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めぇでるコラム : 2020年11月

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>■■[2]5つの試験形式■■(3)集団テスト

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    「めぇでる教育研究所」発行
さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
        第22号
  現年中児のお子さまをお持ちの方へ
小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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発行者よりお知らせです
 さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>
は、11月から
 2022さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
にタイトル変更してお届けしています。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
(3)集団テスト
 
10名から20名位のグループで、部屋に置かれている遊び道具、ボールや縄
跳び、積み木や輪投げなどを使い、各人が自由に遊んでいる様子や、先生のま
ねをして踊ったり、熊や象などの動物のまねをしているところを観察するもの
や、話を聞いて、話の続きを想像して絵に描いたり、全く条件を与えられない
で好きな絵を描いたりします。
 
テストの狙いは、遊んでいる様子から自発性を、何かを作ったり、絵を描いた
りすることから表現力や創造力、巧緻性などを見ます。巧緻性は、きめ細かく
上手にできていることで、「手は第二の脳」(11号~14号)で詳しくお話
しましたから省略しますが、一言でいえば、普段、両手を使う作業をやってい
るかを見るわけです。親の手を借りずに、どのくらい自分自身でできるか、自
立心ですね。さらに、基本的な生活習慣も関わっています。もちろん、積極的
に参加する意欲や自主性もわかりますから、手を抜けません。
 
また、たとえば、クリスマス・ツリーなどを作る課題を与えられ、5、6名の
友だちとグループを組み、相談をしながら、自分の考えをいい、相手の意見に
も耳をかたむけながら、仲良く作り上げていく問題もあります。社会性や協調
性が培われているかを見る行動観察型のテストです。
 
[自由遊び]
 
「好きな道具を選んで、自由に遊びなさい」
といわれて戸惑う子がいます。子どもは遊びが仕事ですから、信じられません
ね。その原因は、日常生活が何から何まで管理されていることにあるのではな
いでしょうか。お母さんの指示どおりにしないと、お母さんの気持ちが済まな
いようで、その心は、無事に〇〇小学校へ入るためです。これでは、学校側が
求めている自発性や自主性は、育たないと思いますね。お子さんの通っている
幼稚園は、自由保育です。お母さんのやっていることは、管理育児です。こん
な言葉はないでしょうけれど、保育の方針に逆らっています。
 
遊んでいるときに、子ども本来の姿が表れるもので、そこを学校側はみたいの
です。みんなが自分の好きな遊びに熱中している時に、何やら不安気に、ボー
ッとしていると、先生方は、どう思うでしょうか。育児が過干渉である証拠で、
自分の意志を持たない「受験サイボーグ戦士」と思われるかもしれません。そ
の心配なしとは言えませんね。
 
こんな子もいるそうです。今、ボールで遊んでいたと思ったら、今度は縄跳び、
と思う間もなく輪投げです。一ヶ所にジッとできません。これは、この時期に
見られる子どもの成長を現す一面で、目移りではなく、好奇心が旺盛なのです。
とは言っても、次から次へと手を出し、人が遊んでいるおもちゃを横取りした
り、いくつも独占したり、あげくのはてには散らかしっぱなしはどうでしょう
か。
これでは、好奇心が旺盛とは言えません。単なるわがままか、飽きっぽいだけ
で、育児が過保護になっている証拠です。
 
遊ばせると、子どもの育てられている環境はわかります。幼児の試験に適して
いますね。子どもたちは、全身で育てられている環境を表します。無心に遊ぶ、
ちょっとしたしぐさから、育児の姿勢が伝わってくるものです。
 
[身体表現]
 
先生のやっている動作をまねる、いわゆる身体表現です。
たとえば、あざらしの歩き方をまねたりします。これは、かなり、難しいです
ね。両手で体重を支え、両足をそろえて伸ばし、両手を交互に出しながら前に
進みます。まさに、あざらしさんです。腕力と腹筋を使いますから、かなりき
ついですね。もちろん、あざらしそっくりにできればいいのですが、それだけ
ではありません。これも積極的に参加する意欲があるかどうかです。ちょっぴ
り照れながらも、顔を真っ赤にして挑戦する子、いいですね。
 
幼児は自分の考えを表すときに、言葉だけでは十分でない場合、どうするでし
ょうか。身体全体を使って表現しようとするものです。しかし、これは表現す
る対象をよく観察していないとできません。あざらしを見たことのない子に、
まねられるでしょうか。たとえお手本があっても、ぎごちないでしょう。見た
ことのある子は、「不思議な歩き方だな?」と思うはずです。「思う」とは、
注意を呼び起こされることです。「どこが、どう違うのかな?」と観察を始め
ます。幼児の学習は、これが基本です。
興味があれば、細かいところまで見極めようとします。他の動物との違いを見
つけられれば、素晴らしい学習になります。大切なのは、実物を見ることです。
同じところと異なったところを見つける、「類似差異」の見分けです。そこか
ら、新しい知識が備わってきます。机の上で、いろいろと知識を詰め込まれて
も、あざらしを見たことがなければ、はつらつと表現できるでしょうか。この
テストの目的は、生活体験、自分を取り巻くものへの関心や、そういったもの
に対する観察力ではないでしょうか。
 
かつて、アメリカでベストセラーとなった「人生に必要な知恵はすべて幼稚園
の砂場で学んだ」の第1章 私の生活信条(クレド)に、「不思議だな、と思
う気持ちを大切にすること。(中略)ディックとジェーンを主人公にした子供
の本で最初に覚えた言葉を思い出そう。何よりも大切な意味を持つ言葉。“見
てごらん”」があります。(“  ”は発行者)幼児に大切なのは、教え込む
より、疑問や関心の芽を育ててあげることではないでしょうか。
 
 
 
[共同制作]
 
クリスマス・ツリーを作ることを考えてみましょう。折り紙、モール、きびが
ら、発泡スチロール、リボン、厚紙などの材料から、セロテープやのりなどの
接着剤、はさみ、穴あけパンチ、ホチキスといった道具が用意され、相談しな
がら作ります。共同制作です。
「制作、得意なんです、私に任せといて!」
「苦手なんだ、はさみを使うの。手を出さないで見てよう!」
そうはいきません。みんなで相談しながら作ります。自主制作ではありません、
共同制作です。
 
以前、日出学園小学校では、4、5人のグループで模造紙1枚とクレヨン1箱
だけ用意し、相談しながら絵を描かせる課題が出題さました。ある年は「弁当
箱」でした。クレヨン1箱ということは、同じ色は2本ないことです。さあ、
どうすれば絵は完成するのでしょうか。
 
これは、本当に大変です。考えてください、全員、今日、初めて会ったのです。
幼稚園や保育園、幼児教室や近所の気心の知れた友だちではありません。名前
も性格も能力も趣味も、全く、わからない集りです。ですから、育てられてい
る環境が、姿を表します。
「自分のことは自分でしなさい!」
と、ご両親が自主性を培う育児に徹していれば、一本しかない黄色のクレヨン、
どうすれば使えるかを自分で考えます。
過保護、過干渉な育児では、果たして自分の考えを言い、積極的に参加できる
でしょうか。学校側の狙いは、ここにあるのではないでしょうか。
 
 
 
[お絵描き]
 
かつて幼稚舎の試験に、こういうのがありました。
教室に紙を貼ったイーゼルが立てかけてあり、その前に数種類の絵具が用意さ
れ、絵を描かせたのです。学校の狙いは、何でしょう。絵の巧拙でしょうか。
それもあるかもしれませんが、それよりも挑戦する意欲をみているのではない
でしょうか。4、5歳の幼児が、イーゼルを使って絵を描く機会があるでしょ
うか。ほとんどの子どもは、「何だろう、これは?」となるに違いありません。
新しいもの、未知なるものに挑戦する意欲です。積極的に挑戦する子の好奇心
は、旺盛です。これですね。
体中から好奇心という触角を出して、うるさいほど知りたがるのが子どもです。
こういう子は、やります。筆につけすぎた絵具をボタボタ落としながらでも。
手や顔どころか、服まで絵具だらけになるかもしれませんが、幼稚舎の試験は、
体操着に着替えてしますから心配ありません。どうして、体操着に着替えるの
でしょうか。受験される方は、これを考えましょう。
 
ところで、「なぜ、イーゼルを使い絵を描かせたのですか」の質問に、「子ど
もの表情を見たかったのです」とおっしゃった当時の舎長のコメントが印象に
残っています。なぜなら、一心に絵を描いている子ども達の表情は、実に生き
生きとしているからです。知的能力だけではなく、身体全体から表われる子ど
もらしい成長の証(あかし)を見ているのです。ここがポイントではないでし
ょうか。
 
制作、絵画は、完成した作品の巧拙だけを見極めるのではありません。積極的
に楽しく取り組む意欲や共同で作業を進める協調性です。協調性は、社会性と
共に、大切な集団生活への適応力を育むものです。
ペーパーテストは満点を取っても、集団テストの苦手な子を、学校は歓迎する
とは考えにくいことです。社会性がどのくらい培われているか、子どもは態度
で示します。過保護、過干渉の環境では、意欲や集団生活への適応力に問題あ
りと判定されないでしょうか。
通っている幼稚園の先生や保育士さんに聞いてみましょう。「集団生活に、少
し心配な点がありますね」などの答があった場合は、「ものすごく心配な点が
ある」と受け取り、お子さんに対する育児の姿勢、取り巻く環境を総点検する
必要があります。
 
繰り返しますが、「ご両親の育児の姿勢」を総合的に判定するのが、小学校の
入学試験です。このことを、肝に銘じておくべきではないでしょうか。
 
  (次回は、運動テストについてお話しましょう)

 


さわやかお受験のススメ<保護者編>第1章(2)情操教育、難しく考える必要はありません 話の読み聞かせ(2)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2022さわやかお受験のススメ<保護者編>
       ~紀元じぃの子育て春秋~
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
          -第4号-
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第1章 (2)情操教育、難しく考えることはありません
話の読み聞かせ (2)
 
「竜宮城って、おもしろいところだな。絵に描いてみようかな!」
となると絵画の領域です。幼児期の絵は、写生ではなく、イメージ、想像し
て描いたものではないでしょうか。ファンタジーの世界ですから夢もふくら
みます。絵を描こうとする動機は純粋です。幼児には、この「……かな?」
がついた時こそ、好奇心の芽を育む絶好のチャンスなのです。「小学校の入
学試験に、絵を描かせる学校があるから、絵画教室に行きましょう」と考え
て始めるのは、子どもの希望ではありませんから、絵を描くことが好きにな
るとは思えません。
 
最近、絵を描くことをいやがる子どもが増えていると聞きますが、想像力が
培われてくる前に、大人の求める望ましい上手な絵を期待するからではない
でしょうか。感性が磨かれなければ、絵は描けません。
 
(環境+五感が受けた刺激)×(想像力×好奇心÷咀嚼力)=描かれた絵
 
妙な式ですが、私見ですが私の経験では、感性は、子ども自身が与えられた
環境の中で、自らの力で培ってきた「自前の能力」ではないだろうかといい
たいのです。親が、注文を付け始めると、おもしろくない絵になりがちだか
らです。
 
お子さんの絵について、振り返ってみましょう。
2歳頃から、点や線の殴り書きが始まったのではないでしょうか。
3歳頃から、直線や曲線を使って○や□らしきものが表われ、それこそ、あ
る日突然、頭から手足がニョキニョキ出ている頭足人間を描いたと思います。
やがて、頭と体が分かれ、一応、人間らしくなりますが、手は電信柱のよう
に、横に真っすぐのびたままで、年長になって、やっと手も下におり、人間
と認められる絵になったのではないでしょうか。
ここまで表現できるようになるには、これだけの段階を踏んでいるのです。
絵は、言葉や身体表現と比べ、差のつきやすい能力といえます。うまい絵を
求めるより、何を描きたがっているのか、その内容に注目し、楽しく描ける
雰囲気を作ってあげることが大切です。
 
「絵は心の窓」ともいわれ、心の屈折が表れるそうです。冷静にお聞きくだ
さい。もしかしたら、遺伝もあるかも知れません。ご両親、特に、お母さん
は子どもの頃、どういった絵を描いていたか、ご自身のお母さんに聞いてお
きましょう。
 
話を戻しましょう。
話の読み聞かせの効果は、まだ、あります。
昔話をはじめ、子どもの読む本は、勧善懲悪から成り立っています。正義は、
必ず勝ちます。倫理、道徳、善悪について、襟を正して説教をしなくても、
きちんと学習しています。いってみれば、お子さん用の「修身、道徳講座」
です。情操教育の基礎、基本を学習しています。
 
3歳を過ぎる頃から自立が始まります。自立が始まると、いろいろな経験を
重ねながら、さまざまな感情も一緒に培われます。これが情緒です。この情
緒の分化が、5歳頃には出揃うと考えられています。
赤ちゃん時代は、「ママ!」の一言ですべての要求を表し、ついこの間まで
は、望みが叶わなければ何でも泣くだけで表現していたことを考えれば、言
葉で表せるのは、格段の進歩ではないでしょうか。今まではおもちゃ箱の中
に、乱雑に入れられていたおもちゃが、「自動車はここ」、「縫いぐるみは
こっち」、「ままごと道具はあっち」と、きちんと整理されて行く状態にな
るのです。まだ、整然とはいきませんが。
つまり、未分化だった情緒が分化されて、大人に見られるような、「喜び、
怒り、楽しみ、悲しみ、望み、不安」といった情緒が表れ、いろいろな話を
聞くことから、喜怒哀楽など心の動きが誘い起こされ、幼いなりに自我を作
っているのです。
 
ずる賢い人には怒りを覚え、悲しい話になると涙ぐみ、正直な人が報われる
と笑顔を見せ、恐い話になると表情も変わってきます。話をきちんと理解し
ている証拠です。正しいこと悪いことの分別を、感情を移入しながらシミュ
レーション学習をし、幼いながらも、正義に対する憧れや悪に対する嫌悪感
を養っているのです。それが自我であり、個性を培っていく基本的な学習に
なっているのです。
「三つ子の魂百まで」の意味は、ここにある事も忘れてはならないでしょう。
小学校受験編でも紹介しましたが、英語では“The leopard cannot change
 his spots”というそうで、世の東西を問わず、育児の鉄則となっているよ
うです。 
 
まだ、あります。これが最も大切だと思います。お母さんが感情こめて読ん
であげると、子どもは真剣に、心をこめて聞くものです。そこから、人の話
を静かに、行儀よく聞く姿勢が身につきます。これは、これから始まる小学
校の勉強にスムーズに取り組むために身につけておきたい、大切な心構えで
あり、学習態度です。話が聞けないようでは、いくら漢字が読め、足し算や
引き算ができ、九九をそらんじていても、駄目です。小学校の先生方に聞い
てみると、みなさん、そうおっしゃいます。それほど、話を聞く姿勢を身に
つけることは大切なのです。話を聞く姿勢ができていないと、勉強について
いけず、落ちこぼれることにもなりかねません。
 
あまり本を読んであげずに、
「人の話は、キチンと聞かなくては駄目だと、お母さんはいつもいっている
でしょう!」 
と、恐い顔して、厳しく、何十回といっても無駄、と言っても過言ではない
でしょう。言葉だけで説得できません、態度で示すに限ります。本を読んで
あげることで、お母さん自身が、よいお手本を見せています。
それが、話を聞く姿勢を身につける訓練になっているのです。
 
ひたすら自己中心に行動する子や、落ち着きがなくじっとしていられない子
になる原因の一つとして、話を聞きたがる大切な時期に、読み聞かせを怠っ
たことも考えられるのではないでしょうか。モンテッソーリの「敏感期」で、
その時期に著しく成長し、それを過ぎると鈍感になる成長過程のことです。
真偽の程は定かではないようですが、言葉の敏感期に人間の言葉に触れなか
ったため、言葉を話せないまま成長したインドの狼少女は、敏感期を実証し
た話ではないでしょうか。
 
  マリア・モンテッソーリ
    イタリアのローマで医師として精神病院で働き、知的障害児へ感
   覚教育を実施し、知的水準を上げる効果をみせ、1907年に設立
   した貧困層の健常児を対象にした保護施設「子どもの家」において、
   独特の教育法を完成させた。以後、モンテッソ―リ教育を実施する
   施設は「子どもの家」と呼ばれるようになった。
    (ウィキペディア フリー百科事典より)
 
それはともかくとして、話の読み聞かせは、予想もつかない力も育みます。
話がおもしろければ、そしてそれが長編ともなれば没我の世界の中で、一つ
のことに集中できる持久力や耐久力さえ身につきます。気力や体力は、運動
だけで培われるものではありません。こういった精神力を鍛えることで、物
事に取り組む意欲や頑張る力も育まれます。
 
さらに、すごいと思うのは、
「言語能力を高めるためのお勉強ですよ!」
といった意識は、読んでいるお母さんも、聞いているお子さんにも、まった
くないはずです。無意識の内に、自主的に、積極的に、しかも楽しく学習し
ています。これこそ、「教えない教育」の最も効果的な方法ではないでしょ
うか。「教えない教育」とは、誤解を恐れずにいえば、本人は、勉強だと思
っていないにもかかわらず、ものすごい勉強をしていることです。何かを学
ぼうとする気持ち、学習意欲が身につきます。
 
しつこいですけれど、まだ、あります。
お母さんの表情豊かな、やさしい語りかけが、何よりのスキンシップなので
す。ですから、本をたくさん読んであげるお母さんは、子どもに慕われます。
それは、お母さんとお子さんが、同じ土俵に上がり、同じ気持ちで、物語の
世界を楽しんでいるからです。お母さんは、こんな荒唐無稽な話などありえ
ないと思っても、また少し抵抗を感じる言葉でも、一切、無視し、お子さん
のレベルに合わせて読んであげているはずです。視線は同じ高さですから、
心は通います。
視線の高さが違ってくると、命令と忍従の関係になりがちです。
 
しかし、一つだけいっておきたいことがあります。
いくら話の読み聞かせは素晴らしいといっても、お子さんが興味を示さない
本では、あまり効果はありません。「少年少女 世界名作全集 全十巻」な
どを買い揃えるのはどうでしょうか。
「本当は、『かちかち山』の話、読んでもらいたいのだけど……」、こうい
ったことは、小さい時から、とかくありがちです。気を使ってください、親
の考えを押し付けるのは、決していいことではありません。私たち親は、と
かく子どものためによかれと思ってやることが、案外、子どもには迷惑な話
となっている場合があるものです。「あなたのためなのに……!」という前
に、親のエゴが優先していないか考えましょう。
(お断わり 同名の「少年少女 世界名作全集 全十巻」があったとしても、
 その本とは一切関係ありません)
 
また、ご両親が子どもの頃に読み、印象に残った本を読んであげることもあ
るでしょうが、「どう、面白かった?」といった言葉がけはやめましょう。
親のイメージを押し付けることになりがちだからです。
「ケンちゃん、どうだったかしら?」
と軽い気持ちで聞き、反応が今一の場合は、引き下がる思いやりも必要です。
読んでほしいとリクエストがあり、数回読んであげて、しっかりとしたイメ
ージが出来上がってから、感想を聞くようにしましょう。
 
ところで、本の選び方ですが、一緒に図書館へ行き、最初はお母さんが選ん
であげ、後はお子さんに任せてみましょう。お子さんが選んだ本は、たとえ、
年齢にふさわしくない幼い内容であっても、いやな顔をせずに読んであげて
ください。そして、自分で選んだことを褒めてあげましょう。お子さん自身
が興味を持たなければ、本の好きな子にならないからです。読書の芽は、ご
両親、保護者の優しい心遣いから培われるものではないでしょうか。
 
また、お子さん自身が「読んでほしい」と意欲的になる以前に「読書の時間
です」などと、スケジュールをキッチリと組むのはどうでしょうか。お子さ
ん自身が望んだときが、最高の教場となるからです。まず、読み聞かせが習
慣となり、読んでほしいという意欲を掻き立てるために、寝る前に読んであ
げると良いのではないかと思います。横浜雙葉小学校の説明会でも、学園長
は「お子さまと添い寝をしながら本を読んであげる機会が少なくなっている
のでは」と懸念されていましたが、皆さん方はどうでしょうか。
 
最後に、図書館には紙芝居がたくさんありますが、利用してみましょう。紙
芝居は、絵と言葉の表現に無駄がありませんから解りやすく、また、親子で
向き合っていますから、お子さんの表情がよく見え、どういったことに興味
をもっているかがわかるからです。
 
ところで、図書館で騒いでいる子や遊んでいる子もいますが、公衆道徳を教
えるのは、ご両親の大切な仕事です。手を抜いていると、あとで困るのは、
お子さん自身です。
 
また、借りた本は大切に扱う習慣をつけましょう。落書をされた本やジュー
スなどをこぼしたあとさえ残っているものも見かけます。「みんなで使うも
のは丁寧に扱う」、これも守らなければいけない規則です。たった1冊の本
から、育児の姿勢が至るところに顔を出しています。
 
そして、返却期日は、必ず、守りましょう。こういった約束事は、幼児期に
きちんと身につけてあげれば、お子さんの人格形成の礎(いしずえ)にもな
るからです。繰り返しますが、「三つ子の魂百まで」は、「良い習慣は幼児
期に身につく」ことを伝える、育児の鉄則ではないでしょうか。
 
このように、幼児期は、文字を教えこむより、心をこめて本を読んであげ、
心の通った会話ができる環境を作ってあげることが大切です。「文字よりも
言葉」です。小学生になれば、覚えた言葉を文字で表す学習に進み、国語を
楽しく勉強できるようになるものです。これが「情操教育の基礎、基本」で
す。納得していただけたでしょうか。
 
     (次回は、季節の行事についてお話しましょう) 
 
 
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話 
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>■■[2]5つの試験形式■■(2)個別テスト

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    「めぇでる教育研究所」発行
さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
        第21号
  現年中児のお子さまをお持ちの方へ
小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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発行者よりお知らせです
 さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>
は、11月から
 2022さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
にタイトル変更してお届けしています。
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■■[2]5つの試験形式■■ 
(2) 個別テスト
 
文字通り、先生と一対一、個別で行われるテストです。口頭試問と考えたらい
いでしょう。
しかし、幼児のことですから、言葉だけでは答え切れません。おはじきやプレ
ート、絵、時には本物や、それに近い物を使って出題され、おはじきを置いた
り、絵に指を差して答えたり、プレートで指示された形を作ったりします。学
校によっては、いくつもの部屋を回り、何人もの先生とお話しする場合もあり
ます。
 
この形式では、ペーパーテストと異なり、設問を聞き逃しても、「それまで!」、
ゲームセットとはなりません。勇気があればの話ですが、聞き直しができます。
幼児のテストは、こういった個別テストが適しているのかもしれませんが、答
える子どもたちには、つらいことになります。口頭試問の場合、問題を聞き、
考え、言葉で答えるからです。ペーパーテストでは、答えがわからなくても、
適当に印をつけても正解になる場合もあります。時には、偶然が支配する幸運
もあります。個別テストには、それがなく、全部、自分でやらなければなりま
せん。育てられている環境そのものが、ズバリ顔を見せます。
 
育児が過保護や過干渉になっていると、親離れができていませんから困るでし
ょう。
「ママ、手伝って!」
「どうしたらいいの、ママ!」
そんなことをいっても、誰も手を貸してくれません。態度も、オドオドとして
落ち着きがないでしょう。
こういった子育てをしているお母さん方は、臆面もなくおっしゃるそうです。
「私となら何でもできるのに。やっぱり、コネなんだわ!」
少し解説が必要ですね。その子は、お母さんと一緒であれば、何でもできる抜
群の能力の持ち主だそうです。しかし、試験を受けたのですが、合格しません
でした。ですから、落ちたのは成績ではなく、出身者ではないから、また、紹
介者、つまり、コネクションがないために、合格しなかったとおっしゃりたい
らしいのです。出身者だけを入学させたくても収容人員は限られていますし、
紹介者がいれば合格するのであれば、受験料を取ることは詐欺行為になります。
ですから、こういった怪情報は、単なるうわさに過ぎません。
慶應義塾幼稚舎や青山学院初等部のホームページには、「推薦状や紹介状は必
要ない」、「用意しても受け取らない」と公表していますし、暁星小学校の説
明会でも「紹介状や推薦状は必要ない。本人の実力を第一とする」とおっしゃ
っていました。
 
小学校の入学試験の狙いは、お母さんのもとを離れて、「一人で、どれだけの
ことができるか」であり、頼りになるのは自分だけです。こういうお母さん方
が、面接で、
「お子さんを育てるにあたって、どういったことに気をつけていますか」
と聞かれたとします。すると、お母さんが、格好よく、
「子どもの自主性を育てることに留意しています」
と答えたら、先生方は「……!?」となるでしょうね。
 
個別試験に対して、入学試験問題集を買い込んで試験に備えるのは、試験があ
る以上、やらねばなりませんが、子どもの発育状態、生まれ月、これを考えず
にやってしまうと、困ったことになりかねません。
 
例えば、一枚の絵を見て自分で話を作る問題があります、創作です。うまくで
きないと、お母さんが作った話を記憶させるようです。大人の考えた話や発想
は、大人のものですから、子どもは抵抗を感じるのではないでしょうか。うま
くでき過ぎているからです。それを覚えさせるそうですが、自分で考えたもの
ではなく、お母さんの創作ですから、ついていけません。そして、記憶させら
れた話は、忘れやすいものです。しかし、お母さんの前では、大丈夫なのです。
何回も繰り返し教え込まれるのですから、覚えるでしょう。
 
ところが、小学校の入学試験は、生まれて初めて入った場所で、初めて会った
先生のいうことを聞き、いろいろなことをしなければなりません。場所が変わ
り相手が変わると、うまくいかないものです。プレッシャーが、かかるからで
すね。大人の世界でもあるでしょう、ブルペン(野球場にある投球練習所)エ
ースです。練習では豪速球、生きたボールを投げるのですが、マウンドに立つ
と平凡なボールを投げては、ノックアウトされるピッチャーのことです。
 
さらに、問題集にあるとおりの絵が出てくる幸運は、ほとんどありません。た
とえ幸運に恵まれても、先生は、お母さんに教えられたとおりに、聞いてくれ
る保証もありません。同じような問題でも、ちょっとひねられると、それで、
おしまいです。先生方も、そこを見ていると思います。子ども自身の考えかど
うかですね。ですから、単に記憶させるだけでは駄目なのです。
 
ペーパーテストは、答えがあっていても、子ども自身の考えかどうか、わから
ない場合もあります。
個別テストは、ここが、はっきりとわかります。これが、いいですね。子ども
が自信を持って答えられるのは、日常生活で、きちんと体験していることだか
らです。
 
また、親の教育に対する姿勢も、はっきりと表れます。
「うちの子、引っ込み思案で、消極的だから、個別テストに向いていないわ」
とおっしゃるお母さんがいますが、子どもが好き好んでそうなったのではなく、
お母さんの育児の姿勢がそのまま表れているだけです。試験の形式だけで学校
を選ぶようでは、本末転倒な話で出発点から誤りです。
 
私学には、独自の建学の精神、教育理念があります。ご両親の教育に対する考
え方と、学校の教育方針に共通認識があり、限りなく近いことが、学校選びの
条件です。小学校の教育は、家庭と学校とお子さんの三人四脚で行われるもの
であり、決して忘れてはならないことです。
 
ところで、女の子で、一人っ子であると、消極的になりやすいものです。しか
し、過保護から身についた甘えん坊や、過干渉からなってしまった消極的な性
格から出る引っ込み思案とは、違います。一人っ子でも、自分でやるべきこと
を、きちんとさせているお母さんに育てられていると、一所懸命に取り組みま
す。わからない問題にぶつかっても、簡単にあきらめません。精一杯、挑戦し
たのですが、できなかったとしても、
「わかりません」
という顔に、悔しさこそあれ、明るいそうです。普段の生活が、そのまま出て
いるからです。失敗を恐れずに、一所懸命に考え、頑張り、挑戦する意欲のあ
る子に育てたいと考えているご両親の姿が、そこにあるからです。学校側の求
めている子は、こういう子です。自分で考えていることを、自分の言葉で話せ
る子です。
 
前にもお話しましたが、最近は、こういった問題が増えています。
 
◇机の上に半そでのYシャツと、近くの箱に500mlのペットボトルとプ
 ラスチックのコップ3個、黄色と赤色のリボンが入っている。
  ・Yシャツを着て、ボタンを留めましょう。
  ・箱からペットボトルを出し3個のコップに同じになるように水を
   入れましょう。
  ・終わったらペットボトルに黄色いリボンでちょう結びをしましょう。
  ・最後にYシャツを脱いで、たたんでください。
 
基本的な生活習慣やしつけ、自立心までわかります。個別テストからは、子ど
もの生育史をみることができるのです。それが、ご両親の育児の姿勢であり、
学校側のいう「ご家庭の教育方針」です。こういったことを理解していないと、
ご両親が面接で、どんなに格好のいいことをいっても、そうでないことをお子
さんが、きちんと見せるものです。
 
個別テストでは、自立心や自律心がどの程度、培われているかもはっきりと表
れます。「自分の考えを言葉で表す」のは、幼い子どもたちには、とても難し
いことですが、基本は、ご両親との対話から培われるものです。「対話の反対
は沈黙ではなく、命令と強制です」とおっしゃったのは、立教小学校の元校長
であった田中司先生で、ペーパーテストを廃止した方です。「こうしなさい!」
「それはだめ!」などと一方通行では、対話は成り立ちません。お子さんとの
対話を弾ませることから、言葉で考え、表現する力は培われます。
 
お子さんは、ご両親の目を見ながら楽しく話をしているでしょうか。
 
    (次回は、集団テストについてお話しましょう)

 


さわやかお受験のススメ<保護者編>第1章(1)情操教育、難しく考える必要はありません 本を読んであげてください 〔1〕

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2022さわやかお受験のススメ<保護者編>
       ~紀元じぃの子育て春秋~
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
          -第3号-
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第1章 (1) 情操教育、難しく考える必要はありません
本を読んであげてください 〔1〕
 
本を読んであげる、話の読み聞かせは、とても大切です。
安易に、テレビやDVDなどに、子守をさせてはいけないと思います。確か
に、このような教具は、映像と語りだけではなく、臨場感を盛り上げる音楽
や効果音を駆使して、瞬く間に、たくさんの情報を与えてくれます。これほ
ど便利なものはありませんが、送信する側と受信する者は一方通行ですから、
疑問を感じても質問できないといった不便な点もあります。わからないまま
に、話はどんどん進みますから、疑問を残したままになり、消化不良を起こ
しがちではないでしょうか。しかも、伝える側に感情はありません、このこ
とです……。
 
幼児には、お父さんやお母さんの生の声が何よりです。5歳頃になると、絵
が主役だった絵本から、字の多くなったものに変わり、話も筋道を立てて進
む物語になっていると思います。
 
ところで、本を読んでもらっている時の子どもの頭は、どうなっているので
しょうか。絵を見ながら読んでもらっていますから、お母さんの読んでくれ
る言葉を、絵に置き換えるといいますか、映像化する作業がリアルタイムで
行われ、絵本や図鑑、テレビや実際に見た映像が、浮かんでいるのではない
かと思います。
 
聞いたことのない言葉が出てくると、声がかかります。 
 「お母さん、オニタイジって、どういうこと?」
そこで、お母さんは、お子さんのわかる言葉に置き換えて説明をします。お
子さんは、その意味を確かめ、納得し、新しい言葉を覚え、少しずつですが、
確実に語彙が増えていきます。
 
そして一人になると、まだ、字を読めないはずですが、何やらブツブツいい
ながら、絵本を見ています。あれは、本当に不思議ですね。おそらく、読ん
でもらった本がおもしろかったので、お母さんの言葉を思い出しながら、確
かめているのだと思います。絵を見ながら、その状況を記憶した言葉をもと
に、映像を描き、イメージ化しているのではないでしょうか。つまり、「言
葉で考え、想像」しているのです。これは、すごいことだと思います。
 
それが証拠に子どもは、同じ本を、それこそ何回も何回も、飽きもせずに読
んでくれとせがみます。それも、読んであげている途中に、
 「お母さん、ありがとう、そこまででいいです」
といったことが、しばしば起こりがちです。
読んでもらったところを忘れてしまったのか、思い出せないのかわかりませ
んが、話が先に進まなくなってしまったのでしょう。イメージ化の中断です。
読んでもらい話がつながったので、そこまででいいのでしょう、後は覚えて
いますから。あれは、話を一所懸命に覚えようとしているのに違いありませ
ん。覚えようとする力、「記憶力」がつきます。
 
さらに、繰り返し読んでもらうことで、頭に描かれた映像は、より鮮明に具
体的になり、そこから、独自の「想像力や空想力」が培われてきます。
 
ところで、昔話を何か思い出してください。
子どもの読む話は、「起承結」で成り立っています。「起承転結」と、「転」
はなく、話は複雑になっていないはずです。「起承転結」は、漢詩を組み立
てる形式の一つで、転じて、「ものごとの順序・作法を表す言葉」ですが、
わかりやすい例えがありますので紹介しましょう。江戸時代後期の儒学者・
詩人・歴史家であった頼山陽が作った「京都西陣帯屋の娘」です。
   京都西陣帯屋の娘    (起)
   姉は十八、妹は十六   (承)
   諸国の大名は刀で殺す  (転)
   姉妹二人は目もとで殺す (結)
「ショコクノダイミョウって、なあに?」
余計なものが入ってくると、イメージ化する作業が複雑になります。帯屋の
娘の話は、帯屋の娘で終わらないと、子どもは安心できません。ですから、
鬼退治をした桃太郎が、ついでに海賊をやっつけることもなく、すんなりと
終わって、「めでたし、めでたし」が昔話に欠かせない決まりです。   
 
さらに、物語は、「序破急(初め・中・終わり」と快適なテンポで進みます。
浦島太郎が、竜宮城で過ごした時間が何十年であっても、何らさしつかえあ
りません。話は、快く聞けるように仕組まれています。しかも物語は、簡潔
明瞭に展開しますから、話の世界へ引き込まれていきます。そこから、話を
理解する力、「理解力」が培われてきます。
 
そして、何とも素晴らしいのは、自然と話に引き込んでいく、あの約束事で
しょう。イントロダクション、導入部などの言葉が、白々しくなるほど決ま
っています。「むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが、
住んでいました」で始まりますが、これが、実に重大な役目を果たしている
ではありませんか!などと興奮することもありませんが(笑)。
 
 「むかし、むかし」は「いつ」と時間の設定ですが、いつのことだかわか
りません。 
 「あるところ」は「場所」ですが、どこだかわかりません。
 「おじいさんとおばあさん」は「だれ」と大切な登場人物ですが、名前も
ありません。みんなあいまいで、そのあいまいなままに「何を、なぜ、どの
ように」と話は展開していきます。
 
これも、考えてみると大変なことです。
時代はいつでも、場所はどこでも、名前がなくても、何ら不都合はありませ
ん。奈良時代だろうが平成時代であろうが、北海道だろうが、はたまた沖縄
であろうが、みんな「むかし、むかし、あるところ……」で済ませてしまい
ます。時代考証も、場所の設定も、人物の履歴も、何も必要ありません。で
すから、子どもたちは、何ら抵抗なく、心安らかに、期待に胸を躍らせなが
ら、話の世界へ入っていけるのです。しかも、没我の世界です。
 
これを、几帳面に、
 「江戸時代の元禄十二年、大晦日を迎える二日前の朝、上総の国、蒲郷郡、
大字蒲郷、字大和村の一本杉の側に、山之上太郎左エ門という名の爺さまと
お熊という名の婆さまが住んでいました」では、聞いてみようかなとはなら
ないでしょう。
 「お母さん、もう眠いから……」、こうなるのに違いありません。読むお母
さん方も疲れてしまいますね。
 
ところで、昔話は、
   いつ(when)
   どこで(where)
   だれが(who)
   何を(what)
   なぜ(why)
   どのように(how)
と文章を書くときの基本である[5W1H]から成り立っていますが、新聞
記事やテレビのニュースなどを瞬時に理解できるのは、この原則に従ってい
るからです。ということは、昔話を聞きながら、[5W1H]を小さい時か
ら学んでいることになります。これは、すごい知恵ではないでしょうか。
 
もちろん、子どもたちは、「いつ・どこで・だれが」などと意識して聞いて
いるわけではないでしょうが、話は理路整然とセオリーどおりに進んでいき
ますから、繰り返し話を読んでもらい、話を覚え、絵本を見ながら言葉で表
現することで、物事を筋道立てて考える訓練にもなっているのです。物事を
組み立てる、考える力、「構成力や思考力」が自ずと身につきます。
 
そして、子どもは話を覚えると話したがります。
それには、自分自身が、話をよく理解していなければできませんから、その
ための訓練が自発的に始まります。話の流れをきちんと記憶し、組み立て、
味わい、自分の言葉で話す訓練です。それが「表現力」につながります。
 
こんなに大切な能力開発を自ら積極的に挑戦しているにもかかわらず、
「パパ、『ももたろう』の話、知っている?」
「ああ、知っているよ。猿と犬と雉の家来を連れて、鬼退治に行く話だろう」
と無造作に応じてしまうと、折角、積んできたトレーニングの成果を試すこ
ともできません。
「今までの努力は、何だったのだ!」
とは思わないでしょうが、悔しい思いをさせているのではないでしょうか。
子どもは覚えた話を、話したいのです、聞いてもらいたいのです。
「うん、パパも子どもの頃はよく知っていたけど、どういう話だったかな?」
と、やさしく受けてあげましょう。
お子さんは、一所懸命に話すはずです。
 
そして話し終えたときに一言、「よく覚えたな、えらいぞ!」と、褒めてあ
げましょう。褒められて不愉快になるはずはありませんから、さらに、話を
覚えようとします。そこから、「物事に取り組む意欲」が芽生えます。
意欲は、新しい能力を開発する起爆剤です。
しかも、「覚えなさい!」といわれて覚えたものではなく、「話してみなさ
い!」といわれて訓練したものでもありません。強制されずに、自発的に、
楽しみながら積極的に挑戦し、能力を開発しているのですから、その効果は
一石二鳥どころではなく、計り知れないものがあります。
 
このように話の読み聞かせは、
「語彙を増やす」だけではなく、
「イメージをふくらませる空想力や想像力」
「話を聞く力」
「構成力や思考力」
「言葉での表現力」
「物事に取り組む意欲」
といった能力などの開発に、とてつもない大きな影響を与えているのです。
しかも、これだけではありません。
 
 
  (次回は、「本を読んであげてください 2」についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話 
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>■■[2]5つの試験形式■■ペーパーテスト 2

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    「めぇでる教育研究所」発行
さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
        第20号
  現年中児のお子さまをお持ちの方へ
小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
発行者よりお知らせです
 さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>
は、11月から
 2022さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
にタイトル変更してお届けしています。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
■■[2]5つの試験形式■■ 
ペーパーテスト (2)
 
正直にいって、下のような先生が恐いのです。
お母さんは、何とか力をつけさせようと夢中になってしまい、自分のいってい
ること、やっていることが、わからなくなるようですね。たとえば、難易度の
高い「図形」の問題などで、子どもがよく理解できていないときに、こういっ
たことが起きがちです。お母さん自身は、説明したことでお子さんも理解でき
たと思い、問題に取り組むのですができません。1回ぐらいの間違いは許容範
囲ですが、何回も同じ間違いが続くと、お母さんの顔つきも変わり、
 「何回、教えたらわかるの!」
 「こんな簡単な問題が、どうしてできないの!」
と、なりがちなのです。
幼児が「わからない」というときは、本当にわからない、理解できていないの
です。このことをしっかりと肝に銘じ、お母さんの説明が不十分であることを
考え、お子さんがわかるように工夫してあげることが大切で、お子さんを責め
るべきではありません。
 
また、昨日教えたことが、今日になるとできない場合もあります。それはお子
さん自身が経験していないことを、記憶だけに頼って憶えさせている場合が多
いからではないでしょうか。子どもは、興味や関心のないことをやっても、す
ぐに忘れがちなものです。
 
ですから、幼児は、机の上だけで知的な訓練をするのは、適切な方法ではあり
ません。お母さんのやり方が間違っています。それを棚に上げて、思わず子ど
もの頭を叩いてしまうお母さんもいるようですが、何も悪いことをしていない
にもかかわらず、いくらお腹を痛めたからといって、手を上げる権利は、母親
といえどもありません。子どものためにもいっておきたいことがあります。
お母さんの子どもの頃、どうだったかということです。冷静に聞いてください、
冷静に。
 
ここでおさまると、まだ、両者の歩み寄る機会は残されています。しかし、こ
の線を越えて、怒鳴り散らしてまで勉強を続けると、子どもも切れますが、耐
えるしかありません。お母さんに見捨てられれば、子どもは生きていけません。
 「ボク、本当にお母さんの子かな?」
こうなったらトラウマになりかねません。
 
昔は「子をもって知る親の恩」といいましたが、最近では、受験準備に熱が入
りすぎると、「合格の二文字のために忘れる子どもの心」ともいわれているよ
うです。わが子を虐待して殺してしまう、鬼のような親がいるご時勢です。訂
正、鬼もわが子を手にかけなかった話が残っていますから、犬畜生にも劣る親
とします。ですから、「受験を始めて忘れてしまう子どもの心」になるようで
は、受験をする資格はないと考えましょう。先人の知恵でもある「三つ子の魂
百まで」を、絶対に忘れないでください。小さい時に経験したことで、お子さ
んの性格は築かれていくからです。
 
子どもをプリント漬けにし、来る日も来る日も、毎日、何時間も、入試問題集
を広げ、猛練習をして力がついたと思うのは錯覚です。類似問題を数こなせば、
できるようになるでしょう。しかし、この方法は、一種の条件反射的なトレー
ニングです。これで考える力がつくでしょうか、疑問だと思います。行動観察
型のテストでは、対応できないでしょう。自ら考え、答えを導く力は、年月を
かけ、試行錯誤を積み重ねながらできたカリキュラムがあり、それをよく理解
している先生方の的確な指導のもとで身につくものなのだからです。
 
なぜ、このような受験準備が、行われてしまうのでしょうか。
例えば、慶應義塾幼稚舎に入れば、余程のことがない限り、大学まで行けます。
子どもの努力次第では、医学部へ進める可能性さえあります。子どもの将来の
ためと考えるのも、無理からぬ親心です。
さらに、合格すれば、受験準備はこれっきりです。
場合によっては、中学、高校、大学と3回も受験戦争に参加させられる可能性
もあるわけですから。
「手のかからぬ内に入れてしまおう!」
このことです……。
思春期になり、難しい年齢になっての受験は、正直いって、しんどい話です。
身体は大人に近くなっても、精神年齢はそれ以下といったアンバランスな成長
をしている子、かなり見かけます。同じような大人も結構いますから、説得力
に欠けますけれど……。
 
さらにです。
年齢が下がれば下がるほど、能力の差は出にくいものです。ここで何とか手を
つくせば、志望校へ入学できるのではと考えるのも当然でしょう。しかし、厳
しい現実が控えています。お子さんの将来を案ずる親心は、どなたの心にも強
く、深く、ひそんでいます。ですから倍率は高くなり、10倍を越える学校も
あるほどです。
 
この現実を考えると、生半可な受験準備では、合格などありえないと考えるの
も無理からぬことで、かなりハードな受験準備が、待っていることになりがち
です。しかし、受験勉強をさせられる子どもの立場になると大変です。先にも
お話ししましたように、何事もそうですが、過熱気味になると当事者は、自分
のやっていることが、わからなくなる仕組みになっています。「合格」の二文
字に、冷静さを失いがちですが、受験生のお母さん方全部が、こうなるわけで
はなく、ごく、一部のお母さん方であって、熱心すぎるだけで悪気はないので
す。ペーパーテストを行わない小学校はこういうことも考慮しているのではな
いでしょうか。誤解されると困るのでいっておきますが、「ペーパーテストが
悪い」といっているのではなく、「準備の仕方」に、とかく問題がありがちだ
といいたいのです。
 
また、ペーパーテストがないから問題集などやらなくてもいいと思っている方
がいると聞きますが、それはとんでもない間違いで、必ず、クリアしなければ
ならないハードルがあり、そのために問題集は必要です。問題に○や×をつけ
るだけではなく、行動観察型の試験のように、「どうしてそうなったか」など、
言葉で説明する口頭試問に対する準備です。
 
ところで、最近の入試問題を読むと、「幼稚園での生活能力があればできるテ
ストを実施したい」と考える学校が増えているのは確かで、これは歓迎すべき
ですね。
たとえば、部屋の一角にじゅうたんが敷いてあり、机の上に紙に包まれたお菓
子が置いてあって、ペットボトルに入った麦茶らしきものとコップが用意され、
「さぁ、おやつですよ」といった試験がありますが、チェックポイントは、以
下のようになっていると思います。
まず、手を洗い、ハンカチで拭き、たたんでポケットにしまえるか。
靴を脱いで、キチンと揃えられるか。
包装紙でくるまれたお菓子を出すのにてこずらないか。
せんべいやクッキーであれば、ボロボロとこぼさないで食べられるか。
ペットボトルから、うまく麦茶をコップに注げるか。
「いただきます」、「ごちそうさま」をいえるか。
後片付けができるか。
みんな「……か」と、クエッション・マーク付きです。
これがテストです、何を評価しているのでしょうか。
 
さらに、この話をどう思われますか。
教育者、特に小学校の先生方は、見るところが違います。テストが始まると、
子どもたちの姿勢と筆記用具の持ち方を見るそうです。姿勢がよければ、ご両
親がよいお手本を見せており、筆記用具を正しく持てていれば、おはしをきち
んと持って食事をしているはずですから、育児の方針がわかるというのです。
テレビを付けっ放しで食事をし、ダラダラ時間をかけていると、直ぐに腰が砕
けて、姿勢も崩れがちです。これは、お父さんにも責任の一端、ありです。特
に、朝食です。テレビを聞きながら新聞を読みながら、ご飯を胃袋に流しこん
でいませんか。親が、お手本です。
 
これは、しつけ以前の基本的な生活習慣です。
ですから、直そうと思っても、直ぐにというわけにはいかないものです。食事
は毎日のことですから、おざなりにしていると、お子さんは学習の第一歩で苦
しむことになります。知識を詰め込むより、こういった生活習慣を大切に育て
ているお母さんは、お子さんから尊敬されます。
なぜなら、お母さんの手を借りずにできることは、子ども心にも嬉しいからで
す。間違いなく、「自分でやろうとする意欲」が育ちます。
 
ペーパーテストといっても、知的能力だけを判定しているのではありません。
受験生は、幼児です。
親の育児の姿勢を評価しています。
このことをきちんと心に納めておかなくては、合格の二文字はありえません。
 
机の上だけで、記憶に頼った知識の詰込みばかりやっていると、頭でっかちで、
偏った経験しかしていない子になりがちで、被害者は子ども自身です。ペーパ
ーテストが中心になっている学校を受験される場合は、こういった結果が残る
ような準備だけは、避けてほしいと願っています。
 
これからの毎日の体験は、お子さんの心に残ることを忘れないでいただきたい
のです。
年中から年長にかけては、将来の学習意欲も培われていく大切な時であり、人
格を形成する重要な時期でもあるからです。
「三つ子の魂百まで」は英語で、“The leopard cannot change his spots”
(豹は斑点を変えることはできない)というそうですが、洋の東西を問わず育
児の鉄則ではないでしょうか。
 
  (次回は、個別テストについてお話しましょう)
 

 


さわやかお受験のススメ<保護者編>事の始まりは、ある幼稚園の進学教室からでした

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2022さわやかお受験のススメ<保護者編>
       ~紀元じぃの子育て春秋~
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
          -第2号-
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-事の始まりは、ある幼稚園の進学教室からでした-
 
私は、長い間、幼児教育のパイオニアである旧伸芽会教育研究所でお世話にな
っていました。「情操を育むために、年中行事と昔話が大切な役目を果たして
いるのではないか」と模索していたのは、幼児教育の本質が少しわかりかけて
きた、50歳になった頃ではなかったでしょうか。平成元年に、「年中行事を
『科学』する」という素晴らしい本にめぐり合い、進むべき道が見えてきまし
た。
 
そして、この考えに「間違いはない」と自信らしいものが出てきたのは、ある
経験からでした。
約10年間にわたり、板橋区にある淑徳幼稚園の課外保育であった進学教室を
担当していたのですが、後半の5年間は、一人で年中組と年長組を指導するこ
とになりました。この間の子ども達のやり取りとお母さん方の反応から、年中
行事と昔話を組み合わせた「情操教育歳時記」といった何とも大仰なタイトル
ですが、気軽に読んでいただける本を作ってみようと思い始めていたのです。
 
私どもの研究所の教室へやってくる子ども達は、全員、「受験のために勉強に
きている」といった意識が、しっかりと培われていましたから、授業もやりや
すかったのです。「幼児教室は、こういうものだ」と思っていた私には、この
進学教室は、まさに青天の霹靂で、勝手が違い、思わぬ苦労をしました。
 
その日の保育が終わった後に、同じ教室でやるのですから、子ども達にとって
は、「自分たちの土俵に変な先生が入ってきた、エイリアン!」といった感じ
だったのでしょう、いつものように授業を始めることができなかったのです。
そのために、まず、授業に集中できる雰囲気を作ることからはじめました。試
行錯誤を積み重ねながらできあがったのは、授業の前に、その月の行事、11
月でしたら七五三をテーマに、昔からの言い伝えを子ども達にわかるように話
し、その月に関係ある昔話をするといった方法でした。
 
回を重ねる内にわかったのは、子ども達は、「フランダースの犬」や「アルプ
スの少女ハイジ」を知っていても、「一寸法師」や「花さか爺さん」などの昔
話を、あまり知らないことでした。しかし、話をしてみると、熱心に聞いてく
れるのです。それならばと、徹底的に昔話をすることにしたのですが、年長組
は週2回で月8回、1年間で、ざっと96の話をすることになり、少々心配に
なりました。「絵本を見ながら読んであげればいいか!」と気軽に考えていた
私は、子ども達から思わぬしっぺ返しを食い、悪戦苦闘が始まったのです。
 
それは、本を見ながら話す時と見ないで話す時では、子どもの興味を示す様子
が、微妙に違うことでした。話を覚えている場合は、子ども達の目を見ながら
話をしますから、目をそらす子はいません。「目をそらさない」は、話をしっ
かりと聞く基本的な姿勢です。本文でも紹介しますが、「大勢の子ども達に、
話を読み聞かせる重要なポイントは、話を記憶することだ」と教えてくれたの
は、進学教室の子ども達でした。
 
毎週2つの話を記憶するのは大変でしたが、子ども達は私の話を楽しみに待っ
てくれ、授業にもスムーズに入れるようになりました。見つけた時には私も驚
きましたが、「シンデレラ物語」とそっくりな話である「ぬかふくとこめふく」
を話した時の、子ども達の驚いた顔を忘れることができません。
 
ある時、椋 鳩十の動物の話をしてみました。すると、次の時間にもとリクエ
ストがあり、動物達の話に興味があることもわかりました。そこで、長編でも
ある「丘の野犬」をアレンジして話したところ、何と熱心に聞いてくれ、涙さ
え浮かべる子も出てきたのです。この時ばかりは、今、思い出しても、ぞくぞ
くするほど感激したものです。
 
進学教室の役目は、併設する淑徳小学校での勉強に、スムーズに対応できる力
を身につけることでした。小学校へは、受験勉強をし、力をつけてきた大勢の
子ども達が入学してきます。そういった子ども達に共通しているのは、「話を
聞く姿勢」が身についていることで、小学校の受験でもっとも大切なのは、こ
の「話を聞く力」なのです。ペーパーテストを例にとっても、プリントの上に
ダミーを含めて、答はすべて出ていますが、「設問」はどこにも書かれていま
せんから、話を聞き逃すと、解答できないわけです。
 
昔話や年中行事のいわれなどを聞きながら、子ども達は意識することなく、
「話を聞く姿勢」を身につけてきたのです。こうなるとしめたもので、授業は
私の仕事でしたから、後は楽なものでした。集中さえできれば、問題を解く力
もつき、面白くなりますから、取り組む意欲も違ってきます。難易度の高い問
題にも挑戦し始め、当時、毎月1回行われていた2,000名近くの子どもが
参加する公開模擬テストで、10番以内に入る子も出てきたのです。
 
さらに、思わぬ収穫になったのは、お母さん方の反応でした。授業終了の5分
ほど前に、お母さん方に集まっていただき、今日取り組んだ問題を解説しなが
ら、家庭学習の要点を説明し、今月の行事とその日に話した昔話を紹介してい
ました。
 
すると、「先生、ママが菱餅を買ってきて、何で三色なのか、先生と同じ話を
してくれたんだよ」と、女の子がいない家庭にもかかわらず、「おひな様を飾
るわけや、菱餅の色」について、子どもに話をするお母さんも出てきたのです。
話してくれる子ども達の顔は、みんなうれしそうでした。四季折々の行事の意
味を説明してきたことが、話だけで終わらずに、各ご家庭で祝ってくれるよう
になったのです。このことです……。
 
ここからは「わたし流の解釈」ですから、軽い気持ちで読み流してください。
話を聞こうとしなかった子ども達が、なぜ、楽しみに授業を待ってくれるよう
になったのか、それは子ども達の心の中に、幼いながらも、何らかの刺激を求
める小さな芽が、しっかりと培われてきていたからだと考えました。後で詳し
くお話しますが、その小さな芽は、分化され始めた「情緒」だったのです。
「情緒とは、喜怒哀楽の感情の表れたもの」と考えていただければ、わかりや
すいと思います。きっかけを与えたのが、昔話であり年中行事であったわけで
す。育まれてきた小さな芽である情緒に刺激を与えてあげれば、素直に反応を
することもわかりました。そうでなければ、あれほど真剣に話を聞くはずがな
いからです。
 
私の話でさえ一所懸命に聞くのですから、ご両親の話であれば、もっと歓迎す
るはずです。「パパがね、先生が話してくれた『おぶさりてえのおばけ』の本
を買ってきてくれたんだよ!」と嬉しそうに話してくれる子ども達も増えてき
ました。話を聞く姿勢は幼児教室や塾で身につくものではなく、ご両親の「本
の読み聞かせ」や「対話」から育まれるものです。
 
こういった体験を何とか記録に残し、皆様方に読んでいただきたいと考え、で
きあがったのが、このメールマガジンです。話を聞く姿勢さえ身につけば、小
学校の受験は、決して難しくありません。また、年中行事を、ご家庭で楽しむ
ことにより、楽しい思い出がたくさん残り、それが豊かな情操を育む礎になっ
ていることも否めない事実です。
 
小学校の入試に季節の行事が出題されるのは、なぜでしょうか。知識として知
っているかを判断しているのではありません。四季折々の行事を楽しむ、ご家
庭の文化があるかどうかを見ているのではないでしょうか。家庭の文化は、ご
両親の育児の姿勢であり、それが受験する小学校の建学の精神や教育方針と限
りなく近ければ、それが志望理由になるわけです。
 
この1年間、お子さんは受験勉強に励むわけですから、ご両親にも勉強をして
いただき、ご家庭の文化を築き上げてほしいと思います。話を聞く姿勢が身に
つくのも、豊かな情操が育まれるのも、ご両親の育児の姿勢次第です。小学校
の受験で必要な能力の基礎、基本は、「ご家庭で培われる」ことを学習してい
ただき、お子さんと三人四脚で、ゴールを目指して頑張ってほしいと願ってい
ます。
 
次回は「本の読み聞かせ」についてお話しましょう。
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話 
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】
 

さわやかお受験のススメ<小学校受験編>■■[2]5つの試験形式■■ペーパーテスト 1

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    「めぇでる教育研究所」発行
さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
        第19号
  現年中児のお子さまをお持ちの方へ
小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
発行者よりお知らせです
 さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>
は、11月から
 2022さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
にタイトル変更してお届けしています。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
■■[2]5つの試験形式■■
  ペーパーテスト 1
 
有名小学校の入学試験は、5つの試験形式から構成されています。
 
   1. ペーパーテスト
   2. 個別テスト
   3. 集団テスト
   4. 運動テスト
   5. 面接テスト
 
昔は、ペーパーテストだけの小学校もありましたが、今は、ありません。
逆に、ペーパーテストを廃止した小学校もあります。
個別テストのない小学校もあります。
5つ、全部やってしまう小学校もあります。
面接テストをやっていない小学校もあり、いろいろです。
推薦状と面接だけの学校もあります。
それは、私立の小学校ですから、「建学の精神」や「教育方針」に、いろいろ
な特徴があり、それによって教育が行われていますから、試験にもその学校独
自の自前のカラーがあって、当然なのです。
 
しかし、どこの学校も知的な能力だけで、合否の判定をしているわけではあり
ません。育児の集大成、まだ中間報告ですが、そこを見ているのです。その集
大成を判定する5つのテスト形式について具体的にお話しましょう。
 
1.ペーパーテスト 
20人から30人程のグループで、オーディオの音声や動画、または口頭での
説明を聞きながら、一斉に答える筆記テストです。皆さん方も経験済みの、お
馴染みのテスト形式です。しかし、これは大変です。
幼児は、原則として、文字を読めないし書けません。ですから、プリントのど
こを見ても、文字で書かれた設問は、ありません。おかしな話ですが、絵や図
形などを使いダミーも含めて、答えが描かれています。そして説明を聞いて、
用意された筆記用具を使い、○や△、□や×などの記号を書いたり、線を引い
たり、色を塗って答えるわけです。
 
「常識の領域」に、こんな問題があります。
B4判の大きさのプリントに、門松や節分、七夕、七五三、クリスマスといっ
た四季を代表する行事が描かれていて、解答はクレヨンを使いなさいと指示が
あり、
「春の仲間にはピンク色で○を、夏の仲間には青色で△をつけなさい」
といったコメントが、スピーカーから流れてきます。
これが、設問です。
一回きりで、後は、静かに時は流れるだけです。
当然、時間は限られています。30秒ぐらいで解答します。
「春は、○だったかな?」
などと悩んでいたら駄目です、そんな余裕はありません。
「何かいっていたな?」
などとぼんやりしていると、最悪の状態になってしまいます。
設問を聞き逃せば、それでおしまい、ゲームセットです。
設問は、どこにも書かれていないからです。
前にも紹介しましたが、中学、高校、大学の試験のように、わからない問題は
飛ばしておいて、
「後でやろう!」といったことは、絶対にできません。
 
そういったことを考えれば、いちばん厳しい条件の試験ではないでしょうか。
指示を正確に聞き取り、できるだけ速やかに解答しなければ得点になりません。
こんなことはないと思いますが、その時に、ちょっと耳がかゆいと気を散らし
たら、それまでです。時間がくれば、次の問題に移りますから、まさに「待っ
たなし」なのです。
 
さらに、テストが始まると同時に、普段の生活習慣やしつけなど育児の姿勢が
わかります。話を静かに聞く姿勢が身についているか、筆記用具を正しく持っ
ているかなど、いろいろな様子が表れるからです。先程お話した「育児の集大
成」です。単に、常識や記憶力を見ているのではありません。こう考えると、
問題集だけやって「受験準備、こと足れり」とはならないことを、ご理解いた
だけるのではないでしょうか。
 
ところで、ペーパーテストに問題点はないのでしょうか。
ペーパーテストのメリットは、子どものあらゆる能力を判定することはできま
せんが、ある面は確実に評価できることでしょう。しかも手っ取り早いし、試
験官の数も少なくて済みますし、ペーパーに答えが残りますから判定も公平で
す。ですから、ペーパーテストを行う小学校が多いわけです。誤解を招くと困
りますから断っておきますが、他の試験は不公平というのではありません。
 
先程もお話ししましたが、ペーパーテストだけを実施している小学校はなくな
りました。かつて、ペーパーテストだけを実施していた立教小学校は、現在で
はペーパーテストを廃止し、運動テストや制作に加え、ここ数年、シャイな男
の子の苦手な「ダンス」まで取り入れています。なぜでしょうか。
 
以前にお話しましたが、ペーパーテストだけでは、社会性や協調性、自主性、
基本的な生活習慣やしつけなどは判定できないからです。逆に、知的能力だけ
が高い、偏った経験を持つ子の集団になる可能性もあるからです。 
 
あるミッション系の学校の説明会で、こういった話を聞いたことがありました。
ペーパーテストの結果に従って、高得点者から順番に合格者を選んだところ、
早生れの子どもが少なくなり、翌年から生年月日順に切り替えたそうです。当
然でしょうね。4月2日生まれと翌年の4月1日生まれは、学年が一緒です。
1年間の差がありますから、早生れの子には、ハンディキャップになります。
生年月日順は、その配慮があるわけです。願書の受付順や五十音別に受験番号
をつける場合は、年齢の配慮がない学校が多いでしょう。
初めて、「年齢への配慮をしている」と公表したのは、桐朋小学校ではなかっ
たでしょうか。「統計的な処理をしている」と年刊雑誌「桐朋教育」に記載が
あったようです。しかし、今では、多くの小学校で月齢への配慮をしていると
言っていますから、早生れのお子さんも心配はありませんが、昭和学院小学校
のように「募集人員 約105名(男女)」といった場合は、男女を問わず、
成績順に合格を決めることもありますから、注意が必要です。説明会へ参加し、
きちんと確かめておきましょう。
 
もう一つ問題があります。
それは、ペーパーテストの対策、受験準備、これが過激になりがちなことです。
試験の難易度が高く、生半可な準備では、とてもクリアできない小学校もあり
ます。きちんとしたカリキュラムのもとに指導を受けているお子さんは、心配
ないでしょうが、少し気になる話を耳にします。幼児教室や塾を掛け持ちする
子もいるようです。指導方針が違っていれば、お子さんは混乱するだけです。
 
たとえば、こんなことはないと信じていますが、数を数える問題で、A教室で
は「線などを引かないで数える」と教わり、B塾では「線を引いて数える」とい
ったように、全く相反する数え方を教われば、迷ってしまうのはお子さんです。
皆さん方は、どちらが正しい指導方法だと思いますか。
 
たくさん受けさせれば効果があるとでも考えているとすれば、それは大きな間
違いです。そういったお母さん方は、うわさにも弱いようで、親子で受験地獄
に陥りがちです。受験地獄など、あるわけはないのですが……。
 
家に帰ると、お母さんが先生です。最近は、お父さんが力を入れている家庭も
増えてきました。 このことです……。ペーパーテストに対する過激な受験準
備、ここに問題があるようです。
 
次回は、「ペーパーテスト2」についてお話しましょう。

 


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創刊号
 
小学校の入学試験は、文字も数字も使わずに行われます。
ペーパーテストには、多くの場合、答えは出ていますが、設問はどこにも
書かれていません。あらかじめ録音された設問を聞きながら、言語の領域
の問題である「話の記憶」では、中学年から高学年で学ぶような「長文の
読解」を、文字を使わずに解き、「数の問題」では、数字や+-×÷の記
号を使って計算せずに、○を書いて、1年生で習う足し算、引き算、2年
生で習う掛け算、3年生で習う割り算や分数まで解いています。立体図形
の展開図は4年生で習います。
 
一見、幼児には無理なのではないかと思う問題でも、繰り返し体験学習を
していくことでこういった設問を解くことができるようになります。「胎
児はみんな天才だ」という書籍がありましたが、幼児になってもすごい力
を発揮してくれます。ただ、ここで気をつけておきたいのは、強いて勉め
る「勉強」ではなく、保護者の方と一緒に実験しながら、楽しみながら取
り組む「学習」である、ということです。
 
そして、学習するため、ひいては小学校の入試で大切になるのが、「話を
きちんと聞きとる力」、「イメージ化する力」、「考える力」、「推理、
思考する力」なのです。こういった能力を培うには、何といっても「対話」
と「本の読み聞かせ」です。
また、日本には四季があり、その季節に応じた行事や昔話が数多くありま
す。保護者の方に改めてこういった日本文化、年中行事の由来を理解して
いただき、それをお子さんとの対話にアレンジして話をし、その月にふさ
わしい昔話を読んであげてほしいのです。昔話は、勧善懲悪で、幼い子ど
も達の心に、正義感を植えつけることができ、情操教育にもなります。
 
このような思いから、「志望校合格を目指し、ご家庭でできる入試に必要
な能力をお子さんとご一緒に楽しみながら培うお手伝いをしていきたい」
と、当研究所藤本紀元の著書「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事
と昔話 情操豊かな子どもを育てるには 上・下」をもとに編集、制作し、
お届けしていきます。
 
この1年間、志望校合格を目指し頑張る保護者の皆様方、微力ながら応援
させていただきます。
 
めぇでる教育研究所

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