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めぇでるコラム : 2020年5月 2ページ目

さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>私立幼稚園(9)

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         「めぇでる教育研究所」発行
   「2021さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>」
            第27号
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私立幼稚園編(9)
 
 
例年、連休明けに説明会の日程も公表されていましたが、今年はどうでしょう
か。自宅でホームページで動画で行われるかもしれません。
形式はとともかく、ホームページで日程を確認し、できるだけ多くの説明会に
参加しましょう。肌で感じる情報、案外、的を射ている場合が多いのも確かな
ようです。
 
ここで紹介する情報は、説明会や過去のホームページなどから得たものが中心
になっていますが、川村幼稚園の説明会、見学会など情報は、まだ公表されて
いませんので、ホームページをご覧下さい。
 
 
 [ 川村幼稚園 ]
 
幼稚園には男の子もいますが、小学校から大学院まで、女子だけの別学で、宗
教色のない総合学園です。
登園時のJR山手線目白駅は、三つの幼稚園、本園と学習院幼稚園、日本女子
大学附属豊明幼稚園の園児たちの姿を見ることができます。おもしろいことに、
学園内で、もっとも駅から近いのが中学、高校で、体力的に弱い園児は、短大
と中高の校舎の間を歩き、学園本部前を通り、小学校の前を経て、区立目白児
童館の前を通って、やっと到着する一番奥にあります。
大学と大学院は、千葉県の我孫子市にあります。
本学園は、1927年(昭和2年)に開設され、学園の創立者、川村文子が掲
げた「感謝の心」と「女性の自覚」の教育理念が、脈々と受け継がれています。
 
【教育目標】  
  「感謝の心」をもとにして、みんなと仲よく元気よく やさしい心を持て
   る子どもになりましょう。
    ○ 豊かな「こころ」  
    ○ のびやかな「からだ」
    ○ 工夫する「あたま」
 
【教育目標達成に向かう取組】
   ◇ 集団のなかで伸びやかに
    感謝の心を大切にした情操教育を基本に、日々の指導にあたっていま
    す。(言葉で理解させる指導は難しいので、成長してから園での生活
    を振り返り、納得してもらえればと思っています。例えば、順番を守
    ったり、「貸して」 「どうぞ」ということを集団生活の中で自然な流れ
    で導くことにより、子ども達は、生涯大切にするべきルールを素直に
    学んでいきます。また)家庭生活の延長線上にある幼稚園を目指し、
    本人・家庭・園の三位一体の教育を心がけています。
      (  )内は現在のホームページは掲載されていません。
 
    ◇ はじめの一歩を緩やかに
    親から離れて初めての集団生活を開始する「はじめの一歩」であること
    を念頭に、ゆっくり、あったかな場を整えます。子ども達の心の安定
    をはかるとともに、個々の発達段階をよく見極めた援助をし、元気に
    一人で活動する力の基礎を作ります。
 
    ◇ 行事を通して健やかに
    日本に伝わる伝統と、その中にある礼儀を体得するとともに、季節や
    自然に気づき、大事に思えるように、より多くの行事を取り入れてい
    ます。また、友達との協力や達成感を味わい、その過程で自分の存在
    や自分を支えてくれる人の存在を知ることで、落ち着きのある豊かな
    心を持ち合わせた子どもの育成を目指します。
 
「感謝する心」といった情操面の教育、礼儀作法や言葉遣いは、幼児期に身に
つくものです。これらは、決して幼稚園の先生方にお任せするものではなく、
ご家庭でご両親が、責任を持ってしつけるものです。
「躾」という字は、「身を美しくする」から成り立っています。また「仕付け」
とも書きますが、これは「服などの縫い目を正しくするために、仕付け糸で縫
い、仮に押さえておくこと」ですが、押さえておくことで、きちんと縫えるわ
けです。この「押さえ」こそ、ご家庭の教育方針であるべきではないでしょう
か。また、「“しつづける”がつまって“しつけ”になった」という解説を本
で読んだのですが、うっかり題名と著者名を書き損じてしまい、勝手に転用さ
せてもらい著者には申し訳ありませんが、これもわかりやすいですね。
 
その具体的なカリキュラムとして実施されているのが「蓼科修養会」です。
団体生活の訓練と精神教育を目的として、昭和36年から始まり、年長組が7
月に2泊3日の予定で、学園の蓼科山荘で行われていますが、ここにも3つの
柱があります。
   ○豊かな自然に触れ、自然を愛する気持ちを養う。
   ○集団生活を通して、自主的態度を助長する。
   ○規律を守る習慣を身につける。
 
2泊3日、父母のもとを離れて生活する、確実に何かをつかめる三日間となり
ます。これは子ども達だけではなく、子どものいない生活は、ご両親にも素晴
らしい体験になるはずです。かつて、毎年夏に、年長児を対象に2泊3日の合
宿を行っていた経験からわかるのですが、特にお母さん方にとって空白の二日
間は、育児の何たるかを実感させられる、絶好の機会となっているに違いあり
ません。
本園のことではなく一般的な話ですが、夏に行われているお泊り保育などで泣
くのは、男の子が多いそうで、過保護になっていると、こうなりがちです。入
園後は、お泊り保育などでの様子を聞いておきましょう。お子さんを客観的に
見る大切な機会だからです。
 
また、本園の特徴に、「行事を通して健やかに」とありますが、節分や七夕と
いった日本の伝統ある行事が、幼稚園や保育園のイベントとして行われている
傾向にあるだけに、ご家庭でもお子さんと一緒に楽しんでほしいということで
しょう。
園庭には、四季を楽しめる草木や花があり、笹は七夕祭り、薄(すすき)はお
月見に利用しているそうです。都内では薄を見るのも珍しくなっているだけに、
園児が楽しく遊ぶ姿が目に浮かぶようです。かつての車のコマーシャルではあ
りませんが、幼児期は「物より思い出」が大切です。幼児期の楽しい思い出は、
季節折々の年中行事で楽しむことから生まれるのではないでしょうか。
 
預かり保育「にじ組」、満3歳児保育「つくし組」、アフタースクール・セミ
ナーについては、ホームペ-ジをご覧ください。
 
 「教育の三本の柱」と「三本」が掲げられていますが、これも訳ありでした。
学園の「三羽の鶴」の徽章(きしょう)は、三つの玉は川村の川を、鶴は「尊
厳の崇高」「平和と愛の心」「豊かさ」「永遠の向上」を表し、「三」という
数字は、古来、古今東西を通じて基本的な数であるから「三羽」となり、中央
で真っ直ぐ進もうとする鶴が「園児・児童・生徒・学生」で、それを左右から
支え導いている鶴が「保護者・学園・教員」を表し、この三者は学園生活では、
何れも欠くことができない関係を表しているそうです。
 
女子は、小学校へ原則として、全員進学できます。
 
ホームページの「Q&A」のところに、こういったものがありました。
 Q 子どもが考査中に泣いてしまったら不合格でしょうか
 A たとえ泣いても会場に入っていただければ、泣いている原因とその状況
   をみながら判断しています。
 
「泣いたら不合格になる!」といううわさもありますが、本園は心配ありませ
ん。
幼稚園の受験は、「親のもとを離れても楽しいことがある」を体験しているかが
ポイントになるのですが、それでも受験生は幼児ですから、何が起きるかわか
りません。こういった配慮は、親としてありがたいですね。
  
【募集人数】 3歳児男女  30名  4歳児男女  10名
【説明会】 本年度の説明会の日程は、新型コロナの影響で、まだ発表してい
      ません。
      決まり次第ホームページで公表する予定で、今年も事前予約制で
      す。「幼稚園で遊ぼう」は、本年度は中止となりました。予約さ
      れた方には、園舎の様子など紹介するオンライ配信を検討してい
      ます。
【Q&A コーナー】  Q&A
 
★日常生活について
Q: 通園時間に制限はありますか
A: 通園時間に制限は特に設けていませんが、通園は保護者の方にお願いし
   ています。東京都内はもちろん埼玉県、千葉県、時には神奈川県から通
   う園児も在籍しています。
 
Q: 幼稚園と保護者の連絡はどのようにとっていますか
A: 毎日の送迎の中で日々の報告を行っています。また、月1回園だよりを
   発行しています。
   5月と12月、その他必要に応じて保護者会を開き、7月・12月には
   個人面談を行っています。
 
Q: 給食はありますか
A: あります。給食の他に、週に一度水曜日をお弁当の日としています。毎
   月のメニューを検  討するため、教職員・管理栄養士による委員会を
   開催し、行事食や旬のものを取り入れ、材料の産地を確認した上でメニ
   ュー作りをしています。
 
★入園考査について
Q: 事前にある保護者面接はどのようなものですか?
A: 保護者の方に、ご家庭のことやお子様のことなどを質問しながら、愛情
   豊かに育っているか、また入園後、園とご家庭との協力関係が上手くで
   きるかどうかを推し量るためのものとお考えください。
 
Q: 入園考査で行う「心身発育状況・健康面からの総合審査」はどのような
   ものですか?
A: 子どもらしい安定した月齢相応の基本的なことができるか、また、集団
   生活に対応できるかどうか、さらに園生活を営む上で、運動機能等に支
   障がないかなどを見ています。
 
Q: 早生まれが不利になることはありますか?
A: 上記にもありますが、一人ひとりの月齢を加味して全体の試験を行って
   います。
 
Q: 子どもが面接で泣いてしまったら不合格でしょうか?
A: たとえ泣いても試験会場に入ってさえいただければ、泣いている原因と
   その状況をみながら判断しています。
 
Q: 子どもの審査は個人、集団のどちらですか?
A: 集団で遊ぶ様子を拝見します。
 
Q: 男の子も入園できるのですか?
A: はいできます。しかし、男の子の在籍数は少ないのが現状です。
   (令和2年5月4日現在のホームページより転載したものです)
 
 
 [ 立教女学院短期大学附属幼稚園 天使園 ]
 
廃園になりましたが、どういった幼稚園であったか紹介しておきましょう。
武蔵野の面影を残す井の頭公園の近くの高台に、立教女学院の広大なキャンパ
スがありますが、天使園は正式には裏門になる坂下門を入ったすぐ左側の、短
期大学の瀟洒(しょうしゃ)な学び舎の中にありました。
 
本園は、1970年(昭和45年)、キリスト教聖公会の精神に基づいて、
幼児の健全な発達を目指した保育を行い、あわせて本短期大学教育・研究
施設としての役割を担っています。一人ひとりの子どものよさを伸ばすた
めに、4歳児組、5歳児組共、合計男女約20名の、少人数による保育を
行っています。よりよい保育の実現のために、幼児教育科の教員が研究活
動を行い、保育運営に関わるなど、本園教諭と連携しています。
 
毎年、このように紹介していたのですが、立教女学院短期大学は、2018年
度以降の学生募集を停止し、2017年度入学生の卒業をもって閉鎖、従って
天使園も、2018年度以降の園児募集を停止し、2017年度入園児が卒園
した2019年3月31日に閉園されました。わずか40名の小さな施設、小
学校の併設園になり、推薦入学できるだけではなく、国立大学附属の幼稚園と
同様、学生が保育に参加する非常にユニークな幼稚園であっただけに、残念で
すね。説明会での温かな雰囲気が忘れられません。2年保育も雙葉、田園調布
雙葉、暁星、学習院など少なくなりました。
私たちの年代では、東洋英和(四年制に)、東京女学館、学習院、立教女学院
は、短大の名門校でしたが、姿を消してしまいました。時の流れを切々と感じ
ますね。残念ですが、……。
 
説明会の参加者は40名ほどでしたから、「また、今年も来ている、塾の方!」
といった印象持たれていたのではないかと思います(笑)。
自由保育が始まったのは平成4年。それ以前の駆け出しの頃、一斉保育時代に
説明会でうかがった話ですが、「監視や強制ではない保育」という言葉には、
新鮮な響きがあったことを今でも覚えています。文言は正確ではありませんが、
こうおっしゃっていました。
 
幼稚園生活は、毎日が、決して楽しいことばかりではなく、様々
なことが起こりがちで、悔しい思いをする時もあり、そういった
時には自ら友達とのかかわりを考え、工夫し、友達のよいところ
を見つけることができるような環境を作っていきたい。監視や強
制ではなく、子どもが先生を必要とした時、適切な助言ができるよ
うに心がけています。
 
小学校と同様、制服はありませんでした。推薦入学できるようになっただけに、
ご近所の女のお子さんをお持ちのお母さん方には、非常に酷な話となったよう
です。
 
(次回は、桐蔭学園幼稚園、湘南白百合学園幼稚園についてお話しましょう)

さわやかお受験のススメ<保護者編>第7章(4)★★五月に読んであげたい本★★

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2021さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第27号
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第7章 端午の節句です(4) 
 ★★五月に読んであげたい本★★  
 
 
昨年、天皇陛下の即位を祝う令和初の一般参賀は、4日皇居・宮殿で行われ、
平成への代替わり時を3万人上回る14万人以上の人々が訪れました。「暑い
中、来ていただいたことに感謝いたします」、令和元年、皇紀二千六百七十九
年が始まりました。今上天皇の評判も良く、皇后様の念願でもあった皇室外交、
生き生きとしており素晴らしいですね。令和2年、新型コロナの蔓延で大変で
すが、爽やかな笑顔で頑張っていただきたいと心から念じています。
 
「桃太郎」や「金太郎」は、おなじみのむかし話ですからさて置き、こわい話
を紹介しましょう。
 
 
◆めしを食わぬよめ◆   松谷 みよ子 著
 
むかし、ある村に、たいそうけちな男がいました。嫁に食わせる飯がもったい
ないから、飯を食わぬ嫁を探してくれというのです。
ある日のこと、十六、七の姉さまが訪ねてきて、ご飯を食べずに働くから嫁に
してくれという。暮らしてみると、ご飯を食べず、しかも働き者です。ところ
が、毎日、米もみそも減っています。不思議に思った男は、次の日、仕事に出
かけたふりをして、戸のふし穴からのぞいてみたところ、髪をほどいた頭の中
に、大きな口があり、飯にみそをつけ、にぎっては放りこみ、大がまの飯を全
部、食べてしまったのです。
男は、夕方になると、知らぬふりをして家に帰り、別れ話をすると、にわかに
髪をふりみだし、頭の口をパックリとあけて、恐ろしい山姥(やまんば)にな
ったのです。逃げ出そうとする男をつまみあげ、ふろ桶の中へ放りこみ、桶に
帯をかけて背負うと、山へむかって走りだしました。男は、何とか助かろうと、
桶から顔を出してみると、頭の上に木の枝があったのでとびつき、木からすべ
りおり、山をかけおり、ふもとまで来たのですが、気づいた山姥が、追いかけ
てきます。男は、そばの草むらに逃げ込みました。そこには、菖蒲がたくさん
生えていたのです。
「魔除けの菖蒲にはかなわない」と、山姥は悔しそうにいい、山へ帰って行っ
たのです。
菖蒲が魔除けの草として、五月の節句に飾られるようになったのは、この時か
らだといわれています。
   五月のはなし  ももたろう 松谷 みよ子/吉沢 和夫 監修
                    日本民話の会 編 国土社 刊
 
話によっては、蓬(よもぎ)も生えている草むらになっているものや、風呂桶
ではなく背負いかごのもあります。面白いことに、「この日が、実は、5月5
日であった」という話も残っています。
 
子どもは、こわい話を聞きたがりますが、本当は、こわがりなのです。話だけ
では、頭に大口がある姿を想像できませんから聞いていますが、本の場合は絵
がありますから、こわがります。
ある時、絵本を見せながら読んだところ、こわそうな顔をして聞いていました。
喜怒哀楽の情緒も分化されてくる時期ですから、こわいものには、本当にこわ
がり始めます。
この話でも、頭の口で食べるところでは、
「これからこわーくなるから、こわい人は……、耳を、ふさいで、いいのだよ
ー」     
といかにもこわそうにいうと、耳をふさいで下を向くのは、男の子が多いです
ね。食い入るように話を聞いているのは、案外、女の子なのです。肝が座って
いるのですね、小さい頃から。           
あまり恐怖感を与えるのは考えものですが、こういった刺激を与え、情緒を育
んでいくことも、昔話の大切な役目ではないでしょうか。恐怖感も、きちんと
結末で拭ってくれる配慮がしてあるからです。    
 
探してみるものですね。この話を見つけたときは、本当にうれしくなりました。
鯉のぼりの制作者は、意外にも、お侍さんだったのです。
 
 
◆コイのぼりのはじまり◆(伝説 墨田区) 
 
江戸時代のことです。
端午の節句が近づいたある日、江戸の町を一人の侍が歩いていました。武家屋
敷の庭には、祝いの旗や、のぼりが立てられ、道では、侍の子が、紙のかぶと
をかぶり、しょうぶで作った刀を振り回していますが、町人の住む町の子ども
達は、かぶとも、しょうぶの刀も差していないことに気づいたのです。
染め物屋の家からは、のぼりを立ててくれとせがむ子どもの声が聞こえました。
「あれは、お侍さんが立てるものだからできない」と話しますが、納得しない
で、泣きじゃくっているではありませんか。
そこへ、お侍が入って来て、大きな紙4枚と太い筆を借り、1枚の紙に大きな
コイを描き、別の紙には、反対向きのコイを描きあげました。2枚の絵を合わ
せると、1匹のコイになるのです。もう1匹描くから、節句の前日までに、黒
と赤に染め上げてほしいといって店を出たのです。
約束の日に染め上げ、日に干していると、やってきた侍は、はさみと針を借り、
向きの違うコイ同士を、袋縫いに縫い合わせると、黒と赤の2匹のコイになっ
たのです。長いさおの先につけて、家の前に立てさせました。五月晴れの空を、
風に吹かれる真ゴイと緋ゴイ。周りには、町人や武士の子ども達も集まり嬉し
そうです。
お侍さんの名は赤荻柳和、武士というよりは俳句を作ることで知られた、心の
やさしい人だったそうです。こうして、次の年の5月5日から、江戸の町には
コイのぼりが、武士の家にも町人の家にも、立てられるようなったのです。
これが、コイのぼりの始まりだそうです。            
 県別ふるさとの民話18 東京都の民話 日本児童文学者協会編 偕成社刊 
 
「八十八夜」「若葉」「茶摘み」「すげの笠」といいますと、俳句の季語のよ
うな感じがして、夏の近いことを実感したものです。しかし、今はどうでしょ
うか。こういった風物詩も、「テレビで拝見」で終わっているようです。季節
を感じる余裕がなくなってしまったのでしょうか、もったいないと思います。
自然が、四季折々の変化を告げてくれるのは、本当に有り難いことだからです。
 
この話に出てくる「ふるい屋」「古鉄(ふるがね)屋」も、説明がないとわか
らない仕事ですね。私の子どもの頃は、こういった行商屋さんが、金魚、風鈴、
豆腐、納豆、アイスキャンディーなどを売りに来たものです。中でも印象に残
っているのは、鍋やかまなどにできた穴を修理する「いかけ屋」さんで、道の
片隅にござを敷き、その上に道具を並べ、小さなふいご(携帯用送風機)で火
をおこし、焼けた鉄の棒で金属同士をくっつけてしまう「半田付け(はんだづ
け)」が、不思議だったことを覚えています。
 
                   
◆お茶屋とふるい屋と古鉄屋(ふるがねや)◆(山梨県の話)
 
       夏もちかづく  八十八夜
       野にも山にも  若葉がしげる
       あれに見えるは 茶摘みじゃないか
       あかねだすきに すげの笠
 
小学校唱歌「茶つみ」の歌です。子どもの頃、女の子が「せっせっせーのよい
よいよい」といってから、この歌をうたいながら遊ぶ、手遊びがありました。
この歌にある「八十八夜」は、暦の上で、立春の日(2月4日頃)から数えて
八十八日目、5月2日頃のことで、茶摘みが始まる季節です。
 
新しい芽を摘んで作った新茶売りの話があります。
ある日、一人のお茶売りが、「新茶ぁ、おいしい新茶だよ!」と、売り歩いて
いく後から、「ふるいー、ふるいー」といってふるい屋が歩いていきます。
「ふるい」とは、粉や砂など細かなものを、網目を通して落としたり、選り分
けする道具です。「新茶、ふるい」と売り声が並ぶと、新茶なのか古いのかわ
からず、誰も出てきません。
お茶屋さんは、新茶が売れないと怒りましたが、ふるい屋さんも、
「ここは天下の往来、文句があるなら、お前さんこそ、どこかへ行ってくれ」
とけんかを始めました。
そこへ、古鉄(ふるかね)屋さんが、通りかかり仲裁に入ったのです。古鉄屋
さんは、いらなくなった金物を買い取る商売です。二人から訳を聞くと、これ
から三人で売り歩こうといい、順番は、
「お茶屋さん、ふるい屋さん、私だ」という。
言われて三人が売り声をあげると、
「新茶ぁ、ふるいー、古鉄ぇ!」
となり、今度はいい商いができたのでした。    
  日づけのあるお話365日 
         五月のむかしの話  谷 真介 編・著 金の星社 刊
 
落語にも「売り声」という噺があり、お茶屋さんに代わり「魚屋」さんで、い
わしを売っていたと記憶しています。「いわし、ふるいー、ふるかねえ!」
 
どうしても紹介しておきたい話があるのですが、季節感が希薄なのです。棚ぼ
た式に出世する話、こういったうまい話は、あるところにはあるものです。観
音さまのご利益なのですが、運命は、本当に、どなたが決めるのでしょう。こ
の話は、「今昔物語」の巻16の第28話に出ている他、古本説話集、宇治拾
遺物語、雑談集にも、「長谷寺観音の霊験譚」として残されています。思いが
けない交換から利益を得ることを主題にした致富譚(ちふたん)の一つで、原
作を読むのは、少々しんどいですが、子ども向けに翻訳された本は、おもしろ
く読めます。芥川龍之介の愛読書であることもわかります。
 
 
◆わらしべ長者◆   阿部 律子 著
 
むかし、あるところに、お父にもお母にも死なれ、独りぼっちの貧乏な若者が
いました。
ある日、村の観音さまに祈っているうちに寝てしまったのですが、夢の中に観
音さまが現われ、
「ここから東に行き、初めに手につかんだものを大切にすべし」
と、お告げがあったのです。
急いで戻ろうとしたとき、石につまずき転びましたが、起き上がると、片手に
わらしべを握っていたのです。観音さまのお告げは、このことかもしれないと
わらしべを懐にしまい、東の方に歩いて行くと、1匹のあぶが飛んできたので
捕まえ、わらしべの先にくくりつけました。すると、牛車に乗っていた男の子
が欲しいというのであげると、ただでもらってはと、みかんを3つくれたので
す。
しばらくいくと、男が道端に倒れていて、水がほしいという。みかんを差し出
すと、お礼に反物をくれたのでした。これも観音さまのお陰かもしれないと、
なおも東へ向かって行くと都に出たのです。
すると、倒れた馬を囲んで、人々が騒いでいました。馬の持ち主が、若者に、
急用があるので、馬をやるから好きなようにしてくれというので、ただでもら
うわけにはと、反物をあげたのです。
若者は、馬を引きながら、さらに東の方へ行くと、大きな家から、旅支度をし
た主人が出てきて馬をくれ、もし、3年たってもわしがもどらなかったら、こ
の家も畑も、お前にやると言い、返事も聞かずに行ってしまったのです。若者
は、田畑を耕しながら、主人の帰りを待ったのですが、帰ってきませんでした
ので、若者は、その屋敷に住み、やがて、わらしべ長者と呼ばれる大金持ちに
なったのです。
(わらしべ  米や麦など稲科植物の茎を乾燥させたもの。引用者注)
  日本むかしばなし 12
    ふしぎなゆめ 民話の研究会 編 田木 宗太 絵 ポプラ社 刊
     
このように、安物が高価な物と交換されていく話は、ヨーロッパにはあまり見
られず、なぜか、インド、ベトナム、朝鮮、日本といったように東南アジアに
分布しているようです。そういえば、インドの原始仏典「ジャータカ」には、
ねずみ1匹から交換が始まり、豪商の婿さまに納まる出世物語が収められてい
ます。
「ジャータカ物語」や「パンチャタントラ物語」(世界で最も古い子ども向け
の物語集)もお勧めしたいのですが、最近、図書館でも見かけなくなりました。
パソコンで検索すると、かなり出版されているようです。あらすじを紹介して
いるものもあり、内容を把握できますから、のぞいてみましょう。
 
   (次回は、「何もないのかな 水無月」についてお話しましょう)

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