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めぇでるコラム

2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>ご家庭で楽しくできる受験準備(3)★★養ってほしい数感覚 2 ★★

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         「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第10号
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★★養ってほしい数感覚 2 ★★
 
 
[アバウトから正確に] 
 
さて、何回も続けていく内に、お子さんは、たとえば10と5では、10の方が多いとわかると、今度は数字で多少の判定をはじめます。
そこまでわかってきましたら、「では、いくつ違いますかゲーム」に切り替えましょう。
ゲームのやり方は、同じです。
 
最初は、同じマークから始めましょう。
1枚ずつカードをめくり、お子さんが8、お母さんは3が出たとします。
お子さんは、「ぼくの勝ち!」と宣言して、その違いを調べます。
この場合も、[8-3=5]ではなく、数の少ない方のカードの[3]を覚え、数の多い[8]のカードのマークを3個、指で押さえて隠します。
 
そして残ったマークを数え、「ぼくの方が5個多い」と、必ず、言葉で判定結果を言うようにします。
 
今度は、お子さんのカードが4、お母さんのカードが7で、お母さんが勝った場合も、「ぼくの負け!」とお子さんに宣言をさせ、お母さんのカード[7]を使い、4個を指で押さえ、残ったマークを数えて、「ぼくの方が3個少ない」とお子さんに判定させ、結果を言うようにします。
 
お母さんは、一切、言葉をはさむ必要はありません。
 
正解の場合は「ピン、ポン!」、間違った場合は「ブッ、ブー!」と警告する程度にし、ゲームの進行は、お子さんに任せます。
このゲームは、正確に「いくつ違うか」を判定するものですから、スピードは必要ありません。 
先程も触れましたが、[10と9]、[8と7と6]のカードでは、マークの配列が[4と3]の違いに気づけば、どこをどう押さえて隠せばよいかもわかり、真ん中のマークの数だけで判定で
きるようになると、自然とスピードアップしますが、答えは、必ず、口頭でキチンと言えるようにします。
 
4種類のカードをまぜてやるのは大変ですから、2種類、10回戦で十分ですが、お子さんが希望する場合は挑戦してみましょう。
 
これができるようになれば、次に同じマークのカードを4枚並べ、「一番多いものと少ないもの」を見分けるゲームをやってみましょう。
指でさして、答えさせます。
これも直感で判定させたいのですが、ここまで、かなりゲームの量をこなしたことになりますから、数字とマークの数の関係で、わかるお子さんも出てくるでしょう。
 
例えば、[5、3、7、9]のカードが、並んだとします。
「9が一番多くて、3が一番少ない」と、数字でいえるようになれば、もう、カードでのゲームは、卒業してもいいでしょう。
 
ところで、数字は抽象的ですから、数詞がつかなければ、幼児には具体的な数は、わかりにくいものです。
 
[1]といってわからないことでも、「りんごが1個」となると、頭にりんごが1個浮かび、具体的な数を把握できるわけです。
トランプは、5のカードであれば、数字の5とマークが5個ありますから、抽象的な数字をマーク5個で具体的に表しています。
 
小学校の入試では、数字を使った計算はやりません。
 
ですから、1は○が1個、2は○が2個、10は○が10個であることが理解できれば、十分なのです。
数の多少がわかれば、トランプでのゲームを卒業し、数字のない遊びへ進みます。
しかし、お子さんがゲームを面白がるようでしたら、楽しみながら続けてあげましょう。
 
ここまで進むと、数字を書きたいお子さんも出てくるでしょう。
その場合、[0・5・7・8・9]の書き順を、きちんと教えてください。0は上から左回りで書き、下から右回り、時計回りで書くのは○(マル)です。
8は〇を2個縦に書きがちで、自己流で覚えてしまうと、直すことになりますから、小学生になってから苦労します。
 
そして、数字を覚えても、問題集や模擬テストなどでは、「絶対に数字を使って答えてはいけない」と約束しましょう。答が合っていても、得点にはならないからです。当然のことですが、入学
試験で数字を使って答えては、絶対に合格しません。設問のどこにも、数字で答えなさいとの指示はないからです。新しいことを覚えると、つい、使いたくなるものです。ここで、きちんと押さ
えておきましょう。
 
次の遊びは、お母さんが教材を作ります。
 
トランプより少し大きい長四角のカードを20枚(1から10まで各2枚ずつ)作り、ハートやスペードの代わりに●で表します。
トランプに慣れていますから、最初はマークと同じ配置にしましょう。
慣れてきたら、市販されている問題集などを参考に、オリジナルカードを作ってあげましょう。
市販されているシールを貼って作ると、きれいなカードができます。
 
最初のゲームは、直感で見分けた「多少の違い」をやってみましょう。
今度は数字がありませんから、直感が頼りです。
きちんと見分けられれば、「いくつ違うか」のゲームに挑戦しましょう。
今度は、トランプより大きいですから、答えも出しやすいと思います。
 
それもできるようになれば、4枚並べ、直感で「一番多いものと、一番少ないもの」を当てるゲームに進みますが、お母さんが意図的にカードの配置をした方がいいと思います。
 
[1・2・3・4][1・10・5・8]のように、[1と10]が入ったものばかりでは、緊張感に欠けるからです。カードをうまくアレンジしてあげましょう。
市販されている「数量の問題集」などを参考にされるのもいいですが、難易度を考えて選んでください。
 
慣れてきましたら、「二番目に多いものと、二番目に少ないもの」に挑戦してみましょう。
やり方は「一番多いものを見つけ、それより少ないもの(その次に多いもの)が二番目」になり、「一番少ないものを見つけ、それより多いもの(その次に少ないもの)が二番目に少ないもの」になります。
最初は戸惑うかもしれませんが、あくまでもゲーム感覚で、楽しみながらやってください。
ここではお子さんとお母さんでのゲームを題材としましたが、お父さんと対戦しても良いですね。
 
それから、幼児の場合は、何事においても誕生日、生まれ月を考慮する必要があります。
衣服の着脱、歯磨き洗顔などの基本的な生活習慣はもちろんのこと、こういった遊びを通した知的なトレーニングにも、十分に注意してほしいと思います。
「隣の○○ちゃんができるのに、なぜ、うちの子はできないのかしら」と思う前に、必ず、生まれ月を考えましょう。
早生まれのお子さんには、無理をしないように気をつけてください。
 
「できなくても、できるまで待ってあげる」、この気持ちが大切です。
 
お子さんのおむつを外すとき、お母さん方はどうしましたか。
粗相をしても、叱り飛ばさなかったはずです。
その心は、「まだ、できないから待ってあげる」であり、その心は「今に、必ずできる」ではなかったでしょうか。
待ってくれたから、お子さんは期待に応えたのです。
 
知的な能力の開発も、同じです。
いや、知的なことだけに慎重な対応が必要なのです。
できなくても、あせる必要はありません。
 
幼児は、体験を積んでいないからできない場合が多く、決して能力だけに問題があるわけではありません。
 
いろいろと体験させ、待ってあげましょう。
待ってあげるお父さんやお母さんのやさしい心が、必ず、できるように導くからです。
待ってあげるやさしい思いやりから、頑張る意欲は育ってきます。
お子さんの、今ある姿を見て、自信を持ちましょう。
 
こういった遊びで、十分に数感を養ってから、○を使った数の多少、和(合わせていくつ)、差(いくつ違うか)、対応(いくつ必要か)、分割(分けるといくつ)といった問題に進むのが、幼
児にふさわしい算数の学習であることを、ご理解いただけたのではないでしょうか。
ゆっくり、じっくり、しっかりと、ゲーム感覚で楽しんでください。
 
最後に、トランプの絵札は、普通、11はJ、12はQ、13はKとアルファベットで表されています。
Kはキングで王さま、Qはクイーンで王女さまの頭文字であることはわかりますが、Jは何を表しているのでしょうか。
これは、「ジャック」という名前の頭文字からとったものだそうです。
ジャックとは、イギリスではありふれた名前の代名詞で、日本では「太郎」にあたると考えればわかりやすいでしょう。
よくある名前を付けることで、名もない一兵士を象徴させているそうです。
騎士道の精神ではないでしょうか。
 
連日の猛暑が少しやわらぎ、台風が来るなど、少しずつ秋の気配が漂い始めたようです。
体調を崩さないように注意してあげましょう。
 
 
  (次回は、「第二の脳を鍛えましょう1」についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>面接編2

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第61号>
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◇説明会等情報◇
 
 立教小学校 説明会(3)
  9月7日(土)のミニ学校体験は満席
  9月11日(水)以降、入試に関する動画公開
 
 日本女子大学附属豊明小学校 
  豊明秋の運動会
   日程:9月28日(日)
   申込:ホームページから申込
     
  ※それぞれホームページで確認してください。
 
 
 
面接編(2)
 
 
今回は、面接当日のお話をしましょう。
 
 
[学校へ到着]
 
★緊張する様子が見えたら★ 
 
面接の日でも、多くの人が集まりますが、試験当日は、その比ではありません。
それを見ただけで、しり込みをするお子さんも出てきます。こういった経験がないからです。公開模擬テストを受ける目的の一つは、知らない子ども達の中に入って、いろいろなことを経験できるからです。
 
また、過保護に育てられていると、こういった時に拒絶反応を示しがちです。
手をかけ過ぎていると、自分でやることが少なく、失敗の経験が少ないですから、こういった事態に対処できません。過干渉な環境では萎縮してしまい、「ママ、助けて!」となりがちです。
 
何度も繰り返しますが、小学校の受験は、お子様の成育史、言い換えれば、ご両親の育児の姿勢が、そっくり出てくるものです。
 
普段、元気いっぱいのお子さんでも、大勢の人をみてびっくりする場合もあるでしょう。その時は、お子さんが、いちばん安心する様子を、お子さんに示してあげることです。世界で一番強いと思われているお父さんの出番です。たくましいお父さんであってください。間違っても、「しっかりしなさい!」などと言わないことです。それだけでパニックに陥ってしまうお子さんもいま
す。
しゃがんで目を合わせ、
「いつもの教室でやるのと同じだから、心配することはないんだよ」
と、やさしく教えてあげましょう。
 
 
★所定の手続きを的確に★ 
 
何事も初めてとなると、緊張しがちです。
しかし、心配はありません。学校側も、全員、初めての受験を想定して、マニュアルを作ってありますから、難しい手続きはありません。落ち着いて取り組めば、何でもないことです。
ミスをしがちなのは、指定された時間間際に来て、手続きをする時でしょう。
気持ちに余裕がありませんから、どうしてもあせりがちで、ミスも起きがちです。そんな時は、おそらく、普段、お子さんが見たこともないご両親の姿になっていると思います。それを見たお子さんは、どのような心境になるでしょうか。
面接は、まだ、ご両親がそばにいますから、ショックも少ないでしょうが、試験当日は、そこから一人で行動しなければなりません。普段どおり、というわけにはいかないでしょう。
余裕を持って出かけ、こういった気持ちにさせないのも、ご両親の大切な役目です。
 
 
 [控室]
 
★静かに待つ工夫を★ 
 
幼児にとって、静かに待つのは、大変、苦手なものです。
ここでも、普段の育児の姿勢が姿を現します。ましてや、緊張していますから、いつもよりテンションもあがり、舞い上がってしまうお子さんもいます。普段のしつけが大切です。 
最近、よく見かけますが、幼児用の図書室で、大きな声でしゃべったり、走り回ったりする子もいます。親も注意しません。お菓子を食べている子さえいます。
また、電車などでも親同士が話に夢中になり、子どもが騒いでいても、知らん顔をしています。こういうことが許されていて、面接に来たときは、「静かにしなさい!」では、無理というものです。 
 
面接当日は、しばらく待つ時間がありますから、退屈させない工夫をしましょう。
 
お子さんの好きな本を控室で読み聞かせするわけにはいきませんから、自分で読める本がいいでしょう。そういう本であれば、気に入っているはずですから、静かに待てることになります。
一人で静かにできる折り紙やあや取りなどもいいでしょう。手先を使って遊ぶ折り紙やあや取りは、手順を間違えると遊びは成り立ちません。楽しみながら脳に刺激を与えるすぐれもので、口頭試問の準備運動にもなるはずです。
 
お子さんが気にいっているからといって、ぬいぐるみの人形や恐竜のおもちゃ、ゲーム類はどうでしょうか。5、6歳の幼い子ですが、それなりの自立ができているはずですから、公の場に人形を持ち歩くのは、よい印象を与えないものです。また、おもちゃやゲーム類は、他のお子さんに迷惑がかかりますから、持ち込むことすら常識を疑われます。 
 
しかし、何と言っても大切なのは、ご両親の落ち着いた悠揚迫らぬ態度です。
お子さんの学校選びが確かであれば、面接に臨んでも、何ら心配はないはずです。そして、保護者としての自覚があれば、そこから余裕が生れ、お子さんに安心感を与えるものです。
 
 
 [入室] 
 
面接会場は、学校によって設定が異なりますから、一概には言えませんが、ドアが閉まっている時はノックをして、ドアが開いている場合でも、開いているドアをノックして、カーテンの場合は、「失礼します」と声をかけて、様子を見ましょう。
そして、「どうぞ、お入り下さい」といった返答があってから、「失礼します」といって入ります。こういった余裕を持ってほしいのです。
お父さん、お子さん、お母さんの順で入るのが自然でしょう。主人公は、お子さんです。
お父さんが露払いをし、お母さんはお子さんをしっかりガードして入ることをお勧めします。
 
また、入室の時にお子さんが、「失礼します」ということがありますが、これもどうでしょうか。日常生活で、盛んに使われている言葉とはいえません。不自然ですから、こういった言葉は
教えこまないことです。「おはようございます」や「こんにちは」で十分です。
 
模擬面接でも、白百合学園小学校を受験する場合、「ごきげんよう」という女の子もいますが、入学後でいいのではないでしょうか。普段、幼稚園などで、そういったあいさつをしていなければ、やはり、とってつけたようで、さまになっていない場合が多いからです。考え直した方がいいのではとアドバイスはしますが、お母さん方が不満げな態度をしがちですから、後はお父さんにお任せしています。 
 
入室の際に、あいさつのできないお子さんが、かなりいます。
特に、男の子は、できません。
すると保護者が、「ごあいさつは!」と催促をしがちです。
すごい保護者になると、言葉だけではなく、頭を押さえつけるようにして、あいさつをさせようとします。これもどうでしょうか。  
あいさつができなかったから、マイナス何点などと採点するはずはないと思います。
 
お子さんが、初めての所へ来て、初めて会う人の前に立っているのですから、それだけ緊張しきっています。あいさつができなくても、当たり前ではないでしょうか。
 
それを考えずに、あいさつを無理強いするのは,保護者としてふさわしい態度とは思えません。あいさつができなかったら、保護者が面接官に黙礼して、静かに頭を下げておけばいいのではないでしょうか。保護者の態度を見ていると思います。
 
そして、入室しても、いきなりテーブルもしくは椅子が置かれているところまで直進せずに、入った所で横一列に並び、次に指示を待ちます。あわてることはありません。
「お父さんは、こちらへ」などの指示に従い、椅子の後ろに並び、三人がそろったところで、お父さんから、「失礼します」といって席に着きましょう。
お父さんを見て、お子さんも座り始めます。
お母さんは、お子さんが着席するまで見守り、それから座りましょう。
(お子さんが座ってからご両親が座ることができれば、より良いですね。)
 
お子さんには、椅子に浅く腰をかけさせ、両足をきちんとそろえ、手を膝に置くようにすれば、座る形も決まり、姿勢も崩れにくくなります。わずか、これだけのことですが、普段の生活習慣が見事に現れます。食事の時、いい加減な姿勢で、テレビなどを見ながら食べていると、だらしのない座り方になり、座れても、すぐに姿勢がくずれがちです。
 
言うまでもないことですが、お母さん方へ一言、長い髪は、お辞儀をするときに、バサッと前に落ちてきます。これも感じのいいものではありませんから、きちんとまとめておきましょう。また、ミニスカートでは、膝が気になり、面接どころではなくなりがちですから、やめた方がいいと思います。 
そして、着席後は、お子さんの様子を見守るために、視線の中に入れておきたいものです。お子さんが不安そうにお母さんを見たときなど、知らん顔をせずに、笑顔で応じてあげましょう。これが何よりの精神安定剤になるからです。
 
9月に入ったとはいえ、今年は残暑も厳しいようです。疲れが出ないように、あせらず、ゆったりとした気持ちで、家庭学習を続けてください。
 
 
  (次回は、「面接編3 子ども編」についてお話しましょう)

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第12章 日本の神様でしょう 神無月(1)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第44号-
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第12章 日本の神様でしょう  神 無 月(1)
 
                              
神無月(かんなづき)は「かみなしづき」とも「かみなづき」ともいわれていますが、そのいわれは、この月には、全国の神さまが出雲大社に集まり、男女の縁結びの相談をすることから、神さまが留守になる「神無い月」というのがわかりやすいですね。反対に、出雲地方では「神在月」となります。
これにも異説があり、「神嘗月(かんなめづき)」「神祭月(かみまつりづき)」という説、おもしろいのには、10月は雷がならなくなるから「雷なし月」というのもあるようです。
 
 
★★神無月、風流です (1)★★ 
 
何だか、おかしなテーマです。
神無月といえば、昔の十月の呼び名ではありませんか。睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、そして師匠も忙しく走る師走ですが、何やら情緒があります。弥生賞、皐月賞というと、競馬の好きな方には、おなじみでしょう。今まで紹介してきましたように、どの月も季節感があります。詩情豊かで、こたえられません。1月、2月、3月よりも、睦月、如月、弥生といった方が、何やら、雅やかな感じがしないでしょうか。
 
その一つの神無月。
 
先程もお話しましたが、読んで字のごとく「神さまのいない月」です。とにかく、日本人ほど、神さまの好きな民族は、いないのではないでしょうか。「八百万の神」といって、何しろ八百万人、いや、神さまは人ではありませんから、八百万の神さまです。「やおよろずの神」と読みますが、八百万の神さまがいるわけではなく、たくさんいらっしゃるという意味でしょう。それにしても豪勢ではありませんか。
 
若いお父さんやお母さん方には、あまり縁がないかもしれませんが、一軒の家の中にもいろいろな神さまが住んでいらっしゃったのです。「いらっしゃった」と過去形になっているのは、最近では、神社にしか神さまはいないと思われているからです。
                                
門には門神さま、家を守ってくれる家神さま、福の神と貧乏神がいらっしゃったそうです。
台所に入ると、ガス、水道、電気のない時代ですから、あちらこちらに神さまがいらっしゃって、火の神さま、水の神さま、かまどの神さま、井戸の神さま、納戸の神さま、便所の神さまが、庭に出れば木の神さま、石の神さま、草の神さま、花の神さま、外には山の神さま、川の神さま、森の神さま、まだいらっしゃいます、日の神さま、雲の神さま、風の神さま、雨の神さま、仏教でいうところの「山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」をまねると、こんな言葉はないでしょうが、「神が宿る」と解釈して、「山川草木悉皆宿神」でどうでしょうか。(悉皆“しっかい” ことごとく)
とにかく、どこにでも神さまがいらっしゃったわけです。人の集落がある所には、必ず、その土地を守る鎮守さまがあって、人々の生活と密接な関係をもっていました。いろいろと取り上げてきた年中行事にも、こういった神さまが顔を出し、大いに楽しませてくれます。四季折々の大きな祭りから村祭りや、家ごとの祭りまで、主人公は、こういった神さま達です。ある時期まで、日本は農耕社会でした。頼りは、自然ですから、神頼みにならざるをえません。できるだけ災害が起きないように、そして、秋には豊作を願い、神さまにお祈りをしたのも当然なのです。
 
仏教が盛んになった奈良時代に、日本の八百万の神さまは、菩薩さまを始め様々な仏さまが化身して、日本の地に現れたものだと考えた本地垂迹説を唱え、神さまと仏さまを一緒にお祀りしたこともあるのですから、元来争いごとは大嫌いなんですね。仏教興隆に力をつくした聖徳太子の「和を以って貴しと為す」は、神仏の世界まで浸透しているのですから、すごい話ではありませんか。
 
そして、日本の神さまは、他の国の神さまとは違います。昔の神さまは、いってみれば人間と同居していたのです。ですから、願い事は、すごく現実的で、日々の生活に密着していました。しかし、今の神さまは、怒っています。何しろ、困った時だけの神頼みですから。正月にしか顔を見せない人が、多いのではないでしょうか。安いお賽銭で、厚かましく、いろいろと祈願しても、それは無理というものです。(笑)
 
神無月は、その神さま、八百万の神さまが、島根県の出雲大社にお集まりになる月で、盆暮れの民族大移動の比ではありません。何しろ、八百万の神さまですから、スケールが違います。
「神迎祭(かみむかえさい)」といい、集合日は旧暦の10月11日。場所は稲佐浜(いなさのはま)、八百万の神さまは、竜蛇神(りゅうじゃしん)に導かれ、海からお集まりになりまして、出雲大社へ向かわれます。滞在期間は、17日までの7日間。神々のお宿は、境内の東西に並ぶ「十九社」、何とも素朴な建物です。
 
本殿では、11日、15日、17日に「神在り祭(かみありさい)」が行われます。本殿の高さは24メートル、大社造といわれ、わが国、最古の神社建築様式で、神話でおなじみの「だいこくさま」と呼ばれている「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)」が祀られています。
境内には、古代本殿の跡が発掘されており、何と柱の高さが8メートルもあり、復元図を見ると、古の人々、平安時代の高度な建築技術に、たまげましたね。
驚くついでにもう一つ、拝礼を行う「拝殿」には、長さ7メートル、胴回り4メートル、重さ1.5トンのしめ縄が、デーンと飾ってあります。このしめ縄ですが、普通の神社で飾る向きと逆になっています。(これを覚えておいてください)
 
話題の中心は、何といっても自然災害回避、生産性向上、五穀豊穣、家内安全です。
 
たとえば、雨の神さまには、「えこひいきせずに全国に万遍なく雨を降らせなさい」とか、風の神さまには、「稲が花を咲かせ実をつけるころには、情緒不安定にならないように配慮してほしい」とか、雲の神さまには、「日輪の神さまと仲良くしてほしい」とか、「下野の国の何々村は、信心深いので豊作になるよう心してほしい」などと話し合うのでしょう。
 
次に、何といっても神さまの大切なお仕事は縁結びです。
 
こういうところが好きですね。子孫を残さないと神さまの存在意義がなくなり、寂しいからだと推察します。いろいろな神さまが、適齢期の男女の情報を交換し合い、これがよかろうと縁組を決め、次々と赤いひもを結んでいく、これが「赤い糸」の伝説です。
 
今はキリストの前で、愛を誓う方が多いように感じますが、昔は何といっても神前結婚でした。神さまに、添い遂げることを誓ったのでした。成田離婚(新婚旅行から成田空港へ戻ってきた途端離婚する状態をたとえて表したもの)などという言葉もかつて言われていましたが、赤い糸も頼りなくなり、神さまも首を傾げているのではないでしょうか。何といっても情報過多社会です。もしかしたら、神さま方も混乱しているのではないでしょうか。そういえば、すっかり酔っ払ってしまった神さまが、変な糸の結び方をしてもつれてしまい、三角関係を作ってしまった落語があったと記憶しています。
 
誠に僭越な話ではありますが、普段、神さまは、どうやらお眠りになっていらっしゃるのではないかと思える節があるのです。
 
神前で何かが始まるとき、必ず、大太鼓をドンドンと打ち鳴らし、神主さんも「ゥ…………」と、これまた大音声を発します。仏さまも、鐘や木魚の音がお好きのようです。日本の神さまだけではありません。教会でも、ミサの始まる前に、パイプオルガンをガンガン奏(かな)で、いや、荘厳に演奏し、賛美歌を歌います。いずれも、神さまにお目覚め頂くための儀式ではないかと思えてなりません。
 
ところで、出雲の人々は、逆に「神在月(かみありづき)」ですから大変です。
何しろ八百万の神さまです。この間は、音曲、歌舞のたぐいは、一切禁止。神さまの会議が無事終了するまで、ひたすら静かにひっそりと暮らします。神さまの中には、酔っ払って人に迷惑をかけるお方もいるかもしれません。何しろ日本の神さまは、お酒の上での問題には、実にご寛容です。その証拠に、神事にはお酒を欠かせませんし、神棚にはお神酒を差し上げます。
 
ですから、民話や昔話には、実に傑作な神さまがいらっしゃいます。どう考えても神棚から見下ろしている感じがしません。どこから、こういった発想が出てくるのかと、しみじみ考えさせられる話が、たくさん残っています。夢があるのです。そうです、夢があるんですね。
 
夢や希望をもたせる、これも神さまの大切なお仕事です。
 
そして25日(原文のまま)は、神さまが出雲を去っていく日で、この日を神去日(かんさらび)といい、その夜は明るいうちから戸を閉め、外の便所にもゆかなかったとか。その頃から吹き始める季節風、西南西(あなじ)が、あたかも神さまが道路を駆け去って行く風の音と考えられ、恐ろしさに震えていたそうです。
 (「菜の花の沖 2」P242 司馬遼太郎 著 文春文庫 刊より要約)
 
朝の散歩に出かけると、秋の気配を感じるようになりました。今年はまだ赤とんぼは見ていませんが、コスモスの仲間は咲きはじめました。
 
 
 (次回は、神無月、風流です(2)についてお話しましょう)

 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
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2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>ご家庭で楽しくできる受験準備(3)養ってほしい数感覚 1

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2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第9号
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ご家庭で楽しくできる受験準備
(3)養ってほしい数感覚 1           
 
 
[数感はアバウトの感覚から]
   
奇妙なタイトルだと思われるかもしれませんが、「話の記憶」と共に、ほとんどの学校で出題されている「数量」の問題に対処するには、語感と同様に数感を養っておくことが大切です。
 
受験準備となると、すぐに問題集を使用した勉強と考えられがちですが、幼児の場合は、その前にやらなければならないことがあります。
 
物を使った具体物での学習です。
 
これをきちんと体験しておかないと、「お勉強は覚えるもの」、記憶に頼るものとなり、幼児にとっては、つらい受験準備となりがちだからです。
前にもお話しました「学習と勉強の違い」を思い出してください。
特に、年中から年長にかかる時期には、教える人、特にお母さん方は、「すずめの学校の先生」にならない注意が必要です。
 
トランプを用意してください。
トランプはさいころと共に、数感を養う優れた教具です。
 
問題集に取り組む前に、数に関する感性、数感を鍛えておきましょう。
「数感教育」の大切なことを教えてくれたのは、香川大学名誉教授だった故小林茂広先生でした。
後で紹介しますが、「幼稚園の年長さんでもつるかめ算を解けますよ」と、実に衝撃的な学習の仕方を教えてくれた先生です。
 
その時のことです。
「2歳の幼児でも数がわかるよ」と、2つのさいころを使った、面白い遊びを見せてくださったのです。
 
幼児が、さいころをふると6が出ました。
次に先生がふると3が出たのです。
すると先生は、
「キミの勝ちだよ」
といって、幼児に勝ったことを教えます。
最初は、きょとんとしていましたが、数回続けているうちに、どうやら、たくさん黒丸のある方が勝ちであることが、幼児にもわかってきました。
しばらくすると、先生がいわなくても、
「ぼくの勝ち?」
といい始めました。
 
数字を使った引き算ができなくても、「数の多少」を理解できるのです。
1と6であれば、●と●●●●●●であり、2と3のときは●●と●●●で、子どもの頭の中は、おそらく、「6の方に黒い丸がたくさんあるぞ!」であり、2と3のときは、「3の方が少しだ
け多いかな?」といった、おおよその見当、推量であり、「アバウト(about)の感覚」なのです。
見た感じで「どっちが多いかな」と直感で判断するわけです。
 
大切なのは、この直感力を培うことです。
       
例えば、2枚のお皿にクッキーを5個と4個に分けて入れておき、お子さんに、
「多い方をとっていいよ」
といったときに、数えずに5個入ったお皿をとれば、直感力は順調に発達しているといえます。
おやつの時に試してみましょう。数の多少を見分ける力が身についているかがわかります。
       
この直感力を鍛える遊びを紹介しましょう。
 
数えなければ不安で、答えを出せない子ども達と、よく一緒に遊んだゲームです。
トランプは、4種類のマークの数と同じ数字が書かれていますから、これを利用します。
まず、1から10までのカードを用意してください。
1はA、エース(ACE)のAとマークが1個しかありませんが、1個だけ書かれていますから、1と説明します。
そして、マークの数を数えながら、1から10まで並べ、マークの数と数字は同じであることを確かめます。
この時の数え方は、「イチ、ニ、サン」と漢語読み、音読みにします。11・12・13と10以上の数え方にも対応できるからです。なお、7は掛け算を思い出してください、「シチ」です。
 
最初は、ハートのマーク1組でいいでしょう。
よくきって積み上げ、ジャンケンで順番を決め、1枚ずつめくり、勝ち負けを争います。
例えば、お子さんが先にめくり、8が出たとします。
お母さんがめくると4が出たとします。
そこで、どちらが勝ったかお子さんに聞きます。
そのとき、[8-4=4]でお子さんの勝ちとするわけではありません。
また、ハートの数を数えて、8個と4個ですから、多い方の8のカードを4個押さえ、8の方が4個多いとするのでもありません。
 
数の多少を、見た感じ、直感で決めることを約束します。
初めは戸惑いもあるでしょうが、やっている内に、トランプのマークの並び方に、ある決まりがあることがわかるはずです。
それに気づけば、瞬時に判断できるようになるでしょう。
 
間違えたときは、「ブッ、ブー」と警告をします。
答を教える必要はありません。カードは2枚ですから、すぐわかります。勝者が2枚のカードをもらえます。これを繰り返していると、直感で見分けられるようになり、数えなくては不安であっ
たことも解消できます。 
 
終わったところで、お互いのカードを2段に並べて比べます。
 
 お子さんのカード □□□□□□
          ││││
 お母さんのカード □□□□
 
1対1対応で差が出ますから、計算しなくても、その差が答えになります。
 
直感で判断することに慣れれば、カードを増やしましょう。
ハートとダイヤといった組合せがいいでしょう。
マークの色が違うと混乱する場合もあるからです。
10枚増えると5回戦から10回戦になり、慣れてくればスピードもあがります。
 
次に、スペードとクローバーでやってみましょう。
形や色が違っても、数は同じであることがわかれば、いよいよ4組のカードを使います。
40枚で争いますからゲームとしても面白くなり、スピードがあがれば集中力も働き、俊敏な判断力もついてきます。
 
40枚になると、結果を判定するのに、横に並べるのも大変ですから、一工夫します。 
お互いに自分で取ったカードを1枚ずつ置きながら、5枚単位で段を作ります。
5枚で一固まりに分ける習慣がつくと、数の合成、分解にも役立ちますし、算数の足し算、引き算の計算に、すぐに対応できます。
 
手持ちがなくなったときにストップをかけ、そこから「1枚、2枚」と数え勝負を決めます。
下の図のように、■のカードの部分で、8対0でお子さんの勝ちとなります。
 
 お子さんのカード    
 □□□□□ □□□□□  
 □□□□□ □■■■■
 ■■■■
 
 
 お母さんのカード
 □□□□□ □□□□□ 
 □□□□□ □
 
 
5枚の固まりに分けるのに慣れれば、10の固まりで数えてみましょう。
算数の勉強で最初につまずく、繰り上がりや繰り下がりの計算にも、スムーズに対応できます。
 
余談になりますが、このカードの並べ方を、あまり手先の器用ではないお子さんにさせると、面白がってやることから優れたトレーニングになり、器用になるといった効果も期待できます。
 
本題に戻って、過去の入試問題集などで、例えば
「みかん10個と8個の絵があり、多い方に○をつけなさい」
といった多少の判定をする問題が5問あり、制限時間は15秒であれば、1つ1つ数えていては、とても時間内に終わりません。
学校側が知りたいのは、計算して答えを出すのではなく、「直感力が養われているか」ではないでしょうか。
 
数の多少だけではありません。
2枚のハンバーグや2つのコップに入ったジュースを見て、
「ぼくの方が小さいじゃん!」
「私の方が少ないわ!」
とこだわるのは、アバウトの感覚で「量の違い」を見分けているのであり、決して卑しいのではなく、直感力が順調に養われている証(あかし)ですから心配ありません。
 
この違いを小学校へ入ってから「数」は加減乗除で、「量」はデシリットル(dL)、リットル(L)、「重さ」はグラム(g)、キログラム(kg)、「長さ」はセンチメートル(cm)、メートル(m)、キロメートル(km)と正確な計算、単位として学んでいくわけです。
 
年中から年長の頃は、直感で見分ける機会をたくさん持つことが大切です。
なぜなら、「直感は、経験の積み重ねで養われる力」だからです。
 
室外と室内との温度差に体も驚くでしょうから、体調には気をつけてください。
 
 
   (次回は、「養ってほしい数感覚 2」についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>面接編1

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第60号>
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面接編1 
 
 
今回から4回に分け、面接についてお話しましょう。なお、面接に関する話は、当研究所発売の「面接、ここがポイント ~That’s a Plenty 小学校編」から抜粋したものです。
 
 
 ★面接当日の服装★
 
ある年のミッション系の学校説明会で、「子ども達から、『先生、今日はお葬式があるのですか』と聞かれました」と、校長先生が苦笑いしながら話されたことがありました。
面接のために訪れた皆さん方の服装が、申し合わせたように紺や黒だったからです。子どもたちには、異様に思えたのでしょう。
「○○小学校は、紺で統一しなければ失礼にあたる」などといった噂があるようですが、これも単なる噂に過ぎません。
 
雙葉小学校の説明会でも、かつて「よくある質問」の中から、
「入学試験時の服装は、親子とも紺でなければいけないのでしょうか」
に対し
て、文言は正確ではありませんが、以下のような説明がありました。
「そんなことはありません。その場に応じた服装であればよいと思います。紺や黒でなければいけないということはありません」
説明がなかったとしても、「紺や黒の服装で決めてほしい」といっているわけではないと信じていますが、これは受験者の判断にお任せしましょう。
 
ある年の立教小学校の説明会で、「服装で判断しているわけではありません」とおっしゃっていましたし、かつて、ある小学校の面接の折に学校側から、「皆さんが同じように紺の洋服では、不自然とは思いませんか」といった質問もありました。
 
しかし、だからといって、人と違った服装をするには、勇気が必要でしょうし、抵抗もあるでしょう。
 
学校も幼稚園も、「服装などどうでもよい」といっているのではありません。
やはり、初めての方と、しかも、これからお世話になるかもしれない先生方とお話をするのですから、それなりの礼を尽くすのは、当然のことです。
 
問題は、普段、お子さんは、紺の洋服を着ることに慣れているでしょうか、このことです……。面接当日、初めて袖を通した服になりがちです。大人でも、新調した服を着ると気持ちが変わるのではないでしょうか。しかも、ご両親も、普段と違った服装で決めています。お子さんが、「あれっ!」と思わないわけがないのです。これだけで緊張するのが子ども達です。
「お子さんに、余計なプレッシャーをかけないで下さい」
といった、学校側の配慮ではないかと思います。
 
ですから、面接や試験の日だけ着せるのではなく、何回も着て慣れておくことです。そして、お父さんにはひげを剃ってもらい、当日と同じ服を着て、食事や買い物などに出かけることです。
 
また、受験される学校まで出かけるのもいいでしょう。そういった経験をしておけば、お子さんは、特別な気持ちにはならないはずです。「特別な気持ちにさせないでほしい」という学校側の配慮が、伝わってきませんか。このことだと思います。
 
そして学校側は、昔風に言えば、「堅実な家庭を築くお父さん、それを支える謙虚なお母さん」を求めています。それが身だしなみとして現れます。装飾品はマリッジリングだけにし、化粧も香水も控えめになさるのが、賢明でしょう。
服装や身だしなみに自信がもてないときは、ご両親に見てもらうことです。面接される先生方と同じセンスで判断してくれるはずだからです。
 
 
 
 ★面接前夜★
 
〔お子さんに緊張感を持たせないこと〕
まず、ご両親が、絶対に忘れてならないのは、小学校の入学試験は、ご両親の意志で始めたことです。そして、ご両親はいうまでもなく、お子さんの保護者です。保護とは、「(外からの危険などに対し)気をつけて、かばい守ること」であり、保護者とは、「(児童などを)保護する義務のある人」(岩波国語辞典)です。
 
多くのお子さんは、生れて初めて、大事業に挑戦するわけです。その緊張感は、計り知れないものがあり、小さな胸は、張り裂けんばかりに波打っているはずです。
 
この緊張感をやわらげるのは、難しい注文であることは確かですが、ご両親の、普段と変わりのない姿であり、笑顔です。専業主婦であれば、交際範囲も限られていますから、初対面の人と話をするのは、やはり、相当のプレッシャーとなるでしょう。
「きちんと話せるかしら…!」などと不安を感じていると、それが態度に表れ、「普段のママと、何だか違うみたいだなぁ?」お子さんは、微妙な変化を見逃さないものです。
こういう心境になっている時に、
「明日は、面接ですから、ちゃんとお話しするのですよ!」
などといいがちで、これが、お子さんに余計な緊張感を持たせることになるのです。
こういった不安を感じてしまう原因は、志望校選びが適切ではないからではないでしょうか。
 
ご家庭の育児の姿勢と学校の教育方針に違和感がなければ、自信をもって、面接に臨めるはずです。ご両親でよく話し合い、万全の態勢で臨まなくては、保護者としての役目を、果たせるわけがないのです。ご両親は、保護者であることを肝に銘じて、面接に臨むべきです。緊張したり、あがったりする時ではありません。仕掛け人は、ご両親であることを絶対に忘れないでほしいのです。
 
 
[持参するものを再点検する]
 
信じられない話ですが、ある小学校の説明会で「試験当日に受験票を忘れた方がいる」といった話を聞いたことがあります。普段では考えられないことですが、緊張のあまりおかしてしまったミスでしょう。こういったことのないように、持ち物のチェックをしましょう。それには、「面接日に持参するもの一覧表」を作っておくことです。
 
(1)面接票(受験票 お子さんが受験している間に面接のある場合)
(2)アンケート用紙 
(3)募集要項や試験当日のスケジュール表(学校から提示される資料)   
(4)筆記用具や消しゴム、携帯用の辞書
   その年だけ突然、アンケートの記入を求められる場合もありますから、用意しておきたいものです。鉛筆と消しゴムは、下書きのための必需品です。書き損じても消せますし、薄く書いて、ボールペンなどで清書すれば、出来栄えも違います。慣れているといってもサインペンは除外します。  
(5)上履きや運動靴、体操着などは、新しいものは避けましょう。特に、新品の靴は、運動のときなどに足を痛めがちですし、当日だけ履く革靴は、まめなどができて痛々しいものです。履きなれた靴を用意して下さい。
   両親も上履き持参かどうか確かめておきましょう。名前は見えないところにといった指示はきちんと守って下さい。
(6)雨に備えて、雨具を入れるものやズボン、ソックスなどの着替えも用意しましょう。ある学校では、体操着に着替えますが、それをしまう紙袋にも、○○製のものなどという噂があるとか、そんなのは、嘘です。
(7)あってはいけないことですが、万一の病気に備え、解熱剤や整腸剤の用意を。お子さんは、ちょっとしたことから体調を崩しがちです。ピアノの発表会などで、前夜に、突然、発熱や腹痛を訴えたことはありませんでしたか。お母さんの気配りは、万が一に備える用心深さです。
(8)スイカ、パスモなどを用意しておくと便利です。
   スマートフォンや携帯電話は、交通機関などで事故など非常事態が起きた場合に欠かせません。
   受験する学校の電話番号を登録しておきましょう。ただし、校門をくぐる前に、電源を切るか、マナーモードにしておきましょう。充電もお忘れなく。
   控室でスマホを見るなどとんでもないことです。
 
 
 
 ★当 日★
 
〔いつもと変わらない朝を〕
当日は、いつもの朝と同じように迎えたいものです。 
こんな涙ぐましい話まであります。普段、あまり冗談など言わないまじめなパパが、今日に限って陽気にふるまうので、「ママ、パパ、どうかしたの?」と、かえって怪しまれ、何かあるなと思わせてしまったのです。平常心で迎えましょう。
ピクニック気分とはいいませんが、
「今日は、学校の先生に、どういったお話ができるのかを見ていただくのだよ」
こういった雰囲気を演出できればいいのではないでしょうか。
 
そうすれば試験当日は、
「この間は、よくお話ができたから、今日は、どういったことができるかを見てくださるそうだよ」
となれば、お子さんも緊張することなく、試験場で普段の力を発揮できると思います。
 
「一所懸命、頑張らなければ駄目よ!」
これだけで、どれほどプレッシャーがかかると思いますか。こういうときのお母さんは、言葉は励ましていますが、顔は緊張しているものです。それに加えて、受けた公開テストなどで、成績がよくなかったときの「顔」になりがちなものです。どれだけプレッシャーがかかり緊張するか、考えてあげましょう。 
 
 
〔遅刻は、認めてもらえません〕
ある学校の説明会では、「たとえ、交通ストのために遅れても認めません」といっているほどです。面接は、限られた短い時間に、網の目のような密度で、スケジュールが組まれています。一組の遅刻者のために、時間を変更すると、多くの人に迷惑がかかりますから、できない相談です。
交通上のトラブルがあった場合は、速やかに連絡をし、学校側の指示に従いましょう。 
早めに出発し、15分か20分ぐらい前には着くようにしたいものです。志望校の決め方でも触れましたが、試験当日に使用する交通機関を、その時間に合わせて試乗しておくべきです。
 
また、少し遅れても、タクシーを使えばと考えるのはやめましょう。渋滞に巻き込まれれば、それまでです。バスも同じです。都心のバス路線は、いつ、どこで、渋滞が始まるかわかりません。特に、雨の日は注意が必要です。 
 
自家用車での来校は、説明会へ参加するときでも、ご遠慮くださいといっています。
面接日、試験日とも、禁止されています。「私どもだけ……」は、困ることになるだけです。学校周辺は、多くの場合、駐車禁止ですし、学校にも大きな駐車場はありません。
 
面接や試験の時間が、昼食にかかる場合は、軽食を持参しましょう。小学校の周辺には、食事をするレストランなどは少ないものです。あったとしても、当日は混雑が予想されますし、日曜日は、休日の所が多いのではないのでしょうか。一口で食べられるサンドイッチやおにぎり、温かいお茶やお絞りなども用意しておけば、万全でしょう。
 
心配なお父さん、お母さん方へ、面接での質問事項に回答を用意し、声に出して読み、録音をして聞いてみることです。要領を得ない長い話は、聞いてもらえないでしょう。自己中心的な親は、どこでも歓迎されません。また、お子さんには普段、使わないような言葉を教えこまないことです。
 
少し気になることがあるのですが、こういった答え方をする子が増えています。
「お名前を教えてください」
「私の名前は、△△○○です」
「お誕生日を教えてください」
「私の誕生日は、平成○○年△月□日です」
「幼稚園の名前を教えてください」
「私の通っている幼稚園は○△幼稚園です」
 
普段、こういった答え方をしているでしょうか。常にお子さんが、こういった丁寧な答え方をしているのであれば、もっと自然な答え方になるはずですが、どうにも様になっていない場合が多いのです。大人の受験対策的な思惑から教え込んだ場合、どうしても不自然になるのは否めない事実ではないでしょうか。
 
お子さんが緊張して固まってしまい言葉が出なくなれば、それまでです。これは、ご両親が決めたことですから、模擬面接でも「やめなさい」とはいえません。今更仕切り直しでは混乱するだけですから。「ご両親が面接を担当する先生であった場合、どういった印象をもたれるでしょうか」とアドバイスはしています。
 
ゴールを目指し、直前の各種講習会も始まりました。まだまだ暑い日が続くでしょう。昼寝は気分転換にもなります。お子さんの健康管理には、十分に気を付けましょう。
 
 (次回は、面接編2 面接当日の留意点などについてお話しましょう)

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第11章 お月見です 長月(4)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第43号-
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第11章  お月見です   長 月 4
 
 
【九月に読んであげたい本】
 
なぜ、お月さまに、うさぎが住むようになったか、そのいわれを伝える話があります。主役は、あの良寛さんです。原作は、良寛さんの略歴や性格などの説明がありますが、ここでは、月とうさぎということで省略しました。
 
 ◆良寛と月とうさぎ◆   良寛 著
 
秋になると、お月さまの好きな良寛さまは、子ども達にこんな話をしました。
大むかし、猿ときつねとうさぎが、仲良く、助け合って住んでいると聞いた神様は、本当かどうか知りたいと思いました。ある日、神様は、ぼろぼろの服を着た老人に化け、三匹の住む林にやってきました。杖をつき、ひょろひょろと歩いてきた老人は、長い間、何も食べていないので、食べ物を恵んでくれと言うのです。
そこで、猿は木の実を少し見つけ、きつねは川魚を捕ってきましたが、うさぎだけは、何もとらずに戻って来ました。老人は、三匹は、心を一つにして暮らしていると聞いたが、うさぎは、物を恵む心が薄いようだと言ったのです。
うさぎは、猿に芝を刈ってきてくれと頼み、きつねには、芝を燃してくれと、悲しそうに言いました。
猿は芝を担い、きつねは、火をつけたのです。すると、うさぎは、「何もあげられないので、私の肉を食べてください」と、火の中へ飛び込み、死んでしまったのです。驚いたのは、神様です。かわいそうなことをしたと、泣き伏し、猿も、きつねも、泣きました。立ち上がった老人は、「三匹は、感心なものだ。中でもうさぎの心は、立派で、美しい」と言ったのです。
やがて、老人の姿は神様になり、杖でうさぎの体に触ると、もとの真っ白な体になったのです。
しかし、うさぎは目をつむったままでした。
 「お前を天の月の宮へ送ろう。お前は、これから、いつまでも、あの月とともに輝くのだ」と神様は言ったのでした。       
 「それだから、まるいお月さまを、よく見てごらん。お月さまの中で、うさぎが跳ねているのが、見えるだろう」と良寛さんは、子どもたちに話すのでした。
   少年少女・類別/民話と伝説-二九  日本の心をうつ話
                    関 英雄 編著 偕成社 刊 
    
この話は、良寛さんが作ったのではなく、原作は、龍樹(リュウジュ 2世紀に生まれたインド仏教の僧)の主著の一つ「大智度論」(般若経の百巻に及ぶ注訳書)にあるものだそうです。修行中のお坊さまが、空腹でふらふらになっているのを見た鳩が、焼き鳥になるから食べてくれといって火に飛び込み、涙ながらに食べる話です。鳩は、お釈迦さまの化身という教えであり、インド、中国を経て、日本へ伝わったもので、「今昔物語」の巻の五にも出ています。
それを良寛さんが、子ども達に話してあげたのでしょう。月の中で、うさぎが跳ねていたり、もちをついたりしているように見て楽しむのと、月の表面のまだらなクレーターが、そのように見えるだけと片付けてしまうのとでは、どちらが子どもの感性を育むのでしょうか。
 
うさぎといえば、童謡「うさぎとかめ」を思い出す方も少なくないのではないでしょうか。夏目漱石の「吾輩は猫である」でも、くしゃみ先生の子どもが歌っています。その二番の歌詞ですが、
 二、なんと おっしゃる うさぎさん  そんなら おまえと かけくらべ
   むこうの 小山の ふもとまで  どちらが さきに かけつくか
とあります。
 
ところで、かめさんに負けたうさぎさんは、どうなったかご存知ですか、実は、続きがあるのです。
負けたうさぎさんは、うさぎ村から追放されるのですが「子うさぎをよこせ!」と脅迫してきた狼を、知恵を働かせてやっつけ、名誉を回復し、うさぎ村へ帰ることができたのです。「負けたうさぎ」で検索すると、「新潟県の民話 福娘童話集」が出てきますが、これが傑作で、思わず1時間ばかり読んでしまいました(笑)。
このイソップ物語、驚いたことに、明治時代の教科書に掲載されたときの題名は、何と「油断大敵」とあるではないですか。(脱帽!)
 
 
    
 ◆てんとうさまと金のくさり◆   おざわ としお 再話
 
むかし、あるところに、母さんと太郎、二郎、三郎の三人の子どもが住んでいました。
ある日、母さんは、「山へ仕事に行くから、だれが来ても戸を開けてはいけない」と言って出かけましたが、母さんは、鬼ばさに食われてしまいます。母さんに化けた鬼ばさは、家に来て、「戸を開けておくれ」と言うのですが、「母さんはきれいな声なのに、がらがら声じゃないか」と開けません。鬼ばさは、きれいな声のでる草を食べ、「開けておくれ」と言うと、太郎は、少し開けて手を見ると毛むくじゃらなので、「母さんの手は、すべすべしてきれいだ」と、閉めてしまいます。鬼ばさは、山芋を塗ってすべすべにし、いい声で「開けておくれ」と言うので、見ると、すべすべした手なので戸を開けたのです。鬼ばさの化けた母さんは、三郎を抱き上げ、寝間へ入り寝てしまいました。
夜中に、太郎と二郎は、かじるような音で目を覚ますのです。
 「何を食べているの?」と聞くと、母さんは、三郎の指を投げたのです。
 「あいつは鬼ばさだ、三郎は食われた」と、二人は逃げ出しました。
夜が明ける頃、川に出ましたが渡れないので、木に登り隠れました。追いかけてきた鬼ばさは、川面に二人が写っているのを見つけ、「どうやって登ったの」と聞くので、「木に油をつけて登ったのだ」と言うと、鬼ばさは、その通りにしますが登れません。見ていた二郎が、「木に、なた目をつければ登れるのに」と言ってしまうのです。鬼ばさは、なた目をつけて登ってきて、天辺まで追い詰められた太郎は、「お天道さま金の鎖を下ろしてください」と叫びました。
すると、金の鎖が下がってきて、それにぶら下がり、天に登ったのです。鬼ばさも、「鎖をよこせ!」と叫ぶと、腐った縄が下がってきて、それにぶらさがりましたが、天に届く前に切れ、畑に落ちて死んでしまいました。鬼ばさの血で、そばの茎が真っ赤に染まったので、今でも、そばの茎は赤いのです。
天に登った太郎と二郎は、お星さまになったのでした。
  日本の昔話 3 ももたろう おざわとしお 再話 赤羽末吉 画 
                            福音館書店 刊 
    
兄弟が七人で、全員、空に登れて、お月さまのそばで、七つの兄弟星になり、鬼は、すすきの原に落ちて死んだために、今でも、すすきの根が赤いという話もあります。2月に紹介しました「まめをいるわけ」と「ヘンゼルとグレーテル」の話といい、あまりにも似ているので、びっくりさせられます。グリムの「狼と七匹の子やぎ」を読んでみましょう。思わず、「グスッ!」と、笑いたくなるはずです。
 
 
 
もう一つ紹介しておきましょう、これも世界中の子どもたちに親しまれている話とそっくりです。
 
◆ぬかふくとこめふく◆
 
むかし、あるところに、母親と二人の娘が住んでいました。妹のこめふくは実の子で、姉のぬかふくは、ままっ子でした。
ある日、こめふくには小さい袋を、ぬかふくには穴の空いた大きな袋を渡し、「栗をとってこい」と言われ出かけました。ぬかふくは、いくら拾っても穴から落ち、それをこめふくが拾いますから、間もなくいっぱいになり、帰ってしまったのです。しばらくすると、大きな栗が落ち、拾おうとすると亡くなった母親が現れ、穴を縫い、何でも出してくれる宝の小袋を授けました。その小袋に「栗よ、出ろ!」というとたくさん出たので、袋に入れて家に帰ったのですが、今頃まで何をしていたと怒られ、つらい仕事ばかりさせられる毎日が続きます。
祭りの日、母親と妹が見にいった芝居を見たいと思っていると、尼さんが来て、「芝居がもう一幕で終わるところで帰ってきなさい」と言うのです。ぬかふくは、宝の小袋に頼んで、着物や帯、かんざしを出し、出かけました。ぬかふくが、きれいなので、人々は見とれました。こめふくが見つけて、「ぬかふくではないか」と言いますが、母親は信じません。ぬかふくは、もう一幕で終わることに気づき、あわてて帰ったために、片方の足袋が脱げ、そのまま家へ帰ったのです。尼さまが、仕事を片付けてくれたので、汚い着物に着替え、仕事をしていました。帰ってきた母親は、まったく気づきません。
ところで、足袋を拾ったのは、村の大旦那の息子で、嫁にほしいと、作男たちが足袋を持って探しにきたのです。こめふくにはかせましたが合いません。ぬかふくにはかせてみると、ぴったり合うのですが、母親は、「この子は、お祭りには行っていない」と言いはります。
そこで、お盆の上に皿、皿の上に塩を盛り、塩の上に松葉をさして、歌の詠み比べをして決めることになりました。見事な歌を詠んだぬかふくが嫁に決まり、小袋から嫁入り衣装を出して着飾り、かごに乗って若旦那のところへ嫁いだのでした。     
  おばばの夜語り(平凡社6 名作文庫) 新潟の昔話  
                 水沢 謙一/水野庄三・絵 平凡社 刊
 
シャルル・ペロー作の「シンデレラ」ですね。
魔法使いのお婆さんが尼さまに、ガラスの靴の代わりに足袋が、午前零時の刻限の代わりに、芝居の最後の一幕前に帰る約束、傑作ではありませんか。最後の決着の方法が「歌の詠み比べ」であるのも、日本人らしいですね。
こめふくの詠んだ歌は、
  よんべな こいた ねこのくそ  水けだった 毛だった
              今朝 こいた ねこのくそ  息 ほやほや
何やらに臭ってきそうな歌に対し、ぬかふくは、
  ぼんさらや さらさら山に 雪ふりて
              雪を根として そだつ松かな
ときれいに決め、作者の意図に拍手を送りたくなります。ぬかふくに、宝の小袋を渡すのが、生みの親であるところも泣かせます。日本のむかし話、すばらしいではありませんか。
 
ちなみに、シンデレラ型の類似話は、ヨーロッパだけでも五百を越えるそうです。口伝え話をシャルル・ペローが「過ぎた昔の物語ならびに小話」の中に、「サンドリヨン、または小さなガラスのくつ」として再話したもので、グリム兄弟の作品にも「灰かぶり」があります。「シンデレラ」が有名になったのは、どうやら、ディズニーのアニメが世界的にヒットしたためだと言われているそうです。
「シンデレラの本名はエラ(ELLA)」という記事を見た記憶があるのですが、その真偽は定かではありません。
  注 再話 昔話・伝説などを、言い伝えられたままではなく、現代的な表現の話に作り上げたもの。
 
 
 
鬼と並んで「やまんば」は、むかし話に欠かせません。
山姥(やまうば)のことで、地方によって、さまざまな呼び名があります。共通しているのは、山に住み、その容姿は、髪の毛を長く伸ばし、ぼさぼさで、口は耳までさけており、背は高くて、力持ちということでしょう。恐いのですが、親しみの持てる話が多く、これもその一つです。そして、面白いことに、兄の「だだ八」、弟の「ねぎそべ」、おばあさんの「あかざばんば」という妙な名前を、たちどころに覚えてしまう子がいます。興味を持ったことは、即座に記憶してしまうようですね。
 
◆ちょうふく山のやまんば◆   今村 素子 著
 
むかし、ちょうふく山のふもとに小さな村がありました。ある年の十五夜の晩、お月見の最中に、突然、激しい雨風となり、
「やまんばが、わらしこを持った。もちをついて持ってこい。こなければ、人も馬も殺すぞ!」
と叫びながら、何者かが屋根を飛び回るのでした。声が聞こえなくなると、もとの月夜となったのです。夜が明け、もちをつきましたが、届ける人がいません。そこで庄屋さんが、普段から威張っている、だだ八とねぎそべ兄弟に役をいいつけ、道案内に、あかざばんばを付けてもらい、届けることにしました。
三人とも、やまんばに殺されると思いながら、山を登って行ったのですが、途中で、血なまぐさい風が吹き、兄弟はおびえてしまい、再び強風が吹くと、もちを放り出し、逃げてしまったのでした。ばんばは、もちを届けなければ、人も馬も食われる。寿命も近いのだから、村人のために役立とうと、登っていきます。
やまんばの家に着くと、
「もちを食いたくなり、ガラを使いにやったが、村人達が迷惑をしたのではと心配していた。やまんばは、恐ろしいものではない」
と言うのです。ガラは、四、五才になる子どもで、放り出したもちを取ってこいというと、アッという間にかついできますし、すまし汁を作るから、くまを捕ってこいというと、捕まえてきます。村で暴れたガラだと、ばんばも納得したのです。夕方になり、帰るというと、手伝いする者がいないので、二十一日だけ助けてほしいと頼まれ、暮したのでした。帰る日が来ると、いくら使っても、もとの一ぴきにもどる不思議な錦をくれたのです。
家に着くと、何と、ばんばの葬式をしていたのですが、元気な姿をみてお祝いとなりました。貰った錦を分けてあげましたが、次の日には、もとの一ぴきに戻っていたのです。   
その後、村には悪い病気も流行らず、楽しく暮らしたのでした。
  日本むかしばなし 7  おにとやまんば 民話の研究会 編 
      松本 修一絵 ポプラ社 刊
 
「さばうりとやまんば」「山んばの桐のはこ」「もちのすきなやまんば」なども読んであげたい本です。
この本の挿絵では、やまんばは優しい顔をしたお母さんだったと記憶しています。なぜ、やまんばは、恐ろしい容貌になってしまったのか、その経緯を述べた話が、澤田ふじ子さんの作品にありました。引用文を読むと遠慮したくなりますが、全編、肩の凝らない傑作な事件簿です。
 
 公家達は、己の腕を顕示するのを欲せず、武士とは逆に、秘匿するのを心得としていた。それが日本人だけではなく、東洋の文化の精髄というべきだろう。
今でもこの気風は、京都市民の中に脈々と受け継がれている。
 その精神を一言でいえば、すべてにおいて世間から目立つことをはばかるのがそれで、知者は山に隠れて〈仙人〉となり、意識的女性は〈山姥〉となるのだ。山姥は山に住み、怪力を発揮するという伝説的な女。鬼女とも考えられているが、図様として描かれている山姥が、童子(金太郎)を伴っているのは、知恵の伝承や再生を願う意味が、そこに込められているからである。
 近世から近代に及ぶ民俗学的考察の誤りが、山姥を醜悪で凄惨な女性として決め付けてしまった。長澤蘆雪の代表作、厳島神社に蔵されている〈山姥図〉(重文)は、美術史研究の中で、今もこうとしか捉えていないのだ。
  (祇園社神灯事件簿 四 お火役凶状 P278-279 澤田ふじ子著
                            中央文庫 刊)
  (引用者注 長澤芦雪 江戸時代の絵師、丸山応挙の高弟)
 
インターネットで検索して見ましたが怖い絵で、なぜか、西洋の魔女に似ていて、子ども達が読む絵本から描いていた山姥のイメージと異なり、意外に思いました。
澤田さんの人気シリーズの一つである「足引き閻魔帳 第4巻 山姥」の表紙が、長澤芦雪の〈山姥図〉です。アップになっていましたが、すさまじい形相で、子ども達には見せられません。
 
 
  (次回は、「日本の神様でしょう 神無月」についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
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2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>ご家庭で楽しくできる受験準備(2)「話の読み聞かせ」のすばらしい効用 2

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         「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第8号
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(2)「話の読み聞かせ」のすばらしい効用 2
 
前回お話しましたように、話の読み聞かせは、「語彙」を増やし、「イメージをふくらます空想力や想像力」「話を聞く力」「構成力や思考力」「表現力」「物事に取り組む意欲」といった能力の開発に、はかりしれない影響を与えています。
しかも、誰かに命令され、要求されて、やっているわけではありません。
子どもは、自発的に、積極的に楽しみながら能力を培っているのです。
 
これだけではありません。
さらにもっとすばらしい能力の開発に貢献しているのです。
しかもそれは、小学校の入学試験で、重要なものばかりなのです。
 
「竜宮城って面白い所だな。絵に描いてみようかな?」
となると、絵画の領域です。
ファンタジーの世界で夢もふくらみます。
絵を描こうとする動機は純粋です。
幼児にとって、この「……かな?」と思ったときが、好奇心の芽を育む、絶好のチャンスなのです。
「小学校の入学試験に、絵を描かせる学校があるから、絵画教室へ行きましょう」
 
これでは、動機が不純です。
 
絵を描くことが好きになれるとは思えません。
これは何も絵だけではなく、ピアノや英会話といった早期教育にも同じことがいえるのではないでしょうか。
応接間の飾りものになっているピアノを見かけますが、ショパンやリストの名曲を弾いてほしいと、怒っているかもしれませんね。
 
ところで、最近、絵を描くことを、嫌がる子どもが増えていると聞きます。
その原因は、想像力が培われる前に、大人の求める望ましい上手な絵を描くことを、期待するからではないでしょうか。
感性が磨かれていなければ、絵は描けません。
 
[(環境+五感が受けた刺激)×(好奇心+観察力)÷そしゃく力=描かれた絵]
 
妙な式らしきものですが、冗談です。
専門家の先生方に、叱り飛ばされますね。
でも、感性は、子ども自身が、与えられた環境の中で、自らの力で養ってきた自前の性能ではないかといいたいのです。
親が、注文をつけ始めると、面白くない絵になると思います。
そこには、子どもにはない、大人の感性が入り込むからではないでしょうか。
どなたがおっしゃったのかわかりませんが、大人の手垢のついた絵です。
 
まだ、あります。
 
昔話をはじめ、子どもの読む本の多くは、善いことを勧め、悪いものを懲らしめる「勧善懲悪」から成り立っています。
正義は、必ず勝ちます。
倫理、道徳、善悪について、襟を正して教えなくても、きちんと学習しています。
いってみれば、お子さま用の「修身、道徳講座」です。
「情操教育の基礎、基本」を学習しています。
このことです……。
 
これからは、わたしども流の勝手な解釈ですから、深く詮索なさらずにさらっと読み流してください。
 
3歳頃から、自立が始まります。
そして、毎日、いろいろな経験をしながら、さまざまな感情も培われてきます。
これが、情緒です。
未分化であった情緒が、5歳頃から分化されます。
 
今までは、いってみれば、玩具箱の中に乱雑に入れられていた玩具が、「自動車はここ」、「縫いぐるみはこっち」、「ままごと道具はあっち」というように、次第に整理される状態になるので
す。
まだ、整然とはいきませんが。
つまり、未分化だった情緒が分化され、大人にみられる情緒が現れてきます。
喜び、悲しみ、怒り、恐れ、心配、快いといった情緒です。
ついこの間までは、嬉しくても、悲しくても、お腹がすいても、泣くしか表現できなかったことを思えば、格段の進歩です。
 
ですから、いろいろな話を聞き、喜怒哀楽など心の動きを誘い起こされ、幼いなりに、自我を作っていると思います。
大胆にいえば、正しいこと、悪いことの分別を学習しているのです。
修身、道徳講座のシミュレーション学習ではないでしょうか。
 
まだ、あります。
これがもっとも大切だと思います。
 
お父さんやお母さんが感情をこめて読んであげると、子どもは真剣に聞きます。
気持ちをこめて聞くものです。
 
そこから、人の話を静かに、行儀よく聞く姿勢が身につきます。
 
これは、小学校へ入って勉強するために、きちんと身につけておきたい「基本的な学習態度、心構え」です。
話が聞けないようでは、いくら漢字が読めても、足し算や引き算ができ、九九をそらんじていても、学習効果をあげることはできません。
小学校の先生方に聞いてみると、みなさん、そうおっしゃっています。
 
それほど、話を聞く姿勢を身につけることは、大切なのです。
 
小学校の入学試験も、同じです。
大切なことですから繰り返しますが、ペーパーテストには、答えは書いてありますが、どこにも設問はありません。
話を聞いていなければ、何も答えられません。
行動観察型や他の試験も同じです。
話をきちんと聞き、理解していなければ、どうにもなりません。
 
合否の鍵は、「話を聞く姿勢ができているかどうか」にかかっているのです。
 
それを、あまり本を読んであげずに、
「人の話はきちんと聞きなさいと、いつもいっているでしょう!」
恐い顔をして、厳しく、何十回いっても、無駄です。
 
子どもは、自分の好きな本を読んでもらい、静かに聞くことで、話を聞く姿勢を、意識することなく、身につける訓練になっているのです。
話を聞けない子になる原因の一つに、話を聞きたがる大切な時期に、読み聞かせが少なかったことも、あるのではないでしょうか。       
 
さらにすごいと思うのは、前にも少し触れましたが、
「言語能力を高めるためのお勉強ですよ!」
といった意識は、ご両親にも子どもにも、まったくないはずです。
自主的に、積極的に、しかも楽しく学習しています。
 
これこそ「教えない教育」のもっとも効果的な方法ではないでしょうか。      
 
「教えない教育」とは、誤解を恐れず、わたし流にいえば、「本人は勉強だと思わないのに、ものすごい勉強をしている」ことです。
何かを学ぼうとする気持ち、「学習意欲」が身につきます。
 
しつこいですけれども、まだ、あります。
 
ご両親、特にお母さんの表情豊かな、優しい語りかけが、何よりのスキンシップとなります。
ですから、子どもの好きな本をたくさん読んであげるお母さんは、子どもに慕われます。
それは、お母さんとお子さんが、同じ土俵に上がり、同じ気持ちで、物語の世界を楽しんでいるからです。
お母さん方は、こんな荒唐無稽な話などありえないと思っても、また、少し抵抗を感じる言葉があっても一切、無視して、子どものレベルに合わせて読んであげています。
 
視線は同じ高さですから、心が通うのです。
視線の高さが違ってくると、命令と忍従の関係になりがちで、そこには、教えてあげるという姿勢が表われ、子どもがもっとも嫌う母親に変身するからです。
 
しかし、一つだけいっておきましょう。
 
いくら本の読みきかせがすばらしいといっても、お子さんが興味を示さない本では、あまり効果はありません。
「少年少女 世界名作全集 全十巻」など買いそろえても、無駄かもしれませんね。
「本当は、『かちかち山』の話をしてほしかったのに……」
こういったずれは、小さいときからありがちです。
気をつかってください、無神経は駄目です。
(お断り 実際に「少年少女 世界名作全集 全十巻」が発売されていたとしても、その本とは一切関係ありません)
 
一緒に図書館へ行って、最初は、お父さんやお母さんが選んであげ、あとは、お子さんに任せてみましょう。
そして、お子さんが選んだ本は、たとえ年齢にふさわしくない幼い内容であっても、いやな顔をせずに読んであげ、自分で選べたことをほめましょう。
それから、お父さん、お母さんの勧める本を選んであげる、こういった手続きも必要です。
読書の芽は、自主的に育まれなければ、親が期待するように育たないからです。
 
また、図書館には、紙芝居がたくさんあります。
本に興味を示さない場合は、これを利用しましょう。
動画と違い紙芝居は、親子で向き合いますから、お子さんの表情がよく見え、話を理解しているかだけではなく、どういったことに感情が刺激されるか、何に興味があるかなどがわかるからです。
 
このように幼児期は、知識を詰め込み、文字や数字を使った計算を教えるより、心をこめて本を読んであげ、心の通った会話がたくさんできる環境を作るべきです。
そういう時期なのです。
 
小学校受験でもっとも重視されるのは、「話を聞く姿勢ができているかどうか」なのです。
 
そこから、ご両親の育児の姿勢がわかります。
普段から、会話が弾み、本をたくさん読んであげる環境であれば、自ずと培われてくる能力だからです。
これは、塾や幼児教室だけに任せて身につく力ではありません。
ご両親が、ご家庭で育てていくものです。
  
小学校受験の第一歩は、ここから始まり、合格を勝ち取る力となることを忘れないでいただきたいと思います。
 
まだまだ暑い日が続きます。健康管理には十分、注意してあげましょう。
 
 (次回は「数感をみがこう」についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>願書の書き方

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第59号>
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◇説明会情報◇
 桐朋小学校
  学校説明会・学校体験会
  日時:8月31日(土)
   ※本メルマガ発行時点で説明会は満席、体験会は受付中
 
 光塩女子学院初等科
  日時:9月7日(土)10時15分
   ※当日8時20分から授業公開も行われます。
 
 ※満席の場合でも空きがでることがありますので、こまめにHPを確認して
  ください。
  
 
 
★★願書の書き方★★
 
志望校も決まれば、願書の記入となります。
 
願書は、保護者の考え方や性格など、いろいろなことが浮かび上がってくるものです。
面接される先生方は、この願書を読まれて面接に臨むわけですから、いってみれば、学校側が知ることのできる唯一の情報であり、書き方によっては、それが決め手となりかねません。
志望理由やご家庭の教育方針、お子さんの性格や育児の留意点、職業、通学経路など、記入されたデータをもとに質問が始まるのですから、親としての責任は、限りなく重いものです。
 
簡潔で、的を射た表現から、面接は和やかな雰囲気で進み、お互いのコミュニケーションが成り立ちます。
逆に、要領を得ない、冗漫な表現では、悪い印象を与えかねません。
 
WEB出願の場合は問題ないですが、手書きの願書の多くは、「楷書で丁寧に記入し、使用する筆記用具は黒の万年筆かボールペン」と注意を促しています。
達筆な草書で書かれた願書は、注意を無視することになり、見た目はきれいであっても、簡単に読み切れませんから、何百通の願書を読む立場になれば、これほど思いやりの欠けた願書もないでしょう。
また、記入欄いっぱいに小さすぎる字で書き込むのもどうでしょうか。
もし、あなた自身が面接を担当する先生の立場でしたら、どういった願書を歓迎するか考えましょう。
やはり、一点一画を丁寧に、読みやすく書くことが大切だと思います。
 
また、書き慣れているからと、サインペンを使用することは避けましょう。
サインペンは水に弱く、にじんで願書を汚したり、字、そのものが消えたりしがちだからです。
 
このことは、面接資料や参考票、アンケートといったものも同様です。
 
●願書記入に関しての留意点
 
・氏名で齋(斎、斉)、澤(沢)、邊(辺)、壽(寿)など、普段、略字で書き慣れている方は注意しましょう。
 氏名の「ふりがな」は、ひらがなで書かれている場合は「ひらがな」で、カタカナの場合は「カタカナ」で記入します。
 
・現住所は、住民登録票に記載されている通りに記入します。
 やりがちなミスは、
 〔東京都新宿区○○町4ー5ー6 メゾン△△△△ ××号〕
 といった住所の記入です。
 住民登録票には、以下のように表記されているはずです。
 〔東京都新宿区○○町4丁目5番地6-メゾン△△△△ ××号〕
 
・職業は、簡潔に記入しますが、説明をしなければわからない場合もあります。
 記入欄は限られていますから、面接の折りに質問を受けることを考え、わかりやすく説明できるようにしておきましょう。
 自営業の方は、年収や従業員数等を尋ねられたケースもありましたから、まとめておきましょう。
 私学はご家庭の経済力に依存しており、経済的な基盤が安定しているかを確認していると考え、的確に応じることが大切です。
 
 職業を持っている母親は不利といわれているので、書くことを躊躇されるお母さん方がいると聞きますが、これもうわさの一つです。
 学校によっては共働きのご家庭の方が多いのでは、という現状です。
 入学後の送迎や、緊急時のお迎え、学校の行事や参観授業など、きちんと出席し、協力できれば問題ありません。
 
 都内でも、日本女子大学附属豊明小学校、聖心女子学院初等科などには学童保育があり、仕事を持つお母さん方を応援しています。
 
 ただし、緊急時のお迎えについては、東日本大震災以後、速やかに対応できることも求められています。
 学校側に不安を与える条件がなければ、専業主婦より、苦労をするわけですから、もっと自信を持ってください。
 
・通学方法、所要時間は、電車の場合は、各駅停車を利用した時間を、乗り換えがある場合は、それに要する時間、自宅から最寄りの駅、駅から学校まで歩く時間は、子どもの足でかかる時間を記入します。
 駅から学校までの時間は、学校側から○○分と指定している場合もありますので、読み落とさないように注意しましょう。
 
 通学時間は、多くの場合、ラッシュアワーを避けるようにはなっていますが、お住まいによっては、その時間帯になることもありますし、バスの場合は渋滞などから、時間がかかることもあります。
 正確な時間を知るためにも、登校時間に合わせて出かけ、所要時間を把握しておきましょう。
 乗り換えがある場合、特に地下鉄などは、迷路のような所もありますから、注意が必要です。
 
・写真は、カラーでも白黒でも可、写真屋さんで撮らなくてもスナップ写真でも可、といっている学校もあります。
 制限があるとすれば、3ヵ月以内に撮影されたもので、本人と確認できるものです。
 「○○写真館ご用達の写真でなければ合格しない」は、単なるうわさですが、気になさる方は、ご利用ください。
 ホームページに受験用の家族写真を載せている写真館がありますから、参考にされると良いでしょう。
 最終的にはご家庭の判断でお願いします。
 
・性格、長所、短所は、正直に書きましょう。
 子どもは、演技できませんから、試験場のどこかで、あらわれるものです。
 短所の表現には、十分に気をつけてください。
 「気が短くて飽きやすい」などと書かれる方はいないと思いますが、これでは、保護者として失格でしょう。
 
 「だれが、そのように育てたのか」と思われるだけです。
 
 親の愛情の伝わる表現の仕方があるものです。
 短所は、育児でうまくいかなかったところが表われているといえますし、遺伝もあると考えられますから、お子さんだけの責任ではありません。
 
・誤字や略字に注意が必要です。
 働(仂)、卒(卆)、言(云)、その他 問、職、点、第など。
 
 
願書の記入上の注意に関しては、9月から始まる説明会でお話がある学校があります。また、WEBでも公開している学校もありますので、ホームページ等でご確認ください。
 
学習院初等科、青山学院初等部では、記入例を細かく記した資料も同封されていましたが、今年はどうでしょうか。
それでも、印鑑の押し忘れや、記入漏れなどがあると注意を促していますから、記入例や注意書きにしたがって、慎重に書くべきです。
 
書き損じた場合は、修正液を使用してもよいという学校もありますが、やはり、願書は「お願いの書」ですから避けるべきで、そのためにも何部かコピーを取り、下書きをすべきでしょう。
 
WEB出願の学校も増えてきています。出願登録後に願書等のダウンロードという学校の場合は、「予備の願書を購入しなければ」ということがなくなりました。
暁星小学校も願書だけを販売していましたが、出願サイト「miraicompass」からの出願となり、学校での願書発売はしません。出願サイトの案内は、8月下旬に本校のホームページにアップする予定。今年もテーマ作文がありますが、テーマタイトル、気になるところです。
 
慶應義塾幼稚舎や早稲田実業学校初等部などの願書のように、志望理由などを書く欄に線の引いてあるものは書きやすいのですが、雙葉小学校や白百合学園小学校(両校ともにWEB出願併用となり、今後変更されるかもしれません)、昭和学院小学校、日本女子大学附属豊明小学校の面接書類のように、白紙で線がなく、書く欄も広い場合は、あらかじめ鉛筆で薄く線を引き、万年筆かボールペンで記入した後、完全にインクが乾いてから消しゴムで線を消せば、字も揃い、読みやすくなります。
 
なお、こういった願書に関する情報は、昨年以前のものであることをお断りしておきます。
 
最後に、「夫は字が下手なものですから、私が書いた方がよいでしょうか」といった質問をよく受けますが、一点一画、丁寧に書けば、決して読みづらい願書にはならないと思います。
また、「父親が書かなければ合格しない」ともいわれているようですが、これもおかしな話で、どうやら、願書の最後のところなどに、雙葉小学校のように「記入者」と書かれているところから、こういったうわさが流れているようです。
 
「字が下手」「主人が書く」などは、どうでもよいとはいいませんが、一点一画、丁寧に書かれ、志望理由などが要領を得たものであれば、それで十分ではないでしょうか。
 
「形を繕うより心」です。
 
わが子のために心から、その学校への入学を希望されているならば、そこには、自ずとご両親の心意気が表われているはずです。
 
「願書は、ご家庭の顔」といわれる理由は、ここにあるのです。
 
猛暑が続いています。体調を崩さないように、お子さんの健康管理には十分に注意してあげましょう。入試直前講座も始まります。頑張ってください!
 
 
     (次回は、「面接について」お話ししましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第11章 お月見です 長月(3)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第42号-
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第11章  お月見です   長 月(3)
 
  
★★江戸時代の時の数え方★★
 
何かないものかと探していましたら、やはり、ありました。
江戸時代の「時の数え方」です。当時は、午前零時、午後零時(正午)を「九つ」といい、「2時間を一時(いっとき)」とし、そこから2時間ずつ、ずらして八つ、七つ、六つ、五つ、四つという数え方をしていました。面白いことに、「九つ」から始まって、「八つ」 「七つ」と減っていくのですから、現代人の感覚だと戸惑います。しかし、これにはきちんとした理由があるのです。
掛け算の九九のお出ましです。
 
まず、鐘を9つ打つ時刻、午前零時、午後12時を「九つ」どきとして、次に9の2倍の18を打つのですが、真夜中に18も鐘を打たれては、おちおち寝ていられません。18では多すぎるので、十の位を除いて、2時間後の午前2時に8つ打ち「八つ」として、以下、
   9×3=27で、十の位を除いて午前4時に7つ打ち「七つ」、
   9×4=36で、十の位を除いて午前6時に6つ打ち「六つ」、
   9×5=45で、十の位を除いて午前8時に5つ打ち「五つ」、
   9×6=54で、十の位を除いて午前10時に4つ打ち「四つ」、
元に戻って、午前12時が「九つ」、午後2時が「八つ」、午後4時が「七つ」、午後6時が「六つ」、午後8時が「五つ」、午後10時が「四つ」、そして午前零時が「九つ」と、こういう仕掛けなのです。
 
素朴な疑問ですが、なぜ10から始めなかったのでしょうか。
その理由は、陰陽思想では十を完全な数として数の頂点と考え、十は最上のため満ち足りると次はなくなってしまう、満月が欠けていくのと同じで、九を陽(奇数)の最上、八を陰(偶数)の最上の数と考え神聖視していたことによるものです。
 
余談になりますが、聖徳太子の「十七条の憲法」は陰と陽の最上の数を足したもので、陰陽思想の影響を受けてできたと言われているそうです。
 
また、時刻の決め方も世界標準時間などない頃ですから、こういったことで決めていました。
 
 江戸の時刻は、太陽の上るのを明(あけ)六ツとして、日没を暮六ツとして、その間を六等分して昼の一刻を決める。夜は日の入りから翌朝の日の出までをやはり六等分して夜の一刻は決められた。従って、夏は日が長いので、昼の一刻が夜の一刻より実際には長くなった。
 (御宿かわせみ 16 八丁堀の湯屋 P250 平岩弓枝 著 文春文庫刊)
 
ところで、東京地方の民謡に、この時を表した「お江戸日本橋」があります。
「七つ」を現代の時刻7時と考えると、おかしな歌になってしまいます。東海道五十三次を歌った長い歌で、全部残っている資料もあるそうで、興味のある方、インターネットで調べてみてください。
 
   お江戸日本橋 七つ立ち
   初のぼり
   行列そろえて アレワイサノサ
   コチャ 高輪`
   夜明けて 提灯(ちょうちん)消す
   コチャェ コチャェ
              
大名の参勤交代の行列を表した歌で、七つ(午前4時)に日本橋を出発、「下に~、下に~」の掛け声でゆっくりと進み、高輪で明け六つ(午前6時)を迎えて提灯の火を消す、のんびりとした行列であることがわかります。正月恒例の箱根駅伝、スタートの有楽町から高輪まであっという間ですから。
歌詞に「初のぼり」とありますが、江戸時代は京都へ行くのを上りといい今とは逆になっています。当時の都は京都で、明治に東京へ遷都されて東京が都となり、東京へ行くのが上りになりました。
 
日本橋は現在のコンクリートの橋を架けてから百年以上になりますが、橋の上を高速道路が走り、窮屈で無残な姿になっています。あの関東大震災や東京大空襲にも耐えた橋であり、親柱には「東京市の守護神・獅子像」と「15代将軍徳川慶喜の揮毫(きごう)した銘板」が設置されている由緒ある橋で、もっと優しく保存してあげるべきではないでしょうか。
 
所変わって、小江戸と呼ばれる川越には、江戸時代の風情を今に残す蔵造りの家並みを見下ろすように「時の鐘」がそびえたっています。鐘楼の高さは15.9メートル、トタン屋根三層作りの木造で、階段はありますが上れません。毎日6時、正午、15時、18時の4回、時を告げ、平成4年(1996年)に環境庁(現環境省)主催の「残したい日本の風景百選」にも選ばれています。
時の鐘は、今から約400年前に創建されたといわれ、現在建っているのは4代目。明治26年に起きた川越大火災後に再建されたもので、耐震診断の結果、「倒壊の恐れあり」と判明。明治27年の再建当時の姿に戻す復元工事も実施され、平成29年1月、工事は無事終了。
                              
さて、「時」つながりで、最近、きかれなくなった落語に、「時そば」と題した噺があります。
 
ちょうど九つどきに、屋台のそば屋で勘定を払う男が、細かい銭で済まないがと、数えながらおやじさんに渡します。
「ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな、やあ」
ここまできたとき男が、いきなり、時間を聞きます。
「何どきだい?」
「へぇ、ここのつで…!」
とおやじがいうと、九文目を払わないで、
「とお、じゅういち、じゅうに、じゅうさん、じゅうし、じゅうご、じゅうろく、ごちそうさん!」      
と、九をうまくとばして、お客さんが一文、見事にごまかします。 
これをまねた男が、今度は時を間違えて、多く払うはめになる話です。
 
この噺は、関西では「時うどん」になりますが、薄く透き通った関西風の味も、こたえられません。やはり、この時の数え方も、訳ありでした。
 
「ひい、ふ、みい」は、漢字の訓読みですが、これを覚えておくと、日付の読み方に役に立ちます。
 
一日を除き、「ふつか、みっか、よっか、いつか、むいか、なのか、ようか、ここのか、とおか」となっています。十一日、十二日、十三日と音読みになり、十四日は「じゅうよっか」と音訓読みになり、二十日は「はつか」となり、幼児には、難しい読み方になっています。「ついたち」は、一月に紹介しました「十二支の話」を思い出してください。毎日、カレンダーを見ながら、「今日は、9月4日、金曜日」とやっていると、無理なく覚えらます。以前、「日づけの歌」を紹介しましたが、お役に立ちましたか。お読みにならなかった方、YouTubeで見ることができます。
 
 
 
★★防災の日★★
 
9月1日は防災の日です。
ご存知のように、大正12年(1923年)に、関東大震災が起きた日です。
「災害は、忘れた頃にやってくる」と言いますが、平成23年(2011年)に東日本大震災が起きました。当時、防災非常袋などに、飲料水や非常食、着替え、乾電池などを用意し、万が一に備えていた方は、少なかったのではないでしょうか。用意した飲料水などの消費期限(Use by date)をチェックし、想定外の災難に遭わないように心がけましょう。
 
幼稚園や小学校でも避難訓練をやっていますが、小さい子ども達は、自分で身を守るすべを知らないものです。幼稚園、小学校にいる場合は、万全の態勢で臨んでいますから心配ありませんが、一人で外にいる場合どうしたらよいか、しっかりと教えておきたいものです。
 
東日本大震災が起きるまでの学校選びは、「子どもの足で通える学校」でしたが、「子どもが安心して通える学校」ということも考慮されるようになっています。
 
私立小学校は、埼玉県は5校、神奈川県では31校、茨城県では7校あります。
千葉県は9校です。東京は、平成31年4月に東京農業大学稲花(とうか)小学校(世田谷)が開校するなど、現在では56校となっています。
なお、私立ではありませんが、令和4年に全国初の「公立」小中高一貫校として東京都立立川国際中等教育学校附属小学校が開校しました。
 
就学児童が減っている中で開校する学校側の狙いは、「安心して通える近くの学校」ではないでしょうか。「教育は国家百年の計」ともいわれていますが、地方の教育が充実するのは、長い目で見れば、わが国の教育のためにも歓迎すべきことだからです。
 
最後になりましたが、今年の二百十日(立春から数えて210日目)は、8月31日。この時季に、稲は花開き実を結びますが、台風が日本列島を襲い、農作物が被害を受けるため、お百姓さんには厄日といわれており、奈良県大和神社の「風鎮祭」、富山県の「おわら風の盆」など、各地で台風に暴れられないように、風雨を鎮めるお祭りが行われています。
 
 
  (次回は、「9月に読んであげたい本」についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
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2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>ご家庭で楽しくできる受験準備(2)「話の読み聞かせ」のすばらしい効用(1)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第7号
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ご家庭で楽しくできる受験準備
(2)「話の読み聞かせ」のすばらしい効用 (1)
 
 
本を読んであげる「話の読み聞かせ」は、とても大切です。
 
動画で見る「フランダースの犬」や「アルプスの少女ハイジ」などのアニメの作品は、映像と語りだけではなく、臨場感を盛りあ
げる音楽や効果音まで駆使し、瞬く間に物語の世界へ誘い込まれ、楽しいものです。
 
これほど便利なものはありませんが、反面、幼児が疑問を抱いても、教えてくれない不便な点もあります。
 
幼児には、ご両親の「生」の声が何よりです。
 
5歳頃になると、絵が主役であった絵本から、字の多い絵本に変わり、話も筋道立てて進む物語になっていると思います。
 
ここで、お父さんやお母さんに本を読んでもらっていることを少し考えてみましょう。
読んでもらっているときの子どもの頭の中は、どうなっているのでしょうか。
 
絵を見ながらですから、大人が読んでくれる言葉を絵に置き換える、映像化するといった作業が、フルスピードで進んでいるので
はないかと思います。
 
絵本や図鑑、テレビや実際に見た映像が浮かんでいるのでしょう。
ところが、聞いたことがない言葉が出てくるとストップがかかります。
「お母さん(お父さん)、オニタイジって、どういうこと?」
やさしいお母さんは、お子さんの言葉に置き換えて説明します。
そこでお子さんは意味を確かめ、納得し、新しい言葉を覚えて、「語彙」が増えます。
 
そして、一人になると、まだ、字を読めないはずですが、何やらブツブツと言いながら絵本を見ています。
あれは、本当に不思議ですね。
おそらく、読んでもらった本が面白かったから、お母さんの言葉を思い出しながら確かめているのだと思います。
絵を見ながら、記憶した言葉をもとに映像を描き、イメージ化しているのです。
考え、想像しているのです、しかも「言葉」でです。
 
これは、すごいと思いませんか。
 
それが証拠に子どもは、とかく同じ本を何回も繰り返し、飽きもせずに読んでくれとせがみます。
それも読んでいる途中に、
「ママ(パパ)、ありがとう。そこまででいいです」
といったことが、しばしば起こりがちです。
そこまでのところを忘れてしまったのかどうかわかりませんが、それ以降、話が進まなくなり、イメージ化が中断してしまう、と
大人は考えてしまいます。
 
しかし、子どもとしては、読んでもらって全てがつながったから、そこまででいいのでしょう、あとは覚えていますから。
話を一所懸命に覚えようとしていることに違いはありません。
 
そこから「記憶力」がつきます。  
 
さらに繰り返し読んでもらうことで、描かれた映像は、より鮮明になり、そこから、「空想力や想像力」が培われるのではないで
しょうか。
 
ところで、昔話を何か思い出してください。
昔話だけではありませんが、幼児の読む本は、「起承結」で成り立っているのではないでしょうか。
「起承転結」の「転」はなく、話は複雑になっていません。
 
江戸時代の漢学者、頼山陽が、漢詩を説明するために「京都西陣帯屋の娘」と題して、面白い例を残しています。
 
   京都西陣帯屋の娘   (起)
   姉は十八、妹は十六  (承)
   諸国の大名は刀で殺し (転)
   姉妹二人は目もとで殺す(結)
 
「ショコクノダイミョウって、ナンですか?」
余計なものが入ってくると、すっきりしなくなります。
帯屋の娘の話は、帯屋の娘で終わらなければ、子どもは承知しません。
 
桃太郎が、鬼退治をしたついでに、海賊までやっつけるとはなりません。すっきりと終わって、「めでたし、めでたし」が、昔話
には欠かせない決まりです。
 
さらに物語は、「序破急」と快適なテンポで進みます。
 
浦島太郎の竜宮城で過ごしたひと時が、何十年であっても何ら差し支えありません。話は快く聞けるように仕組まれていますし、
簡潔明瞭ですから、「話を理解する力」がついてきます。
 
しかも、話は、「むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」で始まります。
 
「むかし、むかし」は、「いつ」と時間の設定ですが、いつのことだかわかりません。 
 
「あるところ」は「場所」ですが、どこだかわかりません。
 
「おじいさんとおばあさん」は「だれ」と大切な登場人物ですが、名前もさだかではありません。
 
みんな「あいまい」です。
 
その「あいまい」なままに、話は、「何を」「なぜ」「どのように」と展開します。
これも考えてみると大変なことです。
 
時代はいつでも、場所はどこでも、名前がなくても、何ら不都合なことはありません。
奈良時代であろうが平成時代であろうと、北海道だろうが沖縄であろうと、みんな、「むかし、むかし、あるところに」で済ませ
てしまいます。
 
時代考証も、場所の設定も、登場する人物像をイメージ化する面倒な説明もありませんから、すっきりとした気持ちで話に入って
いけるのです。
 
これを仮に、
「江戸時代の元禄十五年、大晦日をむかえる二日前の朝、上総の国は蒲郡、大字蒲、字大和村の一本杉の近くに、四代目の山之上
太郎左衛門というじいさまと花というばあさまが住んでいました」
とやられては、聞いてみようかなという気持ちにもなれないでしょう。
 
「ママ、もう眠いから……」
こうなるに違いありません。
                
ところで、昔話は、
   いつ(when)
   どこで(where)
   だれが(who)
   なにを(what)
   なぜ(why)
   どのように(how)
といった[5W1H]から成り立っていますが、これは文章を書くときや情報を伝える時の基本で、小説や新聞、テレビのニュー
スなども、この形式(フォーム)で構成されています。
 
ということは、話を聞きながら[5W1Hのフォーム]を、小さいときから学んでいることになります。
 
これは、すごい知恵ではないでしょうか。
 
もちろん、子ども達が、「いつ、どこで、だれが」などと意識して聞いているわけではないでしょうが、理路整然とセオリーどお
りに話は進んでいきますから、楽しく話を聞き、その話を覚えることで、筋や物事を考える、「思考力や構成力」が、おのずと身
についてきます。
 
そして、子どもは、話を覚えると話したがります。
 
誰かに聞いてもらいたいのです。
それには、自分自身が話をよく理解しなければできませんから、そのための訓練が、自発的に始まります。
 
それが、「表現力」につながります。
 
しかも、「覚えなさい!」といわれて覚えたのでもなく、「話してみなさい!」といわれて訓練したものでもありません。
自ら、積極的に努力して得た力です。
 
こんなに大切な能力開発を、誰にもいわれずに挑戦しているにもかかわらず、
「パパ、『桃太郎』の話、知っている?」
「ああ、知っているよ。桃太郎が猿と犬と雉の家来を連れて、鬼退治にいく話だろう!」
と無造作に応じてしまっては、せっかく積んできたトレーニングの成果を試せません。
 
子どもは、話したいのです。
成果を試したいのです。
 
「うん、パパも子どもの頃は、よく知っていたけど、どういう話だったかな?」とやさしく受けてあげましょう。
お子さんは、一所懸命に話すはずです。
そして話し終えた時には一言、「よく覚えたな、偉いぞ!」とほめてあげることです。
 
お父さんにほめられて、不愉快になるはずはありません。
「よし、今度は『カチカチ山』を覚えるぞ!」
となり、新しい話に挑戦します。
 
記憶力どころか、「物事に取り組む意欲」を培うことになります。
しかも「自発的」にです。
 
30度越えの日々、自然が相手だけにどうしようもありませんが、お子さんの健康管理には十分に気を付けてください。
 
 
(次回は、「話の読み聞かせ」のすばらしい効用(2)」についてお話しましょう)
 
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