなると、もういけません。
やはり、出発点は好奇心ですね。 
そこから、注意力や集中力が働いて、記憶するのでしょう。
普段から、注意力の散漫な子は、やはり、覚えるのも苦手ではないでしょうか。
身辺の整理ができない、おもちゃ箱が乱雑な子も、どうでしょうか。
過保護、過干渉な育児も駄目でしょうね。
何でも自分でやらなければ、段取りがわかりません。
段取りは、前にやった時の経験が生きてきます。
経験は記憶されますから、自分でやることが大切です。
記憶力も試行錯誤の繰り返しで身につくもので、子どもの生活体験と深い関わ
りがあります。
自発性にとみ、自立心の身についている子の記憶力は、すぐれているはずです。
それは、いろいろなことに自力で挑戦しているからです。
 
小学校側も、単に記憶する能力をみているのではないでしょう。
五感を刺激されていれば、記憶力もつきます。
このことです。
ですから、机の上で、問題集でたたき込まれただけの知識は、あまり役に立ち
ません。
単に、大脳神経の回路を刺激して記憶するだけですから、忘れやすいのです。
しかし、頭と体が一体となって覚えたものは、忘れません。
それは、知識ではなく知恵だからです。
身についた知恵の主語は、自分自身です。
詰め込まれた知識の主語は、多くの場合、第三者やお母さん、お父さんではな
いでしょうか。
 
記憶力を培うのは、五感に刺激を与える環境だと思います。
お子さんが、夢中になって取り組む遊びはありますか。
好奇心の旺盛な子は、やはり、記憶力も順調に発達しているといえるのではな
いでしょうか。
(次回は、「構成力・観察力1」についてお話しましょう)
 
幼稚園、始まりましたか。
年長さんになり、少し戸惑っているかもしれませんね。お兄さんやお姉さんに
なりましたから。「さすがお兄さん(お姉さん)!」とプライドをくすぐり、
自信を持たせましょう。「お兄さん(お姉さん)になったのだから!」は、賢
いお母さんのいう言葉ではありません。

よく聞かれる質問にお答えします

来週はクリスマスを迎えますが、いろいろ訳ありなんですね。
街にはジングルベルのメロディが流れ、至る所、赤、緑、白の3色で飾られま
すが、赤はキリストが人類のために十字架に流した血の色、緑はキリストの永
遠の命を象徴する色、白はキリストの純潔を表す色。クリスマス・ツリーは、
アダムが楽園から持ってきた「善意を知る木」で、キリストを表す不滅の生命
の木。ツリーの天辺に飾る星は、キリストが生まれたときに輝いた星で「ベツ
レヘムの星」といわれていますが、どの星かは不明。クリスマス・リースは柊、
刺はキリストの受難、赤い実はキリストの流した血を表したもので、節分で使
う柊とは別種。そして、クリスマスはキリストの誕生日ではなく、聖書の中で
も、その日を特定していません。ご存知でしたか、信者ではない私は、つい最
近まで知りませんでした(笑)。
(拙著 メールマガジン さわやかお受験のススメ 保護者編(6)
 12月11日号より)

今回は、読者の皆様からよく聞かれる質問を編集した『さわやかお受験のスス
メ 小学校受験 Q&A編(100問)』から抜粋したものを紹介しましょう。

Q「問題集をやりたがらないのですが、無理にでもさせた方がいいでしょうか」

A「教室から配布される家庭用の学習か、過去に出題された問題集での勉強か、
状況がわかりませんが、問題集を使っての家庭学習の場合をお話しましょう。
 
幼児の場合は、問題集を開いて、即、勉強とはなりません。
赤ちゃん時代を思い出してください。
例えば、歩くことを考えても、いきなり歩けるようになったわけではなく、は
いはいをし、つかまり立ちをし、歩いては転ぶことを繰り返し、やっと歩ける
ようになったはずです。
幼児が一つの能力を身につけるには、それにふさわしい体験を積むことにより
習い学ぶ、体験学習が必要です。
中高大学の入試と小学校の受験準備の異なるのは、勉強と学習の違いにあると
いえます。
勉強は、字のごとく「強いて勉める」であり、学習は「習い学ぶ」ことです。
幼児は、体験していないことは理解できません。
ですから、問題集を嫌がるのは、自分で体験していない領域のことをさせられ
ているからではないでしょうか。
泳げるようになると、十数年泳がなくても機会があれば泳げるのは、体が覚え
ている、中枢神経系に属しているからだそうです。
教室での宿題であれば、体験したことの復習ですから、苦にしないはずです。

『なぜ、嫌がるのか』、その点を見極め、無理をしないことが大切です。」 

Q「幼稚園の先生から、話をきちんと聞いていないといわれているのですが」

A「小学校の受験で最も大切なのは、話を聞く姿勢を身につけることです。
ペーパーテストのプリントを見ても、答えはダミーも含め、すべて出ています
が、設問はどこにも書かれていません。
中高大の試験のように、『苦手な問題は飛ばして後でやろう』など、できない
相談です。
文字を使えませんから、スピーカーから流れる言葉を聞き取り、素早く対応し
なければならないのです。
行動観察型のテストも同様で、先生の言葉を聞き、理解し、迅速に活動しなけ
れば、得点になりません。
幼稚園の先生にいわれる迄もなく、ご家庭でもサインは出ているはずです。
まず、お子さんの話をきちんと聞いてあげましょう。
話を聞いてくれるのは、子ども達にはとてもうれしいことなのです。
そこから、お子さんは「話はきちんと聞くものだ」ということを学習している
のです。
そして、本をたくさん読んであげましょう。
好きな本であれば、お子さんは静かに聞くはずです。
『話をきちんと聞きなさい!』と柳眉を逆立て、何回いっても改まらないでし
ょう。
話を聞く姿勢は、言葉のキャッチボール、楽しい会話と、お子さんが興味を持
っている本を読んであげる、本の読み聞かせなどから身につくものだからです。」

Q「同じ本を何回も読んでくれとせがむのですが、記憶力が弱いのでしょうか」

A「そんなことはありません。
お子さんは、読んでもらった話が面白いから、一所懸命に覚えているのです。
読んでもらったときは、『面白いな!』といった漠然としたイメージが、繰り
返し読んでもらうことで、物語を少しずつ覚え、小さな木が、時を経て成長す
るように、今では、かなりはっきりと話の筋を記憶しているものです。
完全に覚えてしまうと、次の本へ移っていくはずです。
一人になったとき、ぶつぶつと何やらつぶやきながら、本を見ていないでしょ
うか。
お母さんに読んでもらった話を、思い出しているのです。
また、読んであげている途中に、突然、『そこまでで、いいです』ということ
はないでしょうか。
一人で思い出しながら読んでいるときに、忘れてしまったのか、そこをはっき
りさせたくて『読んでください』と来るわけです。
これは大変なことで、言葉を覚えることで語彙は増え、物語を記憶することで
表現する力もついてきます。
話を聞く姿勢をきちんと身に付けることは、小学校受験で、もっとも大切なこ
とですから、根気よく読んであげましょう。
文字を習い、自分で読めるようになると、もう『読んでください』と来なくな
りますから。」

Q「読んだ後に感想を聞いても、きちんと答えられないのですが」

A「読んだ後に感想を聞くのは、まだ、早いと思います。
先にも触れましたが、1回だけ読んでもらい、きちんとした感想をいえないの
は、その本に対するイメージが、まだ、できていないからです。
何回か読んでもらうことで、次第に固まってきます。
そこまで待ってあげましょう。
ですから、1回だけ読んで、『面白かったでしょう』『何が面白かった』とい
った話かけは、するべきではありません。
また、よく聞く話ですが、お母さん方は、子どもの頃に読んでもらい、面白か
った本を読んであげることがあるようです。
それはいいのですが、『どう、面白かったでしょう』と聞いたことはないでし
ょうか。
そんな時、お子さんは、『……?』となったのではありませんか。
まだ、しっかりとイメージ化ができていないと、答えようがないからです。
2、3回読んだ後で、聞くようにしましょう。
ただし、『お母さんは、おばあちゃんに読んでもらい、こういったことを学ん
だのですよ』と、お母さん自身の感想をいうのは、いいのではないでしょうか。
『ママは、こういったことを感じたんだ』と、考えるヒントになるからです」

Q「昔話の出題率が高いようですが、なぜでしょうか」

A「常識の領域で、例えば、桃太郎と猿、犬、雉の家来や、黍団子、鬼など物
語に出てくるものを線で結ぶといった形で出題されています。
昔話は、多くの場合『昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが、住ん
でいました』と、『いつ、どこで、誰が』と明らかにし、『何を、なぜ、どの
ように』と、いわゆる[5W+1H]の形式で展開しますから、わかりやすく
構成されています。
そして、内容は、勧善懲悪で、正しいものは必ず報われ、悪者は、懲らしめら
れます。
5歳頃から未分化であった情緒が分化され、喜怒哀楽の感情がはっきりと表れ
てきます。
それに刺激を与えられることで、ずるい人間には憤りを覚え、悲しい話には涙
ぐみ、幼いなりにも善悪に対する分別、倫理観や道徳観を育んでいると考えら
れます。

ですから、昔話が出題されるのも、うがった見方をすれば、昔話で学習した様
々なことを、幼稚園や保育園の生活で実地訓練をし、社会性、協調性といった
集団生活への適応力を養い、それが小学校生活をスムーズに送れる基礎となっ
ているからではないでしょうか。

ちなみに、日本の五大昔話は、『桃太郎』『花さかじいさん』『舌切り雀』
『さるかに合戦』『かちかち山』です。
皆さん方はお子さんに、この5つの昔話のあらすじを話すことができるでしょ
うか」

Q「3月生まれですが、図書館へ行っても幼い内容の本しか選べません。心配
ないでしょうか」

A「お子さんは3月生まれですから心配ありません。
興味を持って選べたことを褒めてあげ、必ず読んであげましょう。
お母さんが心を込めて読んであげれば、お子さんはきちんと理解し、次のステ
ップへ向かい、確実に歩み始めるはずです。
選んだ本が、自分で面白くないと判断できることが大切です。
「何よ、こんなやさしい本を!」といってしまうと、お子さんの自尊心は傷つ
き、自分から本を選ぶ気持ちもなくなります。
いろいろな本を読んでもらい、試行錯誤を積み重ねながら、取捨選択し、自力
でレベルをあげていくものです。
お母さんのお気に入りの本ばかり選んで読んであげても、内容をよく理解でき
なければ、読んでもらっている本人は、つらい思いをするだけで、結果的には
本の嫌いな子になりかねません。

ゆっくりと時間をかけ、お子さんの期待に応えてあげることが、レベルアップ
につながるのです。早生まれのお子さんの場合は、4月2日と翌年の4月1日
では、1年の差があるのですから、そのことを忘れずに無理をしないことです。
他のお子さんと比べて評価するのは、賢いお母さんのすることではないと思い
ます」

なお、CD版 『さわやかお受験のススメ 小学校受験 Q&A編(100問)』
は、目下、好評、発売中です。
(次回は、「入試問題の出題範囲」についてお話しましょう)

 

さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>名門幼稚園の保育方針 私立幼稚園編(10)

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         「めぇでる教育研究所」発行
   「2017さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>」
            第22
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私立幼稚園編(10)
 
ここで紹介する情報は、私が説明会や過去のホームページなどから得たものが
中心になっており、説明会、見学会、募集人員に関する情報は、昨年度のもの
であることをお断りしておきます。本年度の情報は、各園のホームページをご
覧ください。 (筆者)
 
桐蔭学園幼稚部
幼稚園から大学までの総合学園で、ご存知のように、高校は全国有数の進学校
です。
自然に囲まれたなどと断るのもはばかられるほど広く、敷地内には小高い丘が
あり、園児達が遊んでいます。また、田畑があり、秋の収穫祭には、そこでで
きたものを食べるそうですから、まさしく自然の宝庫に恵まれた幼稚園です。
 
初等学校教育としての幼稚部  
1.遊びを大切にします。小さないさかいを繰り返しながら、友達との交わり
方を覚えていく。自分のクラスだけではなく、上や下の友達とも仲良く遊べる
ようになります。
2.体を動かす楽しさを体験させます。各人の体力・気力にあったペースで、
跳び箱・鉄棒・まりつき・雲悌などに取り組みます。
3.リード楽器や打楽器を、系統的に無理のない指導で、五歳児全員が演奏で
きるようになります。
4.昔話、童話などのお話を聞き、味わい、話せる力を育てます。空想力や想
像力、そして他人への思いやりを体得していきます。
5.文字を読み、書き、数えることを指導します。年度始めに小学部の低学年
と連絡会議を開き、無理のない努力目標を設定します。
 
やらなくてはならないことを、実際にやってみる、事実をもって考えることを
大切にします。
言いかえれば、遊びと生活を通して、経験によって学んでいくのです。
 
幼児に何よりも大切なのは、「遊びと生活を通して、経験によって学んでいく
こと」で、机に座って勉強するのではなく、身体全体を使って学ぶ学習です。
それを実践している教育が、ここにあります。私立学校の建学の精神は「独自
の校風を目指し、理想とする教育を行うこと」にありますが、幼稚部にも、独
自の教育があります。(5)に掲げられている「文字・数」の指導です。「早
期教育、先取りの教育」などの誤解があってはいけませんから、かつて説明会
では、どのように話されていたかを紹介しましょう。
 
「知的学習の指導については、幼稚部と小学校二年生までを考えておりまして、
幼児学校の構想なのです。これは、勿論、制度的には変えるわけにはいきませ
ん。法律上、こういうことは許されませんので、実際に学習をして、発達段階
に応じて指導するといったことにおいては、非常に有効であると私どもは考え
まして、現在、年少組、年長組、一年生、二年生を一つの大きな塊として、カ
リキュラムを作りまして、そこで行っているのは数と言葉、これを生活を通し
ながら、遊びを通しながら、いろいろな形で言葉と数を学ばせております。こ
れらのカリキュラムができておりまして、年長組になりますと、小学校一年生
ぐらいのことを理解できるようになっております。これが小学校に、段々とつ
ながっていくわけです。                 
(大津 雄史 元園長)
 
ホームページには、「基本を学ぶ」項目の欄に、以下のような説明がありました。
 
年長組では「読み」・「書き」・「数える」の基本を学びます。これは決して
先取りの詰め込み教育ではありません。子ども達が、遊びを通して自然に学ん
できた「数」や「言葉」。そのよりよき理解のための整理、まとめとしての学
習です。幼稚部は一貫教育の出発点であることから、学習は将来の土台づくり
の意味を持っています。知識の獲得以上に、学ぶことの習慣化、姿勢を培うこ
とは大切なのです。
【学習時間は「言葉」「数」とも1週間で各1、2時間。目標は、ひらがなを
使って短文を書くことができることと、10までの足し算、引き算ができるよ
うになることです】 
(【 】内の文言は、平成28年4月のホームページでは削除されています)
 
文字、数の指導に関しても、幼稚部と小学部が一貫したカリキュラムのもとに
指導されていることがわかりますが、こういった初等教育学校としての小学部
との連携は、21世紀に活躍する真のエリートを育成する目的で、平成13年
4月開校された桐蔭学園中等教育学校と関連があるようです。
 
何やら知的な学習の話ばかりになりましたが、保育の方針からもう一つ「元気
に『遊ぶ』」を紹介しましょう。
 
◇元気に「遊ぶ」
◎存分に遊ぶがモットー
この時期の子どもの成長にとって、遊ぶことは大きな比重を占めています。
ですから、元気に楽しく遊ぶことを最も大切に考え、その手助けをします。1
日に一度は必ずアスレチックゾーンに出、思う存分遊ばせます。さわやかな汗
は気持ちを清々しくし、その後の学習への集中力を高めます。
 
◎遊ぶことが学ぶことの始まり
遊ぶことは子どもの体を鍛え、つくることであり、同時に、ものに触れ、観察
することでもあります。たとえば、いつもその下で遊ぶ木から多くのことを学
びます。夏繁っていた木が秋に葉を落とすのを見て、自然の営みを体感するで
しょう。また、拾った落葉は子どもたちを数えることに導きます。
 
大人の遊びは単に遊びですが、子どもの遊びは仕事です。遊びを通して様々な
能力が開発されるわけですが、子どもは遊びだと思っているから、夢中になっ
て取り組めるのです。子どもの無心に遊ぶ姿は、見ている大人にとって、これ
ほど心の和むものはありません。それは、子ども自身が何らの報酬も期待して
いないからではないでしょうか。
 
登下校はスクールバス、給食ありですが、面白いのは、小学部の5、6年のお
兄さん、お姉さんが、給食配膳の手伝いをしていることです。同じ敷地内、し
かも幼稚部のすぐ前が小学部ですから、こういったことも可能なわけです。
 
ところで、新しいカリキュラムも実施されていますから、説明会へ参加し、確
かめておきましょう。また、近代設備を駆使して作られたホールでの様々な情
操教育、体力づくりの一貫として行われている「無理のない体力づくり」など、
独特の指導があります。こういったことに関する情報は、説明会でしか得られ
ませんから、いろいろな幼稚園の説明会  へ参加し、情報を収集することも、
幼稚園を選ぶ時の、ご両親の大事な役目です。
 
2015年度より、アフタースクールを開設、詳しくはホームページをご覧く
ださい。
 
(※編集者注 平成27年実施済の前年度の情報です)
【説明会・校内見学】 10月15日(木)
           9:30 受付開始 Webで予約制 
           スクールバスでの送迎ありで実施
【募集人員】 3年保育 男女計 約50名
【Q&A コーナー】はありません。
 
湘南白百合学園幼稚園  
湘南の夏といえば、片瀬江ノ島の海岸でしょう。湘南白百合学園は、江ノ島の
海岸から少し入った片瀬川のそばにあります。当時、サーフィンは、まだ流行
っていませんでしたから、夏のにぎわいが嘘のような静かな秋に、入園説明会
は行われていました。本家の白百合学園幼稚園が説明会をやっていなかった頃、
東京方面から参加するお母さん方もいましたが、私もその一人で、小田急のロ
マンスカーに乗って出かけたものでした。
幼稚園は、男女計70名の募集ですが、小学校から高校まで、宗教教育を行う、
女子だけの学校になります。
 
【学園の教育理念】  
キリストの愛に基づく全人教育を……
価値観の転換  「壊れた社会」の修復を!
本学園の設立母体であるシャルトル聖パウロ修道女会設立の目的は、17世紀
のフランス、ルイ王朝の華やかな文化の蔭で、貧困に苦しみ・忘れられた人々、
教育の機会に恵まれない子ども達への奉仕でした。
精神的貧困の状況にある日本の「壊れた社会」を変えるのも、この「奉仕」ではな
いでしょうか。「奉仕する」に当たる言葉、英語“serve”(仕える、必
要を満たす、人のために尽くすなど)こそ、暗く、不安に満ちた現状から立ち
直るkey-Wordだと存じます。本園も、「壊された心」をいやし、「壊
れた社会」を修復する原動力となれる人―「仕えられるためではなく、仕える
ために来た」といわれたキリストの生き方を学べる卒業生―をひとりでも多く
社会に送り出したいと心から願い、努力しております。
 
【教育方針】  
キリスト教の教えに基づいた生活教育を通して、神から与えられた心身の能力
を最大限に生かしながら、愛と責任ある人格形成の基礎作りを目的としていま
す。
 
個性豊かで主体的に行動できる人間を目指して、個々の発達に即した、自発的
な選択活動を重視するモンテッソーリ教育を取り入れています。
 
クラスは3歳から6歳までの縦割り編成です。その中でお互いの立場を尊重し
あい、自由と責任、思いやりと協調性を体得し、社会生活に必要な規律を身に
つけていきます。
 
個別活動、グループ活動として、日常生活の練習、感覚教育、数の教育、言語
の教育、文化の教育があり、子ども達の尽きることない探究心に応えながら、
地図、歴史、自然界、聖書の世界へ導いていきます。
一斉活動では、体操、絵画、音楽リズムを取り入れています。
 
この時にうかがった「教師の役割」「環境設定」「運動」「感覚教育」の話が、
新米時代でしたから、新鮮な響きを持っていました。例によって、文言は正確
ではありませんが、以下のような話でした。
 
当園は、モンテッソーリの教育理念を重視した保育を行っており、子ども達の
自己発達の助成、内的生命の発達を基本とし、「子どもが生まれつき持ってい
る自立心と人格形成の力を助長してあげることが、私たち教師の役割」と考え
ています。
 
子ども達には、その年齢に適した、よりよい環境を整えてあげることが大切で
す。これは主に、人的な環境の問題で、当園では環境設定を大切にし、大人の
頭で考えるのではなく、子ども達をよく観察し、子どもに適したように、子ど
もが物事をやりやすくなるように、配置設定をしています。
 
運動は、非常に大切で、脳から中枢、中枢から筋肉へと、意思の伝達により、
運動が行われますから、運動は、知能の発達に欠かすことができないもので、
心の形成を助けるものです。
子ども達の発育の段階をおって運動を行っていくことが基本であり、子どもが
動かなければならないように、子どもがしたいと思っていることを与えていく
こと、常によく観察し、大人の考えでいじらないこと、画一的に扱わないこと
が大切であり、当園が縦割りの保育を行っているのも、年少から年長まで一つ
のクラスに入れることによって、子ども達の世界の中で自立の芽を育て、社会
性を身につけさせるためなのです。子ども達は成長の過程で互いに影響し合い、
その人的な環境から善いこと悪いことも学んでいくので、子ども達の物事を吸
収する意欲を、教師がいかに導いていくかが重要なのです。
 
一斉保育全盛の頃でしたから、「大人の考えでいじらないこと、画一的に扱わ
ないこと」が、何とも刺激的な言葉でした。「手は第二の脳」を実感したのも
この時です。そして、モンテッソーリ教育について、今では白百合学園幼稚園
で、詳しく聞くことができますが、当時は、説明会をやっていませんでしたか
ら、本から得た知識は若干ありましたが、実際の説明を聞いたのは初めてでし
た。
以下少し長くなりますが、当時のメモを紹介しましょう。
 
環境を整備すると共に、「感覚教育」を大きな柱と考えています。それぞれの
子どもに合わせた教具を使い、脳に刺激を与え、それが脳に伝わり、感覚の発
達を促し、知性につながり、感覚から入って概念に結びつき、やがて、言語、
数などを理解できるようになります。聞くことから話すこと、読むことにつな
がり、言葉を身につけ、文章を書くようになるのと同じです。(納得しました!)
以上が、当園の保育の基本ですが、その保育の一例として、
○静粛遊び 静かにすることの大切さを気づかせる。そのために静かとは何か
を言語活動や行動の中で教えていく。
○線上歩行させる。つま先とかかとを合わせ、正しい姿勢で線の上を歩く。
○文化について 教室内での地図の配列や位置など、かなり高度な知識を子ど
も達が自由に学べるように配置していること。
 
その時に、願書と共に配布されていた案内書に詳しく書かれていましたが、そ
の一部を紹介しておきましょう。
 
【日常生活における活動】  
子ども達が最初に興味を示す活動で、子どものサイズにあった魅力あふれる用
具があります。
○環境への配慮(運ぶ、洗濯、アイロンかけ、食卓の準備、片付けなど)
○自己自身への配慮(衣服の着脱、手を洗う、髪をとかすなど)
○社会性を身につける(ご挨拶、物の受け渡し、戸の開閉など)
○洗練された指先を身につける(通す、分ける、切る、折る、貼るなど)
○グループ活動による運動調整の力を身につける(静粛の練習、線上の歩行など)
 
様々な活動は、白百合学園幼稚園の説明会で見ることができました。子ども達
は「お仕事」といって、楽しく取り組んでいました。びっくりしたのは、地図
の配列のお仕事で、アフリカの地図の上に、カタカナで書かれた国名をきちん
と間違わずに置いていくことでした。年長さんが、カタカナを読めるなど信じ
られませんでしたし、知らない国名がたくさんあって赤面しました(笑)。モ
ンテッソーリ教育については、本幼稚園、もっと知りたい方は白百合学園幼稚
園のホームページで詳しく紹介されていますから、ぜひ、ご覧になってくださ
い。
 
(※編集者注 平成27年実施済の前年度の情報です)
【説明会】 7月2日(木)、9月9日(水)13:30(約1時間)
      都合のよい回に参加
      子ども同伴不可 上履き、外靴入れ持参 申し込み不要で実施。
【見学会】 10月15日(木)13:30~14:30 説明会で予約受付 
      持ち物 説明会と同じ 子ども同伴可で実施。
【募集人員】 3年保育  男女計70名  2年保育若干名
【Q&A コーナー】はありません。
 
  (次回は、森村学園幼稚園についてお話しましょう)

さわやかお受験のススメ<保護者編>第6章(3)入園、入学を迎えたお母さん方へ

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2017さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第22号-
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第6章(3)入園、入学を迎えたお母さん方へ
 
4月は、これを抜きに考えられません。
環境が変わるのは、大変なことです。幼稚園や保育園は、ご両親にとっても、
第三者に教育を委ねる初めての場所です。子ども達は、親のもとを離れて初め
て生活する場所であり、ご両親に十分に保護されていた環境から巣立つわけで
す。
スタートが、肝心ではなかったでしょうか。
 
子ども達も、新しい環境になじもうと一所懸命に努力します。毎日、楽しいこ
とばかりが続くわけではなく、いやなこともあります。それでも、幼稚園へ行
こうとするのは、新しい環境には、家にはない魅力や新鮮な刺激があるからで
す。先生方も幼稚園は楽しい所だと、精いっぱいの努力をします。見ていると
涙ぐましいほどです。
 
しかし、変なお母さんがいるようですね。
「お母さん、ぼく、幼稚園へ、行きたくない!」
そのわけも聞かずに、瞬間湯沸器になって、幼稚園へ怒鳴りこむ「過保護・溺
愛・自己中心」の三つを備えたKYJT(空気読めない自己中)ママです。
「悪いのは友達、きちんと指導のできない先生!」
というそうです。多くの場合、お母さんと子どもに原因があるのですが、恥ず
かしげもなく、こういう行動を起こすお母さんですから、お母さんも子どもも、
そのことがわかりません。かわいそうなのは、子どもです。いつまでたっても、
お母さんから逃れられませんから。
 
幼稚園は、お母さんのもとを離れても楽しいことがたくさんあることを実地体
験する場所です。自立心を培って、小学校の集団生活に適応できる力をつける
所ですから、お母さん方も子ども中心の育児から卒業し、客観的にわが子を見
る機会と考えましょう。
 
過剰な愛情を注いでもいいのは、3歳までです。
3歳を過ぎると自立が始まりますから、「手を出さない、口をはさまない育児」
に徹すべきです。極端にいえば、3歳を過ぎても子どものやっていることを見
て、手を貸したくなるようでは、もう十分に過保護ですし、口を出したくなる
ようでしたら過干渉です。
 
一人っ子では、この加減がわからなくなりがちですが、きょうだい二人の下の
子を見るとわかります。上の子にないところを持っていることが、往々にして
あるものです。最初の育児は、何事につけても慎重になりがちですが、二番目
の子は経験済みですから手を抜きます。その分、子ども自身が自力でやらねば
なりませんから、それだけ試行錯誤を積み重ね、苦労しているわけでから、た
くましくなります。「一姫、二太郎」とは、「子を産み育てるには、最初は女
の子、二番目は男の子が育てやすくてよい」ということですが、それ以外にも
こういった意味があるのです。
 
男の子は、適度な試行錯誤を過ごせる環境でなければ、たくましく成長しませ
ん。進学教室でも、女の子はかなり積極的に自信を持って取り組んでいました
が、男の子は自信がないのか、なかなか手を出さない子がいたものでした。一
般に、女の子は成長が速いので、あまり手がかからないものですが、男の子は
少し遅いですから、男の子を育てているお母さん方、過保護にならないよう注
意しましょう。お母さん方は、とかく男の子に甘いところがあるからです。も
っともお父さん方は、女の子に甘くなりがちですから、お互いに客観的に子育
てを見直すことも大切ではないでしょうか。
 
ところで、平成4年度から施行された「幼稚園教育要領」によると、保育の方
針は、従来の「一斉保育から自由保育」となり、「一人ひとりの個性を伸ばし
ていく保育」に変わっています。これを誤解するお母さん方がいるようですね。
 
自由保育といっても、勝手気まま、何でもありの自由奔放な保育ではありませ
ん。みんなで一斉に、同じことを強制的にやるのは止めて、自発的に活動でき
るように導く保育という意味です。
 
例えば、知識や理解力を培うにも、自分自身で考え、工夫する機会や経験を、
たくさん持たせ、自分勝手な考え方ではなく、客観的なものの見方や考え方を、
身につけるように指導することです。もっと大胆にいえば、「他律」ではなく
「自律」の保育です。ですから、過保護や過干渉な育児をやっていては、自律
できない、わがままで、甘えん坊の弱虫な子になりがちです。
 
幼稚園へ行かせるのは、親の子離れ、子どもの親離れの実地訓練期間と考える
べきだと思います。子離れできない育児は、運転免許取得でいうと、まだ仮免
前の段階です。幼児期の過保護、過干渉の育児が、中学生の頃になると、幼児
期に体験していなかったことから生じるギャップに対応できず、家に引きこも
ったり、非行に走ったりするのではないかと思えてなりません。育児しながら
「育自」するお母さんになってください。
 
しばらくの間、慣れるまで、子ども達もくたくたに疲れて帰って来るでしょう。
しっかりと、やさしく抱きしめて、勇気を与えてあげましょう。また、送迎を
義務付けられている幼稚園の場合は、お母さん方も体調を崩さないように気を
つけてください。
 
小学校も同じです。
新学期が始まると、もう勉強を気にするお母さんが増えているようで、子ども
達が新しい環境に慣れるのに、どのくらい神経を使っているか、わからないお
母さん方がいると聞きます。特に、国立附属や私立の小学校へ通う子ども達は、
電車やバスを使い、1時間前後の時間をかけて通学するはずですから、慣れる
まで大変です。朝のラッシュ時に、ランドセルを背負い電車に乗り込む子ども
達を見ると、「頑張れ!」と声をかけたくなります。
何といっても、狭き門をくぐり抜けてきた幼き戦士ですから。新しい環境に慣
れるまで、勉強のことは忘れましょう。
今年受験予定の皆さん方は、東日本大震災以降、通学経路、所要時間も、学校
選択の大切なポイントにもなっていることもお忘れなく。
 
極端な話ですが、学校から帰ってくるなり、
「宿題はないの!」
「テストは、どうだったの?」
「予習しなくて、いいの!」
「4時から塾です。遊びに行ってはいけません!」
こんなことばかりいわれて、勉強好きな子になれるでしょうか。これでは、命
令、統制、禁止、管理の育児で、勉強もこの姿勢でされてはたまりませんね。
まだ、危険なことをしますから、監視の目は必要ですが、自分で考え、行動し、
やったことには責任を持たせる「自立させる育児」に切り替えるべきです。
 
勉強も同じです。
勉強は、本人がその気にならなければ、辛いものです。皆さん方も経験ありま
せんか、あったとすればなおさらのことでしょう。難しい話ではありますが、
「勉強は自分のためにすること」を、一学年でも早く自覚できる環境を作って
あげるべきではないでしょうか。
学校生活の様子を知る一つの目安として、先生からの連絡事項を、きちんと報
告できているかどうかがあります。できていれば、先生の話を聞いている証拠
ですから、とりあえず心配ありません。学習に取り組む姿勢も確実に身につい
ていきます。
 
そして、背を伸ばし、左手でノートを押さえ、きちんと筆記用具を持ち、筆順
に従った字を書いているか注意しましょう。知識を詰め込むより、姿勢を正し
て、きれいな字を書ける方が大切です。「形は心を作り、心は形を整える」は、
明治生まれの親父の口癖でしたが、一理あると思います。
 
しかし、小学校生活も、楽しいことばかりではないでしょう。いじめもありま
すし、けんかもするでしょう。先生に怒られることもありますし、勉強もわか
らなくなることもあるかもしれません。
「何で、ぼくだけ、こうなんだろ!」 
と落ち込む時もあります。
しかし、翌日、子ども達が元気に学校へ行くのは、家に帰ればやさしいお母さ
ん方がいるからではありませんか。家庭でリフレッシュできるからこそ、明日
に希望をもてるのです。
低学年時代は、お母さん方が頼りですから、温かい雰囲気のある家庭を作って
あげましょう。大人はストレスを解消できるすべを心得ていますが、子ども達
にはないからです。
 
小学校低学年時代は、勉強はできても利己主義より、勉強はほどほどであって
も、友達と仲良くできる子の方がいいと考えるのは、私が昭和15年生まれだ
からでしょうか。
もちろん、勉強も大切ですが、お子さんが、この時期に体験しなければならな
いことが、たくさんがあるはずです。桜の花ではありませんが、魅力がなけれ
ば、友も寄って来ません。今、大切に育てたいのは、相手を思いやる心、共に
生きる共生の心である徳育であり、いろいろなことを体験していくために必要
な体育であり、豊かな情操を養うための知育、そして挑戦する意欲だと思いま
す。「知育・徳育・体育」ではなく、今は、「徳育・体育・知育」と順番を入
れ替えるべきではないかと考えます。知育だけが優先される子育ては不自然で、
いつか壊れる不安が伴うのではないでしょうか。
幼児期は、三つの能力をバランスよく育てることが大切です。
 
かつて、聖心女子学院初等科の学校説明会で、本校の求める子ども像は、「心
身ともに強くて、心のやさしい子」だとおっしゃっていましたが、そのために
は、「心身ともに強く、心のやさしい親」であるべきだといいたかったのでは
ないでしょうか。昔からいうではありませんか「子は親の背を見て育つ」と、
これこそ育児の鉄則です。
 
そして、忘れてならないのは、お父さん、お母さんは、お子さんが何人いても、
お子さんにとっては、たった一人のお父さんであり、お母さんであることです。
私事でなんですが、嫁ぐ娘から、「お父さんは、生まれたときから私のただ一
人のお父さんでした」といわれ、少なからず狼狽したことを覚えています。子
どもは、間違いなく「お父さん、お母さん」として評価しています。
 
これからの毎日は、お子さんの記憶の中にきちんと刻み込まれていきます。
「三つ子の魂百まで」といいますが、私は小学校の低学年時代に、生きる姿勢
の基本的な枠組み、形が出来上がるのではないかと考えています。そのお手本
が、ご両親であることを肝に銘じておきましょう。2014(平成26)年度
中の全国、小学生、中学生の不登校児童生徒は、12万2650人(前年11
万9617人)【2015年12月25日、文部科学省「学校基本調査」より】。
無責任な言い方で恐縮ですが、その原因は、ご両親の育児の姿勢にもあると思
います。
 
仕事柄、「育児で、もっとも大切にしたことは何ですか」と尋ねられることも
ありますが、「両親からやってもらったことで、うれしかったことはどんどん
実行し、いやだったことはやらないようにしました」と答えています。自分が
いやだったことは、子どもだっていやなはずです。
種を明かせば、論語の「己の欲せざるところは、人に施すことなかれ」の受け売
りです(笑)。反対句は、「己の欲するところを人に施せ」(新約聖書・マタ
イによる福音)ですね。孔子の仁(思いやり)、キリストの愛、どちらでもい
いのですが、こういったことへの配慮でいいのではないでしょうか。
 
最近、ひょんなことから、理想的な親子関係を表しているではないかと思える
歌を見つけました。といっても、例によって「わたし流」の解釈ですが。
 
      映るとも 月も思わず 映すとも 水も思わぬ 猿沢の池
 
興福寺の五重塔にかかる月を映す猿沢の池、古都を表す一幅の絵として親しま
れていますが、この歌から教えられるのは、育児は結局のところ、「親はよい
手本をみせ、子は意識することなく見習う」にあるのではないでしょうか。剣
豪、塚原ト伝、柳生新陰流の開祖、石舟斎の作ともいわれているそうですが、
およそ「剣の道」とは縁のない私ですから、とんでもない思い込みで、その道
の方々から嘲笑されるかもしれません(笑)。
 
ところで、ぴかぴかの一年生と聞けば、頭に浮かぶのはランドセルでしょう。
 
このランドセルを日本で最初に使った人は伊藤博文で、大正天皇が学習院に入
学されたときに献上したのです。その後、学習院御用達となり、それが全国に
普及しました。ランドセルは、オランダ語の「ランセル」がなまったもので、
ランセルとは、兵隊さんが背負っている「背嚢(はいのう)」のことです。つ
まり、軍国主義の時代に、軍人を尊敬してあこがれていた子ども達の心に合わ
せて、通学用かばんとして考案されたものなのです。
(頭にやさしい雑学読本 3 竹内 均 編 三笠書房 刊 P290)  
 
(次回は、「4月に読んであげたい本」についてお話しましょう)

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