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めぇでるコラム : 2024年1月

2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★[3] 話に関する問題(2)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第29号>
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前回もお知らせしましたが、東京私立小学校児童作品展「ほら、できたよ」が1月30日(火)まで銀座松屋で開催されています。各校の教育方針の一端を伺うこともできる作品展ですので、ぜひ参加してみてください。
 
また、白百合学園小学校の展覧会(2月10日)の申し込みが始まりました。
2月8日までの申込ですが、定員が設定されていますので、ご興味がある方は早めに申し込まれることをお勧めします。
なかなか校内に入ることができない小学校の場合、こういったイベントには積極的に参加したいところです。
興味がある学校のHPはこまめにチェックしましょう。
 
 
★★入試問題を分析する★★
 
[3] 話に関する問題(2)
 
話を聞き、設問に答える問題で、「話の記憶」といわれ、ほとんどの小学校で出題されています。
 
 ◆「桃太郎」の話をテープで聞いたり、ビデオで見た後、
  ・おじいさんは、どこへ、何をしに行きましたか。正しい絵に〇をつけなさい。
  ・桃太郎の家来に□をつけなさい。
 
こういった設問があって、10秒から20秒の間に、絵の描かれている解答用紙に、指示された○や□などをつけて答えます。狙いは、「話を聞く姿勢と理解する力が身についているか」、このことです。これから始まる小学校での勉強の基本であり、最も大切な学習態度です。いくら、九九を諳んじ、難しい漢字の読み書きができても、人の話を聞けないようでは、あまり意味がありませ
ん。学校の勉強は、幼稚園の自由保育と違って一斉授業ですから、話を聞いていなければ、訳がわからないことになります。話を聞く姿勢を身につけるには、話の読み聞かせや対話が、いかに大切であるかについて、すでに触れましたので、ご理解いただけ、実行されていると思いますが、少し、復習しておきましょう。
 
「話の記憶の問題」は、単に記憶力を見ているのではないですから、問題集を買い、それだけで訓練して鍛え、身につけるものではありません。それは本末転倒な話です。話をキチンと聞く姿勢は、普段の会話や話の読み聞かせを通して培われるものです。一朝一夕に身につくものではなく、やはり毎日の積み重ね、育児の結果として表れてきますから、どこの学校でも実施しているわけです。
 
しかし、本当に話の聞けない子がいます。その子の育てられている環境は、わがままな言動が許されている場合が多いものです。かわいい、かわいい、で子どもを悪くしています。やはり、子どもの責任ではありませんね。 
 
話の記憶の問題には、長編と短編があります。
といっても、400字詰め1枚程度から3枚ほどの長さですが、皆さんはどちらが難しいと思いますか。短い方が記憶しやすいと思われるのではないでしょうか。やってみるとわかりますが、長編は物語風になっているので、案外、想像力が働き、イメージ化しやすいようです。短編は、あっという間に終わってしまい、想像力が働かない場合があります。あらかじめ短編であるとわかっていれば、それなりに対処できますが、聞いてみなければわからないだけに、難しいですね。
 
そして、やっかいなのは文字を使えませんから、文章を読み直すことも、答えの絵に、○や△、□といった記号の指示をする設問も、聞き直すこともできません。ですから、聞き逃すと答えようがないということです。さらに、クレヨンで指定された色で記号をかくこともあります。子どもたちは、よくぞパニックにならないものだと、褒めてあげたくなりますね。「長文読解だな!」など
と簡単に済ませるほど、やさしい問題ではありません。 
 
普段から、お子さんとの対話を大切にし、お子さんの話に耳を傾けましょう。
対話の反対は沈黙と思いがちですが、立教小学校の元校長であった田中司先生は、「命令と要求」とおっしゃっていました。「命令と要求」が多くなれば、対話など成り立ちませんね。非常に的を射た指摘だと思います。
 
そして、お父さん、お母さん、お子さんに読書をしている姿を見せてください。
これが何よりの手本になるからです。さらに、お子さんがいるときに、ワイドショーなどを見るのはやめましょう。お断りしておきますが、すべてのワイドショーが駄目だといっているわけではありません。お子さんと一緒のときに見なくていいものはやめてほしいと言いたいだけです。どなたがおっしゃったのか定かではありませんが、「テレビを見る時間と教養は反比例する」そうです。
内容にもよりますが。
 
また、お子さんが読書に集中しているときは、「お使いに行きますよ!」などと、中断することは避けてあげましょう。夢中になって取り組んでいるときこそ、素晴らしい学習時間になっているからです。あらかじめ伝えておく、やさしいお母さんになってほしいですね。
 
寝る前に本を読んであげる、これも大切です。毎日続けることで、間違いなく言語能力を育むことができるからです。平成26年6月に横浜雙葉小学校は説明会を再開しましたが、挨拶に立たれたシスター田中順子学園長(当時)は、「添い寝をしながら本を読んであげることが少なくなっているのではないでしょうか」と懸念されていました。DVDなど素晴らしい作品もありますが、幼児期にはお父さん、お母さんの生の声が、何と言っても大切なのです。
 
会話を弾ませ、話を読んであげることから「話を聞く姿勢」は身につきます。
小学校の入学試験は、文字を使用しないだけに、話を聞く姿勢が身についていなければどうにもなりません。
 
最後に、「話の記憶」が苦手なお子さんへ、こういったことをやってみましょう。
 
Q「『浦島太郎』の話を知っていますか。では、先生がいくつか尋ねますから教えてくださいね。
  浦島太郎は、子どもたちがいじめていた動物を助けてあげました。何を助けたのですか」
A「亀さんです」
Q「そうですね。そのお礼にどこへ連れて行ってもらいましたか」
A「竜宮城です」
Q「そこにいたお姫さまの名前は何といいましたか」
A 「乙姫さまです」
Q「鯛やひらめもいて楽しく過ごしました。そして、帰ることになりお土産をもらいました。何をもらったのですか」
A「玉手箱です」
Q「そのとき、浦島太郎と乙姫さまは、何か約束をしましたね」
A「開けてはいけないと約束しました」
Q「そうですね。また、亀さんに送られて家に帰りましたが、両親はいましたか」
A「いいえ、いませんでした」
Q「近所の人々やお友だちはいましたか」
A「誰も知っている人はいませんでした」
Q「知っている人は誰もいない。浦島太郎は、どんな気持ちになったでしょうか」
A「寂しくなりました」
Q「そう、寂しくなったんだね。では、ここからが問題です。では、なぜ、浦島太郎は、約束を破って玉手箱を開けたのでしょうか。あなたは、どう考えますか」
 
いろいろな答えが出てきますが、自分の考えを言えたことを褒め、評価はしません。
たとえば、「何が入っているか知りたかったから開けました」と子どもが言えば、それを認めてあげ、「そうじゃないでしょう。寂しくなったからでしょう」などと大人の考え方を押し付けないことです。「寂しい経験」をしなければ、この言葉は出てきません。
 
この方式に子どもが興味を持ち始めると、次も次もと求めてくるようになります。「Q&A」を勉強ではなく、ゲーム感覚で楽しめるので、子どもたちは興味を持ち、確実に力をつけることができます。
質問を作らなければならない大人は大変ですが、楽しい思い出になります。受験準備は楽しくやりたいものです。
 
お薦めは日本の昔話です。
 
以前にも紹介しましたが、「桃太郎」「かちかち山」「さるかに合戦」「舌切りすずめ」「花咲じじい」は、日本の五大昔話ですが、皆さんは粗筋を言えるでしょうか。
 
ところで、鬼退治の主人公は、なぜ、栗太郎や柿太郎ではなく桃太郎なのでしょうか。また、家来は、「犬猿の仲」といわれる犬と猿がいるのは、なぜでしょうか。
 
命名の由来は、桃は木偏に兆と書き、桃には未来を予知し、魔を防ぐという信仰があったためで、栗太郎や柿太郎ではだめなのです。
陰陽五行説では、鬼は丑寅の方向、鬼門に棲み、その反対側、裏鬼門に配置されているのが申酉戌と考えられ、そこから知恵のある猿、勇気のある雉、仁、思いやりのある犬の家来が生まれ、「犬猿の仲」を取り持っているのが間にいる雉で、けんか騒ぎにならず収まっているのだそうです。聖徳太子の「和をもって貴しとなす」の考えが、こんなところにもありました。
 
面白いことに福澤諭吉は、家訓「ひゞのをしへ」の中で、「鬼の宝物を取るとは、けしからん!」と非難しています。(ウィキぺディアより)
 
 
(次回は、「[4]数量に関する問題(1)」についてお話しましょう。)

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第3章(3)何といっても正月ですね 睦月

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第12号-
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第3章(3)何と言っても正月ですね 
 
【一月に読んであげたい本】
 
正月に関するむかし話は、たくさんありますが、この話は欠かせないでしょう。
「子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥」の十二支のことで、これを決めた事の次第を話にしたものですが、いたちが出てくるとは知りませんでした。
 
 
◆十二支のはじまり   小沢 重雄 著
 
「元旦の朝、新年のあいさつにきた順番に、その動物の年にして、人間世界を守らせてやる。ただし、一番から十二番まで」と神さまからのお触れが出て、動物たちは大喜び。ところが、ねこは、その日を忘れてしまい、運良く、本当は運悪くですが、会ったねずみに、二日目の朝だと嘘をつかれます。計られたとも知らずに、ねこは神さまのお住まいになる御殿の門を叩いたのですが、
「十二支は決まった。寝ぼけていないで、顔でも洗ってこい!」
と神さまに怒られ、だまされたと気づいたのです。それからというもの、ねこは寝ぼけないように、いつでも顔を洗うようになり、嘘を教えたねずみを追いかけるようになったのでした。
 ところが、ねこの他にも十二支に入れなかった動物がいました。いたちです。
お触れがこなかったから、やり直してほしいと申し立てをします。手を焼いた神さまでしたが、名案を考え出します。
「一年に十二日だけ、おまえの日にしてあげよう。月の始めは縁起のいい日だから。ただし、『いたちの日』とすると、他の動物が騒ぎだすから、頭に「つ」をつけることにしよう。数をいうときには、一つ、二つと、必ず『つ』をつける大切な字だから」と提案をします。
「つ、いたちですか?」
「いや、いや、『つ、いたち』では、わかってしまうから、『ついたち』と続けていうことにしよう」と説得され、月の初めを「ついたち」と呼ぶようになったのです。
 
 一月のおはなし ねこの正月 松谷 みよ子/吉沢 和夫 監修 
        日本民話の会 編 国土社 刊
 
 
12月にもお話しましたが、朔日(ついたち)は、月立(つきたち)の音便で、こもっていた月が出はじめる意味からできた言葉ですが、これを読んだとき、しばらく笑いがとまりませんでした。神さまといたちのやりとりが、本当におかしいのです。しかも、場所は図書館でしたから、困りはてた様子をご想像ください。ネットで「十二支に猫のいないわけ」を検索すると、面白い話が出ています。
 
5、6歳の子どもにとって、一日から十日までと、十四日、二十日、二十四日は、漢字の音読みと訓読みが、入り混じっていますから覚えるのも難しく、きちんといえる子はあまりいません。一日は、これで覚えられますね。二十日は、「二十日ネズミは二十日間しか生きられないから二十日ネズミというんだよ」と、得意そうに教えてくれた子がいましたが、真相は定かではありませんけれど、これで覚えられるでしょう。(※実際には妊娠期間が20日だそうです。
<編集者注>)
 
ところで、かつて小学校1年生の子どもが、この読み方を歌にしたものがあるといって歌ってくれましたが、実にうまくできていて、これで簡単に覚えられます。YouTubeで「日付の歌」と検索すると、当時は2曲でしたが、現在では何曲か出てきます。「とおか」が「とうか」となっていたりすることがありますが、よく間違える仮名遣いで、1年生の時に習います。「遠くの、大きな、氷の上を、多くの、狼、十ずつ、通った」は全部「お」ですので、覚えておくと便利です。
 
 “日付の歌”
♪いちは「ついたち」には「ふつか」 さんは「みっか」でよんは「よっか」 
ごは「いつか」ろくは「むいか」 ななは「なのか」はちは「ようか」
きゅうは「ここのか」じゅうは「とおか」 にじゅうは「はつか」♪
 
 “Days of the month in Japanese”
♪ついたち ふつか みっか よっか いつか
 むいか なのか ようか ここのか とおか
 じゅうよっか じゅうくにち はつかは私の誕生日♪
(少し省略しています)
 
「日付の歌」は、スローテンポで二十日までの入門編。リズミカルに歌うのが、“Days of the month in Japanese”です。
少し難しいかなと思いましたが、子ども達は、興味があれば、すぐに覚えてしまうものです。苦手なようでしたら、「日付の歌」で検索してみましょう。
 
 
 
正月といえば、欠かせないのは七福神でしょう。この話には、神さま一人ひとりの紹介はありませんが、七福神の話です。暮れから正月の話ですが、七福神の登場ということで、一月の話にしました。
 
◆正月の神さん   渋谷 勲 著
 ある年の大晦日に、貧乏なじいさまの家へ、七人の旅人が来て、笠を貸してほしいというので、家中、探したのですが六人分しかなく、大事にしまっていたご祝儀用の合羽を貸したのでした。
 それから一年たった大晦日の晩のことです。今年も年越しのご馳走の用意ができずに、白湯を呑んでいると、急に騒がしくなり、あの七人の旅人が入ってきたではありませんか。実は、旅人は神さまで、笠のお礼にきたのでした。打出の小槌から、米や魚やら二人の欲しいものが何でも出て、寝る場所もなくなるほどです。もっと欲しいものはないかという神さまに、「もう少し若ければ、子どもを授かりたいものだ」と、おばあさんはいいました。すると神さまは、
「明日は、元旦だ。目が覚めたら、二人そろってあいさつをしなさい」といって帰ったのです。
 元旦の朝、目を覚ました二人は、「おめでとう」とあいさつをすると、十七、八のいい若者になり、それからというもの、何人もの子宝に恵まれて一生、安穏に暮らしたのでした。
 
  一月のおはなし
   ねこの正月 松谷みよ子/吉沢和夫 監修 日本民話の会・編
                          国土社 刊
 
七福とは、「仁王経」(仁王護国般若波羅蜜経)の「七難即滅して七福即生す」に由来するものといわれ、江戸時代を築いた徳川家康が、七福によって天下を統一したとして、家康の相談役・天海僧正が、神仏の七徳を崇めるようにと七福神信仰を勧めたため、江戸時代に流行したものです。     
ちなみに、七徳とは、恵比寿の清廉、大黒の有徳、弁財天の愛敬、毘沙門天の威光、福禄寿の人望、寿老人の長寿、布袋の大量(心が広いこと)をいいます。
 
ところで、七福神の国籍(?)を調べてみると、恵比寿は日本の神道、大黒天と毘沙門天はインドの仏教、弁財天はインドのヒンドゥー教、そして布袋、寿老人、福禄寿は中国の道教から生まれた神様なのです。
 
八百万の神、森羅万象に神様がいると信じた日本人らしいですね。
 
 
 
昔は、帆掛け船に乗った七福神の絵を枕の下にしいて、いい夢を見たそうです。
その夢ですが、正月というと、これも忘れられませんね、初夢です。初夢は室町時代には、除夜から元旦にかけて見る夢でした。それが江戸時代の中頃から、除夜は起き明かす習慣となり、元日の夜に見る夢となっていましたが、「すべての事始めは二日」ということから、江戸時代後期には二日の夜に見る夢が主流となったようです。そして、現代では、元日または二日の夜に見る夢となっています。初夢といえば、これも一つ紹介しておかないといけないでしょう。
 
◆ゆめみこぞう   渋谷 薫 著
 ある長者のところに、風呂たきをしている、灰坊と呼ばれる若者がいました。
ある正月の二日の晩、灰坊は、よい夢を見たのです。その夢を長者が買おうといいますが、灰坊は売りません。怒った長者は下男に命じ、灰坊を縛り上げて木箱の中へ詰め、海に投げ込んでしまいました。
 二十一日間、波に揺られて着いたところは、鬼が島。鬼の親方に食べられる前に、海に流されたわけを聞かれ、その話をすると、親方が、その夢をくれれば食わないで、家に返してやるという。断ると、三つの宝物、刺すと死ぬ死に針、死人を生き返せる生き針、千里を一飛びする千里車と交換しないかと灰坊の前に置いたのですが、灰坊が「本物か?」と疑わしそうにいうと、試してみるがよいと腕を出したので、灰坊は、その腕に死に針を刺して殺し、生き針を持って千里車に乗り、鬼が島を脱出したのです。
 着いたところが、ある村の観音さまのお堂。休んでいると、お参りに来た人達が、朝日長者の十七になる娘が死んだと話しているのです。それを聞いた灰坊は、長者の家にかけつけ、「死んだ者を生き返す、日本一のお医者さま! 死んだ者は、おらんかなー!」と大声で叫びます。直ぐに死んだ娘の座敷に案内され、人払いをしてもらい、生き針を娘に刺してみると、生き返ったのです。
喜んだ長者は、婿になってほしいと頼み込み、灰坊は朝日長者の娘婿になったのです。これこそ灰坊が、見た夢、そのものだったのです。
 
 一月のおはなし
  ねこの正月 松谷みよ子/吉沢和夫監修 日本民話の会・編
                        国土社 刊
 
 
 
さて、初夢を見て、おせち料理をいただきますが、おせち料理の次は七草粥ですね。
「七草」に関する話が「御伽草紙」にあります。この「御伽草紙」には、「鉢かつぎ」「酒呑童子」「浦島太郎」「ものぐさ太郎」など子どもの頃に聞いた懐かしい話が入っています。原文を読むのは少し面倒ですが、図書館の子どもの部屋には、小学生から中学生向きに書き直されたものがあり気軽に読めますので大人も改めて読んでみてもいいですね。。
 
◆七草草紙 北畠 八穂 著
 正月七日に七草がゆを食べる習慣になったのは、唐国(中国)の楚の国のそばに住んでいた、大しゅうという人が始めたものだそうです。大しゅうの両親は百歳をこえ、腰は曲がり、目も耳も悪くなるばかり。そこで、両親を若くしたいと、天地の神仏に二十一日間、祈ったのでした。すると、二十一日目の夕方、帝釈天王が現れ、若返りの秘訣を授けてくれたのです。それは須弥山(しゅみせん 仏教でいう世界の中心にそびえ立つ高山のこと)に棲む白鵞鳥が八千年も生きるのは、春に七色の草を集めて食べるからで、その白鵞鳥の命を両親の命にしてあげようと、摘んでくる七草の種類、たたく順序、時間など秘薬にする方法を授けたのです。大しゅうは、七草を集め、六日の夕方からたたきだし、七日の朝に飲ませると、両親は若さを取り戻したのでした。この話が帝にも届き、褒美として広い土地をあたえ、殿さまにしたのです。それから正月七日に七草を帝へ差しあげることになったそうです。このように親に心を尽くす人には、天の幸いが授かるのです。 
 
 御伽草子  古典文学全集 13 ポプラ社 刊
 
 
 
まもなく節分です。お父さん、お母さん、大きな声を出して、元気いっぱいに豆まきをしましょう。最近、やらない家庭が増えているようですが、お子さんには、楽しい思い出になります。幼稚園や保育園で、節分の話を聞いているはずです。小さな夢を育ててあげましょう。
 
 
 
(次回は、「第4章 節分と建国記念の日でしょう」についてお話しましょう)
 
 
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話 
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★[2]言語に関する問題 (1) 

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第28号>
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コロナウィルスの影響で、開催されていなかった東京私立小学校児童作品展「ほら、できたよ」が本年は開催されるようです。1月25日(木)から1月30日(火)まで松屋銀座で開催されます。意欲的な作品が多く展示され、各校の教育方針の一端を伺うこともできる作品展ですので、足を運んでみてはいかがでしょうか。
 
また、千葉県私立小学校造形展が23日までニッケコルトンプラザで開催中です。千葉県の私立小学校10校の児童の作品が展示されます。
 
 
 
★★入試問題を分析する★★
 
[2] 言語に関する問題 (1)  
 
言語に関する問題は、面接、お話作り、類似差異、しりとり、同頭語や同尾語、反対語、復唱、逆唱、同音異義語、拗音、促音、長音など発音の問題と、言葉に関するだけに、広範囲にわたっています。
 
 
[面 接]
 
親も参加する面接ではなく、制作や絵を描いているテストの中で、
「お名前を教えてください」
「住んでいるところと、電話番号を教えてください」
といった質問があります。
 
面白い話を聞きました。
名前を聞かれた子が、
「私の名前は、○○イチロウと申します」
普段、子どもがこのように言うわけはありませんから、先生は、びっくりしたそうです。
教え込むと、こういった不自然な言葉遣いになりがちですね。
 
しかし、本当に話せない子どもたちがいます。
親子の会話が、弾んでいないのでしょうね。言葉は使わなくては、肝心なときに役に立ちません。お母さんが一方的に話さずに聞き手に回りましょう。お子さんに話をさせることです。
「うちの子は、口が重いのですよ」とおっしゃるお母さん方は、「こうなんでしょう」「ああいうことなのね」と、お子さんが口を開く前に先回りをして、話をしきっている場合が多いのではないでしょうか。
 
聞くことの上手なお母さんは、話上手な子を育てます。
 
緊張して話せない場合は、先生方も無理に話しかけません。雰囲気になれるまで待ってくれるようですが、限度がありますから、尋ねられた場合は、自分の思っていることを恥ずかしがらずに話すことを教えてください。
「こんなことを言うと笑われるかな」と思っている子ども達が、案外、多いものです。
「そんなことはありませんよ」と自信を持たせることです。
 
 
 
[お話作り] 
 
★この絵を見て、どんなことを考えますか。お話してください。
★この3枚の絵を順番に並べて、お話を作り、先生に話してください。
★「電車」「お父さん」「新聞」の三つの言葉を使って、お話を作ってください。
 
これも難しいですね、絵を見て話を作るからです。
話の内容から、お子さんの情緒の発達状況もわかります。
以前にもお話しましたが、未分化であった「喜び」「愛情」「恐れ」「心配」「怒り」といった情緒が分化する時期だからです。
ダンボールに入れて捨てられている子猫の絵を見て、子どもはどう思うでしょうか。
これは情緒の分野ですから、大人の思惑を押し付けずに、子どもの感性に心を傾けることが大切です。
 
月齢の差が激しく出る時期でもありますから、子ども自身の発想を引き出すのは、本当に難しいですね。
ある国立大学附属小学校で作文の時間に、「『お母さん、あのね!』と、お母さんに話しかけるように書きましょう」と指導している話を聞き、早速、取り入れると、これは効果がありました。
お母さんに話しかける気持ちで作ると、話を聞いてくれる対象が決まりますからリラックスでき、何を伝えたいかを考え、発想も豊かになるようです。
もちろん、「お父さん、あのね!」でも、同じ効果を発揮します。
 
大人もそうですが、経験していないことはわかりません。それでも大人は、今まで積んできたよく似たような経験や、本などで読んだことなどから想像して、何とか答えられます。
しかし、子どもは、まだ経験の範囲も狭く、読書量も少ないですから、おかしな話になりがちです。そこでお母さんが教え込むと、大人の考えが顔を出している話になりがちです。
 
「いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのようにと、筋道立てて作らなければいけないのでしょうか」などとおっしゃるお母さん方がいますが、まだ、幼児には難しい注文です。日本の昔話などで知らず知らずのうちに身についているお子さんは別として、小学校でも、高学年にならないとできませんし、そんなことを強制していると、国語の嫌いな子になります。
 
国語は、すべての勉強の基礎ですから、大変なことになりかねません。
こういった鋳型にはめ込むようなことを無理強いしても、子どもらしい発想は、湧き上がってきません。お子さんの感性を大切にしてあげましょう。
しかし、どう考えても妥当でないと思える場合は、全部、否定するのではなく、お子さんの話をよく考えてあげ、修正することが大切です。
認めてあげることでやる気を起こさせ、そこから子どもの力は伸びていくからです。
 
問題集を買って、「話づくりのテクニック」なるものを教え込む前に、やるべきことがあります。 
本をたくさん読んであげ、子どもの話に耳を傾けることです。
そして、身の周りのことに、こだわりましょう。
花瓶にいけてある季節折々の花、道端に咲くたんぽぽの花、投げ捨てられた空き缶1個からでも、話を作るきっかけになります。
「これ、どう思う?」
一緒に考えて、思ったこと、感じたことを話し合うことも大切です。
とにかく、言葉は使わなければどうにもなりません。
しかし、遊びの感覚で取り組まなくては、子どもは嫌がります。
お母さんの顔をチラッチラッと見ながら話すようでは、やめましょう。
お母さんの期待する話に展開しないため、不満気な顔になっているはずだからです。
 
「話を聞き、どう感じたか」、「その後の展開はどうなるか」といったことを話したり、絵で表現し、描いた絵について質問をされたり、みんなの前で発表するなどの試験も行われています。
ある年の慶應義塾幼稚舎で、ドラえもんの縫いぐるみを着た先生が、水色のドアの前に来て、ドアを開け、「行きたいところの絵を描きなさい!」といった試験がありました。「どこでもドア」ですが、学校側は、何を評価したかったのでしょうか。
 
絵は、心で感じたことを表したものですから、言葉で表現できるはずです。一枚の絵から、どんな世界が表現されてくるか、耳を傾けましょう。また、絵を描かせるのは、絵の巧拙だけを見ているのではありません。どう感じたか、感性の世界です。感性は、体験を積み重ねて育まれたものであることを忘れてはならないでしょう。
オーバーかもしれませんが、特定のテーマに関し肯定側と否定側に分かれ行う議論、ディベートの苦手な私たち日本人は、小さい頃から、こういった経験が少ないことにも原因があるのではないでしょうか。
 
 
 
[類似差異の問題]
 
★「チューリップと桜を比べて、似ているところと違うところを先生に教えてください」
 
何回もお話しましたが、幼児の頭の働きは、ものを見て、比べ、同じところ、違うところを見つけることから始まります。
大人の観察力と違っているところがあります。チューリップと桜では、大人は木に咲く花、球根から育つ、花の大きさなど目で見えるものなど、理科の領域内で考えます。
 
こういう子がいました。
「チューリップは、『親指姫』のお話に出てきて、桜は、『花さかじいさん』に出てくるから、話に出てくるところが同じです」
童話の世界です、いいではありませんか。
 
「チューリップは食べられませんが、桜は食べられます」
桜餅のことで、食文化の世界です。食べたときの食感が残っていたのでしょう。
桜の葉は、何ともいえない香りが、ほのかにします。
また、落ち葉にも、同じような香りが残っていますが、この子は、それを知っていたのでしょう。おそらく、落葉の頃に、公園で拾った桜の葉の匂いをかいだのかも知れません。
 
好奇心と観察力をほめてあげるべきです。こういう発想は、頭が堅くなった大人には無理でしょう。これで、いいわけです。
 
「子どもが考えて、自分の言葉で発表できる」、これは素晴らしいことです。
そして話を聞き、なるほどとうなずける内容であれば、正解と認めてあげましょう。
 
しかし、塩化ビニールの葉っぱでくるまれた桜餅では、こういった発想は生まれませんね。
また、落ち込みそうです。
 
この問題は、自分の考えを言葉で表現しますから、やるべきです。お母さんと二人でできます。ただし、教え込まないことです。子どもの発想を無視せずに、きちんと聞いてあげることです。そして、子どもの考え方に妥当性があれば、それで正解です。しかし、「これはおかしい」と思う場合は、やさしく訂正してあげましょう。
 
かつて、アメリカでベストセラーになった「人生で必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」(河出書房新社 刊)の第1章 私の生活信条(19ページ)に、こう書いてあります。
 
「『不思議だな』と思う気持ちを大切にすること。(中略)デイックとジェーンを主人公にした子供の本で最初に覚えた言葉を思い出そう。何よりも大切な意味を持つ言葉。“見てごらん”」(“  ”は引用者)
 
「見て(自然に目に入るseeではなく意識して見るwatch)、考え、そして類似と差異に気づくこと」、こういった感性を大切に育んであげたいものです。
 
 
 (次回は、「言語に関する問題(2)」についてお話ししましょう)

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第3章(2)何といっても正月ですね 睦月

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第11号-
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コロナ禍で実施されていなかった東京私立小学校児童作品展「ほら、できたよ」が今年は開催されることとなりました。今回で39回を迎えます。1月25日(木)から30日(火)まで、銀座の松屋で開催されます。毎回、意欲的な作品が展示され興味が尽きませんが、受験する学校の作品、見てみませんか。
 
 
 
第3章(2)何といってもお正月ですね  睦月
 
◇お節料理◇
 
お雑煮を食べながらいただくのがお節料理です。木製できれいな絵や模様で飾られ、二重から五重に積み重ね最上段にふたのある重箱にいろいろな料理を詰めます。お節料理は、元日の朝、元旦に神さまと一緒にお祝いをして、家族が健康で良いことがたくさんあるように、お祈りをするための食事ですから、縁起ものしか選ばれません。
 
「三つ肴」または「祝い肴」といって、この三種でお節料理を代表するものがある。三は完全を意味し、全体を一つにまとめる働きをしている。三つ肴とは、関東では黒豆、数の子、五万米(ごまめ)をいい、関西では、黒豆、数の子、敲き牛蒡(たたきごぼう)をいう。
(年中行事を『科学』する 永田 久 著 日本経済社 刊 P9)
 
黒は魔除けの色といわれ悪魔が嫌う色、豆は「まめに生きる」、真面目に健康に生きる願いが、数の子は、鰊(にしん)の卵巣で、数万の卵があることから「数多い子」、子孫繁栄の意味で、縁起がよいといわれ、「春告魚」とも書き「春よ早く来い!」と願い、ごまめは「五万米」とも書くことで豊作を、牛蒡(ごぼう)は、お米がたくさん取れた時に飛んでくるといわれる黒い瑞鳥を表したものです。
 
他にも、きんとんは「金団」と書いて「金の塊」のこと、だて巻の「伊達」は「粋で美しいさま」、かまぼこの赤は、黒と同様に「魔よけ」、白は「清浄」を表し、八つ頭は「人の頭に立つ人になってほしいことを願っている」といったように、お節料理は縁起を担いだ食べ物からできています。
 
正式なお節料理は、四段重ねです。上から一の重、二の重といい、一の重には三つの肴、黒豆、数の子、ごまめ、二の重は「口取り」といい金団、ゆず玉、だて巻などオードブルが、三の重は海老や鮑、鯛などの「海の幸」を、四の重は「与の重」といい、八つ頭、はす、くわい、里芋などの「山の幸」を入れ、詰める品数は奇数がよいとされ、ここまでこだわります。
 
お節料理は、三が日の間、お母さん方から料理する手間を開放してあげる配慮があったと聞きましたが、その通りではなかったでしょうか。
 
 
 
◇屠 蘇◇
 
読み方からしてやっかいですが、「とそ」といって、山椒、肉桂(にっけい)、桔梗(ききょう)、ぼうふうなどの薬草を、砕いて調合した屠蘇散をひたした味醂のことで、正月のセレモニーの主役です。これを杯に注いで「おめでとうございます」と言って、新年の朝祝いが始まります。
 
現代は年末年始に旅行に行くご家庭も多いので、このセレモニーをされているご家庭でどれくらいでしょうか。
 
さて、話を戻しましょう。
 
この屠蘇ですが、不老長寿の効き目があると言われ、正月の祝い酒でした。山椒はうなぎを食べるときに使うものですし、肉桂はにっきのことで刺激が強く、桔梗は根を干したものはせき止めの薬で、ぼうふうはセリの仲間です。聞いただけで飲むのを遠慮したくなりそうです。
 
しかし、何事も訳ありです。
屠蘇は、「鬼気を屠絶し、人魂を蘇生させる」という意味があり、「その年の邪気を払い、寿命をのばす働きがある」と信じられ、正月には欠かせない祝い酒でもあったのです。
 
 
 
★★初詣★★
 
朝祝いが済むと、近所の氏神さまへお参りをします。現代は、全国的に有名な神社、仏閣に参拝している方も多いようですが、生まれた土地の神さま、産土(うぶすな)神社へ、神さまに失礼にならない服装に着替え、出かけてみましょう。
 
そして、お子さんにも神前で、静かに頭を下げ、新年の希望や誓いなどをさせましょう。目に見えない大いなる存在に畏怖を抱くのは、決して悪いことではありません。親が、きちんと礼拝をする姿を見せれば、それで十分なのです。
 
我々日本人は畏怖することを忘れ、目に見えないものを敬うことを忘れ始めたような気がしてなりません。
(「平成お徒歩日記」 宮部 みゆき 著 新潮社刊 P193)
 
帰りには、不幸をもたらす悪魔を払う「破魔矢」や、七転び八起きを願う「だるま」などの縁起物を買い、そのいわれを話してあげ部屋に飾っておきましょう。
 
 
 
★★正月の遊び★★
 
かつては、たこ上げ、羽根つき、カルタにすご六、福笑いが、正月の遊びの定番でした。
今の子どもは、友だちと遊ぶにも、テレビゲームやスマートフォン、タブレット、など、画面を通して遊ぶことが多くなっています。
画面を介してではなく、直接触れ合って遊ぶことで社会性が育ちます。社会性が育たないと、共に生きる共生の心も育まれません。人は一人では生きられないことを、もっと教える必要があるのではないでしょうか。
 
ところで、昔の遊びの中にもいいものもあります。例えば、すご六です。サイコロを振り、出た目だけ動かなければなりません。しかも前後左右に進んだり戻ったりしますから、混乱しがちです。5、6歳の子にとって、出た数だけ上下、左右に移動するのは難しいものです。いわゆる「位置の確認」で、こういう遊びで覚えるのが効果的なのですが……。
 
このサイコロですが、2つ使うと最高12までの足し算ができます。二人で1個ずつ振り、数の大きさで勝ち負けを競えば、引き算になります。数字を使いませんが、出た目を数えるだけで、簡単に答えが出ます。その上をいく優れ物が、トランプです。ゲームは勝敗が伴いますから、真剣に遊びます。カードにはマークと数字がありますから、算数の学習、数感の学習になっています。
 
トランプの4つのマークですが、ハートは僧侶、スペードは軍人、ダイヤは商人、クラブは農民と身分階級を表しています。何事も訳ありなのですね。
 
 
 
★★春の七草★★
 
言葉だけが、一人歩きしているようです。
七草は、せり、なずな、御形(ごぎょう 母子草)、はこべら(はこべ)、仏の座(たびら子の別称)、すずな(かぶ あおな)、すずしろ(大根 鏡草)のことです。昔は、春を告げる七草を親子で摘み、お節料理やお餅を食べすぎて、お腹の調子が少し悪くなった時に、消化のよいお粥に七草を入れて食べ、春を実感していたのでしょう。
 
ちなみに、セリは解毒・食欲増進・神経痛・リュウマチに、なずなは高血圧・貧血・食欲増進に、御形は咳止め・痰切り・利尿作用に、はこべらは歯槽膿漏・催乳・健胃整腸に、仏の座は体質改善に、すずな、すずしろは骨粗鬆症・腸内環境改善に良いという説があるそうです。(三島函南農業協同組合「七草がゆセット」のしおり より)
 
この七草に関して、覚えやすい歌があります。
  せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、
  すずな、すずしろ、これぞ七草
      左大臣 四辻 善成(平安時代)
 
最後に、おもしろい話を紹介しましょう。
 
大根は、野菜の王様で消化によく、食あたりしない。大根役者とは、当たらない役者のことである。「千六本」というのは、大根を細長く刻んだものであるが、大根を中国では「蘿蔔」といい、これを唐宋音でローポと発音した。細長く刻んだ大根=繊蘿蔔(センローポ)が日本でセンロッポンと訛って千六本と書いた。千という字によって「たくさんの」という意味を感じて細かく切り刻んでしまう人もいれば、「人参を千六本に切って」などと料理教室で教える先生もいる。六本というのをどう解釈しているのかと考えると、ふきだしたくなる。
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P33)
 
最近はニンジンを切る時にも使われているようですが、語源を知っていると永田先生でなくても笑えますね。
 
 (次回は、「1月に読んであげたい本」についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話 
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★[1]巧緻性に関する問題

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第27号>
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★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★
 
[1]巧緻性に関する問題
 
聞き慣れない言葉です。
「きめこまかく上手にできていること」という意味ですが、11月に詳しくお話しました「手は第二の脳」(11号から14号)を思い出してください。重複するところもありますが、大切な問題ですから繰り返します。巧緻性に関しては、「塗る・折る・切る・貼る・結ぶ・摘む・包む」といった手作業、何かを作ったり、絵を描いたり、手本と同じものを描いたりする問題があります。なぜ、出題されるのでしょうか。手作業は、誰の手も借りずに、指示されたことができるかどうかで、自立の状態がわかるからです。
 
 
[制 作]
 
課題制作と自由制作があります。
 
◆課題制作
★「今から、動物の起き上がりこぼしを作ります。
 このように、画用紙を半分に折り、折り目のところが背中になるように動物を描きます。描けたら動物を、このように切り抜きます。そして、別の紙を筒のようにまるめ、それに動物をホチキスで止めます。最後に、セロテープで粘土を筒の中に貼り、出来上がりです。」
 
先生が、やっているのを見てから制作に取り組みます。
 
◆自由制作
★(空き箱、画用紙、色紙、折り紙、セロハン、リボン、ひも、モール、輪ゴムなどの材料や、はさみ、のり、ホチキス、クレヨンなどが置かれています。)
 「ここにあるものを自由に使って、自分の好きなものを作りなさい。」
 
まず、注意しておきましょう。
子どもたちの大好きな制作ですから張り切りますが、先生の説明中に手を出す子がいます。待てないのです。きちんと聞いておかなければ、手順がわかりませんから、途中でギブアップすることになりかねません。
普段の生活態度が、そのまま正直に出がちです。お子さんに何かを頼んだときなど、最後まできちんと聞いているでしょうか。聞いていれば心配ありませんが、何といっても「話を聞き、指示どおりに行動できるか」がポイントだからです。
幼稚園は自由保育ですが、小学校は一斉授業ですから自分勝手にやるわけにはいきません。
しかも試験ですから、規則違反にチェックが入ります。
 
なお、制作を苦手とするお子さんの場合は、もう一度、「鍛えてほしい第二の脳」をお読みになり、早いうちに対処しておきましょう。基本作業は、幼児教室の先生にお任せではなく、家庭できちんと身につけるものです。これをおざなりにしていると、制作に興味をもてなくなりがちで、行動観察型のテストが苦手になることを、しっかりと胸に刻んでおきましょう。
 
 
 
[模 写]
 
★お手本と同じように描きましょう。
 
模写は、文字通り、お手本と同じものをまねて写すことです。
点図形と線や図形の模写があります。点図形は、対称図形が多く、見た目もきれいですから面白そうですね。簡単なものも手抜きをせず、きちんと線を引くことが大切です。
 
しかも、大人が考えるより難しい作業です。どこから始めたらよいのか迷ってしまうものや、必ずしも点と点を結ぶとは限らず、点と点の間を抜けていくのもあります。これは、納得するのに時間がかかります。
「点と点を結ぶのに、何で抜かすのですか? そんなのずるいですよ!」
と不満に思っている子がいますが、こだわるから仕掛けに気づいて間違わないわけです。
 
そして、この問題も根気がいります。どこがどうなっているのか、試行錯誤を積み重ねた方が、後で効果が表れます。観察力と集中力、そして持久力や忍耐力も身につきます。さらに、全体のバランス感覚を養うのにも役立ちます。なぜなら、隅から隅まで、全体をきちんと見なければならないからです。それが絵を描くときにも生きてきます。
 
模写の問題で見逃せないのは、性格まで姿を表すことでしょう。
 
点と点をつなぐ直線がよじれたり、脱線をしたり、通過すべき点を無視する子は、何をやっても雑なところがありますね。スピードを競っているようですが、描けていればいいのではありません。完成度から美醜の感覚、基本的な生活習慣、しつけ、育児の姿勢まで判定することも可能です。最初が、肝心です。ゆっくりと丁寧に、時間をかけて、美しく描くことが基本です。そして、忘れがちなことですが、姿勢が悪ければ描く線も乱れます。背筋をきちんと伸ばし、左手でペーパーをしっかりと押さえ、筆記用具をきちんと持って描く習慣を身につけましょう。
 
<線の模写>
はじめに、点線などで手本が示されていますから、それを指でなぞり、どのようにすればスムーズに描けるか、必ず確かめましょう。
指で何回もなぞり、脳に一筆で描ける感覚をしっかりと学習させることが大切です。
三角形が連続する鮫の歯のような直線や、半円が上下に反転しながら連続するもの、曲線では、筆記体のアルファベットの小文字「エル」の連続したものもあり、上下が逆になると、ぶどうの房のように見えますが、「エル」は下から上に左回りで描きますから、それに従い連続して描き、上からの場合は、上から下へ右回り、時計回りで描きます。房の長さや間隔が乱れないように注意を促しましょう。
しかし、いずれも難しい作業でなかなかうまく描けませんから、根気よく取り組むことが大切です。
 
<図形の模写>
これは、難しいですね。
線の模写と違い、四角、三角、円、菱形、ハートなどさまざまな図形が、いろいろな組み合わせで出題されますから、それを描く子どもたちには、至難の業だと思います。やってみるとわかりますが、全体の配置状態、バランスをつかむことは容易ではありません。
 
以前にもお話しましたが、図形の○△□は、書写、運筆の基礎トレーニングですから、正確に描けるようにすることが大切です。
 
○は、下から時計まわりで描きます。上から左回りに描くのは数字のゼロです。
△は、頂点から左斜め下へ、そこから頂点に戻って右斜め下へ、最後に左から右へ底辺を描きます。左斜め下から、いきなり右方向へ底辺を描き、今度は左斜め上の頂点を目指して描くのは、大人の使う簡略法で、子どもにとっては書写違反です。
□は、漢字の国がまえと同じです。左から下におりて、そのまま戻らずに、左回りで一周する子がいますが、これも書写違反になります。
文字には筆順がありますから、こういった図形をきちんと描ける子は、きれいな字を書けるようになります。
 
基本的なトレーニングとしてお勧めしたいのは、例えば、大きな○を描き、その中に、それより小さな形をどんどん描くことです。□△◇も同じようにやってみましょう。前のものより小さく描き、その微妙な差を脳に教えることができるからです。線の模写と同様、難しいですから、お子さんはうまく描けずに嫌がると思います。あせらず、じっくりと時間をかけ、丁寧に描けるように導いてあげましょう。
 
ところで、頼りない線を引く子がいますが、多くの場合、鉛筆を正しく持てていないからで、おそらく、はしの持ち方もおかしいのではないでしょうか。これを解決してから挑戦しましょう。
 
ただし、はしの持ち方は、食事の時にうるさく言わないことです。朝、昼、晩と三度、同じことを言われていては、気が滅入りますから、以下のようなトレーニングがいいのではないでしょうか。
 
Bか2Bの鉛筆で、直線や円などを殴り描きさせると効果が表れるものです。
これは、スピードを上げてもかまいません。なぜなら、速く描くには、鉛筆をしっかりと持たねばなりませんし、どの辺を持てばよいかもわかるからです。
力み過ぎは、手首を疲れさせるだけですが、力配分やバランスも、やっているうちにわかってきます。
三角軸の鉛筆を使うのもいいですね。
そして、ボール遊び、縄跳び、鉄棒など両手を使う運動をやることで握力をつけましょう。
机の上だけではないトレーニングにも、目を向けてください。はしの持ち方にも変化が出てくるはずです。
 
 
[はしを使った問題]
 
★(角砂糖ぐらいの大きさのプラスチックの立方体が、たくさんお椀の中にあり、はしと空のお椀が用意されている)
 「お椀の中のものを、別のお椀にはしを使って、一つずつ移してください。」
 
「摘む」手作業の試験です。豆の他に、はしでスーパーボールや玩具のミニチュアの果物、落花生、金平糖をつかむ問題が出ています。
 
豆を買ってきて、割りばしを使い、懸命に練習をする話を聞きますが、何かおかしな気がします。これは、試験のために練習をして身につけるものでしょうか。体や筋肉の運動的な発達に関わることですし、基本的な生活習慣の大切な課題ですから、しつけと関係があります。
 
一応の目安として、3歳ぐらいからはしを使えるようになり、5歳頃には、巧みに使えるようになるといわれています。
 
生活習慣とは、「誰の手も借りずに自力で生活していくために身につけるもの」であることを忘れては、受験準備どころではないのではと思います。
 
第14号で紹介しました、立教女学院小学校の説明会での話を思い出してください。当時の教頭先生は、こうおっしゃっていました。
 
「鉛筆の持ち方やはしの持ち方は、一度悪い癖がつくと直しにくいので、家庭で正しい持ち方、使い方を身につけさせてほしい。あえてこの場で申し上げますが、今年度もテストの中ではしを使う場面がございましたら、はしで物を運ぶ速さを競っているのではなく、正しいはしの持ち方ができているかを見ていることをご理解いただきたい。テストの主旨はそこにあります。日本の文化でもあるはしの使い方を、きちんと身につけてほしいと考えています」
 
幼稚園児が、ペーパーテストに強くても、正しくはしを持ち食事のできない方が、よほど恐い話です。「九九、八十一!」とそらんじている子が、お母さんに靴をはくのを手伝ってもらっているようでは、やはり、おかしいですね。
 
練習しなければ、うまくはけないのは当たり前です。それを手伝うのですから、脳から司令は出ませんし、筋肉も反応しません。手をかけた分、脳も筋肉も楽をしているのですから、不器用になるわけです。
 
手を貸し過ぎていることはありませんか。
 
モンテッソーリの「敏感期」ではありませんが、幼児期には、これから使う筋肉を鍛えなければならない大切な時期があります。赤ちゃんは、なぜ、はいはいをするのか思い出してください。
 
ある私立の名門校では、鉛筆を削るのに「肥後守」(ひごのかみ)を使っていたという話を聞きました。「肥後守」とは、刃を収めるさやに「肥後守」と銘のある折り畳み式の小刀(こがたな)のことです。鉛筆削り器が出る前は、小刀で鉛筆を削るということは、誰もが練習をし、身につける、当たり前のことでした。しかし、全神経を手先に集中しなければ、けがをしかねない大変な作業です。危険を伴う作業は、大げさにいえば、幼いなりに危機管理が必要であることを学習していたのではないかと思います。使い方を誤れば凶器になることを教えずに、ただむやみに禁止するのは、教育的な配慮に欠けますが、こういったことはお父さん方が使って見せることもいいのではないでしょうか。
 
脱線しましたが、その他に、折り紙を折ったり、はさみで線や、線と線の間を切らせたり、ひもを結ばせたり、積み木をハンカチで包ませる問題もあります。
ひも結びやハンカチでものを包むのも苦手ですね、特に、男の子は。やったことがないからできないのだと思います。普段、お母さん方も風呂敷で物を包むことなど、ほとんどないでしょう。お弁当をハンカチで包むようにすれば、解決できます。第二の脳を活用すれば知力も向上しますから、一石二鳥にもなります。
 
巧緻性の問題には、お子さんの生活環境までわかる要素も含まれています。乱暴な線や心細い線を引くような場合、その原因は、日常生活の中で、いろいろな形でサインが出ていると思います。口うるさく注意する前に、どのようなサインが出ているかチェックしてみましょう。
 
 
   (次回は、「言語の問題」についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第3章(1)何といっても正月ですね 睦月

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第10号-
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第3章(1)何といっても正月ですね 睦月
 
 
物の本によれば、睦月(むつき)のいわれには、正月は身分の上下、老若男女、分け隔てなく行き来し、親族一同、仲よく「睦み合う」という説が有力だそうで、その他にも「元つ月」、草木が萌えいずる「萌(もゆ)月」、春陽が発生する「生む月」、稲の実を初めて水に浸す「実(み)月」なのだとする説もあるようです。
 
   お正月の歌
     ♪もういくつ寝るとお正月   お正月には凧あげて
      こまを回して遊びましょう  早く来い来いお正月♪
 
正月になるとこの歌ですね。子どもは正月が楽しみにしていますね。お餅を食べられるのとお年玉を貰えるますから。
 
ところで、この歌の作曲者はどなただと思いますか。瀧廉太郎です。童謡や唱歌には素晴らしいものがたくさんあります。お子さんと一緒に歌うべきだと思いますね。幼児期の思い出は、こういった歌からも残っていくものではないでしょうか。
 
さて、元日の朝ですが、いつもの朝と違い「特別な朝」という感じがしたものです。
 
元日は、その年の神さま、年神さまがやってきて、前の年の神さまと交代する日でした。ですから、神さまを中心に生活が営まれていた時代には、「おめでとうございます」といっていたのは、人と人が挨拶をするのではなく、新しい神さまを迎える言葉として使っていたそうです。
 
ですから、「あけおめ」などという言葉を聞くと「何と不謹慎なことよ!」と神さまに叱られそうですね(笑)。門松、しめ飾り、鏡餅、そしておせち料理も、みんな神さまをお迎えするセレモニーに必要なものだったのです。中には語呂合わせのようなものもありますが、「これはすごい!」と思わず膝を叩きたくなるのもあります。
 
 
 
★★正月の三点セット★★
 
◇しめ飾り◇
本来、しめ縄は、神前など神聖なものと不浄なものとの境界線を示すために張る縄のことで、わらを左捻(よ)りにして、三筋、五筋、七筋と順々にひねり垂らし、その間に四手を下げたものです。四手とは、紙(昔は木綿)を細長く切ってさげたものです。   
稲や麦の茎を干したわらで作ったしめ飾りで神さまを迎えるのも、農耕民族の生活の基盤は米ですから、わかるような気がしませんか。
 
地方によっては、えびや橙(だいだい)を一緒に飾った豪華版もあります。えびは「海老」とも書きますが、文字、そのものが「海のご隠居さん」で、体が曲がっている姿からお年寄りにたとえ、長寿を祈願したものです。これが漢字の楽しいところで、何となくイメージが浮かんできます。“LOBSTER”と書かれていても、何のイメージもわきませんが、字の並びに何か意味があるのでしょうか。橙は、一家の幸せが、「代々」続いて欲しいという語呂合わせです。神さまを迎えるしめ縄に、いろいろとお願いするのですから、頼まれる神さまも大変です。
 
 
◇門 松◇
門松の方が、まだ受け継がれているかもしれません。しかし、庶民派の門松は松だけです。銀行やデパート、大きな会社の入り口には、立派な門松が飾られています。松竹梅、鰻重が頭に浮かびますが、これも当然、意味ありでした。
 
松は常緑樹ですから、葉は一年中、緑色で冬の寒さをものともしません。
竹は真っすぐ伸びていきますから、横道にそれない芯の強さがあり、雪の日など他の木は雪の重みで折れがちですが、竹はしなって頑張り、雪の方が我慢できずに滑り落ちます。
かぐや姫の生れ故郷は竹の中、空っぽで「腹に一物もなく」、唐竹を割ると一直線に割れることから曲がったことが嫌いということを表していますね。
梅は北風が吹き荒れ、他の木々は葉を落とし寒そうですが、梅は頑張って小さな花をリンと咲かせ、「春近し」を告げています。
 
松竹梅、語呂もいいですね。この縁起物の三つを玄関に飾り、年神さまが、確実に我が家に来ていただくための道標、表札の役をしていたのではないでしょうか。昔は盆にはきゅうりの馬となすで作った牛を飾りましたが、正月は神さまを、盆には仏さまを迎えるための飾り物で、季節折々の花や農作物を供えるところからも、農耕民族であることがわかります。
 
何かにつけて、事の起こりは中国ではと考えますが、松竹梅も、厳しい冬を堪えて生きるみやびやかな木、「厳冬の三友」といわれ、それが日本に伝わり、「長寿・節操・清廉」などの解釈を加え、めでたいもののシンボルとなったのです。いや、それだけではありません。後程、紹介しますが、あっと驚く秘密が隠されているではありませんか。
 
 
◇鏡 餅◇
鏡餅は、年神さまから頂いた新しい魂を表したものです。丸い形は、角を立てないように、みんなで仲良く暮らそうという意味が込められています。お飾りは、地方によって勝栗、干柿、扇など多種多彩ですが、橙、ゆずり葉、昆布、裏白などが一般的でしょう。橙は長寿、ゆずり葉は新しい葉が出てから古い葉が落ちることから「譲り葉」、家督を子孫に譲ること、昆布は「喜ぶ」の語呂合わせと子生(こぶ)、子どもが生まれることを願い、裏白は葉の裏側が白いしだ類(わらび、ぜんまいの仲間)で、うしろ暗いところがなく、清らかで汚れのない心を表しています。
 
 
 
★★松竹梅に隠された秘密★★
 
何やら週刊誌の見出し風ですが、文句なしにすごい秘密が隠されているのです。
初めて読んだときの驚きといったらありませんでした。少し長くなりますが、紹介しましょう。
 
陰陽の立場から松竹梅をみると、松は陽、竹も陽、そして梅は陰である。
松竹梅は陰と陽が相まって完全な世界を構成するという哲理にもかなっている
わけである。さらに、植物学の上から考えると、松竹梅が植物界を代表してい
ることが知られている。植物を分類すると、顕花植物と隠花植物に分けられ、
顕花植物は裸子植物と被子植物から成り立っている。さらに被子植物は、単子
葉類と双子葉類に分類される。ところで、松は種子を裸にしているので裸子植
物であり、竹は種子が実の中にあって、しかも子葉が一枚しかないので、被子
植物の単子葉類、梅も被子植物であるが子葉を二枚持っているので双子葉類と
いうわけで、松竹梅が顕花植物の典型的な代表例となっている。このすばらし
い事実を古代人が知っていたのであろうか。松竹梅の意義の深さに、めでたい
ということよりも、頭の下がる思いがする。
ついでに隠花植物について述べると、正月飾りとしてすでに述べた裏白をその
代表にあげることができる。こうして松竹梅と裏白とで植物界をおおうことに
よって、正月をより意義のあるものにすることができるというわけである。
  
■植 物 界■
 ◆花が咲き実を結び種を作る(顕花植物)
  種が裸のもの  (裸子植物)………………………………… 松 
  種が実の中のもの(被子植物) 葉が一枚(単子葉類)…… 竹 
  葉が二枚(双子葉類)…… 梅   
 ◆花は咲かせず胞子で増える(隠花植物)…………………… 裏白 
 
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P28-29)
 
 
いかがでしょうか。先生の書かれた図を参考に、わたし流に書き加えると以下のようになります。植物には、梅、桜のように種を作るものと、コケやシダのように花を咲かせないで胞子でふえるものがあります。種には、竹や梅のように種が実の中に包まれているものと、松、銀杏(いちょう)、蘇鉄(そてつ)のように種が裸のままのものがあります。種が実の中にあるものをまくと、芽を出した時に最初に出る葉が、一枚のものと二枚のものとあります。
 
松竹梅というと、寿司屋などでは、上中並と同じように値段を表すのに使っていますが、実は、こういう素晴らしい意味があるのです。本当に不思議ですね。
 
「なるほど!」と納得するばかりではなく、感動しませんか。昔から受け継がれているものには、それなりの意味があるわけです。また、こういったことを科学的に実証する先生がいらっしゃったのも、頼もしい限りではありませんか。
 
 
 
★★正月の食べ物★★
 
正月の食べ物といえば、雑煮とお節料理ですが、皆さんは食べましたか。
 
◇雑 煮◇
雑煮は、大晦日の夜に、神さまをお迎えするためにお供えをした食べ物を、神さまと一緒に食べ、神さまの力を授かる食べ物です。雑煮は、必ず、青い葉っぱを入れるのが決まりで、「葉っぱを入れる」「菜を入れる」から「名をあげる」「成功して名前が知られるようになる」に通じるので、青い葉っぱを入れるのだそうです。
 
餅は本来、丸いものですが、東日本では四角に切った切り餅を、関西では丸い餅を使っています。雑煮の作り方ですが、東京では、餅を焼いてから椀に入れ、具や汁を入れますが、大阪では、ゆでてから椀に入れます。
 
味付けも、すまし・醤油ベースや白味噌ベースなど、地域によって様々です。
 
織田信長に面白い逸話が残されています。ある年の元日の朝、信長の雑煮の膳に、箸が片方しか添えられていなかったのです。あの短気な信長のことですから、平穏に収まるわけがありません。しかし、怒り心頭に発した信長を、木下藤吉郎(後の太閤秀吉)が、「今年から諸国をかたはし取りにされる吉兆でございます」と言い換え、ご機嫌が直ったそうです。
 
また、「曽呂利新左衛門のとんち話」の中に、病気見舞いに送られてきた松竹梅の盆栽が枯れたのを見て落胆した秀吉を、新左衛門の機知で吉報に変えてしまう話があります。
 
とんち話には傑作な話がたくさんありますが、おすすめは、寺村輝夫のとんち話シリーズ「一休さん」・「吉四六(きっちょうむ)さん」・「彦一さん」(あかね書房 刊)で、大人でもしっかりと笑えますので、ご一読を。
 
(次回は、「正月の食べ物」他についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話 
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★ [一]入学試験の出題範囲

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第26号>
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あけましておめでとうございます。
今年もご愛読のほどよろしくお願い致します。
志望校から招待状が頂けるよう、頑張りましょう。応援します。
 
さて、お正月には門松と鏡餅を飾りますが、その門松と鏡餅には、文句なしに、
すごい秘密が隠されているのです。植物界は、顕花植物と隠花植物から成り立
っていますが、その代表が勢揃いして、正月を迎えているのです。門松は、花
を咲かせ種を作る顕花植物から松、竹、梅が、鏡餅の下には、花を咲かせず胞
子で増える顕花植物から裏白が選ばれています。
昔から受け継がれているものには、やはり意味ありでした。
(メールマガジン「さわやかお受験のススメ 保護者編」より要約)
 
 
★★入試問題を分析する★★
 
[一]入学試験の出題範囲
 
テストの形式は、わかりましたから、今回は問題の内容を紹介しましょう。その前に、4歳や5歳児の心や身体は、どの程度、発達するのでしょうか。これは平成4年に改訂された「幼稚園指導要領」の解説に添付されていた資料で、昭和23年3月に文部省から出された保育要領(幼児教育の手引き)の中で紹介されたものです。
身体の成長は、現代っ子の方がまさっていますが、運動や知的能力、情緒の発達や社会性などの発達の内容は、現代でも通用する幼児教育のバイブルともいわれているそうです。
こういった資料を見ると、学校側のねらいは、どの辺にあるか理解できると思います。
 
★身体の運動的発達★
  [4 歳 児]
   1 スキップができる。
   2 片足立ちをしようとする。(少しの間ならできる)
   3 走り幅跳び、立ち幅跳びができる。
   4 ボールをじょうずに投げられる。 
   5 はさみで形の切り抜きができる。
   6 ひもを結ぶことができる。(固結び)
 
  [5 歳 児]
   1 片足立ちができる。
   2 小さい物を巧みに扱える。
   3 三角形を模写する。
   4 はしを巧みに使う。
 
★知的能力の発達★
  [4 歳 児]
   1 13まで正しく数える。
   2 重さの比較ができる。
   3 3つの数字の復唱ができる。
   4 3つの命令を正しく実行する。
   5 語彙数の増加が著しい。
   6 発音が正しくなり、赤ちゃんことばがなくなる。
   7 非常によく質問する。
   8 簡単な課題を解決する。
 
  [5 歳 児]
   1 求知心が強くなる。
   2 想像と現実との区別が十分につかないところが間々ある。
   3 1つのことを始める前に一定の計画を持っている。
   4 用途によって物の定義をする。
   5 手の指の数が正しく言える。
   6 右と左の区別ができる。
   7 成人との話が自由にできる。
   8 いろいろな貨幣の名前をいえる。
   9 昨日、今日、明日の区別ができる。
  10 具体的推理ができる。
 
 
運動テストやペーパーテストの内容を見ると、身体や知的な能力の発達を考慮して、入学試験は行われていることがよくわかります。こういう標準的な発達から逸脱しないばかりか、さらに生まれた月の差を考慮して試験を実施すると発表している小学校もありますが、このデータを見ているとうなずけます。何といっても、受験生は幼児だからです。
 
★情緒的発達★
  [4 歳 児]
   1 3歳児と同じようなことで泣きやすいが、だいぶ自制できるようになる。
   2 理由のない恐怖心(たとえば、暗やみに対する)が多い。
   3 かんしゃくは、ほとんど起こさなくなる。
   4 怒ったときの表情が次第に抑制されるようになってくる。
   5 小さい子供を可愛がることを喜ぶようになる。
   6 反抗期が終わり、大人の権威や命令に従うようになる。
 
  [5 歳 児]
   1 泣くことが非常に少なくなる。
   2 恐怖心が、やや 少なくなるのが普通である。
   3 怒り、かんしゃくは、ほとんど抑制される。
   4 感情や情緒は分化して、大人に見られる大部分の情緒が現われる。
    (例 はにかみ、恐れ、心配、怒り、しっと、うらやみ、失望、不快、いみきらい、親への愛情、小さい者への愛情、のぞみ、喜び、快い等) 
 
★社会的発達★
  [4 歳 児]
   1 自分で着物を着たり脱いだりする。
   2 排便のことは全部自分でできる。
   3 歯をみがく。
   4 顔を洗う。
   5 多人数の中にある自分というものを意識しはじめる。
   6 他の子供たちと協同的に遊びはじめるが、2人か3人グループが多い。
   7 簡単な遊戯の規則を守ることができる。
   8 ごっこ遊びが、最も盛んである。
 
  [5 歳 児]
   1 独立的で自信を持ち、従順になるので物事をまかせられる。
   2 小さい者をいたわる。
   3 自分の周囲の社会生活を遊びに取り入れる。
   4 2人ないし5人ぐらいのグループで協同的に遊べる。
   5 友達と遊ぶことを好む。
   6 自己主張をし、他人への依頼感を持ち社会的協同性を持つようになる。
 
いかがでしょうか。
親の手を借りずにできることが増え、一人の人間として、集団生活を送るために必要な能力の培われていく時期であることが、よくわかると思います。3歳頃から始まっていた、親のもとを離れる準備が、完了する時期といえます。就学前とは、小学校生活を送るにふさわしい能力を身につけ、自分の力で大地にしっかりと足を踏張り、自力で立つ時です。
 
こんな大切な時に、過保護や過干渉な育児になり、さらに、知的な能力だけを訓練して鍛えるのは、決して幼児にふさわしい受験準備ではありません。基本的な生活習慣やあいさつなどをきちんと身につけさせ、子どもの感性に刺激を与え、好奇心を引き出し、学習に意欲的に取り組める環境を作ってあげるのが、幼児期にふさわしい受験準備であり、こういった意識を持つことが、小学校の受験に取り組むご両親の、大切な心構えではないでしょうか。
 
よく練り上げられたカリキュラムをもとにした適切な指導は、決して過激で猛烈な受験勉強ではなく、子どもたちが楽しく学習しながら、合格への道を歩むパスポートであるはずなのです。
 
お子さんは、教室へ行くことを楽しみにしていますか。楽しみに通っているのであれば、心配ないでしょう。
 
「受験戦争の低年齢化!」「猛烈な準備に耐え、突破した子だけが合格する!」
などと言われることもあるようですが、これも怪情報、うわさの一つです。
お子さんが楽しんでいないようであれば、普段の生活を見直してみましょう。
ちなみに小学校受験は「お受験」とも言われますが、この言葉は1980年代後半から起きたバブル経済全盛期の頃にできた言葉です。
 
東京にある私立小学校は54校。※
 
2011年3月11日に起きた東日本大震災後、「安全な通学」も学校選びに欠かせない条件になり、学校側も説明会で自然災害対策の話をするようになりました。
 
そして、倍率の高い学校は、依然として入学の条件は厳しく、それなりの準備は必要です。
 
しかし、先程紹介したようなうわさを信じて準備を始めると、親子で受験地獄に陥ることになりかねません。そのようなことを避けるために、入学試験では、どのような問題をやっているのかを紹介していくことにしましょう。すると、いろいろな形で出題されているさまざまな領域の問題は、幼児の日常生活と深いかかわりのあることがわかるからです。
 
※この他、不登校児童を対象とした私立小学校もあります。
 
 (次回は、「合否を判定する必須十項目」についてお話しましょう)
 
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第2章(4)冬(12月~1月)に読んであげたい本

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第9号-
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第2章 (4)冬(12月~1月)に読んであげたい本
 
あけましておめでとうございます。
今年もご愛読の程よろしくお願い致します。
 
初詣、お出かけになりましたか。
これからという方も、初詣に訪れ、大きな門松をご覧になったことがあると思います。
 
実は、この門松、文句なしに、すごい秘密が隠されています。
 
植物界の代表が勢ぞろいし正月を迎えているのです。花が咲き種を作る顕花植物から松、竹、梅が、花は咲かせず胞子で増える隠花植物からは裏白(鏡餅の下に敷くもの)が選ばれていますが、昔から受け継がれているものには、それなりの意味があります。
詳しくは、次号からお話ししましょう。
 
 
 
【冬(十二月~一月)に読んであげたい本】
 
神さまの交代する月ですから、神さまの話が多いですね。あまりにも、たくさんあるので困りますが、これなどちょっと恐くて、面白いです。
 
◆おぶさりてえのおばけ◆
 
むかし、あるところに、正直で働き者の、じいと、ばあがいました。
二人は懸命に働きましたが、暮らしは楽になりません。
ある年越しの晩のことです。
寝ようとしたとき、裏山から重っ苦しく、「おぶさりてえ!」と叫ぶ声が聞こえたので、ばあが、「様子を見てきてくれ」というと、じいは、嫌だと布団にもぐりこんでしまうのです。
声は、夜中になってもやめようとしません。
「『おぶさりてえ!』といっているから、おぶってやったらどうか」と、ばあがいうものだから、帯を持って出かけました。
山道を登って行くと、あの声がぴたりとやみ、突然、そばの杉の木の天辺から、
「おぶさりてえっ!」
と、大声がしたので、じいは、頭をかかえて座りこんだのです。
すると、背中に、ずしんとおぶさってきたものがあり、おぶわれたきり、もう何もいいません。
何とか庭までたどり着き、降ろそうとしますが、離れません。
台所でも、座敷でも、降りないので、「降ろしてくれ」と、ばあに声をかけました。
ばあが見ると、背中にのっているのは大きな石なので、あきれて背中に手をかけると、自分から落ちたのです。
「この石は、おらたちの家に来たかったのだろう。家宝にしよう」と、二人で床の間に運び、安心して寝てしまいました。
次の朝、その石はたくさんの大判小判に変わり、お金持ちになって、いい年越しをしたのでした。
  世界のメルヘン 22 日本のむかしばなし 
     つるのよめさま  松谷みよ子・水谷章三 講談社 刊
 
 
 
 
これも、おかしな話です。普通は、福の神は歓迎されるはずですが、何と逆になるのです。
福の神にとっては初体験、その顔を思い浮べると、吹き出したくなります。
 
◆びんぼう神とふくの神◆   望月 新三郎 著
 
とんとむかし、あるところに、働き者のおやじとかかがいました。
朝早くから夜遅くまで働いたので、暮らしは次第によくなってきたのです。
ある年越しの晩、二人で正月の支度をしていると、泣き声がしたので、おやじが押し入れを開けると、ぼろを着た、やせたじじいが転げ出てきたのでした。
これが貧乏神で、「お前たちは働き者だから、福の神が来るので出ていかなければならない。それが悲しくて泣いているのだ」というのです。
「長年、おらの家に住んだ仲だから、福の神が来たら、追っ払ってしまえ」と励まされたのです。
「貧乏神、早く出ていけ!」と福の神がやって来ました。
「しっかりと追い出せ!」と、二人の励ます声に、元気になった貧乏神、勢いよく組みつきましたが、福の神は、びくともせず、貧乏神は押されるばかりです。
すると二人は、貧乏神の後から押しはじめました。
これには福の神もたまらず、引っ繰り返され、「福の神を追い出す家など初めてだ!」と逃げ出しました。
戸口の前に打出の小槌が落ちていたので、貧乏神が拾い、「米、出ろ! 金、出ろ!」とふると、米や小判が、たくさん出てきたのです。
それからというもの貧乏神は、福の神のようになり、いつまでも、この家で暮らしたのでした。
  日本むかしばなし 2
   子どものすきな神さま 民話の研究会編 巽弘一 絵 ポプラ社 刊
 
 
 
最後は、どうしても、この話に出てもらわなければ、おさまりがつきません。
「かさ地蔵」です。
おじいさんの見返りを求めない無償の奉仕に、お地蔵さまが応えてあげるのがいいですね。こういうことって、ありそうでないのが現実ですが、あってほしいと願う、庶民の素朴な望みです。
育児も同じです。「あなたのために、お母さんはこんなにしてあげたのに…」。
育児は、有償の奉仕ではありません。見返りを期待しはじめると、親子の絆は、切れがちではないでしょうか。「無償のほほ笑み」は、親の宿命です。みなさんのご両親が、そうであったように、巡り合わせです。「子を持って知る親の恩」と言うではありませんか……。
 
◆かさ地蔵◆   浜田 廣介 著
 
むかしのことです。
ある所に、じいと、ばあが住んでいました。
もうすぐお正月、貧乏でも年越しの晩に魚っ気がなくてはと、じいは、さけの頭を買いに出かけたのです。
雪が降り、風も吹き始め、道端の六つのお地蔵さんの頭は、雪をかぶって寒そうに立っています。
石のお地蔵さまでも、かわいそうだと、手でかき落としますが、すぐに積もってしまいます。
そこで、じいは、町まで急ぎ、さけを買うのはやめすげ笠を買ったのですが、お金が足りず、五つしか買えません。
じいは、頭に一つずつ笠をかぶせ、足りない分は、自分の古い笠をかぶせてあげたのです。
帰ったじいは、さけを買わない訳を話すと、よいことをしたと、ばあも喜びます。
夜が明けると、大晦日。
二人は、麦飯を分け、菜づけに熱いお湯をかけて、塩気をすすって食べ、無病息災で年を越せることを感謝し、火箱を抱いて寝床に入ったのです。
すると、どこからともなく、唱える声が近づき、ドシン、ドシンと重い響きが、枕元まで響いてきました。
二人は恐くなり、布団をかぶって震えていました。
地響きと声は、庭先に入ってきたのです。
何やら話し声がしたかと思うと、かけ声と共に「ドシン!」と大きな音がして、後は何の音もしません。眠気も拭き飛んだ二人は、寝床でじっとしていました。
やがて、夜明けを知らせる三番鶏が鳴いたので、じいは戸を開けてみると、大きな袋が置いてあり、中には金貨と銀貨が、ぎっしりとつまっていたのです。
六人のお地蔵さまが、笠のお礼に袋をかつぎ、大地を踏みながら運んできたのでした。
 世界民話の旅 9
  日本民話  浜田 廣介 著 さ・え・ら書房 刊
 
お地蔵さまは、お釈迦さまが入滅後、弥勒菩薩さまが生まれるまでの間、人々を救済する菩薩さまで、正しくは地蔵菩薩さまといい、仏さまの仲間なのです。
あのやさしいお顔から民間信仰に結びつき、村や子どもなど弱いものを守ってくれると信じられ、村の入口や街道筋などに、たくさん立てられるようになったのでした。
 
この話に出てくる「六地蔵」とは、
  地獄道 (地獄で苦しむこと)
  餓鬼道 (常に飢餓に苦しむこと)
  畜生道 (けだものの姿に生まれて苦しむこと)
  修羅道 (争いの絶えない世界で苦しむこと)
  人 道 (人の踏み行う道を外れて苦しむこと)
  天 道 (超自然宇宙の道理から外れて苦しむこと)
という六道に迷う人々を救済する願いがこめられているのです。
 
 
(次回は、「何といっても正月ですね」についてお話します)
 
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